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<2022年、福山城は築城400年>
『お城EXPO2019』&『福山城築城400年』を殿と語る
しおりを挟む歴史・お城好きにはたまらないイベント、『お城EXPO2019』が横浜のパシフィコで12月21(土)~22日(日)に開かれます。今回はそのイベントに先だって、日向守、水野勝成公にゆかりのあるところを手前勝手に紹介いたしましょう。
⚫お城EXPOとは? 横浜とは?
「おしろえくすぽ、とは何じゃ?」
「日本のお城が集まるお祭りですね」
「城が集まるんかや? 伏見城の櫓を移すのも難儀じゃったが、えらいことじゃのう」
「うーん、もちろん城は運んでこられません。日本各地のお城を地元の方々が紹介しあおうということです。歴史上有名な方の書状を公開するなど、人にまつわる貴重なものを展示したり、研究している方のお話などもありますよ」
「うーむ、わかったような、わからんような」
「まだこれからの催しですけぇ。殿が見たいと思いそうなものを挙げていきます。聞いとってください(言葉がうつる)」
「うむ、承知」
まず、会場は相模国、横浜です。海際にあるパシフィコというところです。江戸からは、そうですねえ……矢口の渡しから6里(約24km)ぐらいあるんでしょうか。東海道の神奈川宿から左の海方面に折れていく感じです。あ、昔は海だったでしょう。
「それは近隣じゃのう。ほう、大きな船の白帆が見えるで。あの後ろに見える高い塔は物見櫓(ものみやぐら)か。城はどこじゃ」
後ろはランドマークタワーです。櫓ではありませんが、展望台がありますからかなり遠くまで見渡せますね。晴れていれば常陸・下野・甲斐・駿河国の山々まで、あ、もちろん富士山も見えますよ。最上級の物見櫓かもしれませんが、近くは見づらいでしょう。もとい、会場の方の巨大な白い帆のようなものはビルで、ホテルや会議場が入っています。昔の感覚でいうと上等の旅籠や評定場でしょうか。大広間のようなところがあって……あ、会場近辺の話はこれぐらいで。横浜は昔よく来ましたので、改めてご案内します。後でデートしましょう。殿のお好きそうな、大きな帆船もありますけぇ。
「デートとは?」
ああ、悲しい思い出が甦る……先に進みます。
⚫今年の目玉を探る
今年の『お城EXPO』のテーマは「栄枯盛衰 ー豊臣から徳川へー」ということだそうです。特別出品されるものも、関ヶ原から大坂の陣にかけてのものが多いようですよ。目を引くのは『大坂冬の陣』の屏風をデジタルで復元したものでしょう。
「はて、夏の陣の屏風は黒田家で描かせとったが……冬の陣のものがあったかのう」
絵師(作者)や製作時期は分かっていないようですよ。完成もしていないらしいです。
「うむ、それはわしも見てみたい。どちらもわしはおったけぇのう」
そうですね、実際にその場に皆さまいらっしゃったのですものね。そこで命を落とした方もたくさんいる。楽しい記憶ではない、けれど繰り返してほしくない。だからこそ、留めておかなければならないと思われたのでしょう。
書状の方では、関ヶ原前後のものが多く出されるようです。石田三成、徳川家康……。
「ああ、関ヶ原までの数ヵ月、当時の内府様(徳川家康)の発給した書状は半端ではない数じゃった。百では済まんかったと思うで。石田治部少のも同じじゃろう。どれも、自軍への参陣を求める、確かめるための文じゃ。それが400年経って、皆の前に出されとるんか。不思議じゃのう」
ええ、不思議ですね。関ヶ原の前には、内府さまが殿に家督を継がせるように書いている文もありましたね。あれは例外的な内容だったでしょう。内府さまは、せっかく揃って勤めてくれることになった親子の、その親御さんがあっけなく非業の死を遂げたことを、本当に残念に思っていたでしょう。
「そうじゃな……きっと見たら泣くかもしれんのう」
⚫福山城あらわる
さて、『お城EXPO』では全国のお城を紹介するゾーン(区域)があります。お城本体は持ってこられませんが、模型にしたり地図や写真を駆使したりと、ご城下の皆さまが趣向を凝らしているんですよ。甲冑姿の方もたくさんいらっしゃいます。
「まさか、戦まで始めたりはせんじゃろうな」
しません。鑓刀も振り回しません。一番鑓もいたしません。
そして今年も、福山城のブース(区画)が出ているんです。3年後の2022年、福山城が築城400年になります。それを記念して、お祝いのイベントが福山では盛んに行なわれています。行きたいなぁ。
お城ができたのは1622年(元和8ーげんな)ですが、福山入封はその3年前の1619年(元和5)です。つまり、福山藩が始まって、今年が400年なのです。ですから、お祝いの行事がずっと続いているというわけなんです。これも、築城まで3年をかけたからですね。長くお祝いできるということです。
「ほう、どえりゃーはゃー鋼鉄の乗りもん(新幹線)が走るようになって、町もえらく変わってしもうたが……もう400年も経ったんか……」
そうですね。
そのお祝いの波が横浜にも流れてくるようですよ。
