水野勝成 居候報恩記

尾方佐羽

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<勝成ゆかりの場所>

勝成ゆかりの場所(岡山県編)

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◆水野勝成ゆかりの場所(岡山県編)

 岡山に縁のある皆さま、お待たせいたしました。
 →待ってはいないかと思いますが。

 「天下無敵の居候 六左衛門疾(はし)る」で主人公が居候しているのは岡山の成羽です。ここでほぼお話の半分を使っています。ですので、さぞかし資料があったのだろうと思われる方もいらっしゃるかもしれません。

 ありません。
 見つけられなかっただけかもしれませんが。

 いろいろ違う方向の資料から全く想像でお話を作りました。確かなことは下記だけです。

・三村一族全滅に近い戦いがあった(備中兵乱)。
・三村親成(ちかしげ)と親宣(ちかのぶ)親子は毛利方に付いて、一族を攻めた。
・水野勝成が鞆(とも)で黒田家から出奔(しゅっぽん)し、放浪の後三村家の食客(居候)になった。
・三村屋敷にはおさんとおとくと親良(ちから)がいた。
・おとくは藤井家の生き残りだった。
・おとくが勝成の子を産んだ。
・宮本武蔵が大坂夏の陣で勝成の子の隊にいた。

 これぐらいです。なので、前半はフィクションだと思ってください。当の本人が何も語っていませんし。ただ、出雲の阿国(おくに)の足取りとか地震があったこと(理科年表)はそれなりに調べました。直接勝成と関わりのない地もありますが、お話には出しましたので、あげます。

 勝成さん、ほめてくださいね。

 そんな著者による岡山県の舞台紹介です。もし思い違いがあったらご指摘ください。


《美作(みまさか)市》

 美作はまず、宮本武蔵です。彼は謎の多い人物ですが、播磨の武士の子で幼少時に美作の寺に預けられて新免(しんめん)家に養子に入ったと言われています。「バガボンド」(漫画)で見た方もいらっしゃるでしょう。井上雄彦さんの絵、いいですね。

 美作はおとくの父、藤井道斎(当時は小坂利直)が一家で暮らした場所です。藤井家の悲劇があって、小坂家に養子に出されたのですね。おとくは美作から成羽に奉公に出ました。

 もうひとつ、勝成は美作で刄傷(にんしょう)沙汰を起こしています。父親に奉公構(ほうこうがまえ、勘当以上の罰)を受けて西に向かう途上、投宿した安東家で六左衛門という人を斬ってしまいます。以降、彼は六左衛門と名乗るのです。

 彼はその頃とても「いきっとった」のかもしれませんね。あるいは反省していたのか、どちらでしょう。

 美作が重要人物ゆかりの地であることは間違いありませんが、場所がいまひとつ特定できません。武蔵ゆかりの地も少しあいまいですものね。


《常山城と児島》(玉野市と倉敷市)

 こちらは一転、瀬戸内海沿いになります。瀬戸大橋、近いですね。

 備中兵乱の際の常山城、上野隆徳と鶴姫の凄絶な最期については、いくつか本も出ています。本では子供たちも母親(鶴姫)の手にかかり亡くなったとされています。

 実はその子供たちが対岸の三宅氏に匿(かくま)われていたことが、「三村親成死す 備前児島にて」の節で明らかにされます。これは、三宅氏の子孫の方のサイト『三宅雅子のつれづれの記 ホームページ』 http://tmmiyake.sakura.ne.jp/13.htm を参考にさせていただきました。
 →こちらは参考資料に追記します。

 もし、この話を三村親成が知ったら、どれほど彼の心の救いになっただろうと私は思いました。ええ、本当に、タイムスリップして教えてあげたいぐらい。三宅氏が知らせてくれたらいいなあって、泣きながら書きました。

 長刀(なぎなた)を持って立ち向かった常山城の城主夫妻と侍女たちのお墓は今もその悲しいできごとを現代に伝えています。どうか、怖い場所と思わず、三村一族の悲劇や三宅氏の心情に触れてみてくださいませ。

 ちなみに三村一族の顛末(てんまつ)をおきよが語る部分は、ほぼ何も考えずにガーッと書きました。


《三村一族の城たち》

 いきさつは本編の「三村一族の悲劇 備中兵乱」でおきよが語っているとおりです。あれ以上は書けません。詳細はそちらをご覧ください。ここでは、現在の地名と照合します。

・猿掛城(岡山県小田郡矢掛町横谷)
・斎田城(岡山県真庭市下中津井)
・国吉城(岡山県高梁市川上町七地)
・楪(ゆずりは)城(岡山県新見市上市)
・鬼身(きのみ)城(岡山県総社市山田)
・(備中)松山城(岡山県高梁市内山下)
・常山城(既出、岡山県岡山市南区および玉野市の境に位置)

・松蓮寺(松山城主が自刃、岡山県高梁市上谷町)も付記します。

 よろしければお手持ちの地図をなぞってみてください。瀬戸内海から新見などの山間まで、現在の岡山県の半分を越える地を領していたのです。


《高屋・浅口・笠岡》(井原ーいばらー市、浅口ーあさくちー市、笠岡市)

