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兵糧合戦
行きも怖いが帰りも怖い
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平山城では憔悴しきった三田村庄右衛門が六左衛門を迎えた。
六左衛門は驚いて駆け寄った。
「遅くなったで、まことに相済まぬ。痩せてしもうたのう」
三田村は心底安堵した顔で、六左衛門のねぎらいに応じた。
「遅い、遅いで。いやしかし、よう兵糧を入れてくれた。よう入れてくれた」
「そりゃ、わしでなくて、立花衆の手柄だで。見事な戦法で、しかも滅法強いもんだで、わしゃ感極まった」
「ところで、その立花左近殿はどちらに」と三田村がきょろきょろと辺りを見回す。
統虎は一同を城内の広場に野営させ、交替しながら徹宵で平山城を守ることとした。その前にこの城を出て、どう帰るか考えなければならない。とりあえず、城を出る時間をあいまいにするために、兵糧運搬の人夫に嘘の情報を言い含めた。しかし、いつ出て行っても籠城勢はそれなりの構えをしてくるだろう。
統虎は考えていた。
うまく避ける方法はないようだ。
物見からは今のところ取り囲んでいた有働兼元率いる者らの姿は認められない。当面必要な兵糧が入ったのだから、取り囲んでも飢えて投降することはなくなった。その間に今度こそ、佐々本隊や筑後・筑前の領主による軍勢が押し寄せる。皆三里ほど離れた南関に集結しているのだ。
しかし、これで隈部勢が引き下がるとは思えない。本当に怖いのは、帰り道だ。
統虎は人を周りに寄せず、ただ考えていた。
「今、お話申し上げてもよろしいか? 」と水野六左衛門が寄ってきた。
「あぁ、わしの考えをまとめとる。まとまればまた家臣ば呼んで評定ばい。でもよかよ」
「それは恐縮至極、本来ならば明日、拙者ここで失礼するのが筋ですが、帰途があまりにも危険なため、南関まではご助力させていただきたく」
統虎はこの申し出を喜んで受ける。
「それは願ってもない。南関から貴殿が戻るのが難儀やろうが……今日は貴殿も天野も第三隊は見事な戦いっぷりやったとね。十時もあれは口だけじゃなかち言いよったけんね」
思いのほか気さくなもの言い、素直な賞賛の言葉に六左衛門は少々面食らった。
「立花様は、お歳は? 」
「数えで二十二たい」
「あぁ、わしより三つも若いのかいや。それでその貫禄は、やはり見事なもの」と六左衛門は感嘆する。
「貫禄? そげんもんなかよ。先代からの家臣がよく働いてくれとったい」
「わしにはその、家中をしっかり束ねる器量がなかったで、今こんな有様なのかもしれんのう」と六左衛門は反省の弁を述べてみる。
「うーむ、ひとつ人間の器が大きくなる秘訣があるとよ」と突然統虎が手を打つ。
「それはいったい」と六左衛門。
「気の強きこと嵐のごとく、この刀以上に切れ者で、夫になぞ間違っても従わん、しかしおいどの愛らしいおなごば嫁にするったいね」
「あぁ、それは鍛えられるで」と六左衛門は笑った。
そこに小野和泉が顔を見せた。
「お屋形様、そろそろ明日の段取りば決めましょう」
「あぁ、邪魔したで。明日も難儀な道行きになりそうだもんで、気張らんといかん。だで、そろそろ失礼申す」と六左衛門は去っていった。
小野は去っていく六左衛門の背中を眺めて言う。
「水野殿は槍を持たせれば無敵ばい。よか客分ば来てくれたとです」
「うむ、それに……よそもんと話しとると気が楽やけん」
小野和泉は統虎の心中を察して、目を伏せた。
「敵は敵、油断しよったらやられます」
統虎はふと空を見上げて、満ちるまでにまだ少しかかりそうな白い月を見た。
「あぁ、分かっちゅう。帰りは難儀たいね」
