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第3章~魔物の口~
21話「サエラの武器7」
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「キシャァァァァァ!!」
奇声と共に伸ばされた触腕が、分厚い毛皮を貫く。鮮血と千切れた毛が舞い散り、オオイノシシは苦悶の鳴き声を叫びながら触腕を振り払った。
「ブフォッ!ブフォォ!!」
自分よりはるかに巨大な生物の抵抗に、触腕の持ち主であるスプリガンはアッサリとオオイノシシから距離をとる。欲張って触腕を繋げてれば、オオイノシシの抵抗に巻き込まれていただろう。
体格差では圧倒的に負けているのを理解している。質量ではオオイノシシが圧倒的に有利なのだ。故に一撃離脱を心がけているのだろう。
スプリガンは柔軟な両腕をウネウネを動かし、威嚇の鳴き声を漏らす。
「シュゥゥ」
スプリガンはオオイノシシの体力を少しづつ削っていこうと考えている。傷を増やせば戦意喪失するか、出血で息絶えると。
その戦略はある意味では効果的とも言えた。ある程度知能のある生物なら自分の限界を察して逃走に走るからだ。
逆に言えば、あまり賢いとは言いにくい生物に対しては決定打に欠けているとも言える。オオイノシシといえば、食欲の本能に身を任せてドラゴンの亜種であるワイバーンにも攻撃を仕掛けるような生物である。感覚が鈍感なオオイノシシには、このまま小さな傷を増やし続けていても、命の危機感を与える事は不可能に等しい。
現にチビチビとした煩わしい攻撃にオオイノシシは戦意喪失するどころか、むしろ苛立ちを募らせていた。感情は食欲より、殺意。
「食べ物を奪う」から「殺す」事に変更したオオイノシシは、スプリガンに狙いを定め突進をする。砂煙を巻き上げながら走っていく様子から、スプリガンを目当ての馬鈴薯ごと轢き殺そうとしているのだ。ギリギリで止まろうとする意志を感じない。
ターゲットであるスプリガンは小柄で身軽、そして伸びる触腕を使って突進を回避しようとする。両手の触腕は5メートルほどの高さにある木の枝まで届き、ゴムのように収縮する反動を利用して飛び上がったのである。
目標を失ったオオイノシシだがとてつもない速さで走り出した体はすぐには止まれず、近くの木に衝突してようやく動きを止めた。
身代わりのように突進を受けた木はベキベキと嫌な音を立てながら倒れる。木は一応一度の突進を受け止めたが、その後にオオイノシシがグリグリと頭と牙を擦り付けてへし折ったらしい。
とんでもない怪力だ。しかし、スプリガンはそれに臆した様子は見せない。むしろなぜか「この程度で安心した」とでも言いたいようなニヤニヤした目でオオイノシシを見ていた。
「グモォ!」
「シュゥゥ」
とは言っても、スプリガンの体は無事ではない。馬鈴薯を巣まで持ち運ぶ際、オオイノシシから不意打ちで突進を喰らっていたのだ。満身創痍とまではいかないものの、少なくない出血をしている。
早々に決着をつけなくてはならない。スプリガンはそう考え、オオイノシシの正面へと枝から降り立った。
端から見れば自殺行為にも見えるだろう。1メートルと少ししかない身長ではオオイノシシの突進を受け止めることはできないのだから。
しかし見るものが見れば、先ほどとは違うスプリガンの様子に気付くだろう。なぜかスプリガンは魔力の膜を纏っていたのだ。
そして一度は見失ったものの、トッと軽くスプリガンが地面に降りたのをオオイノシシは見逃さなかった。
目的の獲物が、無防備にも目の前に降り立ったのだ。怪しいと感じる前に、チャンスだと考えたオオイノシシはすぐに突進をスプリガンに向けた。
スプリガンに避ける様子はない。オオイノシシの突進を真正面から受けるようだ。その姿から、自分の数倍あろう質量の衝撃を止める自信があるのだろうと感じられる。
