レモネードのように。

はる

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目を見ればわかる

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1日中動き回って疲れたのか、「僕寝るねー」と、ルナはさっさとベッドで眠りについてしまった。

俺にはわざわざ布団を用意してくれていた。俺も疲れてはいたが、それ以上にこの不思議な出来事やルナへの気持ちが整理できなくて、酒でも飲みたい気分だった。

なんとなく階下の店内に行くと、ルナのおじいちゃんがウイスキーをストレートで嗜んでいた。

「リク君、一緒に飲むか?」

俺の姿を確認し、そう誘ってくれた。俺はお言葉に甘えてビールを頂いた。

「今日1日、楽しめたか?」

「はい。洋服代、本当にありがとうございます。」

「気にする事じゃない。裸で過ごすわけにいかんしな。」

俺は改めてお礼を言うと、ずっと思っていたことを聞いてみた。

「あの…俺みたいな何処の馬の骨かもわからない奴を、ルナと同じ部屋に泊めて本当に良かったんですか?今日、街に出て、ルナにその…色目を向ける人達を沢山見ました。俺に対してもそういう不安があるのであれば…」

俺はその事をずっと気にしていた。おじいちゃんはルナの事が心配だろうし、本当は俺がルナの部屋に泊まることも内心良く思っていないのではないかと。

「それも気にすることじゃない。」

おじいちゃんは俺の意に反して、そう言い切った。そしてこう続けた。

「リク君。長く生きていると、相手がどういう人間か、目を見れば分かるものだよ。君に対してその手の心配はいらない。すぐにわかったよ。実際、ルナは今日1日楽しそうだった。君は、ルナの事を気に入ってはいるようだが、だからと言って無理矢理何かをするような人間じゃない。」

そう言われ、俺は嬉しさと面映さで顔が赤くなるのを感じた。

「リク君、この世界に居る間で構わないから、ルナと仲良くしてやってくれ。ルナの心の傷を癒してやって欲しい。」

「…心の傷?」

「ルナの事、頼んだぞ。」

おじいちゃんは多くは語らず、一言だけそう言い残すと、いつの間にか飲み干したウイスキーを片付けに席を立った。
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