翌朝、兵糧運搬を手伝ってもらうために雇われた人夫たちは城から出された。武器など何も持っていない。ぞろぞろと三十人ばかりが外に出ると、籠城勢が詰め寄った。人夫たちは口を揃えてこう言った。
「敵ば待ち伏せしよるけんが、隈本からの援軍が明日来っとを待って、それから出るち言うとりましたばい。わしらはもう放免仕りましたけん」
隈本から援軍が出るという話は、まだ隈部勢の耳には入っていなかった。
有働兼元は、自身も策士であったので、人夫たちが言っていたのは偽の情報ではないかといぶかしんだ。しかし、平山城から人が出てくる気配は感じられない。いつ立花勢が出てこようと、結局待ち伏せて潰すのが最善の方法、ここで兼元は統虎が往路で取った方法を使おうと考えた。籠城しているうちの千五百の兵を三軍に分け、二手で立花勢を挟み撃ちにする。有働はすでに平山城を取り囲んでいた三千のうち千五百を新たに三手に編成し直し、待ち伏せの上挟み撃ちの形にして立花勢を全滅させる計画を立てた。
そして平山城の門が開き、立花勢は早々に動いた。
人夫たちが出てから一刻ほど後のことである。巳の刻(十時)より少し前である。
いつ出てくるか分からないと用心はしていた。しかし、籠城勢は虚を突かれたかたちになった。見張り役を兼ねていた五百の兵が詰め寄ったが、ことごとく馬や槍に引きはがされるように倒されていった。
籠城勢は目論見が崩れたことを知った。待ち伏せの態勢を整える前に立花勢は去ろうとしている。しかし、全員が騎馬ではないから時間もそれなりにかかる。先回りして、追撃できないか。指をくわえて見逃すわけにはいかない。籠城勢の兵を仕切る有働志摩、有働左京、緑木、岡田、村神、砥河、原、恵栗某らの将軍が緊急に評定を行う。有働左京が自身の案を述べた。
「わが勢千五百の兵のみ総力でかかっても、騎馬武者の多い立花勢と接近戦になっては勝ち目はなかとです。先回りばして、足軽らに鉄砲を使わせて撃ちかけて、一網打尽に追い込むしかなか。それなら永野原の辺りがよかち思うとです。追い込んで窮した立花勢は谷底に降りる。そこで隊列は乱れること必定、それがわが勢の好機。追い込み叩き潰すべき」
そこで有働一族きっての猛者である有働志摩が異論を述べた。
「そげん弱気で何ばできっとか。もし足軽らに鉄砲を撃ちかけられたとき、軽くいなされて突破されよったらどげんする? 時間をかけようたらいかんばい。挟み撃ちにするならば正面切って叩き潰すしかなか。誰もやらんなら、わしがやる」
そう言って他の者の意見を聞く前にみずからの勢を率いて駆け出していった。これではもう途を決めるしかない。有働左京も志摩の後を追い、残りは背後に回ることにし、慌ただしく持ち場に戻った。
このとき、立花勢は第一陣三百人、第二陣五百人、第三陣四百人の三手に分けて進んでいた。
「追ってば来っとか? 」
「いえ、今のところ見えませぬが」
「地の利を知るものばかり、どこからか伏兵が現れるかわからんばい。できる限り早く立ち去るべしっ」と総大将・統虎が言う。
立花統虎はこのとき第二陣に、家臣の十時摂津、客分の天野源右衛門、水野六左衛門、平山城から加勢として加わった遠藤助右衛門は第一陣にいた。
鳥が鳴き声を上げ飛び立ち、風がざわめく。
馬のひづめが地面を打つ音が轟音のようにとどろく。
次の瞬間、有働志摩の一隊が堰を切ったように、立花勢の第二陣に突っ込んできた。
「来た! 撃てぇえっ! 」
鉄砲衆が即射撃の態勢に移り、ずどおぉん!と撃ち放すと、その後を槍衆が進み、
「せぇえいやっ! 」と突きかかる。統虎は叫んだ。
「正面から切り込めっ、かかれぇっ!」
第二陣が急襲された報せは第一陣にも届く。しかし、すでにだいぶ進んでしまっている。早く戻らねばならないという焦りがあったのだろう。十時摂津がすぐさま踵を返して、第一陣に号令をかける。
「ただちに取って返す! 第二陣が攻めかかられとる!」
