590 / 603
味覚の話
しおりを挟む
ある日、突然現れた謎のウマ娘によって自身の運命を狂わされた主人公の青年は「この先に起こるであろうこと」を知っていながらも、その正体を知ることなくレースに参加させられていく。
また、彼がトレーナーとして指導していくと何故かトゥインクル・シリーズの重賞レースで次々と勝利し始めてしまうという摩訶不思議な現象が起きてしまい、彼はその原因を知るために奔走していくことになるのだが......それはまた別の物語である。
【本編完結】take me to paradise.ーscenario of the story - episode1; giii-part(side
blue) - ンはトレセン学園から少し離れた場所にあるとある喫茶店に立ち寄っていた。
「ご注文は何でしょうか?」「えっと、この店で一番安いコーヒー一つでお願い出来ますか?
それと持ち帰り用のケーキを二つお願いします!」「承知しました!
少々お待ち下さい!」 店員が去って行った後、ブルーフレイムは店の壁に掛かっている時計に目をやる。 (そろそろ約束の時間なんだけどな~......)
「......遅いなぁ......」 そんな呟きと共に溜息を零したその時だった――
「ごめーん!!!遅れたぁ!!!」 勢いよく扉を開けて一人のウマ娘が入って来る。彼女の名前は『ハルウララ』。今年入学した新入生の一人であり、彼の同期生でもある。彼女は遅刻してきたにも関わらず悪びれる様子もなく笑顔を浮かべる。
「おはよう!!今日も良い天気だね!!」「いや、まだ朝だし曇りだけど......?」 いつもの調子の彼女に対して呆れつつも、ブルーフレイムはいつもと変わらない彼女に思わず笑みを零す。 「相変わらず元気そうだねハルウララちゃん。今日は大事な日だからちゃんと起きてくると思ってたんだけど?」 「うっ......!
だってぇ~......!」 そう、何を隠そう今日は彼女との待ち合わせの約束をしていたのだ。しかし昨日行われた選抜レースに出走するための練習により夜遅くまで疲れ切ってしまっていて起きることが出来なかったのだ。そのためこうして遅れてしまったのである。 「はぁ......仕方ないなぁ。まぁいいよもう慣れたことだしね。それで今日の要件って何か分かってるよね?」 「えっ!? い、いや~さっぱり分からないよ~」 「............」 そう言って誤魔化すように笑う彼女に対しジト目で見つめ返すブルーフレイム。すると暫くして再び口を開く。
「――君、今日何の日だか知ってるかい?」 「えぇっ!? う~~ん............ごめん!!やっぱり分かんないや!!」 「だと思った......」 予想通りの返答を聞いて苦笑いするブルーフレイム。しかしすぐに真剣な顔になると話を続ける。 「それじゃあ、教えてあげるよ。今日はね――」 今日は特別な一日となるはずの大切な記念日だ。故にその事をしっかりと伝えようと彼女を真っ直ぐ見つめる。 「10月11日はキミの誕生日だろう!?」
「正解~! 覚えててくれたんだぁ~!!」 「そりゃもちろんだよ!
君が初めて出会った時に教えてくれたじゃないか」 実際彼女と再会してからはその日付を意識しており、以前一度だけだが誕生日について話した事があった。その際ハルウララがお祝いとして手作りのプレゼントを渡してくれたことは記憶に新しい。「えへへへ~♪何だか照れちゃうねぇ~♪」 その時のことを思い出したのか顔を赤らめると頭を掻くハルウララ。どうやら余程嬉しかったらしい。そんな彼女に釣られて自身も笑みを浮かべるブルーフレイム。 「さてと、じゃあ改めて――お誕生日おめでとうハルウララさん(・・・・・)!」 この日のために用意した誕生日プレゼントを手渡すと彼女は満面の笑みを浮かべてお礼を言う。
「ありがとう!!――お兄ちゃん!!」 その瞬間、彼は見惚れてしまった。普段は人懐っこくて誰にでも優しい彼女が見せた無邪気で心の底から楽しんでいる笑顔はまるで太陽のように眩しすぎたのである。それはまさに彼を魅了するには充分すぎる程の破壊力を持っていた。彼女の笑顔に魅せられた彼に更なる追い打ちがかかる。 「......ところでさぁお兄ちゃん? この服どうかな?
