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24話 淡い夏休み①

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今更だが、ここ、イーライ国には日本と同様に四季が存在する。

そして、俺が在籍している魔法学園は、四季に合わせて春季休暇、夏季休暇、秋季しゅうき休暇、冬季休暇が設けられている。

そして期末テストが終了した今、一番長い休みである夏季休暇が始まった。

休暇中は全寮メインテナンスを行う為、寮への立ち入りは禁止となる。その間生徒の皆は帰郷したり、旅行へ行ったり、短期留学をしたりする。

俺は特に行きたい場所は無いので、夏休みの間は自宅へ帰って魔法の開発をしたりダンジョンで魔法の練習をしたり・・・久しぶりに父さんや母さんと共にゆっくりとくつろごうと思っていた。





「ただいまー。」

「あら、おかえりなさい。早かったのね。学校はどうだった?大変でしょう?」

屋敷と呼ぶには小さいが、周囲の民家と比較して立派な家に帰宅した時に出迎えてくれたのは母さんだった。

父さんは、家が大きすぎると落ち着かないと贅沢な悩みを言い、一財産を築き上げた者としては小さな家に住んでいる。
その為、たまにメイドを一人雇ったりはするが、家事は全て母さんと俺が行っていた。

「ん。確かに大変だけど問題ないよ。荷物置いてくる。」

そう母さんに伝え、荷物を自分の部屋である二階の奥室に置きに行った。部屋は綺麗な状態に保たれており、布団は干したての様で心地いい匂いがする。

久しぶりの実家は落ち着くな。今の内に荷物の中身でも整理しておくか・・・。





寮から持ってきた荷物をある程度整頓し終えた後、リビングへ行きソファーに腰掛けて一息つく。

机の上にはティーセットと母さんが作ったであろうお菓子が置いてある。
そういえばお腹空いたな、と思っていたら、後ろからお茶を注いでくれた。

「ライ、遅かったですね。おかえりなさい。」

ノアディアが。

「なっ!?なんで俺の家にいるんだよ!?」

驚いて声が裏返る。一体いつから居たのだろうか・・・俺の家に来るだなんて事、聞き及んでいないんだが!?

「あら?ライちゃんのお婿さんだって言っていたけれど、違うのかしら?お友達?」

「はっ!?・・・母さんに変な事吹き込んだなお前!!」

お婿って何だよ!もしかして、かなり前に言った「俺がお前のお嫁さんだ」発言をまだ覚えているのかよ!!もう忘れてくれないかな。本当。言い間違えたんだって、あの時は・・・。

「お義父様にもご挨拶をしたかったのですが、どうやら今は仕事に行かれている様ですね。」

「父さんにもおかしな事言うつもりなのか!!」

「あらあら、仲がいいわね。よかったわ。ライちゃんの初めてのお友達ね。お母さん大歓迎よ。」

人を万年ボッチ扱いするなよ!今まで友達の一人や二人くらい・・・ああ、いたことないんだった、現世では。だって仕方ないだろ・・・こっちの世界に来てからはほとんどの時間を魔法の習得にてていたんだから・・・。

それとノアディアの前でライちゃん呼びは止めてくれ母さん。

「そうですか、私が初めての友達ですか。・・・ならば友人という立ち位置もやぶさかではありませんね。」

いや、友達扱いしたことあったか!?でもまあ・・・俺も別に嫌では・・・

「ノアディア君、よかったら今日泊まっていって。これからライちゃんと夕飯の準備をするけれど、くつろいで待っていてね。」

「お、おい母さん!泊まるってどの部屋に」

「ライちゃんのお部屋に決まっているでしょう?ベッドも広いし丁度いいじゃない。」

確かにベッドは大きい物を買って貰ったけれど、それは俺の寝相が悪いからであって、友達を泊めるためとかの目的じゃないんだって!
寝間着だって特殊なヤツだし、俺の部屋には見られたくない物達が・・・

「母さん、でも、」

「お友達は大切にしないと駄目よ?」

笑顔で威圧してくる母さん。逆らえそうになさそうだ。

「わ、分かった。制服とか譲って貰ったりしたからな。今回だけだぞ!」

楽園同じ部屋、ですか・・・いいのですか?お義母様?」

何で母さんに許可取るんだよ。俺に許可取れよ。
それとお母様呼びって、言い方は丁寧なのにちょっと馴れ馴れしく感じるな。何故だ。

「ええ、特別よ?」

母さんもノリノリじゃないか。しかも妙に親しげなんだが。

「せめて客室とかには・・・。」

同じ部屋だとちょっと・・・眠れないと思うんだが・・・俺。

「ダメよ。ライちゃん、あなたの持ってきた大量の魔法石やら薬草やら財宝やらで散らかってるんだもの。」

う、うわ。そうだった。春休み家に帰ってきた時、ダンジョンで獲得した物、換金するのが面倒くさくなって散らかしたまま学校に行っちゃったんだった。

「ああ、そうね、もしかしてその部屋の掃除を「あー!ノアディア、今日の晩御飯は何が食べたい?何でも作れるから任せておけ!」

ノアディアを自室まで誘導しながら母さんの言うことを最後まで聞かなかったことにする。
上手くお茶を濁すことは出来ただろうか・・・。母さんは相変わらず怖いな。
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