「いかんがやっ」と六左衛門も槍を固く握りしめる。
第二陣は奮戦している。鉄砲衆、槍衆と交互に攻撃態勢を変えながら、前方の有働志摩の隊をどんどん押し下げていく。このように見事に統率された敵と相まみえたことのない籠城勢はひるんだ。しかし、この陣に大将がいることが一同の心にメラメラと火を付けた。
「ここに大将がおる! おるぞおっ! 」
有働志摩の陣にいる、戸上、蘆原、福島、鹿子木某らの荒武者が次々と統虎に襲い掛かった。立花勢の第二陣にいる、内田壱岐、十時源之丞、立花次郎兵衛、安東津之助など二十余人が統虎を囲み、応戦した。統虎自身も長刀を振り下ろし、六、七人の敵を斬り伏せた。
その直後だった。
「九州もんのくせして、こん裏切りもんがあっ!」
籠城勢の有働下総守が血走らせた目をし、手負いの獣の勢いで長槍で突きかかってきた。
槍は統虎の左肘に刺さった。
統虎はかっと目を見開いて有働下総守を睨みつけた。
長刀を一端捨てて、左肘に刺さった槍を右手でがっちりと掴み、躊躇いなく引き抜くとその勢いでがっと引く。そして有働を自身に引き寄せ、馬の鞍に当たったところに手負いの左腕で短刀を抜き、のどを掻っ切った。
その時には周囲はすでに敵味方も分からないほどの大激戦になっていた。すでに馬上で戦える状況ではない。さすがの統虎も万事休すかと唾をごくりと飲んだ。
そのとき、後詰めの第三陣が駆け付けた。ここには小野和泉らがいる。ほどなくして、取って返した第一陣もやってきた。
「お屋形、今参りますっ」
今度は籠城勢が挟み討ちされるかたちとなった。
「そうりゃあっ! 」
水野六左衛門、天野源右衛門らもここぞとばかりに飛び出していく。しかし、誰が敵か分からない。十時摂津が叫ぶ。
「わしが指示するけん! 六左は右手後方をやれっ! 源右衛門は前方正面っ! 」
「合点承知! 」
もちろん十時や小野もだが、二人の客分も十時と力を合わせ、槍刀を振るいまくった。突いて斬って突きまくった。どれぐらいの敵を相手にしたのかも定かではない。
夕方酉の刻ごろ(五時ごろ)勝敗は決した。籠城勢も有働志摩が討たれたのをはじめ、数多くの将兵が倒れた。
「退けっ、退けーっ! 」
生き残った籠城勢は城村城に逃げていった。
籠城勢、立花勢とも激戦の中、討ち死にした者、手負いの者を多く数えた。籠城勢は城村城に逃げ帰ったが、立花勢は野営するわけにもいかない。またいつ襲撃されるかわからないからだ。
「ここに住んでいる者が皆敵だと思うと、おちおち寝てもおられんで」と六左衛門がつぶやく。
「そんとおりたい。ここは無理してでん、肥後を出んといかんばいね」と十時摂津も同意する。
それは立花勢全員が同様に感じていた。城村城に籠城しているのは農民も含め、この土地の者なのだ。内通する者が一部存在するとはいえ、ここは敵地なのだ。夜にそんな場所を移動するのは危険極まりないことだったが致し方ない。皆口数少なく帰途についていた。
しかし、ここでも有働兼元は策を講じていた。
山鹿から南関の間にある、三加和にある太田黒城にも有働勢の別陣五百人が待ち伏せしていたのである。
夜の闇が下り始めたころ、立花勢に有働勢五百人が襲い掛かった。
弓鉄砲を打ちかけられて、立花勢の先頭は立ち往生する。
統虎はすぐに異変に気づき、馬に乗り最前線に出た。そして、皆に攻撃を命じた。
「わざわざ城から出てきたもんば、ここで討たんでどげんするとか! 攻め入るぞっ! 一人残らず討ち取れっ! 」
この一声に立花勢は気力体力を振り絞り、全面的な反撃に打って出た。小野和泉や十時摂津ら、家中の名うての者ら三百人が一斉に斬りこんでいった。何とその先陣は、齢六十を過ぎた由布雪下だった。
