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立場逆転
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ある時、自分の力をコントロールできずに暴走する。
そして、主人公の少年と出会うことで本当の力に目覚めるが...... - 1-1. 第1話(2047/10/06) - ンは、ベッドの中で目を覚ました。「......夢、かぁ」
そうひとりごちて、大きく伸びをする。「んん~~~~~! 今日も良い天気!」 窓から差し込んでくる陽光に目を細めながら立ち上がると、部屋の壁掛け時計を見る。 針はまだ5時半を指していた。「さて、そろそろ準備しようかな?」 今日は平日だが大学の授業はなく、午前中はアルバイトも入っていないのでゆっくり寝ていても問題ないのだが――今日は少し事情が違うのだ。
「――今日のバイトが終わったらすぐに行くからね!
ちゃんと待ってるんだよ!!」 そう言って慌ただしく支度を始めるのは、このアパートの家主であり恋人でもある女性、水鳥川美羽だった。 彼女は朝起きると、すぐさま着替えや身だしなみを整えるなどして、まるで散歩に行くかのような軽い足取りで出掛けていく。 そんな彼女を見送って、青年も出かける準備に取り掛かる事にしたようだ。 彼はキッチンに向かうとお湯を沸かし始める。その間に、コーヒー豆を入れた袋を取り出してフィルターを通してミルに入れ始めた。「これでよしっと......」 作業しながら鼻歌まじりに独り言ちたのは、彼の大切な女性との出会いを思い出していたからだろう。 あれは今から2ヶ月前のことであっただろうか。 その日もいつものように朝早く起きて朝食を食べて食器類を片付けた後、洗濯を済ませた彼が部屋で一息ついているところに、突然彼女が現れたのである。それもただ遊びに来た訳ではなく、真剣な表情でやってきたのだ。『――ねぇ、翔也。あなたは今、幸せ?』 それは質問と言うよりも確認に近い響きを含んだ声だったが、それでも彼は自信を持って答えることができた。『うん、もちろん幸せだよ』
そんな会話をしたのが最後に彼女と別れた日のことである。それからというもの、彼女から連絡はなかったもののずっと心残りではあったのだろう。 今日こそは必ず彼女の元に行こうと考えていた彼は、ふと昨夜見た夢を思い出す......そう、それは昨日の出来事ではない別の日の記憶だった。 彼と彼女は、とても仲が良くお互いに信頼し合っており、将来を誓い合った恋人同士でもあった。そんなある日のことだった。彼女が彼に内緒で、同じ大学のとある男子生徒に想いを告白してきたのである。 当然彼は驚くと同時に、自分の前から好きな人を奪うつもりかと彼女に怒りを覚えたものだが、よくよく話を聞いてみればどうにも様子が違うようであった。 実は、今まで彼女を独占していた彼に対し、内心嫌気が差していたという。そして彼女はこう続けたのだ。『私だってこんな人生に不満はない訳じゃないわ。でもね、あなたが好きだからこそ私はあなたと別れることを決めたのよ』『えっ? それってどういう意味なのさ!?』『あなたに幸せになってもらいたいから。そのために、私があなたを自由にしてあげるわ!』『待って!
君は本当にそれでいいのかよっ!?』
彼は必死に止めたのだが、どうしても納得できなかった彼女はこう宣言したのだ。『あなたの気持ちはわかるけど、もう決めたことだから今更どうにもならないわよっ!』 この日から徐々に二人の関係が変わっていき、最終的に二人は結婚することになった。 幸せな日々が続いていた最中のこと......突如として彼の父親の体調が悪化してしまったのだ。 初めはただの偶然だろうと思っていた彼も、次第に不安を感じるようになったのである。 しかし、時が経つに連れて不安は大きくなり、遂に彼は父親と医者に相談することにしたのだ。『父さん、ちょっと相談があるんだけどいいかな?』『どうした、急に真剣な顔をして......』『うん......僕、最近妙な夢を頻繁に見るんだ。しかもその内容があまりにも鮮明なものばっかりなんだよ。このままだと僕は近い将来死んでしまうかもしれない。どうしたらいいかな......』『夢ってどんなだ......?』『えっと、まず夢の中では僕が父さんの代わりに殺されてるんだ。次に目が覚めて現実に戻ると、父さんや母さんも殺されていたりする......そんなことがほぼ毎日起きてて、いい加減怖いんだよ......』 息子が深刻そうな顔をして話してくるので、心配になった彼はすぐに息子を病院へ連れて行くことに決め、一緒に病院へ行く事にした。 そこで医師から告げられた病名は「魔人化」というものであった。『魔人化だとぉ――っ!?』 驚く彼を余所に、医師は淡々と事実のみを伝えるかのように説明を始めた。『はい、そうです。これは現代医学では到底治せない呪いのようなものです。おそらく、吸血鬼としての先祖返りによるものでしょう』 『先祖返りだってぇ!?』(だがおかしい......そんな話は聞いたことが無いぞ?) 彼の頭に次々と疑問符が湧いてくる中、医師の解説が始まる。『そもそも、普通の人間ならば数百年に一度ぐらいの割合でしか起こり得ない事なんです
そして、主人公の少年と出会うことで本当の力に目覚めるが...... - 1-1. 第1話(2047/10/06) - ンは、ベッドの中で目を覚ました。「......夢、かぁ」
そうひとりごちて、大きく伸びをする。「んん~~~~~! 今日も良い天気!」 窓から差し込んでくる陽光に目を細めながら立ち上がると、部屋の壁掛け時計を見る。 針はまだ5時半を指していた。「さて、そろそろ準備しようかな?」 今日は平日だが大学の授業はなく、午前中はアルバイトも入っていないのでゆっくり寝ていても問題ないのだが――今日は少し事情が違うのだ。
「――今日のバイトが終わったらすぐに行くからね!
