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天使ですか?
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学生時代、男子がバレンタインデーに「女子からチョコをもらえるだろうか?」とソワソワしている一方で、俺は男子からチョコレートをもらいたい、もしくはあげたいと思っていた。そんな事を何故だかふと思い出した。
振り返れば、味気ない人生だった。本当の事を隠して、小さな嘘を積み重ねて、他人を傷つけないように自分の気持ちを胸にしまって、平気なフリをして、自分を騙して…そうやって生きてきた。歯がゆさと苦しさが同居したような想いを常に抱えていた。
そして生涯の幕を閉じた。
ここは天国だろう?
青々とした空に、エメラルドグリーンの海。仰向けに横たわった俺の体にやわらかい風が吹き抜ける。俺は、目が覚めたらここにいた。
天国ってハワイみたいな場所なんだな。常夏の『楽園』とはよく言ったもんだ。
二十七歳か…もう少しくらい長生きしたかった気もするなぁ…。
「何、一人でブツブツ言ってるの?」
「へ?」
真上から突然声をかけられ、俺は驚いて体を起こした。そこにはブロンドショートヘアの小柄で美しい少年がいた。
「天使か…?」
俺は思わず問いかけた。
「ぷっ、ははは…!」
天使は俺の一言を聞いて可愛らしく笑った。
「僕は天使じゃないよ。それにここは天国じゃない。だって僕は人間だし、ちゃんと生きているからね。」
天使は笑いを堪えながらそう言った。
俺は少しずつ冷静さを取り戻してきた。体を起こし、ぐるりとあたりを見渡した。
白い砂浜に青い空に美しい海。天国じゃないなら、ここはどこだ。沖縄か?てか暑っ。さっきまで冬じゃなかった?俺は着ていたパーカーをゆっくり脱ぎながらも、脳内では忙しく状況整理に奔走していた。
目の前にいる天使…もとい美少年の顔つきはヨーロッパ風だ。え、じゃあ外国?でもこの子に言葉通じているしな。
「ちょっと整理させてもらっていいかな。」
「どうぞ。」
俺の問いに、彼は時間はいくらでもありますからと言わんばかりに、そう答えた。
「えーと、俺は確か昨晩新宿で飲みすぎて酔い潰れて、そこから記憶がなくて…」
「シンジュクって何?」
美少年が覗き込むように聞いてきた。近くで見ると本当に可愛い顔をしていて、俺はドギマギしてしまう。
「知らない?新宿って。」
「うん、知らない。」
俺は少し考えてから、こう聞いた。
「ここって…日本…?」
「ニホンって何?」
俺はまだ夢の中にいるのかもしれない。随分鮮明な夢だな。とりあえずスマホを探そうと思ったが、見当たらない。しかも、飲みすぎたせいでちょっと頭が痛い。夢の中でも痛みって感じるもんなんだな…。
「また一人でブツブツ言ってるぅ。」
美少年は怪訝そうに俺を覗き込む。
「あ、ごめん。ちょっと色々と絶賛混乱中でさ…。」
そんな俺の様子を見た美少年がふとこんな事を言った。
「お兄さん、異世界から来たんじゃない?」
振り返れば、味気ない人生だった。本当の事を隠して、小さな嘘を積み重ねて、他人を傷つけないように自分の気持ちを胸にしまって、平気なフリをして、自分を騙して…そうやって生きてきた。歯がゆさと苦しさが同居したような想いを常に抱えていた。
そして生涯の幕を閉じた。
ここは天国だろう?
青々とした空に、エメラルドグリーンの海。仰向けに横たわった俺の体にやわらかい風が吹き抜ける。俺は、目が覚めたらここにいた。
天国ってハワイみたいな場所なんだな。常夏の『楽園』とはよく言ったもんだ。
二十七歳か…もう少しくらい長生きしたかった気もするなぁ…。
「何、一人でブツブツ言ってるの?」
「へ?」
真上から突然声をかけられ、俺は驚いて体を起こした。そこにはブロンドショートヘアの小柄で美しい少年がいた。
「天使か…?」
俺は思わず問いかけた。
「ぷっ、ははは…!」
天使は俺の一言を聞いて可愛らしく笑った。
「僕は天使じゃないよ。それにここは天国じゃない。だって僕は人間だし、ちゃんと生きているからね。」
天使は笑いを堪えながらそう言った。
俺は少しずつ冷静さを取り戻してきた。体を起こし、ぐるりとあたりを見渡した。
白い砂浜に青い空に美しい海。天国じゃないなら、ここはどこだ。沖縄か?てか暑っ。さっきまで冬じゃなかった?俺は着ていたパーカーをゆっくり脱ぎながらも、脳内では忙しく状況整理に奔走していた。
目の前にいる天使…もとい美少年の顔つきはヨーロッパ風だ。え、じゃあ外国?でもこの子に言葉通じているしな。
「ちょっと整理させてもらっていいかな。」
「どうぞ。」
俺の問いに、彼は時間はいくらでもありますからと言わんばかりに、そう答えた。
「えーと、俺は確か昨晩新宿で飲みすぎて酔い潰れて、そこから記憶がなくて…」
「シンジュクって何?」
美少年が覗き込むように聞いてきた。近くで見ると本当に可愛い顔をしていて、俺はドギマギしてしまう。
「知らない?新宿って。」
「うん、知らない。」
俺は少し考えてから、こう聞いた。
「ここって…日本…?」
「ニホンって何?」
俺はまだ夢の中にいるのかもしれない。随分鮮明な夢だな。とりあえずスマホを探そうと思ったが、見当たらない。しかも、飲みすぎたせいでちょっと頭が痛い。夢の中でも痛みって感じるもんなんだな…。
「また一人でブツブツ言ってるぅ。」
美少年は怪訝そうに俺を覗き込む。
「あ、ごめん。ちょっと色々と絶賛混乱中でさ…。」
そんな俺の様子を見た美少年がふとこんな事を言った。
「お兄さん、異世界から来たんじゃない?」
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