ドゴォンという衝撃音が辺りに響いた。
スプリガンに激突したと確信したオオイノシシは、そのままへし折った木にやったのと同じように、牙と頭を力強く擦り付ける。もし人間が食らえば、ハラワタも皮も骨もミンチにされてしまうだろう。人より小さなスプリガンが耐えられるものではない。
しかし不思議と、周囲に血の臭いが漂うことはなかった。それどころか潰されたスプリガンの悲鳴すら聞こえない。
まず疑問を浮かべたのはオオイノシシだ。なぜ小さな相手にぶつかったのに、自分は止まっているのだろう・・・?と。
本来突進して衝突すれば、相手が大きな樹木か岩でもない限り止まることはない。相手がスプリガンのような小さな相手なら、衝突してもそのまま数メートルは走り続けるはずなのだ。
では何か?自分が当たったのはスプリガンではないのか?オオイノシシは見上げるように顔を上げ、自分の衝突した物体の正体を確かめる。
一言で言えば、それは巨人。3メートルあるオオイノシシを片手で掴めるような巨体が、目の前に立っていたのだ。
オオイノシシが突進し、押し付けていたのは巨人の脛のあたりである。しかも、大したダメージは喰らっていないように見える。
「プギィ!」
突如出現した巨人に、オオイノシシは気圧されたのか悲鳴をあげ数歩下がった。次の瞬間、見覚えのある触腕にオオイノシシが絡め取られる。その触腕は、オオイノシシにとって見覚えのあるものだった。
スプリガンが武器にしていたあの両腕だったのだ。しかし、触腕の大きさは元々の数十倍はある。巨人の外見も、よく見てみるとスプリガンを巨大化させたような容姿をしている。
奇怪な展開であるが、なんとスプリガンが巨人に変化して見せたのだ。しかもほんの数秒で。
「シュゥゥ・・・」
巨人と化したスプリガンは、先程までの力の弱い小人とは思えないほどの剛力を用い、触腕で捕らえたオオイノシシを持ち上げる。
片手で人形でも持ち上げるかのような軽々しさは、立場逆転としか言いようのない光景であった。
「プギィィィィ!プギィィィ!」
悲鳴を上げながらオオイノシシが自慢の体を使って大暴れする・・・が、それでスプリガンの触碗から逃れることはできない。
蛇の様な筋肉の塊が、ガッシリとオオイノシシの胴体に絡みついている。更に空中に浮かされている状態で、地面を使っての足腰の踏ん張りもできないのだ。
「キィ、キィ」
スプリガンが嘲笑うかのように鳴きながら徐々に触碗に力を入れる。「グググゥ」とオオイノシシから締め付けられる音がし、同時にオオイノシシの断末魔が森の中に鳴り響く。最早誰にでも次の光景が予想できるだろう。
そして「バキィン」と骨が砕けるような破壊音がすると、オオイノシシは糸の切れた操り人形のように力なくぶら下がった。
胴体の骨を一つ残らず粉砕したのだ。スプリガンが致命傷だと判断し、触碗を緩めてオオイノシシの体を手放す。
巨人の体よりかは小さく見えてしまうが、それでも元は3メートルある巨体だ。地面が揺れると錯覚するような地響きを立てて、オオイノシシは地面に横たわった。
背骨が砕かれた影響か、オオイノシシは時折痙攣するものの心臓が動いている様子はない。生命力の高さで有名なオオイノシシであるが、流石に骨を折られては生き続けることはできないようだ。次第に痙攣も収まり、体温が低下していく。
「・・・」
オオイノシシが息絶えたと確信したのか、スプリガンは徐々に体を小さく縮小させていく。その小さな小人からは、数秒前までの凶悪な巨人の面影を感じさせることはない。
敵を倒し緊張が緩んだのか、スプリガンは小さく息を吐いた。ようやく一息つける・・・と。体の疲労がまだ残っているのだろう。転がった馬鈴薯を拾おうと足を動かすが、その足取りはひどくゆっくりしているものだった。
