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(日常小話)些細な喧嘩②

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「ひよしさんの口悪いとこ嫌い!」

普段、声を荒げたりしない温和な僕もこの時ばかりはちょっと大きな声を出した。

ひよしさんはちょっと驚いたみたいだったけど、その後、真顔でこう言った。

「へー、そっか、わかった。よーくわかったよ。空は俺のこと嫌いなんだな」

ひねくれた返事をされ、頭にきた。

「別にひよしさんのこと嫌いだなんて言ってないじゃん…!口悪いとこが嫌って…言っただけ…っ!」

頭にきたけど、それ以上に"俺のこと嫌いなんだな"って言われたのがだんだん悲しくなってきて、最後の方は声が震えてしまった。

言い終わったらなんか涙が滲み始めるのがわかった。

もう、泣くつもりなんてないのに。

なんで僕ってこんなに涙腺が緩いんだろう。

「空…」

「ひよしさんのこと…っ、嫌いなんて…言ってない…、言ってないのに…っ!ぅ、ぐすっ…」

思ってる事を口に出した途端、目に溜まってた涙が溢れてしまった。

自分の意志とは関係なく流れる涙に苛立ちを覚えるけど、涙はとめどなく流れて、僕はもう喋れなくなって両手で涙を拭った。

するとひよしさんが立ち上がって僕をぎゅっと抱きしめた。

「…ひよしさん…」

「空、ごめん。怒鳴ったりしてごめんな」

ぎゅーっと強く抱きしめられ、僕は顔をひよしさんの胸に埋める。

「空、俺って口悪いかな…?」

伺うようにひよしさんが聞いた。

「ぐすっ…、うん、口悪い…」

僕は正直に言った。本当のことだもん。

「わり、直すようにするよ。洗濯物もちゃんと分けるようにする」

反省したのかすごいちっちゃな声でひよしさんが言った。

珍しく反省しているひよしさんがなんか可愛くて、胸の中でクスッと笑ってしまう。

「ぅん、僕もちゃんとテレビとか消すようにする」

「あぁ、お互い気をつけような」

ひよしさんが僕の頭を撫でる。

僕らの喧嘩は些細なことから始まって、いつもこうやって仲直りする。

言い合いをして、僕が泣いて、ひよしさんが謝る。

抱きしめられて

頭を撫でてもらって

喧嘩したあとは、不思議だけど少しだけ前よりも好きになってる気がする。

涙は止まったけど、僕はもう少しひよしさんの腕の中に居させてもらうことにした。




END
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