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溢れ止まらない寂寥感

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高2の終わり頃、レイちゃんに彼氏が出来た。

レイちゃんが電車で痴漢に遭ったところを助けてもらったのがきっかけだったという。

レイちゃんに彼氏が出来てしまった現実を受け止めきれず、発狂しそうになった。

また、どこの馬の骨かも分からない痴漢男への激昂も相まって、俺は発熱し、3日間学校を休んだ。

わざわざお見舞いに来てくれたレイちゃんの顔を見るとまた泣きそうな気持ちになった。

やがて熱が下がってから、頭も少し冷静さを取り戻した。

そして、ひとつの結論に至った。

俺はレイちゃんの幸せを願っている。

だから、素直に応援しようと心に決めた。

そう心に決めたはずなのに、恋人との話を聞く度に嫉妬でおかしくなりそうだった。

俺はずっとレイちゃんを見てきたから、少しずつ変わっていくレイちゃんがわかる。

恋をしているんだということが伝わってくる。

そんなレイちゃんを見るのが苦しくて、自分以外の誰かにレイちゃんが変えられていくのが切なかった。

レイちゃんの瞳の先には自分以外の人がいる。

わかっていても諦めるなんて出来なかった。

好きになったらもう、その人でないとダメだった。

俺は、例えようのない寂寥感に襲われた。

その人は、俺の知らないレイちゃんの表情も知っていて、レイちゃんとキスもして、レイちゃんの白い肌にも触れて、えっちな事だってしているのだろう。

切なさ、悔しさ、情欲・・・様々な気持ちが渦巻いて、思春期まっさかりの自分は密かにレイちゃんのそういう姿を想像して自慰に浸るようになり、そんな自分を嫌悪感が襲うが、それでも止められず、俺は悪循環の海で溺れかけていた。

負の感情でグチャグチャにな自分を奮い立たせる為に、勉強やピアノに今まで以上に没頭するようになった。

成績が爆上がりし、テストで学年一位を取るようにり、周りから優等生キャラに仕立てあげられるようになったのはこの頃からだったと思う。

レイちゃんに彼氏が出来てしばらくしてから判明したが、その人はあまり良い性格の人ではないようで、レイちゃんを悲しませるような事ばかりしていた。

それを聞くと今度は怒りが俺の中に渦巻いた。

あんなに優しいレイちゃんを悲しませるなんて許せなかった。

何度も別れた方がいいと伝えたけど、レイちゃんは優しいから「次は大丈夫だと思う」と毎回彼を許していた。

俺はレイちゃんを好きだけど、自分に自信がないし、レイちゃんにはふさわしくないと思っていた。

でも、少なくともその人よりはレイちゃんに優しく出来ると思うようになってきた。

それに、もう限界だった。

今にも暴れ出しそうなこの感情を抑えていられなかった。

これ以上、我慢したら死んでしまうと思った。

そして、今まで溜めに溜め込んでいた気持ちが一気に爆発したのが昨日だったのだ。

最低だ。

結局自分もレイちゃんを悲しませてしまった。

あんな顔をさせるつもりじゃなかったのに。

泣かないように努力しているレイちゃんを涙目にさせてしまった。

後悔が川のように次から次へと流れてくる。

やっぱり俺はレイちゃんにふさわしくない。

こんな俺なんかをレイちゃんが好きになってくれる訳がない。

でも、せめて今まで通り"幼馴染み"の関係ではいたかった。

レイちゃんの事だから、次の日気まずくて朝早く家を出るだろうと推測して、いつもの1時間前から家の前で待った。

案の定、いつもの待ち合わせ時間より早く出てきたレイちゃんに謝罪をして、告白の件を忘れてほしい事、今まで通りの関係でいたい事を伝えた。

レイちゃんは優しいから頷いてくれた。

本当は生徒会の仕事なんてなかったけど、俺は先に学校に行った。

レイちゃんが頭を整理する時間が必要だと思ったし、

泣いている自分を見せたくなかったから。
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