明日も君が笑顔でいるために。

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シメサクは、忘れないように葵と連絡先を交換した。

それぞれシャワーを浴び、お互いを待っている間、シメサクは缶ビールを1本飲み、葵は読書をしていた。

シメサクは、改めて考えると、この状況なかなか不思議だなぁと感じた。

つい数日前までコンビニの店員と客だったのだから。

「葵、明日は学校?」

「うん。制服取りに家に戻らないといけないから、明日は早めに起きて行くね。サクは寝てていいから。」

葵の制服姿をシメサクは想像した。

見てみたいな…なんて思考が走り、慌ててかぶりを振った。

「わかった。じゃあ、明日も早いし、そろそろ寝よっか。」

「…あのさ、サク。」

葵が何やらモジモジしながら言った。

「ん?なに?」

「…あ、やっぱりいい…。」

「えー、言いなよ。気になるじゃん。」

「…あのね、もし、嫌じゃなかったら、一緒に寝てもいい?」

「ゴフッッ!」

シメサクは、飲みかけのビールをちょっと吹いた。

「あ!まって、ごめん。一緒に寝るって変な意味じゃなくて、その…あんな事があったからちょっと一人で寝るの怖くて…。」

シメサクの大きい服を着た葵が長すぎる裾をキュッと握り、顔を真っ赤にして言った。

その姿が殺人的に可愛くて、シメサクは言葉を失った。

「…ごめんね。嫌だよね。僕、ゲイだし…」

沈黙を別の意味に捉えたらしい葵の言葉をシメサクは慌てて否定した。

「いや、そうじゃないよ!そんな事、俺気にしてないから!葵がゲイだろうが別に何にも思わないよ。さっき初めてそう聞いた時も何にも思わなかった。だって、葵は葵だろ?」

シメサクの言葉に葵は、驚いたような表情を向けた。

「サク…ありがとう。」

「全然。てか、お礼言うとこじゃないよ。むしろ、さっき俺が言葉を失ってたのは、その…葵があまりに可愛かったからさ…。」

「か、可愛くなんてないよぉ…。」

葵は、顔を真っ赤にして否定した。何となく気まずい沈黙が流れ、シメサクは慌てて言った。

「えっと、ベッド狭いけど、いいか?」

「…いいの?」

「勿論いいよ。俺もソファよりベッドで寝たいしさ。でも俺、イビキが煩いかも。」

「そんなの気にしないよ。」

葵は小さく笑って言った。

やっぱり、葵は笑顔が似合うなとシメサクは思った。

2人は、ひとつのベッドで並んで横になった。

葵は疲れていたようで、ベッドに入るとすぐに可愛らしい寝息を立てていた。

一方のシメサクは、緊張してなかなか寝られなかった。

一緒に寝る事を余裕ぶって承諾したものの、内心、心臓がバクバクだった。

葵と出会ってから、何かがおかしかった。

笑ったり怒ったり泣いたり、心がせわしなく翻弄されているのをシメサクは感じていた。

シメサクは隣で眠る葵の寝顔を盗み見て、その天使の様な寝顔にうっとりしてしまい、余計に眠れなくなってしまった。

結局、シメサクは朝方くらいにようやく眠りについた。

起きた時には、もう葵はおらず貸していた服が綺麗に畳まれていた。

「葵って、絶対A型だよな。」

なんて独り言を言いながら、寂しい気持ちを抱えつつ、シメサクも昼からのバイトの準備をした。

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