ハルウララちゃんに選んで貰ったんだけどさ」 そう言いながらその場で一回転した彼女が着ていたのは何時もの服装ではなく少し大人びたドレスであった。 「似合ってるかな......?」 普段とはまた違った雰囲気を持った彼女に戸惑う彼であったが、そんな動揺を隠しつつ感想を口に出す。 「よく似合ってるし可愛いと思うよ」 彼がそう言った瞬間、彼女は嬉しそうに微笑むと今度は彼の腕に抱きつく。いきなりの事で驚く彼をよそに彼女は上機嫌な
また、彼がトレーナーとして指導していくと何故かトゥインクル・シリーズの重賞レースで次々と勝利し始めてしまうという摩訶不思議な現象が起きてしまい、彼はその原因を知るために奔走していくことになるのだが......それはまた別の物語である。
【本編完結】take me to paradise.ーscenario of the story - episode1; giii-part(side
blue) - ンはトレセン学園から少し離れた場所にあるとある喫茶店に立ち寄っていた。
「ご注文は何でしょうか?」「えっと、この店で一番安いコーヒー一つでお願い出来ますか?
それと持ち帰り用のケーキを二つお願いします!」「承知しました!
少々お待ち下さい!」 店員が去って行った後、ブルーフレイムは店の壁に掛かっている時計に目をやる。 (そろそろ約束の時間なんだけどな~......)
「......遅いなぁ......」 そんな呟きと共に溜息を零したその時だった――
「ごめーん!!!遅れたぁ!!!」 勢いよく扉を開けて一人のウマ娘が入って来る。彼女の名前は『ハルウララ』。今年入学した新入生の一人であり、彼の同期生でもある。彼女は遅刻してきたにも関わらず悪びれる様子もなく笑顔を浮かべる。
「おはよう!!今日も良い天気だね!!」「いや、まだ朝だし曇りだけど......?」 いつもの調子の彼女に対して呆れつつも、ブルーフレイムはいつもと変わらない彼女に思わず笑みを零す。 「相変わらず元気そうだねハルウララちゃん。今日は大事な日だからちゃんと起きてくると思ってたんだけど?」 「うっ......!
だってぇ~......!」 そう、何を隠そう今日は彼女との待ち合わせの約束をしていたのだ。しかし昨日行われた選抜レースに出走するための練習により夜遅くまで疲れ切ってしまっていて起きることが出来なかったのだ。そのためこうして遅れてしまったのである。 「はぁ......仕方ないなぁ。まぁいいよもう慣れたことだしね。それで今日の要件って何か分かってるよね?」 「えっ!? い、いや~さっぱり分からないよ~」 「............」 そう言って誤魔化すように笑う彼女に対しジト目で見つめ返すブルーフレイム。すると暫くして再び口を開く。
「――君、今日何の日だか知ってるかい?」 「えぇっ!? う~~ん............ごめん!!やっぱり分かんないや!!」 「だと思った......」 予想通りの返答を聞いて苦笑いするブルーフレイム。しかしすぐに真剣な顔になると話を続ける。 「それじゃあ、教えてあげるよ。今日はね――」 今日は特別な一日となるはずの大切な記念日だ。故にその事をしっかりと伝えようと彼女を真っ直ぐ見つめる。 「10月11日はキミの誕生日だろう!?」
「正解~! 覚えててくれたんだぁ~!!」 「そりゃもちろんだよ!
君が初めて出会った時に教えてくれたじゃないか」 実際彼女と再会してからはその日付を意識しており、以前一度だけだが誕生日について話した事があった。その際ハルウララがお祝いとして手作りのプレゼントを渡してくれたことは記憶に新しい。「えへへへ~♪何だか照れちゃうねぇ~♪」 その時のことを思い出したのか顔を赤らめると頭を掻くハルウララ。どうやら余程嬉しかったらしい。そんな彼女に釣られて自身も笑みを浮かべるブルーフレイム。 「さてと、じゃあ改めて――お誕生日おめでとうハルウララさん(・・・・・)!」 この日のために用意した誕生日プレゼントを手渡すと彼女は満面の笑みを浮かべてお礼を言う。
「ありがとう!!――お兄ちゃん!!」 その瞬間、彼は見惚れてしまった。普段は人懐っこくて誰にでも優しい彼女が見せた無邪気で心の底から楽しんでいる笑顔はまるで太陽のように眩しすぎたのである。それはまさに彼を魅了するには充分すぎる程の破壊力を持っていた。彼女の笑顔に魅せられた彼に更なる追い打ちがかかる。 「......ところでさぁお兄ちゃん? この服どうかな?