さきほどまでの戦いで疲弊しきっているはずの立花勢が、本気で反撃に出て来るとは有働勢も思っていなかった。槍刀で真正面から向かってくる立花勢に有働勢は退いていく。先頭は早くも太田黒城に突入した。こうなればもう、結果は見えている。有働勢は大混乱となり、太田黒城主の大知越前守は討ち死にした。
平山城に兵糧米を入れるこの行軍で、立花勢は大小七回の戦いを行い、ことごとく勝った。
籠城方の死者六百五十余人を数えた。
立花勢の死者百六十三人、統虎を含めて負傷者は五十余りと激しい戦闘となった。
そして、これが肥後の国衆一揆に楔を打つ強烈な一手となったのである。
南関で水野六左衛門と遠藤助右衛門は立花の一行に別れを告げた。
十時摂津に連れられてきた二人を見て、統虎はふっと、張りつめていた表情を和らげた。
「こげん戦いば、これまでもありようたけんが、さすがにきつかこと。貴殿らも見事な暴れっぷりやったとね。槍を持つ姿はまさに鬼神ばい。なぁ、摂津」
摂津は憮然とした表情を見せるが、目は笑っていた。
「まぁ、戦で相手ばしたくはないとです」
六左衛門はにやりとしていたが、ふと空を見上げて言った。
「今日は月が見えとらんで、まだお互い気を引き締めんといかん。しかし……」
言いよどんだ六左衛門を見て統虎は首をかしげた。六左衛門もどう言ったらよいか、考えあぐねているようだった。
「わしはよそ者で、どこへ行っても知らん者しかおらん。たまに知った顔に会えどもわしと同じよそ者、しかもたいていは陣を同じゅうしとる。だで、どこでも遠慮なく槍を振れる。しかし、かような戦は立花様にとっても家中ご一同にも、どえりゃあしんどいもんではないんかや」
統虎の脳裏に、「九州もんのくせして、こん裏切りもんがあっ!」と突きかかってきた、有働下総守の顔が浮かんだ。統虎はしばらく思案していたが、六左衛門の肩をぽんとたたいた。
「六左よう、九州はよかとこばい。筑後も肥後もよかとこばい。戦ば終わりようたら、終わりようたら、あの煙ば吐いちゅう阿蘇の山も大人しゅうなるけんね。そげんとこば見てほしかよ」
統虎が何を言いたいのかは理解できた。六左は口を一文字にしてうんうんとうなづき、遠藤とともに去って行った。
「あの男は荒くれとるだけやと思いきや、意外と人を見とるばい」と十時摂津が感心したように言う。
「さぁ、われらも急いで帰るぞ! 」
統虎が号令をかけた。
立花勢が柳河にたどり着いたのは、もう夜中だった。
柳河城では皆の到着を今か今かと待っていた。篝火を煌々と焚いて城門は昼のようである。水路に篝火の明かりが映り、月のない夜に幻想的な趣を添えていた。
馬を片手で扱い進む統虎にぎんの姿が見えた。
家臣の妻や女中らで構成している女軍が皆長刀と甲冑を身に着けているのだが、その先頭に立っていたのである。彼女は夫が片腕をぶらんとさせているのにすぐに気づき、駆け寄る。駆け寄るときに結んだ髪がはらりとほどけ、長い黒髪が風にたなびいた。美しか、と統虎はぼんやりと感じた。
「左近! 怪我ばしとっと? 」
「あぁ、槍で突かれよったけんが」
「突かれた? 突かれた! 」
ぎんが大きな声を出した。離れて見ても、肘の辺りに赤々と血の痕が認められる。統虎は大げさな心配が嬉しくも恥ずかしく、ぶっきらぼうに言う。
「こげんこつ大したことなかよ。それより他に手負いも者もおるけん、その手当てを」
女中らや城の守備をしていた者らが負傷者を抱えて城内に連れていく。どれほどの激戦かは見れば分かった。
皆大なり小なり怪我をしている。聞けば討ち死にした者が百五十を越えたという。
ぎんは戦慄を覚えた。
「ほんの七里、ほんの七里ほど先の城に兵糧を入れるだけで、こんありさまと? 安東も十時も由布も薦野も、立花きっての精鋭らぁが怪我しちゅう。どげんな戦ね。これで終わると? 反乱は治まると? 」
ぎんは眉をひそめて統虎に問う。統虎は首を振る。
「いや……まだまだこれからやけん、また出陣することになるたい」
