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ひよしさんの誕生日③

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「ひよしさん、来て」

空が俺の手を引いてリビングまで連れてきた。

「ここに座ってて。動かないでね。」

そう言い残すと、空は自分の部屋に消えていった。

なんだ、俺を喜ばす為に、色々計画立ててたのか?

なんか嬉しいような、むず痒いような、息子から誕生日を祝われる父親のような、よくわかんない感情でニヤけが止まらなかった。

すると急に電気が暗くなる。

と同時に空がスピーカーとケーキを持って入ってきた。

スピーカーからは、スティービー・ワンダーのバースデーソングが流れてきた。

ケーキには「33」の数字型のロウソクが立てられている。

空はケーキを俺の前に置いた。

え、吹いていいの?

と思っていたら、急に空が曲に合わせてキレよく踊り出した。

そういやこいつダンスやってたんだった。

久々に見るわ。

空のダンス。

つーか、ここアメリカ?

祝い方が米国感ありありなんだが…

空はサビだけ手短にダンスを披露すると、言った。

「ひよしさん!改めて、33歳の誕生日、おめでとう!」

普段めったに声を張らない空が、そこそこ大きな声で言ってくれた。

一生懸命、手を叩きながら。

「空!ありがとう!」

俺もでけー声で言った。

なんか泣けるわ。

なにに泣けるって、恥ずかしがり屋の空の頑張ってる姿にだ。

なんつーか、すげー嬉しい。

「ローソク消していいか?」

「あ、待って、ムービー撮るから」

空がスマホを構え、俺がローソクの火を一気に吹き消した。

「ひよしさん、さすがの肺活量です」

空はスマホに声を吹き込むように言った。

「いや、そのコメント動画に残さなくていいだろ」

と言った俺の顔をズームにしてムービーのスイッチをオフにした。

なんか俺の顔をオチに使われたような。

ちょっとニヤついてやがるし。

若干イジってね?俺の事。
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