気が緩んでいる・・・その一言で言い表せる。が、それ故に気付くこともできなかった。何かが自身の背中に接近してきていることに。
「ふむ、巨大化は魔力消費が大きいようだの」
「!?」
油断していたところに急に話しかけられたスプリガンは、驚きながらも地面を蹴り飛ばして距離をとった。
それは小さな子竜であった。スプリガンはその姿を見て小さく威嚇する。
「キシャァァ・・・ッ!!」
あからさまに警戒心を剥き出しにされ、子竜は感心したように頷いた。
「ふむふむ、鳴き声に魔力を込めているのだな?大抵の魔物なら逃げ出すだろう。・・・しかし、知能の低い獣には効果が薄かったようだが・・・」
子竜はそう呟きながら地に伏せたオオイノシシの亡骸を一瞥する。スプリガンは子竜の人語を理解することができなかったが、自分の能力を客観的に観察されている事は分かった。
つまり、手札が知られている。
「オオイノシシで体力を消耗し、さらに戦闘のスキルもあらかた見せてもらった。 初見でお主に戦いを挑んだら苦戦しただろうな。こういうのを漁夫の利とでも言うのだろうか?」
「キキッ!キュシュゥ!」
「あぁすまぬ。人語は分からぬか」
子竜は悪気を感じさせない軽い謝罪を込めて頭をぽりぽりを掻いた。そして続けてこう言う。
「同じように、お主には人間という種族のルールも理解できんだろう?せいぜい食料を拾った程度の認識だろうな。お主が罪深いわけではない」
「・・・?」
「故にこれは単純な殺し合いである。人の言葉で表せば、生存競争だ。先程のオオイノシシとの戦いのようにな」
「!?」
突如子竜より放たれた殺気に、スプリガンは全身が強張るのを感じた。
それは生物としての格の違い、すなわち種族差。
スプリガンは感じただろう。逃げられない、勝てないと。圧倒的な絶望を感じた。
「まぁ、我はお主から取れる素材が目的なのだがな。我もこうなっては奴らと変わらぬな」
そう言いながら、自虐的な苦笑いを子竜は浮かべた。
奇声と共に伸ばされた触腕が、分厚い毛皮を貫く。鮮血と千切れた毛が舞い散り、オオイノシシは苦悶の鳴き声を叫びながら触腕を振り払った。
「ブフォッ!ブフォォ!!」
自分よりはるかに巨大な生物の抵抗に、触腕の持ち主であるスプリガンはアッサリとオオイノシシから距離をとる。欲張って触腕を繋げてれば、オオイノシシの抵抗に巻き込まれていただろう。
体格差では圧倒的に負けているのを理解している。質量ではオオイノシシが圧倒的に有利なのだ。故に一撃離脱を心がけているのだろう。
スプリガンは柔軟な両腕をウネウネを動かし、威嚇の鳴き声を漏らす。
「シュゥゥ」
スプリガンはオオイノシシの体力を少しづつ削っていこうと考えている。傷を増やせば戦意喪失するか、出血で息絶えると。
その戦略はある意味では効果的とも言えた。ある程度知能のある生物なら自分の限界を察して逃走に走るからだ。
逆に言えば、あまり賢いとは言いにくい生物に対しては決定打に欠けているとも言える。オオイノシシといえば、食欲の本能に身を任せてドラゴンの亜種であるワイバーンにも攻撃を仕掛けるような生物である。感覚が鈍感なオオイノシシには、このまま小さな傷を増やし続けていても、命の危機感を与える事は不可能に等しい。
現にチビチビとした煩わしい攻撃にオオイノシシは戦意喪失するどころか、むしろ苛立ちを募らせていた。感情は食欲より、殺意。
「食べ物を奪う」から「殺す」事に変更したオオイノシシは、スプリガンに狙いを定め突進をする。砂煙を巻き上げながら走っていく様子から、スプリガンを目当ての馬鈴薯ごと轢き殺そうとしているのだ。ギリギリで止まろうとする意志を感じない。
ターゲットであるスプリガンは小柄で身軽、そして伸びる触腕を使って突進を回避しようとする。両手の触腕は5メートルほどの高さにある木の枝まで届き、ゴムのように収縮する反動を利用して飛び上がったのである。
