レモネードのように。

はる

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エメラルドグリーン

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「ふへ!?」

あまりに唐突な物言いに俺は素っ頓狂な声をあげてしまった。

「異世界だよ。信じられないかもだけど、ここってなんか異世界との入口になっているんだって。僕にはさっぱりなんだけどさ。」

「…そんな荒唐無稽なこと、誰が言ってたんだ?」

「コウトウムケイ?さっきからお兄さん難しい言葉使うよね。おじいちゃんが言ってたんだよ。前にも一度、異世界から来た人がいたんだってさ。」

「その人はどうしたの?」

「うーん、ある日突然いなくなったらしいんだけど、僕が産まれる前の事だからよくわからないんだ。」

そう言うと、美少年は突然、俺の目をじっと覗き込んだ。そして、少し考え込むようにしてから、俺に向かってこう言った。

「もし良ければ、おじいちゃんに話聞きに行く?そこ僕の家だからさ。」

そう言って美少年が指さしたのは、海の家のような佇まいのちょっとオシャレな食事処だった。

「お店やってるの?」

「うん。僕とおじいちゃんでね。二階が僕たちの家だよ。2人で暮らしているんだ。」

俺は訳が分からないまま美少年について行った。

立ち上がって横に並ぶと美少年は小柄だった。160センチあるかどうかという感じだと思う。

「ねぇ、お兄さん名前なんていうの?」

「璃玖(りく)だよ。」

「僕はルナ。19歳。よろしくね、リク。」

美少年ルナはそう言うと俺の方を見てニコリと笑った。

その後ろでエメラルドグリーンの海がキラキラと光を放つ。

さざ波が混乱してざわめく俺の心に呼応しているようだった。

得も言われぬほどの美しい海と美しい少年。

それは、思わず見惚れてしまう程、絵になる光景だった。
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