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胸の音が君に聞こえていませんように。
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夏休みになった。
よく晴れた真夏日。
たーくんと一緒に近くのショッピングモールに行く事になった。
ピアノのコンクール用のネクタイを買いたいけど自分じゃ選べないって言っていて、「じゃあ俺がイケてるやつ選んでやるよ!」って約束していたんだ。
13時にショッピングモールで待ち合わせ。
先に来ていたたーくんを見つけて「よ!おはよ~」と声をかける。
「レイちゃん、おはよう。」と、たーくんが軽く手を振る。
待ち合わせをする時、いつもたーくんは10分前には到着している。
このキッチリしてるところがたーくんらしい。
「レイちゃん、なんで笑ってるの?俺の顔おかしい?」
「あ、いや、違うよ。わりぃ。今日も10分前に来たの?」
「そうだよ。10分前行動は基本だからね。」
「はは。たーくんって本当キッチリしてるよな。俺いっつもギリギリでごめん。」
「ごめんって言いながら、レイちゃん直す気ないでしょ?」
鋭いツッコミに俺はまた笑う。
「ははは……たーくん?どした?」
じーっと俺の顔見てるから、不思議になって聞いた。
「あ、ごめん。俺やっぱりレイちゃんの笑った顔好きだなぁって思って。笑うと出来るエクボや覗かせる犬歯が凄く可愛い。」
「なっ…!え、何?やめろよ、たーくん。恥ずかしい…よ…」
たーくんが真顔でそんな事を言うから急に恥ずかしくなってしまった。
そういや、休日に2人で遊ぶ事なんていっぱいあったけど、告られてからは初めてだ。
やばい、なんか変に意識しちゃう。
俺は、それを気取られないようにキャップのツバを指で掴んで目深に被った。
紳士服店に入り、ネクタイ選びを始めた。
「レイちゃん、これどうかな?」
たーくんが俺に見せてきたのは、紺色一色のネクタイだった。
「あー…うーん、ちょっと地味じゃね?たーくんらしいチョイスだけど、せっかくの晴れ舞台なんだし、もう少し明るめの方がいいんじゃねーかな。」
「晴れ舞台なんて大袈裟だよ…」
「いやいや晴れ舞台だよ。大きなコンクールなんだろ?あ、これは?」
俺は水玉模様のネクタイを選んだ。
「こ、これ…可愛い過ぎないかな?レイちゃんらしいチョイスだけど。」
「え、そーかな?ちょっと当ててみていい?」
俺はたーくんの背中を押して鏡の前に移動させ、たーくんの横からネクタイを首元に当ててみた。
「どう?」
「うーん…せっかく選んでくれたけど、やっぱり俺には少し派手かなぁ…」
「うーん、そうかなぁ。」
「こういう可愛いのはレイちゃんの方が似合うよ。ちょっと貸して。」
そう言ってネクタイを手に持ったたーくんは、俺の背後に回った。
「たーくん…?…わっ」
たーくんが俺の背後から手を回してネクタイを首元に当ててくれた。
「あ、ほら。鏡見て。レイちゃんやっぱり似合う。可愛い。」
俺より8センチ高いたーくんの優しい声が後ろから聞こえる。息遣いを感じる。
頬が火照るのを感じて、鏡なんて見れやしない。
「か、可愛くねーし…」
そう言った俺の声は少し震えた。
どうか、胸の音がたーくんに聞こえていませんように。
よく晴れた真夏日。
たーくんと一緒に近くのショッピングモールに行く事になった。
ピアノのコンクール用のネクタイを買いたいけど自分じゃ選べないって言っていて、「じゃあ俺がイケてるやつ選んでやるよ!」って約束していたんだ。
13時にショッピングモールで待ち合わせ。
先に来ていたたーくんを見つけて「よ!おはよ~」と声をかける。
「レイちゃん、おはよう。」と、たーくんが軽く手を振る。
待ち合わせをする時、いつもたーくんは10分前には到着している。
このキッチリしてるところがたーくんらしい。
「レイちゃん、なんで笑ってるの?俺の顔おかしい?」
「あ、いや、違うよ。わりぃ。今日も10分前に来たの?」
「そうだよ。10分前行動は基本だからね。」
「はは。たーくんって本当キッチリしてるよな。俺いっつもギリギリでごめん。」
「ごめんって言いながら、レイちゃん直す気ないでしょ?」
鋭いツッコミに俺はまた笑う。
「ははは……たーくん?どした?」
じーっと俺の顔見てるから、不思議になって聞いた。
「あ、ごめん。俺やっぱりレイちゃんの笑った顔好きだなぁって思って。笑うと出来るエクボや覗かせる犬歯が凄く可愛い。」
「なっ…!え、何?やめろよ、たーくん。恥ずかしい…よ…」
たーくんが真顔でそんな事を言うから急に恥ずかしくなってしまった。
そういや、休日に2人で遊ぶ事なんていっぱいあったけど、告られてからは初めてだ。
やばい、なんか変に意識しちゃう。
俺は、それを気取られないようにキャップのツバを指で掴んで目深に被った。
紳士服店に入り、ネクタイ選びを始めた。
「レイちゃん、これどうかな?」
たーくんが俺に見せてきたのは、紺色一色のネクタイだった。
「あー…うーん、ちょっと地味じゃね?たーくんらしいチョイスだけど、せっかくの晴れ舞台なんだし、もう少し明るめの方がいいんじゃねーかな。」
「晴れ舞台なんて大袈裟だよ…」
「いやいや晴れ舞台だよ。大きなコンクールなんだろ?あ、これは?」
俺は水玉模様のネクタイを選んだ。
「こ、これ…可愛い過ぎないかな?レイちゃんらしいチョイスだけど。」
「え、そーかな?ちょっと当ててみていい?」
俺はたーくんの背中を押して鏡の前に移動させ、たーくんの横からネクタイを首元に当ててみた。
「どう?」
「うーん…せっかく選んでくれたけど、やっぱり俺には少し派手かなぁ…」
「うーん、そうかなぁ。」
「こういう可愛いのはレイちゃんの方が似合うよ。ちょっと貸して。」
そう言ってネクタイを手に持ったたーくんは、俺の背後に回った。
「たーくん…?…わっ」
たーくんが俺の背後から手を回してネクタイを首元に当ててくれた。
「あ、ほら。鏡見て。レイちゃんやっぱり似合う。可愛い。」
俺より8センチ高いたーくんの優しい声が後ろから聞こえる。息遣いを感じる。
頬が火照るのを感じて、鏡なんて見れやしない。
「か、可愛くねーし…」
そう言った俺の声は少し震えた。
どうか、胸の音がたーくんに聞こえていませんように。
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