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しおりを挟むキャンパスまで自転車で10分弱のアパートは、中央に吹き抜けの外階段がある2階建てです。
左右1階2階にそれぞれ1世帯ずつ、計4部屋があり、向かって左側の1階にあたる101号室が私の部屋でした。
今思えば、女の1人暮らしにはセキリュティが甘いと思いますが、大家さんの家が斜め前にあり、砂利を敷いた車1台がギリギリ入れる通路を通って敷地内に入って来る人は、住人とそれに用事がある人と、配達の人しかいないだろうと思っていたし、実際そこで誰かに会った記憶もありません。
気の良いおばあちゃんという言葉がぴったりな大家さんには引越しの日に挨拶に行きましたが、他の住人はすれ違うどころか、どんな人達だったのかすら知りませんでした。
お風呂とトイレが別の1DK
入ってすぐに広いキッチンとダイニング
正面奥にトイレとその横にバスルーム
左側には引き戸があり、ベットを置いてもリビングと呼べるくらいの広さがある部屋が広がります。
シャッター付きの窓の外にはベランダのようなスペースもあり、自転車も置けるし、布団も干す事が出来ます。
その間取りと広さが気に入ってそのアパートに決めたのです。
そことキャンパスへの往復の日課にキャンパス近くにあるバイト先のショットバーが追加され、その日はいつもより上気した気持ちでアパートを後にしました。
出会ってまだ日の浅い級友、先輩たちにもアルバイトをする事を告げ、ちょっと飽きてきたと思っていた遊びの誘いも、今まで通りいつでも行けるわけではないと認識してもらう事が出来ました。
スタッフは私を含め4人
店長とキッチン担当の男性とホールとバーテン掛け持ちの女性
彼女とは働き出して1ヶ月後に初めて会った程、一緒になる事がありませんでしたが、ショートヘアが似合う健康的な小柄な美人という印象を受けました。
キッチンの男性は長い髪を後ろで纏めたヒゲの似合うややワイルドなイケメンで、店長は黒髪をオールバックにした、Tシャツとデニムの似合う綺麗なイケメン。
挨拶はしたものの、名前も年齢も知らないまま、おそらく20代半ば~30代前半の彼らと一緒に働いていたのです。
お店は1日を2人か3人で回せる程『ヒマ』で、これで経営が成り立つのかとうっすら思う事もありました。
私の仕事は、オーダーを受けてそれを運ぶだけ。
最後に片付けと洗い物をして、店長と並んでグラスを綺麗に拭き上げて1日の業務は終了です。
その日から深夜に帰宅する私の部屋のドアノブに、ビニール袋が掛かり始めたのです。
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