ちゃんと待ってるんだよ!!」 そう言って慌ただしく支度を始めるのは、このアパートの家主であり恋人でもある女性、水鳥川美羽だった。 彼女は朝起きると、すぐさま着替えや身だしなみを整えるなどして、まるで散歩に行くかのような軽い足取りで出掛けていく。 そんな彼女を見送って、青年も出かける準備に取り掛かる事にしたようだ。 彼はキッチンに向かうとお湯を沸かし始める。その間に、コーヒー豆を入れた袋を取り出してフィルターを通してミルに入れ始めた。「これでよしっと......」 作業しながら鼻歌まじりに独り言ちたのは、彼の大切な女性との出会いを思い出していたからだろう。 あれは今から2ヶ月前のことであっただろうか。 その日もいつものように朝早く起きて朝食を食べて食器類を片付けた後、洗濯を済ませた彼が部屋で一息ついているところに、突然彼女が現れたのである。それもただ遊びに来た訳ではなく、真剣な表情でやってきたのだ。『――ねぇ、翔也。あなたは今、幸せ?』 それは質問と言うよりも確認に近い響きを含んだ声だったが、それでも彼は自信を持って答えることができた。『うん、もちろん幸せだよ』
そんな会話をしたのが最後に彼女と別れた日のことである。それからというもの、彼女から連絡はなかったもののずっと心残りではあったのだろう。 今日こそは必ず彼女の元に行こうと考えていた彼は、ふと昨夜見た夢を思い出す......そう、それは昨日の出来事ではない別の日の記憶だった。 彼と彼女は、とても仲が良くお互いに信頼し合っており、将来を誓い合った恋人同士でもあった。そんなある日のことだった。彼女が彼に内緒で、同じ大学のとある男子生徒に想いを告白してきたのである。 当然彼は驚くと同時に、自分の前から好きな人を奪うつもりかと彼女に怒りを覚えたものだが、よくよく話を聞いてみればどうにも様子が違うようであった。 実は、今まで彼女を独占していた彼に対し、内心嫌気が差していたという。そして彼女はこう続けたのだ。『私だってこんな人生に不満はない訳じゃないわ。でもね、あなたが好きだからこそ私はあなたと別れることを決めたのよ』『えっ? それってどういう意味なのさ!?』『あなたに幸せになってもらいたいから。そのために、私があなたを自由にしてあげるわ!』『待って!
君は本当にそれでいいのかよっ!?』
彼は必死に止めたのだが、どうしても納得できなかった彼女はこう宣言したのだ。『あなたの気持ちはわかるけど、もう決めたことだから今更どうにもならないわよっ!』 この日から徐々に二人の関係が変わっていき、最終的に二人は結婚することになった。 幸せな日々が続いていた最中のこと......突如として彼の父親の体調が悪化してしまったのだ。 初めはただの偶然だろうと思っていた彼も、次第に不安を感じるようになったのである。 しかし、時が経つに連れて不安は大きくなり、遂に彼は父親と医者に相談することにしたのだ。『父さん、ちょっと相談があるんだけどいいかな?』『どうした、急に真剣な顔をして......』『うん......僕、最近妙な夢を頻繁に見るんだ。しかもその内容があまりにも鮮明なものばっかりなんだよ。このままだと僕は近い将来死んでしまうかもしれない。どうしたらいいかな......』『夢ってどんなだ......?』『えっと、まず夢の中では僕が父さんの代わりに殺されてるんだ。次に目が覚めて現実に戻ると、父さんや母さんも殺されていたりする......そんなことがほぼ毎日起きてて、いい加減怖いんだよ......』 息子が深刻そうな顔をして話してくるので、心配になった彼はすぐに息子を病院へ連れて行くことに決め、一緒に病院へ行く事にした。 そこで医師から告げられた病名は「魔人化」というものであった。『魔人化だとぉ――っ!?』 驚く彼を余所に、医師は淡々と事実のみを伝えるかのように説明を始めた。『はい、そうです。これは現代医学では到底治せない呪いのようなものです。おそらく、吸血鬼としての先祖返りによるものでしょう』 『先祖返りだってぇ!?』(だがおかしい......そんな話は聞いたことが無いぞ?) 彼の頭に次々と疑問符が湧いてくる中、医師の解説が始まる。『そもそも、普通の人間ならば数百年に一度ぐらいの割合でしか起こり得ない事なんです
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