レモネードのように。

はる

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お出かけ

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しばらくして、俺はルナに案内されながら街に出た。

おじいちゃんがこっちの通貨(紙幣はなくてコインだけらしい)をいくらか渡してくれて、「ルナと一緒に服でも買って来なさい。ルナ、午後はそんなに忙しくなさそうだから、リク君を案内してあげなさい。ただし、一人行動はしない事。」と言っていた。

こっちの世界で一文無しの俺にとっては本当に有難かった。

本当、ルナのおじいちゃんいい人だ。外見だけで怖いと思ってしまった事を猛省した。 

「ルナ、おじいちゃんが言ってた、1人行動しないようにってどういう事なの?」

方向音痴とかなのかな?と思い、ルナと並んで歩きながら聞いた。

「あ、なんか僕が1人で歩くと危ないからって1人で街に行かせてくれないんだよね。平気なのに。」

ルナは唇を尖らせる。なるほど、そっちの意味か。

確かに周りを見ると、ルナをじっと見ている通りすがりがチラホラいる。やっぱ、ここまで可愛いと目立つもんな。本人はおそらく無自覚系だと思うし。おじいちゃんの判断は正しい気がした。

そんな事を考えていると、ルナがじっと俺の事を見ていた。

「な、なに?」

俺は慌てて顔をそらす。

「こうやって見ると、リクってカッコイイ顔してるよね。」

「え、そうかな…?」

「うん。前の世界でモテなかった?」

「モテないよ…。ルナこそ、モテるんじゃない?」

「うーん、好きって言われることは結構あるかな。でも、どの人の事もなんか好きになれなくて…。だから僕付き合ったことないよ。」

「そうなのか!?」

ちょっと意外だった。こんな可愛い子が一度も付き合ったことがないなんて。

街を闊歩しながらのルナとの会話は楽しかった。

ルナは陽気で可愛くて話も合う。

こんなに素敵な男の子を連れて街を歩けるなんて、なんだかそれだけで心が満たされていった。

 ----

「すっかり遅くなっちゃったね。」

「そうだね。」

俺がいた世界では売っていないような変わった模様や形の服があって、つい夢中になってしまった。

お金はルナがおじいさんから持たされていたが、俺はこの世界の金額単位を分からないから、気に入った服の費用感をルナに確認してもらった。

「リクは高いものばっかり選ぶよね」と却下され続けた事もあって余計に時間がかかってしまった。

俺は値段も知らないくせに高価なものにばかり目がいってしまっていたようだ。

そんなこんなで気付けば夕暮れになっていた。ルナとの時間があまりに楽しくて、あっという間だった。

それにしても、この街は日が暮れても風が温かい。それになんと言うか、強く吹き付けることの無い優しい風だった。

「ねぇ、お風呂行かない?」

俺が風を感じていると、少し前を歩くルナが俺の方を見て言った。俺は、風がなびかせたルナの髪の毛をなんとなくじっと見ていた。

「…聞いてる?」

「あ、ごめん。そういえば体が汗でベトついてるかも…ってお風呂!?」

「じゃあ決まりだね!すぐ近くにスパがあるんだ!」

ルナは嬉々として俺の手を引いて小走りをする。

「ちょ…、ルナ!風呂って、俺と一緒に入るってこと?」

「え、当たり前じゃん。」

嘘だろ。俺、こんな可愛い子と風呂入るのか?

戸惑いながらも連れられて走る俺の全身を風が切っていく。
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