 一方、備後と接する瀬戸内海沿いの一帯は藤井氏が治めていました。藤井氏は芳井(よしい)の地に拠点を置き室町時代に勢力を広げました。現在の井原市です。藤井一族の一豊姫ゆかりの消渇(しょうけつ)神社も井原市にあります。
 おとくの祖父、藤井皓玄(こうげん)は備後神辺(かんなべ)城の争奪戦に敗れた後、浅口まで逃げ落ちて自刃しました。藤井氏は吉備津神社の神職だったという話も見かけたように記憶していますが、確認はしていません。

 もし、岡山・広島にルーツを持つ藤井さんがいらっしゃいましたら、芳井が大事な場所だったのだとお心に留めていただけますと幸いです。

 笠岡もお話に書いてみました。三村親成と勝成が遠乗りをして、サワラやママカリを漁師にもらうのです。そこで親成は謡曲の「八島」を勝成に聞かせます。勝成は後年、能や謡曲をひいきにしますが、親成に教わった部分もあるのではないかと思いました。

 笠岡、カブトガニで有名ですね。


《吉備津神社》(岡山市)

 おさんが長吉を怖がらせた話に出てきます。
 吉備津彦命(きびつひこのみこと)が温羅(うら)という鬼を退治したときに首を切り落として埋めたけれど、ものすごい唸り声が止まなかったという伝承にもとづきます。そこに吉備津神社の御釜殿があります。そこで御釜で湯を沸かして出た音で吉凶を占う神事があります。
 上田秋成の「吉備津の釜」は怖いです。


《高梁(たかはし)川付近》(高梁市など県西部)

 お話に比較的よく出したのが県西部を流れる高梁川です。ここは大きな川です。成羽川もここに注いでいます。伯備線(はくびせん)に乗ると、素敵な景色を堪能(たんのう)できますよ。

 お話では、だいたい何かあると、六左衛門は川辺でぼけーっとするんですよね。そこに勝手知ったるおとくが呼びに来る、と。

 川から程近くに備中松山城(高梁市)があります。さきに述べたとおりです。急峻な山にたつ「天空の城」として取り上げられていますね。ここが三村氏の本拠地でした。後年、勝成の息子勝俊が城番として入ったことがあるようです。懐かしかったでしょうね。彼は成羽で生まれた子ですから。

 蛇足ですが、秀吉、勘兵衛が水攻めをして清水宗治を自害させた備中高松城とは別ですので取り違えられませんよう。


《成羽(なりわ)》※余分な話が多いかも

 六左衛門が逗留していた三村親成の領地、お屋敷があったところです。鶴首(かくしゅ)城というお城もありましたが、お屋敷のほうを拠点にしていたようです。お屋敷はもう残っていなくて、塀だけが残っているようです。かなり広かったとのこと。

 比較的近隣の吹屋、新見(にいみ)市もお話では出しています。名前でも気配がありますが、吹屋には銅山がありました。製錬してそうな地名です。新見は牛ですね。

 いまさらですが、私は成羽に行っていません。でも実は、すぐ近くまで行ったことがあったのです。備中神楽(びっちゅうかぐら)の取材のとき。あのときは岡山空港から同行者の車に乗せられて神楽師のかたのおうちにダッシュ。飛行機が遅れたせいですが、どこを通っているかさっぱりわからない。同行者は焦っていて聞ける雰囲気ではない(苦笑)。でも神楽のお話はとても面白かったです。八岐大蛇(やまたのおろち)に加え、大国主命(おおくにぬしのみこと)の面まで着けさせてしまい、恐縮でした。

 そのかなり後で「六左衛門」を書いているときに、「もしかして……」と思って取材で行ったところを見たら、成羽のすぐ下(地図で)でした。国吉城の辺りでしょう。
 備中神楽と田植え踊りは六左衛門が詫びを入れる場面で出てきます。

 以下、少し脱線します。

 岡山の出身だと言う方に、
「市内?」と聞いたら、山の方だというので、「新見とか?」と当てずっぽうで言いました。
「なんで知っとる?」とその方はびっくり。
「じゃ、八ツ墓村の近く?」と気軽に返したら、「違う!」と強硬に否定。その後で、「違うけど……映画のロケは来た」と。
 私は横溝正史が好きだって言いたかっただけなのですが……それにあれは津山の事件が元話だから村は架空なのに。

 後年分かりましたが、彼は成羽の人でした。ああ、鍾乳洞もあるし、ロケいいかも。というか、
 言ってよ、それ、と突っ込みたくなりました。すごく行きたいところなのに。

◆◆◆

 と、つれづれかつアバウトになってしまいました。岡山にはちょっと他では見られない地名があります。美作、高梁、弓削(ゆげ、今は愛媛の島しかないかな)、蒜山(ひるぜん)、足守(あしもり)、和気(わけ)、賀陽(かよう)……etc。私はなぜか、岡山とゆかりがないわりに初めから読めました。それは子供の頃に読んだ横溝正史さんと庄司浅水さんのおかげだと思います。弓削は間違いなく庄司さんの本が初見です。
 そのせいか、私は岡山の、特に山間(やまあい)の土地に強烈なデジャヴュがあります。

 言い方を変えるなら、「ご縁」でしょうか。

 さて、次回は九州と愛知と、どちらかになると思います。

【続く】
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