鎌倉もののふがたり

尾方佐羽

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頼朝と御家人~鎌倉時代草創期の主なトピックス

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《参考》
頼朝と御家人~鎌倉時代草創期の主なトピックス(頼朝の死まで)

 お話で時系列が前後したり、飛ぶことがあるので大まかな流れを書いておこうと思います。主眼はいかに多くの人々が頼朝の挙兵に加わったかということです。

 平氏は血縁者を中心に据えて政権運営をしましたが、源氏の場合、もっとも重きを置いたのは土地の豪族との主従契約でした。どちらもよい点があり、そうではない点があります。鎌倉の主従契約(協力する代わりに領地をもらう)は将軍の力が磐石なうちはよいのですが、「誰が一番の功労者か」という権力争いが主になると弱い。分ける土地がなくなるのものちに大きな問題になります。

 ただ、日本初の武家政権を築き上げるためには適切な方法だったと思います。のちに北条政子が御家人を集めて名演説をしますが、その主旨の明確さに大いに納得しました(『承久記』にあります)。

 御家人の名前をつらつらと何十人も言える人はそれほど多くないでしょう。私も書くまではまったく。でも、今ある地名と結びつけることはカンタンです。いっぱいあります。

・川越市→河越氏
・秩父郡→秩父氏
・熊谷市→熊谷氏
・金沢区(横浜)→金沢氏
・鎌倉市→鎌倉氏
・比企郡→比企氏
・土肥町(とい、今はないです)→土肥氏
・伊東市→伊東氏
・愛甲郡→愛甲氏
・松田町(大井松田ってありますね)→松田氏
・秦野市→波多野氏
・海老名市→海老名氏
・高座渋谷(駅、大和市)→渋谷氏
・三浦市、三浦半島→三浦氏
・千葉県→千葉氏
・江戸(旧国名)→江戸氏
・葛西(江戸川区)→葛西氏
などなどーー。

「地名が人名に由来することはよくある」と思われるかもしれません。ただ、ここに挙げたのは、「頼朝の挙兵から幕府草創期」に加わって、御家人とされた人だけなのです。
 小田急線を「御家人線」と呼びたいぐらいです(冗談です)。

 名前や年号だけご覧いただくだけではなく、地名など他の面を見ていただくのも面白いのではないかと思います。

⭐印は加わった人々、御家人(御恩と奉公の約束で従った直属の家臣)。
→は『鎌倉もののふがたり』で紹介するトピックスです(第二章までに出てくるもの)。

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1147年(久安3)
4月、頼朝生まれる。

ーーーーーー

1159年(平治元)
12月、平治の乱。頼朝の父、義朝敗死。

ーーーーーー

1160年(永暦元)
3月、頼朝、伊豆配流に。

⭐配流中は安達盛長・河越重頼・伊東祐清が側近として、佐々木定綱ら四兄弟が従者として頼朝に仕えた。

ーーーーーー

1178年(治承2)
源頼朝と北条政子の一女、大姫が頼朝配流(はいる)先の伊豆で誕生する(その頃には婚姻を結んでいた)。

⭐政子の父、北条時政が岳父となる。

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1180年(治承4)⚫関東平定の年
4月、後白河法皇の第3子、以仁王(もちひとのおう)が平氏討伐の令旨(りょうじ)を発する。

5月、以仁王も挙兵に加わるが討たれる。

8月、頼朝伊豆で挙兵する。平氏方の伊豆国目代・山木兼隆を討つ。

⭐北条時政、工藤茂光、天野遠景(以上伊豆の豪族)、加藤景員(かげやす、伊勢出身)、土肥実平、土屋宗遠、中村景平(かげひら)、岡崎義実(相模西部の豪族)、大庭景能が挙兵に加わる。

8月、相模国の三浦氏と合流するため北上を開始。石橋山の戦いで平氏方の敗れ海路を逃げる。

⭐土肥実平が付き従う。梶原景時が加わる。敵方(大庭景親)に付いていた熊谷直実が加わる。三浦義明が頼朝勢に「累代の家人」として加勢する。三浦勢は畠山重忠・稲毛重成ら秩父勢と交戦、三浦党の長、義明は衣笠城の戦いで討たれる。
 →第1章『馬入川』をご参照ください。

8月、頼朝安房国に逃げ延びる。

⭐上総広常(かずさひろつね)、千葉常胤(つねたね、房総半島の大豪族)が頼朝に従う。

9月、源氏方の木曽義仲(頼朝の従兄弟)が信濃国で挙兵。頼朝は安房から出て進軍を開始。頼朝の追討宣旨が平氏の要請により朝廷から発される。

10月、頼朝は隅田川を越え、武蔵国府(東京・府中)までを制圧。6日に鎌倉に入り、拠点と定める。富士川の合戦で頼朝勢戦うことなく勝利する。常陸の佐竹氏討伐に出発する。

⭐足立遠元、葛西清重が進軍してきた頼朝を出迎える。敵対していた江戸重長、畠山重忠、小山田(稲毛)重成ら秩父党が頼朝に従う。
 →第1章『馬入川』をご参照ください。

⭐新田義重と志田義広(頼朝のおじ)が頼朝に従う。

11月、頼朝、和田義盛(三浦義明の子)を侍所別当の重職に任ずる。

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1181年(養和元)⚫大倉御所(鎌倉)の基礎作りの年
2月、平清盛が病気で逝去。平氏政権が翳りを見せはじめる。