ハルウララちゃんに選んで貰ったんだけどさ」 そう言いながらその場で一回転した彼女が着ていたのは何時もの服装ではなく少し大人びたドレスであった。 「似合ってるかな......?」 普段とはまた違った雰囲気を持った彼女に戸惑う彼であったが、そんな動揺を隠しつつ感想を口に出す。 「よく似合ってるし可愛いと思うよ」 彼がそう言った瞬間、彼女は嬉しそうに微笑むと今度は彼の腕に抱きつく。いきなりの事で驚く彼をよそに彼女は上機嫌な
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
危険な森で目指せ快適異世界生活!
ハラーマル
ファンタジー
初めての彼氏との誕生日デート中、彼氏に裏切られた私は、貞操を守るため、展望台から飛び降りて・・・
気がつくと、薄暗い洞窟の中で、よくわかんない種族に転生していました!
2人の子どもを助けて、一緒に森で生活することに・・・
だけどその森が、実は誰も生きて帰らないという危険な森で・・・
出会った子ども達と、謎種族のスキルや魔法、持ち前の明るさと行動力で、危険な森で快適な生活を目指します!
♢ ♢ ♢
所謂、異世界転生ものです。
初めての投稿なので、色々不備もあると思いますが。軽い気持ちで読んでくださると幸いです。
誤字や、読みにくいところは見つけ次第修正しています。
内容を大きく変更した場合には、お知らせ致しますので、確認していただけると嬉しいです。
「小説家になろう」様「カクヨム」様でも連載させていただいています。
※7月10日、「カクヨム」様の投稿について、アカウントを作成し直しました。
転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す
エルリア
ファンタジー
【祝!第17回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞!】
転売屋(テンバイヤー)が異世界に飛ばされたらチートスキルを手にしていた!
元の世界では疎まれていても、こっちの世界なら問題なし。
相場スキルを駆使して目指せ夢のマイショップ!
ふとしたことで異世界に飛ばされた中年が、青年となってお金儲けに走ります。
お金は全てを解決する、それはどの世界においても同じ事。
金金金の主人公が、授かった相場スキルで私利私欲の為に稼ぎまくります。
転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー
芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。
42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。
下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。
約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。
それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。
一話当たりは短いです。
通勤通学の合間などにどうぞ。
あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。
完結しました。
竜剣《タルカ》
チゲン
ファンタジー
短剣を自在に操る竜剣(タルカ)術……その使い手ミランは、かつての師のもとを訪ねた。だが師は酒に溺れ、一人娘のセカイも別人のように明るさを失っていた。さらに突如現れた魔女に師は殺され、彼が所持していた伝説の赤の竜剣を奪い取られてしまう。
師の仇を討ち、奪われた赤の竜剣を取り戻すため、ミランとセカイは魔女を追う旅に出る。
2007年執筆。2018年改稿。
小説投稿サイト『ミッドナイトノベルズ』にて同時掲載中。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
さようなら、私の初恋。あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。
転生して異世界の第7王子に生まれ変わったが、魔力が0で無能者と言われ、僻地に追放されたので自由に生きる。
黒ハット
ファンタジー
ヤクザだった大宅宗一35歳は死んで記憶を持ったまま異世界の第7王子に転生する。魔力が0で魔法を使えないので、無能者と言われて王族の籍を抜かれ僻地の領主に追放される。魔法を使える事が分かって2回目の人生は前世の知識と魔法を使って領地を発展させながら自由に生きるつもりだったが、波乱万丈の人生を送る事になる
巻き込まれたおばちゃん、召喚聖女ちゃんのお母さんになる
戌葉
ファンタジー
子育てが終わりこれからは自分の時間を楽しもうと思っていたある日、目の前で地面へと吸い込まれていく女子高生を助けようとして、自分も吸い込まれてしまった。
え?異世界?この子が聖女?
ちょっと、聖女ちゃんは普通の女の子なのよ?四六時中監視してたら聖女ちゃんの気が休まらないでしょう。部屋から出なさい!この国、いまいち信用できないわね。
でも、せっかく異世界に来たなら、新しいことに挑戦したい。まずは冒険者ね!
聖女召喚に巻き込まれたおばちゃんが、聖女ちゃんの世話を焼いたり、冒険者になってみたりする話。
理不尽に振り回される騎士様の話も。
「悪役令嬢と私の婚約破棄」と同じ世界です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる