12 / 16
12
しおりを挟む
ハナさんの教えてくれたマンションの1室のドアの前、
想像とは違っていた
マンションは思っていたより古く、指定の部屋は、マンションの立地と構造上、おそらく半地下のようになっているのであろう
「ブスのババアでこんな場所に住んでるなんて惨めだねwwwきっと欲求不満だよ」
ボディチェックを終えた藍の鬱憤も下がる程だった
でもおかしい
ハナさんの雰囲気と、あの車に似つかわしくない
でもハナさんは言ってた『私の事何にも知らないでしょ』がこう言う意味だったのなら、敦の気持ちを軽く見積もっていたんだと思う
ここに住んでいるのだとしても、ハナさんへの気持ちは変わらない
今は只々ハナさんの身が心配だ
藍の方だが、敦への執着と怒りより、ハナさんへの怒りが優っているようだ
僅かに怒ってはいるけれど、今日、ハナさんを叩き潰して、敦との関係を取り戻す物語を描いているのだろう
予想よりも大人しい藍の振る舞いも、勝ちを確信しているからな気がする
敦は少しだけ期待を浮かべた
ブスのババアだと思っている藍の目の前にハナさんが現れたら…?
それでも藍は認めないだろう
僅かな期待は浮かんで消えた
恐る恐る、2人の出会いをなるべく遅らせたいと思いながら、そしてその時間が早く過ぎますようにと願いゆっくりとインターフォンを押し込んだ
ドア越しにインターフォンの音がなったのが聞こえた
「藍、わきまえろよ?」
「敦は藍に意見出来る立場じゃないから」
嫌な予感しかしない
それなのに、その暗い部屋のドアは内側から大きく開け放たれてしまった
「ふふっいらっしゃい」
「…………」
飛びかかるかもしれないと、背中から肩を押さえていたのに、藍は微動だにしなかった
「入らないの?」
あぁ…なんて美しいんだろう
こんな暗い場所なのに、ハナさんはいつもにも増して美しいオーラを放ちながら
敦達を誘うように部屋の中に消えていった
「どうする?藍」
「行く…行くに決まってんでしょ!」
ブスではなかったハナさんに1度は圧倒されたのだろうが、やっぱり認めないつもりだろう
「お邪魔します」
光を取り入れ難い部屋は薄暗く、昼間なのに電気がついている
狭い玄関の先にキッチンとダイニング
ちょっと古びたダイニングテーブルで優雅に紅茶を淹れているハナさんだけが、部屋から浮いている
「ふふっ。ここね、知り合いが貸してくれたの。
座って、お茶どうぞ」
どうりで、ハナさんとの違和感があり過ぎる訳だ
ハナさんは藍の感情を知ってか知らずか、ちょっと嬉しそうにも見える
「はぁ?のんびりお茶しに来たと思ってんの?」
「え?だって、私を見たら納得したでしょ?」
そうか!藍が納得したら、この討論は終わりだ
藍がハナさんをブスのババアだと認めたら、敦との浮気も無かったと証明される
でも、残念ながらハナさんは美しい
それ故、認めなければ、藍はハナさんが美しい女性だと認める事とイコールで
それは藍にとって恐らく屈辱でもあるはずだ
藍はハナさんを叩く理由を失って、握り拳を震わせている
きっと悔しいんだろう
「敦くんと私は浮気なんてしてないの、分かってもらえた?」
「うるさい!ババアが調子乗ってんなよっ!」
「藍!止めろっ!」
カシャーン!
藍はハナさんが淹れたお茶のカップを迷わずハナさんにぶつけようと投げつけた
だが、敦が持ち前の反射神経でカップを弾いたのだ
壁にぶつかって割れたカップ
「紅茶は温めにしておいたけど、敦くん大丈夫?」
こんな事は予想済みだとも取れる
「はい…」
ハナさんは大丈夫なのか確認したかったが、名前を言うのは躊躇われた
敦が取り押さえている藍はまだ怒りで震えている
「敦は…こんなババアが良いわけ?」
「ババアじゃないだろ」
「ふふっ いいの、敦くん。私はババアだよ」
「ほらっ!ババアじゃん!」
「藍っ!いい加減にしろって!」
「ううん。良いの。敦くん。言いたい事全部言ってもらおう」
「ババアが人の彼氏に色目使ってんじゃねーよ」
「色目かぁ…使ったのかなぁ…」
「藍。オレは色目なんて使われてない」
「うっさい!なんでこんなババアにっ!」
「綺麗だからだよっ!美しくて目が離せなかった!
藍なんかとは比べ物にならないくらい綺麗で……オレが勝手に好きになったんだ…
もう諦めろよ。藍だって分かってるんだろ?
ハナさんは綺麗で…藍は敵わないって…」
藍が怒りで震えている。もしかしたら屈辱でも震えているのかもしれない
「ババアのくせに…」
藍がハナさんを睨み続けている
何かするつもりなのか?
敦は藍の肩を握る手に力を込めた
「ふふふふっ」
「!」
意外にもハナさんの方が、おかしいとばかりにクスクス笑い出した
藍を煽っていると思われても仕方ない
「笑ってんじゃねぇババアッ!!」
「待てって!」
前に踏み出した藍を慌てて抱き抱えて止めた
なのにハナさんはその藍の息の荒い鼻先までゆっくり顔を寄せ
「そうだよ。ババアなの。
貴方達が思っているよりずっとババアだと思うわ
だって華のママだもの」
「!」
「!」
「藍ちゃん、可哀想ね。
彼氏がママと同じくらいのババアに夢中になるなんてねぇ、どんな気持ち?」
『私の事何にも知らないでしょ』
敦は本当にハナさんの事を何も知らなかったんだと実感させられていた
想像とは違っていた
マンションは思っていたより古く、指定の部屋は、マンションの立地と構造上、おそらく半地下のようになっているのであろう
「ブスのババアでこんな場所に住んでるなんて惨めだねwwwきっと欲求不満だよ」
ボディチェックを終えた藍の鬱憤も下がる程だった
でもおかしい
ハナさんの雰囲気と、あの車に似つかわしくない
でもハナさんは言ってた『私の事何にも知らないでしょ』がこう言う意味だったのなら、敦の気持ちを軽く見積もっていたんだと思う
ここに住んでいるのだとしても、ハナさんへの気持ちは変わらない
今は只々ハナさんの身が心配だ
藍の方だが、敦への執着と怒りより、ハナさんへの怒りが優っているようだ
僅かに怒ってはいるけれど、今日、ハナさんを叩き潰して、敦との関係を取り戻す物語を描いているのだろう
予想よりも大人しい藍の振る舞いも、勝ちを確信しているからな気がする
敦は少しだけ期待を浮かべた
ブスのババアだと思っている藍の目の前にハナさんが現れたら…?
それでも藍は認めないだろう
僅かな期待は浮かんで消えた
恐る恐る、2人の出会いをなるべく遅らせたいと思いながら、そしてその時間が早く過ぎますようにと願いゆっくりとインターフォンを押し込んだ
ドア越しにインターフォンの音がなったのが聞こえた
「藍、わきまえろよ?」
「敦は藍に意見出来る立場じゃないから」
嫌な予感しかしない
それなのに、その暗い部屋のドアは内側から大きく開け放たれてしまった
「ふふっいらっしゃい」
「…………」
飛びかかるかもしれないと、背中から肩を押さえていたのに、藍は微動だにしなかった
「入らないの?」
あぁ…なんて美しいんだろう
こんな暗い場所なのに、ハナさんはいつもにも増して美しいオーラを放ちながら
敦達を誘うように部屋の中に消えていった
「どうする?藍」
「行く…行くに決まってんでしょ!」
ブスではなかったハナさんに1度は圧倒されたのだろうが、やっぱり認めないつもりだろう
「お邪魔します」
光を取り入れ難い部屋は薄暗く、昼間なのに電気がついている
狭い玄関の先にキッチンとダイニング
ちょっと古びたダイニングテーブルで優雅に紅茶を淹れているハナさんだけが、部屋から浮いている
「ふふっ。ここね、知り合いが貸してくれたの。
座って、お茶どうぞ」
どうりで、ハナさんとの違和感があり過ぎる訳だ
ハナさんは藍の感情を知ってか知らずか、ちょっと嬉しそうにも見える
「はぁ?のんびりお茶しに来たと思ってんの?」
「え?だって、私を見たら納得したでしょ?」
そうか!藍が納得したら、この討論は終わりだ
藍がハナさんをブスのババアだと認めたら、敦との浮気も無かったと証明される
でも、残念ながらハナさんは美しい
それ故、認めなければ、藍はハナさんが美しい女性だと認める事とイコールで
それは藍にとって恐らく屈辱でもあるはずだ
藍はハナさんを叩く理由を失って、握り拳を震わせている
きっと悔しいんだろう
「敦くんと私は浮気なんてしてないの、分かってもらえた?」
「うるさい!ババアが調子乗ってんなよっ!」
「藍!止めろっ!」
カシャーン!
藍はハナさんが淹れたお茶のカップを迷わずハナさんにぶつけようと投げつけた
だが、敦が持ち前の反射神経でカップを弾いたのだ
壁にぶつかって割れたカップ
「紅茶は温めにしておいたけど、敦くん大丈夫?」
こんな事は予想済みだとも取れる
「はい…」
ハナさんは大丈夫なのか確認したかったが、名前を言うのは躊躇われた
敦が取り押さえている藍はまだ怒りで震えている
「敦は…こんなババアが良いわけ?」
「ババアじゃないだろ」
「ふふっ いいの、敦くん。私はババアだよ」
「ほらっ!ババアじゃん!」
「藍っ!いい加減にしろって!」
「ううん。良いの。敦くん。言いたい事全部言ってもらおう」
「ババアが人の彼氏に色目使ってんじゃねーよ」
「色目かぁ…使ったのかなぁ…」
「藍。オレは色目なんて使われてない」
「うっさい!なんでこんなババアにっ!」
「綺麗だからだよっ!美しくて目が離せなかった!
藍なんかとは比べ物にならないくらい綺麗で……オレが勝手に好きになったんだ…
もう諦めろよ。藍だって分かってるんだろ?
ハナさんは綺麗で…藍は敵わないって…」
藍が怒りで震えている。もしかしたら屈辱でも震えているのかもしれない
「ババアのくせに…」
藍がハナさんを睨み続けている
何かするつもりなのか?
敦は藍の肩を握る手に力を込めた
「ふふふふっ」
「!」
意外にもハナさんの方が、おかしいとばかりにクスクス笑い出した
藍を煽っていると思われても仕方ない
「笑ってんじゃねぇババアッ!!」
「待てって!」
前に踏み出した藍を慌てて抱き抱えて止めた
なのにハナさんはその藍の息の荒い鼻先までゆっくり顔を寄せ
「そうだよ。ババアなの。
貴方達が思っているよりずっとババアだと思うわ
だって華のママだもの」
「!」
「!」
「藍ちゃん、可哀想ね。
彼氏がママと同じくらいのババアに夢中になるなんてねぇ、どんな気持ち?」
『私の事何にも知らないでしょ』
敦は本当にハナさんの事を何も知らなかったんだと実感させられていた
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた
楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。
この作品はハーメルン様でも掲載しています。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』
コバひろ
大衆娯楽
前作 “雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ”
(全20話)の続編。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/329235482/129667563/episode/6150211
男子キックボクサーを倒したNOZOMIのその後は?
そんな女子格闘家NOZOMIに敗れ命まで落とした父の仇を討つべく、兄と娘の青春、家族愛。
格闘技を通して、ジェンダーフリー、ジェンダーレスとは?を描きたいと思います。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる