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3話 実技テスト①

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アイツからポプリを貰ってからは安眠できているお陰か、最近調子がすこぶる良い。

そして気が付きたくはなかったが・・・このポプリ、どうやらアイツが自作した物らしい。
何故気が付いたのかといえば、ポプリからほんの少しアイツの魔力を探知してしまったからだ。

恐らく、眠りの魔法か何かを付与したのだろう。この世界は、魔法は物に対しても使える。物理強化の魔法を剣に付与して使ったり、杖に対しては魔法強化を付与したりする。

その応用でもしたのだろう・・・来年の授業の範囲であったと思うが、アイツのことだ・・・とっくとうに習得していたのだろう。くっ、悔しい・・・。それにポプリって・・・ギャップ!!くっ、別にドキッとなぞしていない・・・!!





そういえば、今日は魔法の実技テストのある日だ。
俺は将来王国魔術師となるべく、常日頃から努力をしてきたが・・・残念ながら、実技も筆記も全て二位なのだ。

だが、今回の実技はダンジョン攻略であり、2人1組のペアを組んで攻略していく、というものである為、上手く立ち回れば一番に攻略できるかもしれない。

それに、今回は高難易度のダンジョンである為、特別どんな魔法を使用しても良いとのことだったので、思う存分アイツよりも好成績となるようにしよう!と、ついさっきまで意気込んでいたのだが・・・

「またペアになりましたね。今回も宜しくお願い致します。」

何故だ!いつもクジ引きでペアを決めるのだが、毎回毎回コイツとペアになってしまう。

一度何かの魔法でも使ってるのかと邪推したが、どうやら完全に俺の運が無かっただけの様だった。

今回は流石に別の人だろうと思ったのだが、こうなったら仕方がない。コイツよりも多くの宝を見つけ、多くの魔物を退治してやろう!

と、奮起したのはいいものの・・・

「ファイ」

「ファイアーボ厶」

「ウォ」

「ウォーターオール」

「ウ」

「ウィンドジャッジ」

魔法を唱える前に全部全部コイツに先読みされ、敵を倒されてゆく。
コイツとペアを組むといつもこうなる。活躍する暇もなく何でもやってのけてしまう。しかも本当は無詠唱で魔法を使えるのを、俺だけは知っている・・・。普通は詠唱をしなければ魔法は使えないはずなのだが。無敵すぎないか?

詠唱に関しては遅れをとっているが、見くびるなかれ。今の俺はひと味違う。なぜなら・・・時間停止魔法が使えるからだ!

「どうしたら無詠唱以上に早く魔法を使えるんだ?」

「無詠唱よりも早く魔法を打てるとしたら、時間を止める位ですかね・・・ですが、そんな魔法には・・・」

そう随分前にノアディアから情報を聞き出し、時間を止める魔法を習得する決意をしたのだ。

今こそ俺の実力を示す時だ・・・!そう思い、ラスボス部屋に辿り着いた所で時間を止める。

「タイムアウト!」

周囲の時間は完全に停止し、ラスボスが姿を見せる。


はずだった。

「っ!?」

ラスボス部屋に到着したが、そこはまるで氷山の中であるかのように凍てついており、瞬時に体の体温が奪われていく。
咄嗟に火の玉を魔法で作ろうとしたが、無謀に終わった。どうやらここでは炎系の魔法は使えない様だ。

「まさか、時間制限ありのラスボス部屋とは・・・リスタート」

このままでは凍死してしまうと思い観念し、時間を進める事にした。本来ならば、ノアディアがラスボスを討伐する前にどうにかして先にトドメを刺し、手柄を頂こうとしたのだが・・・。ラスボスに関しての情報収集不足により計画が頓挫とんざしてしまった。

「ここは・・・かなり寒いですね。早めに決着をつけましょう。」

「そ、うだな。」

ノアディアよりも何分間か長く極寒の中に居たせいか、身体から熱が奪われていくスピードが速い。

「ライ?大丈夫では・・・なさそうですね。こちらのコートを着て少し待っていて下さい。」

そう言って、着ていたコートを素早く脱ぎ、俺に掛けてくれた。
なんだ、コイツ、俺の事をそんなに・・・





・・・そんなに子供扱いして、やっぱり嫌がらせか!!??

「ありが、とう。」

兎も角、このままでは動こうにも動けない状況であるので、有難くコートを拝借することにした。

脱ぎたての為か、ほんのりと暖かいコートに少しドギマギしてしまったが、俺もボス戦に参加し、活躍して一泡吹かせてやろうと己を律した。
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