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その日からバイト終わりに店長が送ってくれる事が増え、店長との会話にも少しですが硬さが取れてきたようになっていました。

ある日、バイトに1人の綺麗な女性が現れ、カウンター越しに店長との会話で、知り合いなのだろうと察した頃、やっとこちらに気付いたように

「ふーん…あなたが新しい娘?」

「はい。よろしくお願いし…」

「まだ子どもじゃない。もう1杯頂戴」

私の言葉を遮り、店長へとの会話に戻っていました。

「もう今日はやめとけ」

「いいから、お願い」

綺麗な女性は素人の私が見ても、入店時から酔っていて、この店で更に酔いを増していました。

見かねてキッチンからロン毛のイケメンが

「店長、今日はもう人も来ねーだろうし、オレが閉めておくから、送ってやれよ」

「ああ…悪い、頼んだ」

そして2人を見送り、店仕舞いを終えると

「今日は早いし、送ってやるよ。飯でも食おうぜ。」

そう言って私のアパートに近いファミレスで

「あの2人今頃ヤッてるよ」

「ブッ!」

いきなりの言葉に口に含んだ水を勢いよく吹いていました。

「ショック?」

「いや…開口一番のソレに驚いただけで、感覚的にはしっくり来たような…なるほどと思ってます」

お店での2人の雰囲気は色気があったというか、妖艶な空気は何となく感じ取れていたのだと納得がいきました。

「店長の事好きなんじゃねーの?」

「好きですけど、そういった好きとはまた違いますよね。バイトの皆さん同じ好きですし、そもそもなんかレベルが違う感じしかしない」

「ふーん」

納得がいかなそうなロン毛はさらに

「それにしちゃ最近店長とイイ感じじゃね?」

「それ以前が、冷め覚めしてません?このバイト」

バイトを始めてから、挨拶以外の会話をしたのが、ロン毛に至っては今日が初めてでした。

「まぁね。みんな話好きって訳じゃねーし。その方がやりやすかったりするかんな」

言ってもこの時点で、ロン毛の名前すら覚えていないけれども、聞く事も出来ずに、バレないように話を聞く姿勢でいると、話す相手が出来たからか、意外にも口軽く店長と彼女について話出したのです。

「あの人は店長の元カノ。今でも店長じゃないとダメみたいで、毎回ああなるまで粘るんだよね」

「お似合いですけどね」

「まぁね。オレも店長に戻ればって言ったけどなんでかダメなんだってさ」

「へー」

「で、今日言いたかったのは、店長は止めとけって事」

「止めるも何も、どうなるつもりもないですよ」

「へー。店長は?」

「元カノがあんなに綺麗で、戻りたがってるのに、わざわざこんな子娘に行かないでしょ
以前酔っ払いに絡まれて、それから送ってくれるようになっただけですよ」

「………どんくらい?」

「1か月くらいですかね」

「そっか。じゃ、余計なお世話だったな」

そう言うとファミレスを出て、アパートまで送ってくれたのです。

いつもどおり私の部屋のドアにあるビニール袋を階段の手摺りに移すと

「何ソレ?」

「ああ、いつも誰か間違えてるみたいで」

「え?ヤバくね?」

「明日になったら無くなってますよ」

「イヤ…中身」

「えーっと今日は………っ!?」

中身を見て、咄嗟にビニール袋を閉じていました。

「ちょ…ここじゃまずいし、どっかの店でもまずいし…ちょっと1回…とりあえず部屋入れ。この際オレも安全だと信じて入れろ」

放心状態の私から鍵を奪って、片付けも出来ていない部屋へと押し込むように入ると、私と自分の靴を玄関口で脱ぎ捨てました。

リビングのソファーに私を座らせ、自分は床に胡座で座り、ビニール袋を私の手から奪うと、中身を床に取り出します。

クシャっと畳まれた布地の小さなピンクの水着と、男性の形をした黒いバイブ、ソレ用の電池がコロコロと4つ

バイブはビニール袋から透けていて、ロン毛はソレでヤバいと気付いたんだと思います

いつから中身がそんなモノになっていたのか

気付いた住人もいたのでしょうか
ロン毛に説明しようにも言葉にならなくて、彼が質問する事に、首を縦に振るか横に振るかで意思の疎通が出来たのです。

「心当たりは…?」

「ありません」

やっと答えられたのはそれだけで、本当に心配から

「泊まる」

と言ってくれたのですが、頭の整理をしたいので

「大丈夫か?何かあったら直ぐ連絡しろよ」

と何度も言ってくれたロン毛を見送ったのでした。


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