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眼球

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  透は眼球とやらを見つけたようだった。透はそれを見つけると直ぐにビニール袋に詰め込んだ。そのため、それが一体どんな容貌を呈しているのかは、分からなかった。それでも、なんとなくだが、赤い様な小さい玉が見えた気がした。とりあえず竹藪から出ることにした。
  池の周りには、誰も居なかった。やましい事をしている訳ではないのだが、もし、その眼球とやらが、アニメにでも出てくる様な、瞳孔が、かっと開いて、充血している様な、恐ろしく、リアリティ溢れる眼球であったらと、想像していまい、なんだが、人目を気にしてしまった。しかし、私はそれが、どんな物なのか、気になって仕様がなかった。
  透は、その眼球とやらを素手で触れたくないのか、ビニール袋から丁寧にそれを、雑草が繁茂する地面に転がす様に、置いた。
  紅玉の玉が転がった。それは予想に反して、赤い色をしていた。黒光りする赤色で、なんだが心が奪われてしまう様な綺麗な色だった。そんな事より、一つ必然的な疑問が浮かんできた。
  「これ、赤いけど。どこが、眼球なんだ?」
  「ほら、ここを覗いてみたまえ、君よ。」
  透は、自分の中で流行っている、上流貴族風の喋りで、眼球の赤の部分が少し剥げた所を指差して言った。そこは、本当にその一部分だけ、といっても豆粒程度のものだったが、爪で引っ掻いた様に、赤が剥げて、そこだけ透明になっていた。私も、素手では触れないで、腰を屈めて、その地面の上に存在する赤い玉の、透明の部分を覗いてみた。するとそこには赤い玉の中身が広がっていた。その中の形状は、真ん中に白い核みたいな物があり、その周りを透明の部分が覆っていた。これだけだった。万が一、本物の眼球の可能性もあったので、覗いた瞬間、瞳がパッチリ開いて、こちらと目があってしまうのでは、と安っぽい想像を膨らませていたのだが、うん・・・、これじゃあ、眼球などではなくて、ビリヤードのボールじゃないか!
  「これが、眼球だって!どこが?」 
  「その中身が、物語ってるじゃないか。眼球というのは、活動を停止すると、白く白濁していくんだよ。でも、その周りのコーティングされている赤色は何なのか分からないが」
  「白は、良いとしてだ、赤は謎のままだろ。結局、結論は出せないじゃないか」 
  「では、君の意見を聞かせてくれ。これを眼球と思うか、思わないか」 
  「思わない」
  あまりに馬鹿げているので、即答してやった。すると、さらに馬鹿げた問いが、飛んできた。 
  「じゃあ、お前にそれ、やるよ」 
  私は、最初は迷惑気に断ろうと努めていたが、結局、その眼球とおぼしき物を持ち帰る事になった。何故、断わり切れなかったかというと、透と私との間に上下関係があり、断り切れなかったという事ではない。では、何故かというと、私は、その眼球とおぼしき物が欲しくて堪らなかったからだ。実は、透が、眼球の話を持ち出した瞬間から、抑え切れない興奮を抑えに、抑え、様子を伺っていたのだ。私は、素手で触れたくない、など、毛頭感じていなかった、寧ろ、あの地面に置かれて、泥まみれになった紅玉に、舌を這いずり回してやりたい思いだった。それが、以前に、人の眼球として、在るべき場所に収まり、正常に眼球としての機能を果たしていたのだ、と想像すると、尚更、それを飴玉の様に舐め回してみたくて堪らなかった。その、紅玉を舐め回す事を想像するだけで、私は、激しく勃起していた。
  
 
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