目標を失ったオオイノシシだがとてつもない速さで走り出した体はすぐには止まれず、近くの木に衝突してようやく動きを止めた。
身代わりのように突進を受けた木はベキベキと嫌な音を立てながら倒れる。木は一応一度の突進を受け止めたが、その後にオオイノシシがグリグリと頭と牙を擦り付けてへし折ったらしい。
とんでもない怪力だ。しかし、スプリガンはそれに臆した様子は見せない。むしろなぜか「この程度で安心した」とでも言いたいようなニヤニヤした目でオオイノシシを見ていた。
「グモォ!」
「シュゥゥ」
とは言っても、スプリガンの体は無事ではない。馬鈴薯を巣まで持ち運ぶ際、オオイノシシから不意打ちで突進を喰らっていたのだ。満身創痍とまではいかないものの、少なくない出血をしている。
早々に決着をつけなくてはならない。スプリガンはそう考え、オオイノシシの正面へと枝から降り立った。
端から見れば自殺行為にも見えるだろう。1メートルと少ししかない身長ではオオイノシシの突進を受け止めることはできないのだから。
しかし見るものが見れば、先ほどとは違うスプリガンの様子に気付くだろう。なぜかスプリガンは魔力の膜を纏っていたのだ。
そして一度は見失ったものの、トッと軽くスプリガンが地面に降りたのをオオイノシシは見逃さなかった。
目的の獲物が、無防備にも目の前に降り立ったのだ。怪しいと感じる前に、チャンスだと考えたオオイノシシはすぐに突進をスプリガンに向けた。
スプリガンに避ける様子はない。オオイノシシの突進を真正面から受けるようだ。その姿から、自分の数倍あろう質量の衝撃を止める自信があるのだろうと感じられる。
ドゴォンという衝撃音が辺りに響いた。
スプリガンに激突したと確信したオオイノシシは、そのままへし折った木にやったのと同じように、牙と頭を力強く擦り付ける。もし人間が食らえば、ハラワタも皮も骨もミンチにされてしまうだろう。人より小さなスプリガンが耐えられるものではない。
しかし不思議と、周囲に血の臭いが漂うことはなかった。それどころか潰されたスプリガンの悲鳴すら聞こえない。
まず疑問を浮かべたのはオオイノシシだ。なぜ小さな相手にぶつかったのに、自分は止まっているのだろう・・・?と。
本来突進して衝突すれば、相手が大きな樹木か岩でもない限り止まることはない。相手がスプリガンのような小さな相手なら、衝突してもそのまま数メートルは走り続けるはずなのだ。
では何か?自分が当たったのはスプリガンではないのか?オオイノシシは見上げるように顔を上げ、自分の衝突した物体の正体を確かめる。
一言で言えば、それは巨人。3メートルあるオオイノシシを片手で掴めるような巨体が、目の前に立っていたのだ。
オオイノシシが突進し、押し付けていたのは巨人の脛のあたりである。しかも、大したダメージは喰らっていないように見える。
「プギィ!」
突如出現した巨人に、オオイノシシは気圧されたのか悲鳴をあげ数歩下がった。次の瞬間、見覚えのある触腕にオオイノシシが絡め取られる。その触腕は、オオイノシシにとって見覚えのあるものだった。
スプリガンが武器にしていたあの両腕だったのだ。しかし、触腕の大きさは元々の数十倍はある。巨人の外見も、よく見てみるとスプリガンを巨大化させたような容姿をしている。
奇怪な展開であるが、なんとスプリガンが巨人に変化して見せたのだ。しかもほんの数秒で。
「シュゥゥ・・・」
巨人と化したスプリガンは、先程までの力の弱い小人とは思えないほどの剛力を用い、触腕で捕らえたオオイノシシを持ち上げる。
片手で人形でも持ち上げるかのような軽々しさは、立場逆転としか言いようのない光景であった。
「プギィィィィ!プギィィィ!」
悲鳴を上げながらオオイノシシが自慢の体を使って大暴れする・・・が、それでスプリガンの触碗から逃れることはできない。
蛇の様な筋肉の塊が、ガッシリとオオイノシシの胴体に絡みついている。更に空中に浮かされている状態で、地面を使っての足腰の踏ん張りもできないのだ。
「キィ、キィ」
スプリガンが嘲笑うかのように鳴きながら徐々に触碗に力を入れる。「グググゥ」とオオイノシシから締め付けられる音がし、同時にオオイノシシの断末魔が森の中に鳴り響く。最早誰にでも次の光景が予想できるだろう。
そして「バキィン」と骨が砕けるような破壊音がすると、オオイノシシは糸の切れた操り人形のように力なくぶら下がった。
胴体の骨を一つ残らず粉砕したのだ。スプリガンが致命傷だと判断し、触碗を緩めてオオイノシシの体を手放す。
巨人の体よりかは小さく見えてしまうが、それでも元は3メートルある巨体だ。地面が揺れると錯覚するような地響きを立てて、オオイノシシは地面に横たわった。
背骨が砕かれた影響か、オオイノシシは時折痙攣するものの心臓が動いている様子はない。生命力の高さで有名なオオイノシシであるが、流石に骨を折られては生き続けることはできないようだ。次第に痙攣も収まり、体温が低下していく。
「・・・」
オオイノシシが息絶えたと確信したのか、スプリガンは徐々に体を小さく縮小させていく。その小さな小人からは、数秒前までの凶悪な巨人の面影を感じさせることはない。
敵を倒し緊張が緩んだのか、スプリガンは小さく息を吐いた。ようやく一息つける・・・と。体の疲労がまだ残っているのだろう。転がった馬鈴薯を拾おうと足を動かすが、その足取りはひどくゆっくりしているものだった。
気が緩んでいる・・・その一言で言い表せる。が、それ故に気付くこともできなかった。何かが自身の背中に接近してきていることに。
「ふむ、巨大化は魔力消費が大きいようだの」
「!?」
油断していたところに急に話しかけられたスプリガンは、驚きながらも地面を蹴り飛ばして距離をとった。
それは小さな子竜であった。スプリガンはその姿を見て小さく威嚇する。
「キシャァァ・・・ッ!!」
あからさまに警戒心を剥き出しにされ、子竜は感心したように頷いた。
「ふむふむ、鳴き声に魔力を込めているのだな?大抵の魔物なら逃げ出すだろう。・・・しかし、知能の低い獣には効果が薄かったようだが・・・」
子竜はそう呟きながら地に伏せたオオイノシシの亡骸を一瞥する。スプリガンは子竜の人語を理解することができなかったが、自分の能力を客観的に観察されている事は分かった。
つまり、手札が知られている。
「オオイノシシで体力を消耗し、さらに戦闘のスキルもあらかた見せてもらった。 初見でお主に戦いを挑んだら苦戦しただろうな。こういうのを漁夫の利とでも言うのだろうか?」
「キキッ!キュシュゥ!」
「あぁすまぬ。人語は分からぬか」
子竜は悪気を感じさせない軽い謝罪を込めて頭をぽりぽりを掻いた。そして続けてこう言う。
「同じように、お主には人間という種族のルールも理解できんだろう?せいぜい食料を拾った程度の認識だろうな。お主が罪深いわけではない」
「・・・?」
「故にこれは単純な殺し合いである。人の言葉で表せば、生存競争だ。先程のオオイノシシとの戦いのようにな」
「!?」
突如子竜より放たれた殺気に、スプリガンは全身が強張るのを感じた。
それは生物としての格の違い、すなわち種族差。
スプリガンは感じただろう。逃げられない、勝てないと。圧倒的な絶望を感じた。
「まぁ、我はお主から取れる素材が目的なのだがな。我もこうなっては奴らと変わらぬな」
そう言いながら、自虐的な苦笑いを子竜は浮かべた。
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