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第4章〜不死〜
37話
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「これはどうですか!」
「ただの落書きであるな」
「これならどうです!」
「シミだな」
「なんならこれはどうだぁぁぁあ!」
「絵画であるな」
「なんなんすかぁぁぁぁぁぁあ!!」
絶叫。猛獣の雄叫びに匹敵する音量で吠えたシオンは感情のままに拳で壁を粉砕した。
その姿は可愛らしい少女とはかけ離れた化け物じみたという感想しか抱かない。エルフに幻想を持っている者が見たら絶望するかもしれないな。
だから我が否定する度に物を壊すのはやめてほしい。じゃないとこれからはゴリラじゃくてデストロイヤーと呼ぶぞ。
とは思っても言っても聞かないだろうから心の中に留めておく。
「おいデストロイヤー。いい加減落ち着くのである」
「誰がデストロイヤーですか!」
くわっと振り返るシオン。やっべ、我ってば正直者!てへっ。
「オメーだ。オメー」
他に誰がいるというのか?我が爪の鋭くない部分でシオンの額をピンッと弾くと、自分の引き起こした被害を見てぐぬぬと黙り込む。
そりゃ火薬でも仕込んだかのように壁に大穴が空けば、誰だってシオンを破壊者と見てもおかしくはない。割とマジで。
「だって、これだけ探しても見つからないなんて」
まぁ愚痴りたくなる気持ちはわかる。半日探しても成果は出てないしな。
「姉さん。検定一級に受かったんじゃなかったの」
サエラが鋭くズバッと言い放つと、シオンはもういっそ清々しくなるほどのセリフで返したのだった。
「5年前の知識なんて覚えてるわけないじゃないですか」
お、お前ぇぇ。
「鶏かお前は」
「どっちかっていうと牛」
サエラがシオンの一箇所を凝視しながら我に合わせる。それはエルフではなく、淫魔ではないかと見間違う胸である。
「だ、誰が牛ですか!」
じーっと見られて急に恥ずかしくなったのか、顔を赤くして両手で隠しはじめたシオン。
そんなシオンにサエラが急接近し、目の前に立つとその眼科の前に真っ赤なハンカチを広げてみせた。
まぁた煽りよる。
「どー、どー。姉さん落ち着いて」
「望み通り突進してやりますよ!?」
「上等」
闘牛と乳牛は違うぞ二人とも。
「やーい、乳だけは牛並み」
「やかましいですね!?」
「やーい、力は牛魔人」
「ギルティ!」
うがーっと雄叫びをあげながら突進したシオンにサエラはクルクルと華麗に避ける。身軽さではサエラに分があるからなぁ。
どうやら二人とも探索での集中力が途切れてしまったようだな。まぁ昨日含めて色々な事が短期間で起こったからな。その反動だろう。
我はふわふわとシオンの頭上まで飛んでいくと、その頭に重りを乗せるようにポンっと座り込んだ。
そうしてじゃれつく二人の視線が我に集中する。
「きゃ、な、なんですかぁ」
シオンの非難する声は無視し、一度頭を冷やすために提案する事にした。
「とりあえず、ないものを探しても仕方ない。一旦落ち着き、情報整理する必要がある」
昨日から色々なことがありすぎた。少しは濃密すぎる出来事を整理して、冷静に次の目標を定めなければ。
サエラはここが潮時かと言わんばかりに大人しくなる。それをシオンが恨めしそうに見ている。いつか仕返しされるぞサエラ。
「ふむ、そうだな。あそこの廃墟でも行こうか」
なんとなく見覚えのある崩れた建物へ移動し、適当な石の破片の上に座り込む。するとシオンとサエラもちょうどいい大きさの瓦礫を見つけたようで、そこに座った。
「あー、足いたーいです」
シオンが腰を下ろすと麻痺していた感覚が蘇ったようで、ゴシゴシと足をさすりだす。
パワーはあるが、スタミナもあるわけではないからのぅ。
「ずっと歩きっぱなしであるからな」
アウトドアというよりインドア派なシオンには2日連続での徒歩行動は辛かったらしい。
そんな姉を見かねたサエラがポーチから水薬を取り出すと自身の手に何滴か落とし、両手を合わせて手のひら全体に広げた。
「ほら姉さん。足出して」
「うぅ~」
シオンは長めのスカートをめくり、肉付きの良い足をあらわにすると、そこにサエラがポーションを塗りたくった。
「あ"ぁ"~」
老婆のような声出すな。
「して、なんであるか?それ」
「これ?疲れ取りの薬」
気になった我が尋ねるとサエラはタプンタプンと瓶を揺らしながらみせてくれた。
透き通った赤色の液体で、微量な魔力が含まれていることがわかった。効果までは分からぬが。
「疲れを取ったり、筋肉痛にならないようにするための薬。姉さんは運動苦手だから」
「ほう、それは便利だのぅ」
我も後で翼に塗ってもらおうかのぅ?
「でも代わりに筋肉が強くならないから、鍛えたい人にとってはいらない薬」
バサバサと翼を動かした我が何を考えたのか察したらしいサエラは、暗に塗らないほうがいいと忠告しながら薬をポーチにしまう。
むむぅ、それなら塗らんほうがいいか。飛ぶことに必要な消費魔力を軽減するには翼を鍛えるしかないからな。
実はドラゴンの中で一番強い部位は翼の根元だったりする。
「ぐ、ダンジョンで結構鍛えたと思ってたのにぃ」
「たしかに荷物持ちでは結構な量を運んでいたな」
シオンの運んでいた獲物の数はかなりの量だった。並みの冒険者なら諦めてダンジョンに放置するような代物まで運べた。
世の中には荷台で運搬する運び屋なる存在がいるらしいが、シオンは大きなバックに入る以上の積載量をほこる故に気にした事がない。
あれだけ運んでいれば結構・・・いや相当鍛えられていてもおかしくはないだろうに。
「パワー極振りだからじゃない?」
サエラに向かって「そんなのあるわけないだろう」と言おうとした口からは何も出せなかった。
ーー
どうでもいいんですけど、とっくに累計100話超えてて物語がスローペース気味に感じました。
ちょっと上げます。
「ただの落書きであるな」
「これならどうです!」
「シミだな」
「なんならこれはどうだぁぁぁあ!」
「絵画であるな」
「なんなんすかぁぁぁぁぁぁあ!!」
絶叫。猛獣の雄叫びに匹敵する音量で吠えたシオンは感情のままに拳で壁を粉砕した。
その姿は可愛らしい少女とはかけ離れた化け物じみたという感想しか抱かない。エルフに幻想を持っている者が見たら絶望するかもしれないな。
だから我が否定する度に物を壊すのはやめてほしい。じゃないとこれからはゴリラじゃくてデストロイヤーと呼ぶぞ。
とは思っても言っても聞かないだろうから心の中に留めておく。
「おいデストロイヤー。いい加減落ち着くのである」
「誰がデストロイヤーですか!」
くわっと振り返るシオン。やっべ、我ってば正直者!てへっ。
「オメーだ。オメー」
他に誰がいるというのか?我が爪の鋭くない部分でシオンの額をピンッと弾くと、自分の引き起こした被害を見てぐぬぬと黙り込む。
そりゃ火薬でも仕込んだかのように壁に大穴が空けば、誰だってシオンを破壊者と見てもおかしくはない。割とマジで。
「だって、これだけ探しても見つからないなんて」
まぁ愚痴りたくなる気持ちはわかる。半日探しても成果は出てないしな。
「姉さん。検定一級に受かったんじゃなかったの」
サエラが鋭くズバッと言い放つと、シオンはもういっそ清々しくなるほどのセリフで返したのだった。
「5年前の知識なんて覚えてるわけないじゃないですか」
お、お前ぇぇ。
「鶏かお前は」
「どっちかっていうと牛」
サエラがシオンの一箇所を凝視しながら我に合わせる。それはエルフではなく、淫魔ではないかと見間違う胸である。
「だ、誰が牛ですか!」
じーっと見られて急に恥ずかしくなったのか、顔を赤くして両手で隠しはじめたシオン。
そんなシオンにサエラが急接近し、目の前に立つとその眼科の前に真っ赤なハンカチを広げてみせた。
まぁた煽りよる。
「どー、どー。姉さん落ち着いて」
「望み通り突進してやりますよ!?」
「上等」
闘牛と乳牛は違うぞ二人とも。
「やーい、乳だけは牛並み」
「やかましいですね!?」
「やーい、力は牛魔人」
「ギルティ!」
うがーっと雄叫びをあげながら突進したシオンにサエラはクルクルと華麗に避ける。身軽さではサエラに分があるからなぁ。
どうやら二人とも探索での集中力が途切れてしまったようだな。まぁ昨日含めて色々な事が短期間で起こったからな。その反動だろう。
我はふわふわとシオンの頭上まで飛んでいくと、その頭に重りを乗せるようにポンっと座り込んだ。
そうしてじゃれつく二人の視線が我に集中する。
「きゃ、な、なんですかぁ」
シオンの非難する声は無視し、一度頭を冷やすために提案する事にした。
「とりあえず、ないものを探しても仕方ない。一旦落ち着き、情報整理する必要がある」
昨日から色々なことがありすぎた。少しは濃密すぎる出来事を整理して、冷静に次の目標を定めなければ。
サエラはここが潮時かと言わんばかりに大人しくなる。それをシオンが恨めしそうに見ている。いつか仕返しされるぞサエラ。
「ふむ、そうだな。あそこの廃墟でも行こうか」
なんとなく見覚えのある崩れた建物へ移動し、適当な石の破片の上に座り込む。するとシオンとサエラもちょうどいい大きさの瓦礫を見つけたようで、そこに座った。
「あー、足いたーいです」
シオンが腰を下ろすと麻痺していた感覚が蘇ったようで、ゴシゴシと足をさすりだす。
パワーはあるが、スタミナもあるわけではないからのぅ。
「ずっと歩きっぱなしであるからな」
アウトドアというよりインドア派なシオンには2日連続での徒歩行動は辛かったらしい。
そんな姉を見かねたサエラがポーチから水薬を取り出すと自身の手に何滴か落とし、両手を合わせて手のひら全体に広げた。
「ほら姉さん。足出して」
「うぅ~」
シオンは長めのスカートをめくり、肉付きの良い足をあらわにすると、そこにサエラがポーションを塗りたくった。
「あ"ぁ"~」
老婆のような声出すな。
「して、なんであるか?それ」
「これ?疲れ取りの薬」
気になった我が尋ねるとサエラはタプンタプンと瓶を揺らしながらみせてくれた。
透き通った赤色の液体で、微量な魔力が含まれていることがわかった。効果までは分からぬが。
「疲れを取ったり、筋肉痛にならないようにするための薬。姉さんは運動苦手だから」
「ほう、それは便利だのぅ」
我も後で翼に塗ってもらおうかのぅ?
「でも代わりに筋肉が強くならないから、鍛えたい人にとってはいらない薬」
バサバサと翼を動かした我が何を考えたのか察したらしいサエラは、暗に塗らないほうがいいと忠告しながら薬をポーチにしまう。
むむぅ、それなら塗らんほうがいいか。飛ぶことに必要な消費魔力を軽減するには翼を鍛えるしかないからな。
実はドラゴンの中で一番強い部位は翼の根元だったりする。
「ぐ、ダンジョンで結構鍛えたと思ってたのにぃ」
「たしかに荷物持ちでは結構な量を運んでいたな」
シオンの運んでいた獲物の数はかなりの量だった。並みの冒険者なら諦めてダンジョンに放置するような代物まで運べた。
世の中には荷台で運搬する運び屋なる存在がいるらしいが、シオンは大きなバックに入る以上の積載量をほこる故に気にした事がない。
あれだけ運んでいれば結構・・・いや相当鍛えられていてもおかしくはないだろうに。
「パワー極振りだからじゃない?」
サエラに向かって「そんなのあるわけないだろう」と言おうとした口からは何も出せなかった。
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どうでもいいんですけど、とっくに累計100話超えてて物語がスローペース気味に感じました。
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