告知のサイトを見ていたら、殿の甲冑が出ていました。私は去年も拝見したのですが、なぜか具足が気になって気になって……兜ではなくて、具足や小札(こざね)などの細かい部分を見てしまったりするのです。
「目立たんが、いちばん手のかかる部分じゃな」
(去年のお城EXPOで撮った水野勝成公甲冑のレプリカです)
後から模して作ったものであることを割り引いても、そのように、確かに人が手をかけて作ったことが分かる部分を見ていると、実際にそれを身につけて戦場にいらっしゃるお姿が想像できるように思うのです。今は、武将も美麗な絵で描かれて伝えられていますが、だんだん、本当に生きていたのか分からなくなってくることがあります。お城の石垣の積みかたなどにしてもそうですが、すべて人が手で作ったもの、人が身につけていたものです。それを見るから、「ああ、みんな生きていたのだ」と強く感じられるのです。
「ああ、残してくれとるけぇ、さように感じ入ってもらえるんじゃろう。それは消えてしもうたら、できんことじゃ」
さて、ご城下の福山市ではバラの女の子がキャラクターになっていますが、ご存じですか。『ローラ』ちゃんというのです。
「バラ、とは……よう往来に咲いとって、つるにトゲのある白い花のことかや」
それはおそらく、昔ながらの『野ばら』ですね。今は西洋から入ってきた、大輪の……そうですね、椿や牡丹や菊ぐらいの大きくてキレイな花がたくさんあるのです。今はお花の女王さまといってもいいでしょう。そして、ご城下福山の花はその『バラ』なのです。そして、『ローラ』ちゃんはバラの妖精だということです。
「あやかしか?」
うーん、百聞は一見にしかず、見てみてください。可愛くてキュンキュンしますよ。今回はお城の装束をした絵柄で登場されるそうです。
ああ、ハグしたい。
さて、今回は入封400年、そして築城400年を控えて、福山城のことをもっと知ってもらいたいということで、見たことのない人もCGで立体的に体感してもらえるようにされるとのことです。お城と歴史の専門家(学芸員)の方のご教示もあるようです。私も勉強しなければ。
「城の普請の話じゃったら、わしもしたいのう。あれがどれほど難儀じゃったか、おぬしは知らんじゃろう。そもそも幕府老中は皆唖然としておったぞ。どれだけ大風呂敷を広げたら気が済むんじゃと。それに埋め立てで水を抜くのがどれほどえらいことじゃったか……しかし、しーじー、とは何じゃ、宍道湖(しんじこ)か?」
……とにかく見に行きましょう。今も宍道湖の夕景は変わらず絶景です。
あと、今年は『ご城印』も出るそうで、それも楽しみですね。殿がお手に持ってニカッと笑う一葉をカメラにおさめてみたいものです。
(ニカッ)
⚫黒の鉄板
殿、福山城が空から爆撃を受けて、焼失したお話は以前にしましたね。1945年8月8日の福山空襲のときのことです。それから20年ほど、お城は焼け跡になっていたのです。そして、ご城下の市民の皆さんがお城を建て直そうとたいへん力を尽くされて、今のお城が再建されたのです。
「ああ、聞いた。あの戦は日本が全部焼かれるかゆうほど、酷いもんじゃったと」
その時に再現できなかったことがありました。ご存じですね、天守の壁に黒い鉄板を張られていた部分です。
「ああ、あれは福山城をそれと知らしめる、目印じゃった」
巨大な安宅船(あたけぶね、戦国時代の軍艦)みたいでした。
「さて、どうかいのう。ただ、あれを張るのはなかなか難儀じゃった。とにかく重たいからのう。それに、わしゃ幕府から結構な金子を借用したで、それもあって叶(かの)うたちゅうこっちゃ」
今、『福山城築城400年記念基金 よみがえらせよう、福山城の魅力! -令和の大普請-』ということで、ご城下の福山市が寄附の呼びかけをしているのです。幕府が融通してくれることはないですから、いえ、そもそも幕府はありませんから、皆さんの力を合わせて福山城を元の姿に近づけようとしているのです。その目的のひとつは、天守北側の壁を鉄板張りにすること。
私もその姿を見たいと思うとります。じゃけぇ、ちまちまとお金を貯めようかと……お話を延々書かせてもろうとりますけぇな。大河の一滴にでもなればと(言葉がうつる)。
「おぅ、おぬし、可愛いことを申すのう」
ほめてもらっても今は何も出ません。
まぁ、そのようなこともございます。これからさらに盛り上がっていくご城下を、どうか見守ってくださいませ。
「まこと、重畳(ちょうじょう、このうえなく喜ばしいこと)なことじゃ」
⚫情報は下記からいただきました
http://www.shiroexpo.jp/point.html
(お城EXPOのみどころ)
https://shirobito.jp/article/947
(福山城の出展情報)
https://fukuyama400.jp/about/fund
(福山城のサポーター募集について)
※本稿の『殿』は架空ですが、どなたかはお分かりになるかと存じます。
おがたさわ
応援ありがとうございます!
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