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君の"大丈夫"は大丈夫じゃない。
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彼等に走って近寄ると、レイちゃんの体に伸ばそうとしているクラスメイトの手首を掴んだ。
「…いって!びっくりした、なんだよ匠!怖い顔して!」
「レイちゃんが嫌がっているから、やめてあげて欲しい。」
俺はレイちゃんとクラスメイト達の間に立って、言った。
「…たーくん…」
レイちゃんの小さな声が背後から聞こえた。
「んな怖い顔すんなよ…ちょっとふざけただけだからさ。」
クラスメイト達はまぁまぁというような感じで言った。
俺はそんなに怖い形相をしていたのか、自分じゃわからなかった。
「ちょっとふざけただけのつもりでも、相手が嫌がっている事はすべきじゃない。」
真剣な気持ちで先生のような物言いをした。
「てか、匠ってさ。なんかいつも玲愛の事を庇うよな?ちょっと玲愛の事イジっただけでも『レイちゃんの事そんなふうに言うな』ってちょっとキレるしさ。」
「別にキレた事なんか一度もない。」
「今だってキレてんじゃん。」
俺とクラスメイトの一人が険悪なムードになり、クラス全員が俺達に注目し始めた。
「キレてない。指摘しただけだ。」
「いーや違う。お前、玲愛の事になるとムキになるよ。もしかして玲愛の事好きなんじゃね?」
一瞬、空気が凍るのを感じた。
レイちゃんが俺の後ろでどんな顔をしていたか分からない。
「好きだろうが嫌いだろうがそれは本人だけが知っていればいい事であって何故第三者の君に言わないといけない?」
俺はまくし立てるように言った。
少し声も大きくなった。
言い合いなんて普段しないからか、それとも怒りのせいなのか、声が震えた。
「たーくん、俺平気だから。みんなもちょっとふざけただけだよ。な?」
既に体操着を着たレイちゃんが後ろからみんなをなだめる発言をした。
「俺らもちょっとふざけすぎたよ。玲愛、ごめんな?」
「匠は生徒会長だもん。風紀を乱しかけた俺らを叱ってくれたんだよ。」
レイちゃんが空気を和らげてくれたお陰で、他のクラスメイトもなだめてくれて、なんとかその場は収まった。
「つーかそろそろ行かねーと体育始まるぞ!」
別のクラスメイトが遠くから呼びかけ、皆「やべやべ」と言いながら、そそくさと教室を出た。
「…たーくん」
後ろから、またレイちゃんの小さな声が聞こえて、俺は思わず振り向いた。
「レイちゃん、大丈夫?」
「うん、大丈夫!たーくん、ごめんな。ありがとう。」
レイちゃんはそう言って俺に笑いかける。
すぐに分かった。
また無理して笑っている。
さっきの悪ふざけ、本当は嫌だったに違いない。
レイちゃんの「大丈夫」はいつも大丈夫じゃないんだ。
どんなに悩んでいても、どんなに悲しくても、それを悟られたくなくて、とりあえず笑ってみた。
そんな顔をするんだよレイちゃんは。自分で気づいてないでしょ。
俺は、レイちゃんの笑顔が好きなのに。
レイちゃんが心から笑えるようにしてあげるって、小6のあの日誓ったのに。
それなのに…俺がレイちゃんを悩ませてしまっている。
レイちゃんは、立ち竦む俺の肩を軽く叩いて「遅れたら怒られるよ」と言って小走りで校庭へ向かった。
俺も後を追うように、拳を握ったままゆっくりと歩を進めた。
「…いって!びっくりした、なんだよ匠!怖い顔して!」
「レイちゃんが嫌がっているから、やめてあげて欲しい。」
俺はレイちゃんとクラスメイト達の間に立って、言った。
「…たーくん…」
レイちゃんの小さな声が背後から聞こえた。
「んな怖い顔すんなよ…ちょっとふざけただけだからさ。」
クラスメイト達はまぁまぁというような感じで言った。
俺はそんなに怖い形相をしていたのか、自分じゃわからなかった。
「ちょっとふざけただけのつもりでも、相手が嫌がっている事はすべきじゃない。」
真剣な気持ちで先生のような物言いをした。
「てか、匠ってさ。なんかいつも玲愛の事を庇うよな?ちょっと玲愛の事イジっただけでも『レイちゃんの事そんなふうに言うな』ってちょっとキレるしさ。」
「別にキレた事なんか一度もない。」
「今だってキレてんじゃん。」
俺とクラスメイトの一人が険悪なムードになり、クラス全員が俺達に注目し始めた。
「キレてない。指摘しただけだ。」
「いーや違う。お前、玲愛の事になるとムキになるよ。もしかして玲愛の事好きなんじゃね?」
一瞬、空気が凍るのを感じた。
レイちゃんが俺の後ろでどんな顔をしていたか分からない。
「好きだろうが嫌いだろうがそれは本人だけが知っていればいい事であって何故第三者の君に言わないといけない?」
俺はまくし立てるように言った。
少し声も大きくなった。
言い合いなんて普段しないからか、それとも怒りのせいなのか、声が震えた。
「たーくん、俺平気だから。みんなもちょっとふざけただけだよ。な?」
既に体操着を着たレイちゃんが後ろからみんなをなだめる発言をした。
「俺らもちょっとふざけすぎたよ。玲愛、ごめんな?」
「匠は生徒会長だもん。風紀を乱しかけた俺らを叱ってくれたんだよ。」
レイちゃんが空気を和らげてくれたお陰で、他のクラスメイトもなだめてくれて、なんとかその場は収まった。
「つーかそろそろ行かねーと体育始まるぞ!」
別のクラスメイトが遠くから呼びかけ、皆「やべやべ」と言いながら、そそくさと教室を出た。
「…たーくん」
後ろから、またレイちゃんの小さな声が聞こえて、俺は思わず振り向いた。
「レイちゃん、大丈夫?」
「うん、大丈夫!たーくん、ごめんな。ありがとう。」
レイちゃんはそう言って俺に笑いかける。
すぐに分かった。
また無理して笑っている。
さっきの悪ふざけ、本当は嫌だったに違いない。
レイちゃんの「大丈夫」はいつも大丈夫じゃないんだ。
どんなに悩んでいても、どんなに悲しくても、それを悟られたくなくて、とりあえず笑ってみた。
そんな顔をするんだよレイちゃんは。自分で気づいてないでしょ。
俺は、レイちゃんの笑顔が好きなのに。
レイちゃんが心から笑えるようにしてあげるって、小6のあの日誓ったのに。
それなのに…俺がレイちゃんを悩ませてしまっている。
レイちゃんは、立ち竦む俺の肩を軽く叩いて「遅れたら怒られるよ」と言って小走りで校庭へ向かった。
俺も後を追うように、拳を握ったままゆっくりと歩を進めた。
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