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第4章〜不死〜
36話
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「もう!なんなんですかね!感じ悪い」
シオンは取り付く島もなく追い返されて、随分とご立腹の様子だ。プンプンと蒸気を吹き出しそうである。
ギルドから出たのをいいことに好き放題文句を並べている。
「まぁまぁ落ち着けシオン。怒っても仕方ないぞ」
周囲に聞こえない程度の小さな声でシオンをなだめる。といってもいつもより人の数はだいぶ少ないが。
そうするとシオンは文句を言おうとした口をすぼめ、風船のようにほうを膨らませた。きっとあの膨らんだ口の中にはソフトな罵詈雑言が詰まっているに違いない。
「あれが仕事だし、仕方ないよ姉さん」
サエラもヒートアップするシオンを止めようと試みる。が、本人は納得がいかないようだ。
「二人は気にならないんですか?ダンジョン閉鎖の理由!」
「別に・・・」
「吸血鬼とは関係ないしな」
「ぐぬぬ!」
我とサエラから同意を得れなかったのが悔しいのかギリギリと歯を噛んで唸るシオン。
どうやら乱暴な態度を取られた事よりも情報を解禁されなかったことに腹を立てているらしい。シオンらしいといえばらしい理由だが、本来の目的を忘れてもらっては困る。
「いや!きっとこれは吸血鬼の陰謀なんです!魔力の力を求めてバンパイアロードがダンジョンに潜り、邪魔されないようにギルドが暗躍してるとかそんな感じの!」
まーた始まった。
「おいサエラ、お前の姉だろどうにかせい」
「・・・姉さん、いい歳して妄想が過ぎる」
妹の辛辣な言い方にシオンはガクンと肩を下げた。今のところお主の妄想は一つも的中していないからな?わかれ。
「どうせ、ダンジョンを調査するためにギルド側の人間が入ってるのだろうな。ダンジョン内でもアンデットが出現しているのだし」
「そういえば、ゴーレムとかガーゴイルの数が減ってた。ダンジョンに投入したのかな?」
我がそれらしい予想を口にすると、サエラが補助する形でセリフを続けた。
並大抵の冒険者よりはるかに強いからな。あのダンジョン入り口を守護しているゴーレムとガーゴイル。
無論、起動に必要な魔力は相当必要だろうが、そこはギルド自前の燃料を用意できるだろうし。
冒険者が侵入できず、代わりにギルド側の戦力がその場から減っているのことを考えれば、ギルドが調査のために戦力を割いたと考えるのが妥当だろう。まさか昨日のゾンビにやられたはずないし。
「な、なんでそう断言できるんですか」
苦虫を噛んだような顔を浮かべ、最後の抵抗とでもいうように言ってくる。
くくく、情報収集と言う面で我の聴覚が役に立たないなんてことはないのだぞ?
「うむ、周囲の会話を聞いていたのだ。職員がダンジョンに出入りしてたとか、閉鎖前にギルド直属の冒険者が探索に行ったとか、そんな話をな」
ギルドに避難していた人々の内、何人かはダンジョン閉鎖前に何があったのか見ていた者もいたようだ。
そーゆーコソコソとしている噂話も、ドラゴンとしての感覚があれば容易く聞き取れるのだ。
「有能」
そう言いながらサエラがよしよしと頭を撫でてくれた。ふはは!気分が良いぞ、もっと褒めるが良い!
反対にシオンは拗ねたように唇を突き出す。
「そーゆー夢を壊す発言やめてくれませんかね?」
「なんだお前」
吸血鬼の陰謀に夢も何もないだろうが。
シオンの戯言を聞き流しつつ、次に向かうはメイズだ。本当はギルドの冒険者から吸血鬼の目撃情報を集めようとしていたが、その冒険者がいないのなら情報を元にバンパイアロードを探すという方法は使えない。
だとすれば、次にとる行動は過去、昨日と同じようにアンデットの事件が起きたメイズで何かしらの痕跡を見つける以外ない。
もっとも昨日のおっさんの話から、事件は15年前の出来事らしいので集められるモノも少ないだろうが。
「で、どこから調べます?」
「そもそも何を調べるつもり?」
いつも通りガランと人の影を感じないメイズに到着すると、姉妹二人は遠慮なく我に話しかけてくる。ここではそんなに我が喋るのを制限しなくても良いからな。楽だ。
ふむ、話を戻して、何を探すかだが・・・。
「魔術的な痕跡を見つけようと思う。それらなら時間とともに風化することは少ないしな」
「つまり魔法陣ですね!」
ポンっ!と手に拳を当てて閃きの仕草を取るシオンに、我はうむと頷く。
アンデットが突然出現したということは、召喚の魔法なり作製の魔法なり地面に魔力で描いた陣が必要となる。
これも魔道具とほぼ原理は同じである。道具に刻んだ魔力を地面に浮かばせるバージョンと言っていい。
そしてこれらの魔法陣は故意的に破壊しなければ消えることは少ない。
古代遺跡やダンジョンから魔道具が発見されるように、魔法陣は石を掘って書いた文字のように長い年月の間、その状態を保つことができる。
余談だが、古代人が遺跡に歴史を残すために魔法陣で綴っている遺跡も多いらしい。
「むふふ、ついにわたしの実力を見せる時が来たようですね!」
「お?シオンめ随分と自信満々だな?」
魔法の痕跡を探すのは魔物でも難しいものだ。仮にも消費する魔力が込められているので、一度役目を終えた魔法陣は効力を失ってただの円陣になる。
そうなると円を書くときに使った液体、掘りと、微量の魔力しか残らない。
下手すると魔力だけで描いた魔法陣は陣すら残らないのだ。そうなると特殊な技能と知識がなければ探し出すことはできない。
我が若干の疑いを含んだ視線を向けると、彼女は不敵に笑って懐から一枚のカードを見せつけてきた。
ばーんっ!と。
「じゃーん!なんとわたし、魔術資格検定一級を持ってるんですよねぇ!」
ドヤ顔。
「おぉー・・・すごい、のぅ?」
その・・・しかく?ってなんぞや?いくら人語を有する我でもわかるものとわからないものがある。主に我が生きる上で必要のない単語だな。
とりあえず、よくわからないが驚いた顔でもしておこう。
「姉さん、ウーロさんわかってない」
「・・・とにかくすごいんですよ」
すまんのぅ、無知で。フラグみたいに後で言葉の意味を教えてください。
シオンは取り付く島もなく追い返されて、随分とご立腹の様子だ。プンプンと蒸気を吹き出しそうである。
ギルドから出たのをいいことに好き放題文句を並べている。
「まぁまぁ落ち着けシオン。怒っても仕方ないぞ」
周囲に聞こえない程度の小さな声でシオンをなだめる。といってもいつもより人の数はだいぶ少ないが。
そうするとシオンは文句を言おうとした口をすぼめ、風船のようにほうを膨らませた。きっとあの膨らんだ口の中にはソフトな罵詈雑言が詰まっているに違いない。
「あれが仕事だし、仕方ないよ姉さん」
サエラもヒートアップするシオンを止めようと試みる。が、本人は納得がいかないようだ。
「二人は気にならないんですか?ダンジョン閉鎖の理由!」
「別に・・・」
「吸血鬼とは関係ないしな」
「ぐぬぬ!」
我とサエラから同意を得れなかったのが悔しいのかギリギリと歯を噛んで唸るシオン。
どうやら乱暴な態度を取られた事よりも情報を解禁されなかったことに腹を立てているらしい。シオンらしいといえばらしい理由だが、本来の目的を忘れてもらっては困る。
「いや!きっとこれは吸血鬼の陰謀なんです!魔力の力を求めてバンパイアロードがダンジョンに潜り、邪魔されないようにギルドが暗躍してるとかそんな感じの!」
まーた始まった。
「おいサエラ、お前の姉だろどうにかせい」
「・・・姉さん、いい歳して妄想が過ぎる」
妹の辛辣な言い方にシオンはガクンと肩を下げた。今のところお主の妄想は一つも的中していないからな?わかれ。
「どうせ、ダンジョンを調査するためにギルド側の人間が入ってるのだろうな。ダンジョン内でもアンデットが出現しているのだし」
「そういえば、ゴーレムとかガーゴイルの数が減ってた。ダンジョンに投入したのかな?」
我がそれらしい予想を口にすると、サエラが補助する形でセリフを続けた。
並大抵の冒険者よりはるかに強いからな。あのダンジョン入り口を守護しているゴーレムとガーゴイル。
無論、起動に必要な魔力は相当必要だろうが、そこはギルド自前の燃料を用意できるだろうし。
冒険者が侵入できず、代わりにギルド側の戦力がその場から減っているのことを考えれば、ギルドが調査のために戦力を割いたと考えるのが妥当だろう。まさか昨日のゾンビにやられたはずないし。
「な、なんでそう断言できるんですか」
苦虫を噛んだような顔を浮かべ、最後の抵抗とでもいうように言ってくる。
くくく、情報収集と言う面で我の聴覚が役に立たないなんてことはないのだぞ?
「うむ、周囲の会話を聞いていたのだ。職員がダンジョンに出入りしてたとか、閉鎖前にギルド直属の冒険者が探索に行ったとか、そんな話をな」
ギルドに避難していた人々の内、何人かはダンジョン閉鎖前に何があったのか見ていた者もいたようだ。
そーゆーコソコソとしている噂話も、ドラゴンとしての感覚があれば容易く聞き取れるのだ。
「有能」
そう言いながらサエラがよしよしと頭を撫でてくれた。ふはは!気分が良いぞ、もっと褒めるが良い!
反対にシオンは拗ねたように唇を突き出す。
「そーゆー夢を壊す発言やめてくれませんかね?」
「なんだお前」
吸血鬼の陰謀に夢も何もないだろうが。
シオンの戯言を聞き流しつつ、次に向かうはメイズだ。本当はギルドの冒険者から吸血鬼の目撃情報を集めようとしていたが、その冒険者がいないのなら情報を元にバンパイアロードを探すという方法は使えない。
だとすれば、次にとる行動は過去、昨日と同じようにアンデットの事件が起きたメイズで何かしらの痕跡を見つける以外ない。
もっとも昨日のおっさんの話から、事件は15年前の出来事らしいので集められるモノも少ないだろうが。
「で、どこから調べます?」
「そもそも何を調べるつもり?」
いつも通りガランと人の影を感じないメイズに到着すると、姉妹二人は遠慮なく我に話しかけてくる。ここではそんなに我が喋るのを制限しなくても良いからな。楽だ。
ふむ、話を戻して、何を探すかだが・・・。
「魔術的な痕跡を見つけようと思う。それらなら時間とともに風化することは少ないしな」
「つまり魔法陣ですね!」
ポンっ!と手に拳を当てて閃きの仕草を取るシオンに、我はうむと頷く。
アンデットが突然出現したということは、召喚の魔法なり作製の魔法なり地面に魔力で描いた陣が必要となる。
これも魔道具とほぼ原理は同じである。道具に刻んだ魔力を地面に浮かばせるバージョンと言っていい。
そしてこれらの魔法陣は故意的に破壊しなければ消えることは少ない。
古代遺跡やダンジョンから魔道具が発見されるように、魔法陣は石を掘って書いた文字のように長い年月の間、その状態を保つことができる。
余談だが、古代人が遺跡に歴史を残すために魔法陣で綴っている遺跡も多いらしい。
「むふふ、ついにわたしの実力を見せる時が来たようですね!」
「お?シオンめ随分と自信満々だな?」
魔法の痕跡を探すのは魔物でも難しいものだ。仮にも消費する魔力が込められているので、一度役目を終えた魔法陣は効力を失ってただの円陣になる。
そうなると円を書くときに使った液体、掘りと、微量の魔力しか残らない。
下手すると魔力だけで描いた魔法陣は陣すら残らないのだ。そうなると特殊な技能と知識がなければ探し出すことはできない。
我が若干の疑いを含んだ視線を向けると、彼女は不敵に笑って懐から一枚のカードを見せつけてきた。
ばーんっ!と。
「じゃーん!なんとわたし、魔術資格検定一級を持ってるんですよねぇ!」
ドヤ顔。
「おぉー・・・すごい、のぅ?」
その・・・しかく?ってなんぞや?いくら人語を有する我でもわかるものとわからないものがある。主に我が生きる上で必要のない単語だな。
とりあえず、よくわからないが驚いた顔でもしておこう。
「姉さん、ウーロさんわかってない」
「・・・とにかくすごいんですよ」
すまんのぅ、無知で。フラグみたいに後で言葉の意味を教えてください。
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