「そげんな……こつ」
「やけんが、兵糧入れだけはしばらく堪忍してほしか」と統虎は首をすくめた。
六左衛門は驚いて駆け寄った。
「遅くなったで、まことに相済まぬ。痩せてしもうたのう」
三田村は心底安堵した顔で、六左衛門のねぎらいに応じた。
「遅い、遅いで。いやしかし、よう兵糧を入れてくれた。よう入れてくれた」
「そりゃ、わしでなくて、立花衆の手柄だで。見事な戦法で、しかも滅法強いもんだで、わしゃ感極まった」
「ところで、その立花左近殿はどちらに」と三田村がきょろきょろと辺りを見回す。
統虎は一同を城内の広場に野営させ、交替しながら徹宵で平山城を守ることとした。その前にこの城を出て、どう帰るか考えなければならない。とりあえず、城を出る時間をあいまいにするために、兵糧運搬の人夫に嘘の情報を言い含めた。しかし、いつ出て行っても籠城勢はそれなりの構えをしてくるだろう。
統虎は考えていた。
うまく避ける方法はないようだ。
物見からは今のところ取り囲んでいた有働兼元率いる者らの姿は認められない。当面必要な兵糧が入ったのだから、取り囲んでも飢えて投降することはなくなった。その間に今度こそ、佐々本隊や筑後・筑前の領主による軍勢が押し寄せる。皆三里ほど離れた南関に集結しているのだ。
しかし、これで隈部勢が引き下がるとは思えない。本当に怖いのは、帰り道だ。
統虎は人を周りに寄せず、ただ考えていた。
「今、お話申し上げてもよろしいか? 」と水野六左衛門が寄ってきた。
「あぁ、わしの考えをまとめとる。まとまればまた家臣ば呼んで評定ばい。でもよかよ」
「それは恐縮至極、本来ならば明日、拙者ここで失礼するのが筋ですが、帰途があまりにも危険なため、南関まではご助力させていただきたく」
統虎はこの申し出を喜んで受ける。
「それは願ってもない。南関から貴殿が戻るのが難儀やろうが……今日は貴殿も天野も第三隊は見事な戦いっぷりやったとね。十時もあれは口だけじゃなかち言いよったけんね」
思いのほか気さくなもの言い、素直な賞賛の言葉に六左衛門は少々面食らった。
「立花様は、お歳は? 」
「数えで二十二たい」
「あぁ、わしより三つも若いのかいや。それでその貫禄は、やはり見事なもの」と六左衛門は感嘆する。
「貫禄? そげんもんなかよ。先代からの家臣がよく働いてくれとったい」
「わしにはその、家中をしっかり束ねる器量がなかったで、今こんな有様なのかもしれんのう」と六左衛門は反省の弁を述べてみる。
「うーむ、ひとつ人間の器が大きくなる秘訣があるとよ」と突然統虎が手を打つ。
「それはいったい」と六左衛門。
「気の強きこと嵐のごとく、この刀以上に切れ者で、夫になぞ間違っても従わん、しかしおいどの愛らしいおなごば嫁にするったいね」
「あぁ、それは鍛えられるで」と六左衛門は笑った。
そこに小野和泉が顔を見せた。
「お屋形様、そろそろ明日の段取りば決めましょう」
「あぁ、邪魔したで。明日も難儀な道行きになりそうだもんで、気張らんといかん。だで、そろそろ失礼申す」と六左衛門は去っていった。
小野は去っていく六左衛門の背中を眺めて言う。
「水野殿は槍を持たせれば無敵ばい。よか客分ば来てくれたとです」
「うむ、それに……よそもんと話しとると気が楽やけん」
小野和泉は統虎の心中を察して、目を伏せた。
「敵は敵、油断しよったらやられます」
統虎はふと空を見上げて、満ちるまでにまだ少しかかりそうな白い月を見た。
「あぁ、分かっちゅう。帰りは難儀たいね」
翌朝、兵糧運搬を手伝ってもらうために雇われた人夫たちは城から出された。武器など何も持っていない。ぞろぞろと三十人ばかりが外に出ると、籠城勢が詰め寄った。人夫たちは口を揃えてこう言った。
「敵ば待ち伏せしよるけんが、隈本からの援軍が明日来っとを待って、それから出るち言うとりましたばい。わしらはもう放免仕りましたけん」