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1182年(寿永元)
2月、伊勢神宮に願文を納める(長江義景が神寳奉行として赴く)。
8月、頼朝と政子に一男の万寿(のちの頼家)が生まれる。
10月、亀の前事件
 →第2章『頼朝も知らぬこと』を参照ください。

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1183年(寿永2)⚫御家人、源氏内部の軋轢が生じる。頼朝と木曽義仲の対立深まる。
2月、志田義広(義仲に付く)の乱。

7月、平氏の都落ち。木曽義仲、京都に入る。

10月、『寿永2年10月宣旨』が朝廷から発出される。これによって、頼朝の東国支配が公に認められる。

秋頃、上総広常殺害される。

ーーーーーー

1184年(元曆元)⚫平氏討伐が本格的に始まる。源義経の活躍。
1月、木曽義仲、頼朝異母弟の源義経に京都の宇治川橋の合戦後に討たれる。平氏追討宣旨が朝廷より発される。

2月、一ノ谷の合戦。
→第3章『アツモリソウ』をご覧ください。

4月、木曽義高(頼朝の娘・大姫の許婚)が殺害される。

10月、鎌倉に公文所がもうけられ、大江広元が別当に着任。問注所の執事に三善康信を任命(いずれも朝廷の役人)。三善は古くから頼朝についていた。

ーーーーー

1185年(文治元)⚫平氏滅亡。義経との対立。
2月、屋島の合戦。

3月、檀ノ浦の合戦。平氏滅亡。
 →序章『とりかへばや』をご参照ください。

4月、頼朝、平氏討伐の恩賞として従二位を叙される。

5月、源義経、鎌倉入りを禁じられ、足止めされた腰越で頼朝に叛意がない旨の書状を綴る(腰越状として有名)。
→第3章『アツモリソウ』をご覧ください。

10月、義経、頼朝に反旗を翻す。北条時政、頼朝に実質的な京都守護(代官)を任され、京都に赴く。
 →序章『とりかへばや』を参照ください。

11月、文治勅許が朝廷から下される。後まで長く続く「守護・地頭」制度がはじまる。義経の追討宣旨が発される。
 
 ※この年が公的に鎌倉の武家政権が認められた年だといえます。

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1186年(文治2)
頼朝と政子のニ女、三幡姫が生まれる。

ーーーーーー

1187年(文治3)⚫義経が奥州へ。
 源義経、奥州藤原氏のもとに逃げ落ちる。

8月、始めての放生会(ほうしょうえ、流鏑馬神事)が鶴岡八幡宮で行われる。
 →第2章『頼朝も知らぬこと』、第3章『アツモリソウ』を参照ください。

10月、藤原秀衡が逝去。藤原氏の足並みが揃わなくなるきっかけに。

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1189年(文治5)⚫奥州征伐
4月、藤原泰衡が義経を殺害。

7月、頼朝が泰衡討伐に出発する(奥州征伐)。

9月、頼朝勢が奥州平泉を制圧。奥州藤原氏滅びる。

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1190年(健久元)
11月、頼朝上洛。後白河院、後鳥羽天皇、摂政九条兼実と対面する。権大納言・右大将に就任する。

12月、上の官職を辞して鎌倉に戻る(これまでに武士が与えられてきたのと同じ官職を受けるのでは、朝廷と実質的に拮抗する立場にはなれないという考えからでしょう)。

ーーーーーー

1192年(健久3)⚫鎌倉幕府開府の年と教わりましたが、そうでもないようです。この辺りから朝廷との関わりが大きなテーマになったというのが近いと思います。

3月、後白河院が逝去。

7月、頼朝、朝廷に大将軍の役(官職)を求める。征夷大将軍に就任する。

8月、頼朝と政子のニ男、千幡(のちの実朝)が生まれる。

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1193年(健久4)⚫示威的な軍事演習。
5月、頼朝、富士野で巻狩(軍事演習も兼ねた大規模な狩猟)、曽我兄弟の仇討ち事件が起こる。討たれたのは工藤祐経。
巻狩は那須野(下野国、栃木)、三原野(信濃国、長野)でも実施された。

8月、頼朝の弟、源範頼が配流される(のちに殺害)。

11月、安田義資(甲斐源氏)を殺害。

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1194年(健久5)
8月、安田義定(甲斐源氏)を殺害する。
 この頃までに頼朝の兄弟、源の縁者が次々と排除された。

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1195年(健久6)
3月、頼朝、再度上洛。東大寺の再建供養に臨む。

8月、頼朝一行、三崎(三浦半島の南部)に別邸を建て、一族郎党で避暑に赴く。
→第2章『頼朝も知らぬこと』をご覧ください。

この頃から頼朝は娘、大姫の入内に向けて朝廷との調整をはじめる。

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1196年(健久7)
11月、源通親による政変。朝廷内での内紛があらわになる。

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1197年(健久8)
7月、大姫、病のため逝去。

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1198年(健久9)
12月、頼朝、相模川大橋供養の帰途落馬し、のちに倒れる。
 →第一章『馬入川』、第二章『頼朝も知らぬこと』をご参照ください。

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1199年(健久10)
1月、頼朝逝去、享年53。
 →第一章『馬入川』、第二章『頼朝も知らぬこと』をご参照ください。

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・すべて旧暦での表記です。
・元号はふたつ重複している時期がありますので、便宜的に一方を採用しています。
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