春の明日になりたい

はる

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頬杖

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その時、カランと音がして一人の女性が店内に入ってきた。

サングラスをかけたスタイルの良い女性だ。

「なんだ、珍しく客がいたの。」

女性は慣れた様子で席に着くと、細いタバコを取り出しながら言った。

「華月こそ、こんな時間にいらっしゃるなんて珍しいですね。」

ブラウンも慣れた様子でマッカランのロックを差し出す。

「夜職前に少し時間があったからね。ていうか、よく見たら子供じゃない。いつからこのバーは未成年が出入りするようになったのよ。」

女性はハルの方を見て言った。

「彼は、華月よりも前からここに来ていますよ。当然お酒は出していませんがね。」とブラウンは答える。

ハルと女性は、怪訝そうにお互いを見合った。

「あぁ、すみません。同じ組織の1桁ナンバーとはいえ2人は初対面ですよね。」とブラウンは今気付いたように言った。

「え!組織のメンバー?しかも1桁!?この子が?」

驚きの声を上げたのは女性の方だった。

「そうです。最年少ですから驚くのも無理はありません。彼は、ナンバー3のハ…ではなく羅夢(らむ)です。」

コードネーム名で紹介されたハルは、とりあえずペコリと小さく会釈をした。

「ナンバー3…名前は聞いたことあったけど、こんな子供だとは…。あー今年イチの衝撃だ。私のコードネームは華月。ナンバーは6よ。」

「1桁の人と会ったの初めてだ…」とハルが言った。

「私も組織の人間にはあんまり会わないな。ナンバー9とは飲み仲間だけど。」

「基本的に組織内での交流はあまりありませんからね。司令もPCのメールで行います。わざわざここで司令を伝達するのはあなた達くらいですよ。」

「だってPC持ってねーもん」とハルが言った。

「同じく」と華月も言った。

「それくらい買ってください。リモートで伝達出来ないのはあなた達2人だけですよ。やれやれ、1桁ナンバーが2人も揃って…」

「PCとか使い方わかんねーし。スマホじゃダメなの?」とハルが聞いた。

「セキュリティ的にNGです。無くしたらどうするんですか。」

「まぁでも私らが来るからここも儲かるし、こうやって出逢えたんだからいいじゃん。ねぇ?羅夢君。」と華月がハルに笑顔を向けた。

ハルはぎこちなく小さく頷いた。

初めて会う1桁代の仲間に少し緊張していた。

「それもそうですね。2人とも気が合いそうだとずっと思っていたんですよ。ところで羅夢、さっきからずっと頬杖を付いていますね。」

「あ、わり。失礼だった?」

「いえ、そういう意味ではありません。羅夢がいつも頬杖を付いている時は恋の悩みを抱えている時なので、気になっただけですよ。」
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