隈本から援軍が出るという話は、まだ隈部勢の耳には入っていなかった。
有働兼元は、自身も策士であったので、人夫たちが言っていたのは偽の情報ではないかといぶかしんだ。しかし、平山城から人が出てくる気配は感じられない。いつ立花勢が出てこようと、結局待ち伏せて潰すのが最善の方法、ここで兼元は統虎が往路で取った方法を使おうと考えた。籠城しているうちの千五百の兵を三軍に分け、二手で立花勢を挟み撃ちにする。有働はすでに平山城を取り囲んでいた三千のうち千五百を新たに三手に編成し直し、待ち伏せの上挟み撃ちの形にして立花勢を全滅させる計画を立てた。
そして平山城の門が開き、立花勢は早々に動いた。
人夫たちが出てから一刻ほど後のことである。巳の刻(十時)より少し前である。
いつ出てくるか分からないと用心はしていた。しかし、籠城勢は虚を突かれたかたちになった。見張り役を兼ねていた五百の兵が詰め寄ったが、ことごとく馬や槍に引きはがされるように倒されていった。
籠城勢は目論見が崩れたことを知った。待ち伏せの態勢を整える前に立花勢は去ろうとしている。しかし、全員が騎馬ではないから時間もそれなりにかかる。先回りして、追撃できないか。指をくわえて見逃すわけにはいかない。籠城勢の兵を仕切る有働志摩、有働左京、緑木、岡田、村神、砥河、原、恵栗某らの将軍が緊急に評定を行う。有働左京が自身の案を述べた。
「わが勢千五百の兵のみ総力でかかっても、騎馬武者の多い立花勢と接近戦になっては勝ち目はなかとです。先回りばして、足軽らに鉄砲を使わせて撃ちかけて、一網打尽に追い込むしかなか。それなら永野原の辺りがよかち思うとです。追い込んで窮した立花勢は谷底に降りる。そこで隊列は乱れること必定、それがわが勢の好機。追い込み叩き潰すべき」
そこで有働一族きっての猛者である有働志摩が異論を述べた。
「そげん弱気で何ばできっとか。もし足軽らに鉄砲を撃ちかけられたとき、軽くいなされて突破されよったらどげんする? 時間をかけようたらいかんばい。挟み撃ちにするならば正面切って叩き潰すしかなか。誰もやらんなら、わしがやる」
そう言って他の者の意見を聞く前にみずからの勢を率いて駆け出していった。これではもう途を決めるしかない。有働左京も志摩の後を追い、残りは背後に回ることにし、慌ただしく持ち場に戻った。
このとき、立花勢は第一陣三百人、第二陣五百人、第三陣四百人の三手に分けて進んでいた。
「追ってば来っとか? 」
「いえ、今のところ見えませぬが」
「地の利を知るものばかり、どこからか伏兵が現れるかわからんばい。できる限り早く立ち去るべしっ」と総大将・統虎が言う。
立花統虎はこのとき第二陣に、家臣の十時摂津、客分の天野源右衛門、水野六左衛門、平山城から加勢として加わった遠藤助右衛門は第一陣にいた。
鳥が鳴き声を上げ飛び立ち、風がざわめく。
馬のひづめが地面を打つ音が轟音のようにとどろく。
次の瞬間、有働志摩の一隊が堰を切ったように、立花勢の第二陣に突っ込んできた。
「来た! 撃てぇえっ! 」
鉄砲衆が即射撃の態勢に移り、ずどおぉん!と撃ち放すと、その後を槍衆が進み、
「せぇえいやっ! 」と突きかかる。統虎は叫んだ。
「正面から切り込めっ、かかれぇっ!」
第二陣が急襲された報せは第一陣にも届く。しかし、すでにだいぶ進んでしまっている。早く戻らねばならないという焦りがあったのだろう。十時摂津がすぐさま踵を返して、第一陣に号令をかける。
「ただちに取って返す! 第二陣が攻めかかられとる!」
「いかんがやっ」と六左衛門も槍を固く握りしめる。
第二陣は奮戦している。鉄砲衆、槍衆と交互に攻撃態勢を変えながら、前方の有働志摩の隊をどんどん押し下げていく。このように見事に統率された敵と相まみえたことのない籠城勢はひるんだ。しかし、この陣に大将がいることが一同の心にメラメラと火を付けた。
