43 / 45
人は誰も…(END)
しおりを挟む
数日後。
春は、バー「マスカルポーネ」を訪れていた。
「やはり心変わりはしませんでしたか…。」
ブラウンが残念そうに言う。
「あぁ、わりぃ。ブラウンさん、今までありがとう。」
春は、感謝と申し訳なさが同居したような顔を向けた。
「仕方ありませんね。ナンバー1と3が抜けるのはなかなか痛いですが。」
「でも、グランギニョールは壊滅したし、でかい敵は今のところいねぇだろ?それに、華月さんがいるんだから平気だよ。」
春は、奥の席でタバコをふかす華月に目を向けて言った。
「まったく、美少年くん。私は平穏無事にのらりくらりとやっていたい派なんだけどなぁ。」
華月は、やれやれと言った表情を浮かべた。
「華月、頼みますよ。繰り上げであなたが組織のナンバー1になるんですから。」
「うげぇー、サイアク。私、6って数字が好きだったのに。」
そう言うと、3人で顔を見合わせて笑った。
その時、カランと扉が空いた。
「春、お待たせ。」
クレハが顔を覗かせた。
「元ナンバー1の登場ですね。」
「ブラウンさん、今まで世話になったな。」
「たまには遊びに来てくださいね。」
クレハとブラウンは握手を交わした。
そして、ブラウンは春に向き直って言った。
「羅夢という名前ともお別れですね。」
「あぁ、そうだな。」
「これからは、新しい名前で、新しい人生を。"これから "が"これまで"を変えると言いますからね。2人の新たな船出を応援しています。」
「ブラウンさん、それ誰の言葉?」
「まぁ、私ですかね。」
小さな店内にまた明るい笑い声が響いた。
春とクレハは店を後にし、並んで街を歩く。
「やっぱり名残惜しいもんだね。」
クレハが感慨深く呟いた。
「まぁな。」
「でもま、これからは春と2人で楽しくて自由な生活が待ってるって思うと、どうでもよくなってくるけどね。」
「クレハ、マジ薄情すぎ。」
そう言って2人は顔を見合せて笑う。
夏の日差しが雲の切れ間から地上に降り注ぐ。
その天使の梯子をぼんやり眺めていると、ふとブラウンの言葉を思い出して、春は小さく呟いた。
「…人は誰も孤島ではない、か。」
「ん?春、なんか言った?」
「なんでもねーよ。」
春はクレハに笑顔を向けた。
そして、クレハの手をそっと握った。
END
春は、バー「マスカルポーネ」を訪れていた。
「やはり心変わりはしませんでしたか…。」
ブラウンが残念そうに言う。
「あぁ、わりぃ。ブラウンさん、今までありがとう。」
春は、感謝と申し訳なさが同居したような顔を向けた。
「仕方ありませんね。ナンバー1と3が抜けるのはなかなか痛いですが。」
「でも、グランギニョールは壊滅したし、でかい敵は今のところいねぇだろ?それに、華月さんがいるんだから平気だよ。」
春は、奥の席でタバコをふかす華月に目を向けて言った。
「まったく、美少年くん。私は平穏無事にのらりくらりとやっていたい派なんだけどなぁ。」
華月は、やれやれと言った表情を浮かべた。
「華月、頼みますよ。繰り上げであなたが組織のナンバー1になるんですから。」
「うげぇー、サイアク。私、6って数字が好きだったのに。」
そう言うと、3人で顔を見合わせて笑った。
その時、カランと扉が空いた。
「春、お待たせ。」
クレハが顔を覗かせた。
「元ナンバー1の登場ですね。」
「ブラウンさん、今まで世話になったな。」
「たまには遊びに来てくださいね。」
クレハとブラウンは握手を交わした。
そして、ブラウンは春に向き直って言った。
「羅夢という名前ともお別れですね。」
「あぁ、そうだな。」
「これからは、新しい名前で、新しい人生を。"これから "が"これまで"を変えると言いますからね。2人の新たな船出を応援しています。」
「ブラウンさん、それ誰の言葉?」
「まぁ、私ですかね。」
小さな店内にまた明るい笑い声が響いた。
春とクレハは店を後にし、並んで街を歩く。
「やっぱり名残惜しいもんだね。」
クレハが感慨深く呟いた。
「まぁな。」
「でもま、これからは春と2人で楽しくて自由な生活が待ってるって思うと、どうでもよくなってくるけどね。」
「クレハ、マジ薄情すぎ。」
そう言って2人は顔を見合せて笑う。
夏の日差しが雲の切れ間から地上に降り注ぐ。
その天使の梯子をぼんやり眺めていると、ふとブラウンの言葉を思い出して、春は小さく呟いた。
「…人は誰も孤島ではない、か。」
「ん?春、なんか言った?」
「なんでもねーよ。」
春はクレハに笑顔を向けた。
そして、クレハの手をそっと握った。
END
0
お気に入りに追加
34
あなたにおすすめの小説
少年ペット契約
眠りん
BL
※少年売買契約のスピンオフ作品です。
↑上記作品を知らなくても読めます。
小山内文和は貧乏な家庭に育ち、教育上よろしくない環境にいながらも、幸せな生活を送っていた。
趣味は布団でゴロゴロする事。
ある日学校から帰ってくると、部屋はもぬけの殻、両親はいなくなっており、借金取りにやってきたヤクザの組員に人身売買で売られる事になってしまった。
文和を購入したのは堂島雪夜。四十二歳の優しい雰囲気のおじさんだ。
文和は雪夜の養子となり、学校に通ったり、本当の子供のように愛された。
文和同様人身売買で買われて、堂島の元で育ったアラサー家政婦の金井栞も、サバサバした性格だが、文和に親切だ。
三年程を堂島の家で、呑気に雪夜や栞とゴロゴロした生活を送っていたのだが、ある日雪夜が人身売買の罪で逮捕されてしまった。
文和はゴロゴロ生活を守る為、雪夜が出所するまでの間、ペットにしてくれる人を探す事にした。
※前作と違い、エロは最初の頃少しだけで、あとはほぼないです。
※前作がシリアスで暗かったので、今回は明るめでやってます。
アダルトショップでオナホになった俺
ミヒロ
BL
初めて同士の長年の交際をしていた彼氏と喧嘩別れした弘樹。
覚えてしまった快楽に負け、彼女へのプレゼントというていで、と自分を慰める為にアダルトショップに行ったものの。
バイブやローションの品定めしていた弘樹自身が客や後には店員にオナホになる話し。
※表紙イラスト as-AIart- 様(素敵なイラストありがとうございます!)
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
永遠の夏
はる
BL
中性的で可愛い少年、結城空は、父から性的なイタズラをされていた。高校生になると同時に、父から離れ、一人暮らしを始めるものの、心に孤独を抱えながら日々を過ごしている。そんなある日、空は、体育教師の山口陽佳と出会う。
■ピーナッツバターシリーズ過去編です■
※エロ有りには(☆)付けます。
※ピーナッツバター(https://www.alphapolis.co.jp/novel/79332834/121173825)の空とひよしさんの過去話です。ピーナッツバターはエロ短編集みたいな感じなので、こちらは単体で読めます。
※ストーリーはちょっと暗めですが、最終的にはハッピーエンドの予定
※中盤くらいまでモブ攻めが多いかも
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
獣人の里の仕置き小屋
真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。
獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。
今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。
仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる