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「全てを忘れさせてくれる」(挿絵あり)
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「うん。顔、覚えていてくれたんだ。」
「はい、なんとなく。よく行くコンビニなので…。」
短く答えたカフェラテ少年は、再びまた俯いた。
「大丈夫?」
「大丈夫です。」
「もう終電ないけど、帰れるの?」
「いいえ…。」
明らかに大丈夫そうではない少年の様子を見たシメサクは少し考えてから「待ってて」と言い残し、足早にクジの所に行った。クジに1人で帰れそうかを確認したあと、シメサクはまた足早に少年の所に戻った。
「俺の家、すぐそこなんだけど、良かったら泊まっていきなよ。」
シメサクがそう提案すると、少年はとても驚いた顔をしてシメサクを見て言った。
「そんな…申し訳ないですよ…。」
「でも、何か事情を抱えていそうだし、困っているのに放っておけないからさ。」
少年は、しばらく悩んだ末に、「お願いします。」と答えた。
シメサクは少年を連れて家に向かって歩いた。
「自己紹介してなかったな。俺は七五三掛朔也。よろしく。」
道すがら、シメサクは自己紹介をした。
「しめかけ…変わった苗字ですね。」
「だろ?十中八九言われるよ、それ。」
そう言ってシメサクは笑った。
「僕は、葵です。」
葵は、フルネームを明かさずに答えた。
「葵くん、ね。了解。」
「あの、七五三掛さん。」
「シメサクでいいよ。苗字と名前を繋げて、みんなそう呼ぶからさ。」
「あ…うーん。サクさんって呼びます。」
シメサクって、なんか僕が苦手なシメサバみたい…と感じた葵は、下の名前で呼ぶことにした。
「はは、了解。で、何?」
「コンビニ寄ってもいいですか?カフェラテを買いたくて。あと、歯ブラシも。」
葵は近くのコンビニを指差して言った。
「勿論いいよ。本当にカフェラテ好きなんだな。」
「はい、カフェラテってすごく安心するんです。」
「安心?」
「はい。コーヒーとミルクって色も味も全然違うのに、そのふたつが混じり合うと凄く美味しくて、それがなんだか不思議だけど素敵で、好きなんです。夏の冷たいカフェラテも好きだけど、冬の日の温かいカフェラテも好きです。疲れた時、不安な時、もうダメだと思った時、温かく優しく包んでくれる。全てを忘れさせてくれる。」
後半は自分に話しかける様な口調になった葵は、ハッとした様子で「すいません。」と言った。
「いや、謝らなくていいよ。よっぽど好きなんだな、カフェラテ。」
シメサクにそう言われた葵は少し顔を赤らめながら小走りにコンビニに入り、ささっと買い物をして戻ってきた。
「お待たせしました。」
「はやっ。ちなみに、肉まんは買わなくていいの?」
「え、あ…えっと、いつも買ってる肉まんは安いし食べ歩きできるから買っているだけで、特別好きって訳じゃないんです。」
「あ、そうなんだね。肉まん旨いもんな。」
葵は、毎回カフェラテと肉まんを買っていることを把握されていた事が少し恥ずかしくなり、顔を赤らめた。
「ところでさ、葵くんはどうしてこんな時間まであんな所にいたの?」
その質問に、葵は俯く。
何となく言えない事情があるのかと察したシメサクが「あ、答えたくなかったら大丈夫だよ。」と言うと、「すいません…」とだけ、葵は小さく返した。
「はい、なんとなく。よく行くコンビニなので…。」
短く答えたカフェラテ少年は、再びまた俯いた。
「大丈夫?」
「大丈夫です。」
「もう終電ないけど、帰れるの?」
「いいえ…。」
明らかに大丈夫そうではない少年の様子を見たシメサクは少し考えてから「待ってて」と言い残し、足早にクジの所に行った。クジに1人で帰れそうかを確認したあと、シメサクはまた足早に少年の所に戻った。
「俺の家、すぐそこなんだけど、良かったら泊まっていきなよ。」
シメサクがそう提案すると、少年はとても驚いた顔をしてシメサクを見て言った。
「そんな…申し訳ないですよ…。」
「でも、何か事情を抱えていそうだし、困っているのに放っておけないからさ。」
少年は、しばらく悩んだ末に、「お願いします。」と答えた。
シメサクは少年を連れて家に向かって歩いた。
「自己紹介してなかったな。俺は七五三掛朔也。よろしく。」
道すがら、シメサクは自己紹介をした。
「しめかけ…変わった苗字ですね。」
「だろ?十中八九言われるよ、それ。」
そう言ってシメサクは笑った。
「僕は、葵です。」
葵は、フルネームを明かさずに答えた。
「葵くん、ね。了解。」
「あの、七五三掛さん。」
「シメサクでいいよ。苗字と名前を繋げて、みんなそう呼ぶからさ。」
「あ…うーん。サクさんって呼びます。」
シメサクって、なんか僕が苦手なシメサバみたい…と感じた葵は、下の名前で呼ぶことにした。
「はは、了解。で、何?」
「コンビニ寄ってもいいですか?カフェラテを買いたくて。あと、歯ブラシも。」
葵は近くのコンビニを指差して言った。
「勿論いいよ。本当にカフェラテ好きなんだな。」
「はい、カフェラテってすごく安心するんです。」
「安心?」
「はい。コーヒーとミルクって色も味も全然違うのに、そのふたつが混じり合うと凄く美味しくて、それがなんだか不思議だけど素敵で、好きなんです。夏の冷たいカフェラテも好きだけど、冬の日の温かいカフェラテも好きです。疲れた時、不安な時、もうダメだと思った時、温かく優しく包んでくれる。全てを忘れさせてくれる。」
後半は自分に話しかける様な口調になった葵は、ハッとした様子で「すいません。」と言った。
「いや、謝らなくていいよ。よっぽど好きなんだな、カフェラテ。」
シメサクにそう言われた葵は少し顔を赤らめながら小走りにコンビニに入り、ささっと買い物をして戻ってきた。
「お待たせしました。」
「はやっ。ちなみに、肉まんは買わなくていいの?」
「え、あ…えっと、いつも買ってる肉まんは安いし食べ歩きできるから買っているだけで、特別好きって訳じゃないんです。」
「あ、そうなんだね。肉まん旨いもんな。」
葵は、毎回カフェラテと肉まんを買っていることを把握されていた事が少し恥ずかしくなり、顔を赤らめた。
「ところでさ、葵くんはどうしてこんな時間まであんな所にいたの?」
その質問に、葵は俯く。
何となく言えない事情があるのかと察したシメサクが「あ、答えたくなかったら大丈夫だよ。」と言うと、「すいません…」とだけ、葵は小さく返した。
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