「ここに大将がおる! おるぞおっ! 」
有働志摩の陣にいる、戸上、蘆原、福島、鹿子木某らの荒武者が次々と統虎に襲い掛かった。立花勢の第二陣にいる、内田壱岐、十時源之丞、立花次郎兵衛、安東津之助など二十余人が統虎を囲み、応戦した。統虎自身も長刀を振り下ろし、六、七人の敵を斬り伏せた。
その直後だった。
「九州もんのくせして、こん裏切りもんがあっ!」
籠城勢の有働下総守が血走らせた目をし、手負いの獣の勢いで長槍で突きかかってきた。
槍は統虎の左肘に刺さった。
統虎はかっと目を見開いて有働下総守を睨みつけた。
長刀を一端捨てて、左肘に刺さった槍を右手でがっちりと掴み、躊躇いなく引き抜くとその勢いでがっと引く。そして有働を自身に引き寄せ、馬の鞍に当たったところに手負いの左腕で短刀を抜き、のどを掻っ切った。
その時には周囲はすでに敵味方も分からないほどの大激戦になっていた。すでに馬上で戦える状況ではない。さすがの統虎も万事休すかと唾をごくりと飲んだ。
そのとき、後詰めの第三陣が駆け付けた。ここには小野和泉らがいる。ほどなくして、取って返した第一陣もやってきた。
「お屋形、今参りますっ」
今度は籠城勢が挟み討ちされるかたちとなった。
「そうりゃあっ! 」
水野六左衛門、天野源右衛門らもここぞとばかりに飛び出していく。しかし、誰が敵か分からない。十時摂津が叫ぶ。
「わしが指示するけん! 六左は右手後方をやれっ! 源右衛門は前方正面っ! 」
「合点承知! 」
もちろん十時や小野もだが、二人の客分も十時と力を合わせ、槍刀を振るいまくった。突いて斬って突きまくった。どれぐらいの敵を相手にしたのかも定かではない。
夕方酉の刻ごろ(五時ごろ)勝敗は決した。籠城勢も有働志摩が討たれたのをはじめ、数多くの将兵が倒れた。
「退けっ、退けーっ! 」
生き残った籠城勢は城村城に逃げていった。
籠城勢、立花勢とも激戦の中、討ち死にした者、手負いの者を多く数えた。籠城勢は城村城に逃げ帰ったが、立花勢は野営するわけにもいかない。またいつ襲撃されるかわからないからだ。
「ここに住んでいる者が皆敵だと思うと、おちおち寝てもおられんで」と六左衛門がつぶやく。
「そんとおりたい。ここは無理してでん、肥後を出んといかんばいね」と十時摂津も同意する。
それは立花勢全員が同様に感じていた。城村城に籠城しているのは農民も含め、この土地の者なのだ。内通する者が一部存在するとはいえ、ここは敵地なのだ。夜にそんな場所を移動するのは危険極まりないことだったが致し方ない。皆口数少なく帰途についていた。
しかし、ここでも有働兼元は策を講じていた。
山鹿から南関の間にある、三加和にある太田黒城にも有働勢の別陣五百人が待ち伏せしていたのである。
夜の闇が下り始めたころ、立花勢に有働勢五百人が襲い掛かった。
弓鉄砲を打ちかけられて、立花勢の先頭は立ち往生する。
統虎はすぐに異変に気づき、馬に乗り最前線に出た。そして、皆に攻撃を命じた。
「わざわざ城から出てきたもんば、ここで討たんでどげんするとか! 攻め入るぞっ! 一人残らず討ち取れっ! 」
この一声に立花勢は気力体力を振り絞り、全面的な反撃に打って出た。小野和泉や十時摂津ら、家中の名うての者ら三百人が一斉に斬りこんでいった。何とその先陣は、齢六十を過ぎた由布雪下だった。
さきほどまでの戦いで疲弊しきっているはずの立花勢が、本気で反撃に出て来るとは有働勢も思っていなかった。槍刀で真正面から向かってくる立花勢に有働勢は退いていく。先頭は早くも太田黒城に突入した。こうなればもう、結果は見えている。有働勢は大混乱となり、太田黒城主の大知越前守は討ち死にした。
