ピーナッツバター

はる

文字の大きさ
475 / 601

(日常小話)イルミネーション③

しおりを挟む
僕らはお互いにお互いのマフラーを付け合った。

「ひよしさん、そっち行っていい?」

「いいけど、ゆっくり来いよ」

僕は、ひよしさんの隣にちょこんと座った。

少し恥ずかしかったけど、いつもより密着してみた。

そしたら、ひよしさんが僕の肩を抱き寄せてくれた。

「マフラー、温かいか?」

「うん。もこもこしてて気持ちいいよ。」

「そりゃよかった。俺もだよ、空」

ひよしさんが笑顔を作って言ってくれたけど…

「ぷっ…、ひよしさん、笑顔ひきつってるよ」

「うるせーな。お前、観覧車降りたら覚えてろよ」

「あ、ひよしさん。頂上だよ。見て!イルミネーションすごく綺麗!」

星屑のようにキラキラと輝く夜の街。

はしゃぐ僕とは裏腹に、ひよしさんは固まったまま絶対に下を見ようとしない。

「わり、見れねーわ」

「えー、せっかく観覧車乗ったのに…んぅっ」

僕が唇を尖らせて文句を言おうとすると、その唇をいきなり塞がれた。

「俺は、空だけ見えてりゃいいよ」

ひよしさんは、唇を離すと、そう言った。

そうやってカッコつけて、本当は下見るのが怖いだけでしょ?

って思ったけど、言えなかった。

不覚にもキュンとしちゃって、胸が高鳴って、どうしようもなくて…

僕は無言でひよしさんの胸に顔を埋めた。

多分真っ赤になっているであろう自分の顔を見られたくなかった。


僕にとっての「好き」は「憧れ」に近いと思う。

人ゴミが嫌いなのに、一緒にイルミネーション見に来てくれたり。

高いところ苦手なのに、観覧車乗ってくれたり。

いつも意地悪だけど、こっそりプレゼントを買ってくれたり。

口は悪いのに、実はすっごく優しかったり。


ひよしさんは、僕に持っていないものをたくさん持っている。

僕は、ひよしさんみたいになりたかったのかもしれない。

僕にないものを持っているひよしさんに憧れて。

そんなひよしさんにいつもキュンキュンさせられて。

イルミネーションに輝く街の上空で、

2人だけの空間で、

僕は思った。

これからもずっと、ひよしさんと一緒にいたいって。



END
しおりを挟む
感想 37

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

熱のせい

yoyo
BL
体調不良で漏らしてしまう、サラリーマンカップルの話です。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

カテーテルの使い方

真城詩
BL
短編読みきりです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

少年探偵は恥部を徹底的に調べあげられる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...