春の明日になりたい

はる

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人は誰も…(END)

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数日後。

春は、バー「マスカルポーネ」を訪れていた。

「やはり心変わりはしませんでしたか…。」

ブラウンが残念そうに言う。

「あぁ、わりぃ。ブラウンさん、今までありがとう。」

春は、感謝と申し訳なさが同居したような顔を向けた。

「仕方ありませんね。ナンバー1と3が抜けるのはなかなか痛いですが。」

「でも、グランギニョールは壊滅したし、でかい敵は今のところいねぇだろ?それに、華月さんがいるんだから平気だよ。」

春は、奥の席でタバコをふかす華月に目を向けて言った。

「まったく、美少年くん。私は平穏無事にのらりくらりとやっていたい派なんだけどなぁ。」

華月は、やれやれと言った表情を浮かべた。

「華月、頼みますよ。繰り上げであなたが組織のナンバー1になるんですから。」

「うげぇー、サイアク。私、6って数字が好きだったのに。」

そう言うと、3人で顔を見合わせて笑った。

その時、カランと扉が空いた。

「春、お待たせ。」

クレハが顔を覗かせた。

「元ナンバー1の登場ですね。」

「ブラウンさん、今まで世話になったな。」

「たまには遊びに来てくださいね。」

クレハとブラウンは握手を交わした。

そして、ブラウンは春に向き直って言った。

「羅夢という名前ともお別れですね。」

「あぁ、そうだな。」

「これからは、新しい名前で、新しい人生を。"これから "が"これまで"を変えると言いますからね。2人の新たな船出を応援しています。」

「ブラウンさん、それ誰の言葉?」

「まぁ、私ですかね。」

小さな店内にまた明るい笑い声が響いた。


春とクレハは店を後にし、並んで街を歩く。

「やっぱり名残惜しいもんだね。」

クレハが感慨深く呟いた。

「まぁな。」

「でもま、これからは春と2人で楽しくて自由な生活が待ってるって思うと、どうでもよくなってくるけどね。」

「クレハ、マジ薄情すぎ。」

そう言って2人は顔を見合せて笑う。

夏の日差しが雲の切れ間から地上に降り注ぐ。

その天使の梯子をぼんやり眺めていると、ふとブラウンの言葉を思い出して、春は小さく呟いた。

「…人は誰も孤島ではない、か。」

「ん?春、なんか言った?」

「なんでもねーよ。」

春はクレハに笑顔を向けた。

そして、クレハの手をそっと握った。



END
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