平山城に兵糧米を入れるこの行軍で、立花勢は大小七回の戦いを行い、ことごとく勝った。
籠城方の死者六百五十余人を数えた。
立花勢の死者百六十三人、統虎を含めて負傷者は五十余りと激しい戦闘となった。
そして、これが肥後の国衆一揆に楔を打つ強烈な一手となったのである。
南関で水野六左衛門と遠藤助右衛門は立花の一行に別れを告げた。
十時摂津に連れられてきた二人を見て、統虎はふっと、張りつめていた表情を和らげた。
「こげん戦いば、これまでもありようたけんが、さすがにきつかこと。貴殿らも見事な暴れっぷりやったとね。槍を持つ姿はまさに鬼神ばい。なぁ、摂津」
摂津は憮然とした表情を見せるが、目は笑っていた。
「まぁ、戦で相手ばしたくはないとです」
六左衛門はにやりとしていたが、ふと空を見上げて言った。
「今日は月が見えとらんで、まだお互い気を引き締めんといかん。しかし……」
言いよどんだ六左衛門を見て統虎は首をかしげた。六左衛門もどう言ったらよいか、考えあぐねているようだった。
「わしはよそ者で、どこへ行っても知らん者しかおらん。たまに知った顔に会えどもわしと同じよそ者、しかもたいていは陣を同じゅうしとる。だで、どこでも遠慮なく槍を振れる。しかし、かような戦は立花様にとっても家中ご一同にも、どえりゃあしんどいもんではないんかや」
統虎の脳裏に、「九州もんのくせして、こん裏切りもんがあっ!」と突きかかってきた、有働下総守の顔が浮かんだ。統虎はしばらく思案していたが、六左衛門の肩をぽんとたたいた。
「六左よう、九州はよかとこばい。筑後も肥後もよかとこばい。戦ば終わりようたら、終わりようたら、あの煙ば吐いちゅう阿蘇の山も大人しゅうなるけんね。そげんとこば見てほしかよ」
統虎が何を言いたいのかは理解できた。六左は口を一文字にしてうんうんとうなづき、遠藤とともに去って行った。
「あの男は荒くれとるだけやと思いきや、意外と人を見とるばい」と十時摂津が感心したように言う。
「さぁ、われらも急いで帰るぞ! 」
統虎が号令をかけた。
立花勢が柳河にたどり着いたのは、もう夜中だった。
柳河城では皆の到着を今か今かと待っていた。篝火を煌々と焚いて城門は昼のようである。水路に篝火の明かりが映り、月のない夜に幻想的な趣を添えていた。
馬を片手で扱い進む統虎にぎんの姿が見えた。
家臣の妻や女中らで構成している女軍が皆長刀と甲冑を身に着けているのだが、その先頭に立っていたのである。彼女は夫が片腕をぶらんとさせているのにすぐに気づき、駆け寄る。駆け寄るときに結んだ髪がはらりとほどけ、長い黒髪が風にたなびいた。美しか、と統虎はぼんやりと感じた。
「左近! 怪我ばしとっと? 」
「あぁ、槍で突かれよったけんが」
「突かれた? 突かれた! 」
ぎんが大きな声を出した。離れて見ても、肘の辺りに赤々と血の痕が認められる。統虎は大げさな心配が嬉しくも恥ずかしく、ぶっきらぼうに言う。
「こげんこつ大したことなかよ。それより他に手負いも者もおるけん、その手当てを」
女中らや城の守備をしていた者らが負傷者を抱えて城内に連れていく。どれほどの激戦かは見れば分かった。
皆大なり小なり怪我をしている。聞けば討ち死にした者が百五十を越えたという。
ぎんは戦慄を覚えた。
「ほんの七里、ほんの七里ほど先の城に兵糧を入れるだけで、こんありさまと? 安東も十時も由布も薦野も、立花きっての精鋭らぁが怪我しちゅう。どげんな戦ね。これで終わると? 反乱は治まると? 」
ぎんは眉をひそめて統虎に問う。統虎は首を振る。
「いや……まだまだこれからやけん、また出陣することになるたい」
「そげんな……こつ」
「やけんが、兵糧入れだけはしばらく堪忍してほしか」と統虎は首をすくめた。
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