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第3章~魔物の口~
14話「ガルム②」
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黒髪の青年は、ガツガツもりもりと口の中に肉を放り込んでいく。頬張りすぎて膨らむ頬はまるでリスのようだ。その姿からはとても噂に聞いていた異名持ちの冒険者とは思えない。
だが、強者とは常に見た目に似つかわない実力を有しているものだ。かつて戦った勇者たちも、何人かはそんなタイプがいた。彼もそれに該当するのだろう。
聞いた話に違いがなければ、この青年の名はガルム。猛獣使いという異名を持ち、Sランカーという人間の域から飛び出た者のみ与えられるランクを持つ。まさに冒険者の最高峰とも言える人物である。
そんな実力者が、昨日今日で始めた新米冒険者に何の用だというのだ?
「あの、わたし達に用事があったのでは・・・?」
シオンが思い切ったように、ガルムに尋ねた。しかしその目はテーブルに並ぶ大量の料理に釘付けだ。人に話しかける時くらい目を合わせんか、バカもの。我は軽くシオンを尻尾で叩いてやった。
幸い、ガルムはシオンの態度に激昂することなく、むしろ見せつけるかのように骨付き肉を口に押し込む。豪快に食を続ける口元はいやらしく、からかうようにニヤニヤとしていた。いい性格してるなコヤツ・・・。
「おう、そうだ。おまえら、俺からの依頼を受けてみねぇか?」
「依頼?」
ガルムの問いに、サエラが首をかしげる。そんな反応をするが我も内心、疑問で頭の中がクエスチョンマークである。
Sランカーほどの実力のある人物が、新米冒険者になんの仕事をさせるというのだ?
出来ることと言えば、二人がエルフだと考えれば嫌な方向に考えが偏るのは仕方のないことか?
「あー、言っとくがイヤラシイ仕事とかそうゆーんじゃない。ざっくり言うと、二人に頼み事がしたいのさ」
無言になる二人と我の考えを察したのか、ガルムが誤解を解くように言った。
まだ信用はできないが、とりあえずよかった。
「えっと、じゃぁなんです?知っての通りわたし達に出来ることってそんなないような・・・人手なら他にもいるでしょうし」
シオンが周りを見渡して他の冒険者達を見る。シオンが振り向くと、こちらの様子をチラッと盗み見してた冒険者達が素早く視線を外した。
ガルムが登場した時、冒険者ギルドの冒険者達は動きを止めたが、「いつも通りに過ごしてくれ」とガルムが言うと遠慮がちに活動を再開した。
Sランカー故に、その影響力も強いのだろう。強者の冒険者達が萎縮するほどの実力があるらしい。
だが逆に、その恩恵にあやかりたい人々も多いハズだ。シオンが言った通り、ガルムが一声かければ我らより優秀な人員などすぐに集まるだろうに・・・なぜ我らに声を掛けたのか。
「もちろん、お前らだけに頼んでるわけじゃない。こう見えてつてはあるんでな、信用できる連中に依頼を回してる」
こう見えても何も有名人だろうが。と、ツッコミたかったが我慢した。我は小竜我は小竜。
「では、なぜわたし達に?」
「・・・ここじゃあ話しづらいな。『ボイスカット』」
ガルムが小さく詠唱すると、我らの周りに薄い魔力の幕が張られた。ジャポン玉のように薄いが、どうやら振動を伝えない効果があるみたいだ。
防音の魔法と言ったところか?
「な、なんですかこれ?」
「・・・膜?」
シオンとサエラが自分達を突然覆った魔力に驚きの声を上げた。その様子を見て、ガルムは感心したようにヒューッと軽く口笛を鳴らす。
「ほほー、ボイスカットのバリアが見えてんのか。流石はエルフと言うべきか?」
「防音?」
「そーゆーことだ。この中でいくらデカい音を立てても周りににゃ何も聞こえねぇ。俺がよく取引とか尋問に使う魔法だな」
おい最後。
「さて、本題だ。お前たちに、コイツの捜索を依頼したい」
そう言って差し出された紙には、非常に精密に描かれた笛があった。手で持つ部分と口で吹くパーツは細長く、先にはラッパのような大きな広がりのある笛。
楽器は全くもって知らないのでこれがどういう笛なのかはサッパリである。
「笛・・・?」
奇妙な形をした笛の絵を、サエラが怪訝そうな目で見つめる。その呟きにガルムは頷いた。
「そうだ、笛だ。コイツの情報・・・具体的に言うと所有者、この笛に関しての噂話・・・なんでも良い。この笛に関する情報を調査、収集してもらいてぇんだ」
焼いたモモ肉を喰い千切りながら、ガルムが言う。要約すると、我らにこの笛の情報収集をしてほしいということか。
他にも受けている者がいるなら、人海戦術でもするつもりなのだろうか?Sランカーともなれば、それ専門の知り合いもいるだろうし。
しかし、ガルムはこの笛のネタを集めてどうするつもりなのだ?Sランカーが調査しているのだから、この笛が何かしらの魔道具である可能性は高い。
我と同じ考えに至ったのか、シオンがガルムに質問を投げる。
「何か、特別な笛なんですか?」
簡単な質問だ。それにもし協力するとして、ある程度の情報は欲しいところだし。だがそんな簡単な質問に、ガルムは首を左右に振った。
「んにゃ、さっぱりだ。というか今わかってる情報は、この笛の絵しかない」
は?どう言うことだ?探している側が笛の正体を把握できていないのに、我らでどうやって探せというのだ?ガルムもこのことについては申し訳ないようで、片手で頭をポリポリと掻いた。
「この笛の正体が全くわからねぇんだ。効果も、保有魔力数もわかってない。さらに言っちまうとこの笛の捜索はまだ始まったばかりで、まともな情報が集まってないのが現状だ」
とのことらしい。うーむ、不明な点だらけだし、依頼を受ける理由も全くない。それに探し物の依頼など、本当に見つかるかもわからない物を探し続けるほど余裕もないしな・・・。
こういう依頼はある程度生活基盤が整ってから受けるのがいいと思う。まだ我らには時期尚早だ。
まぁ本音は間違いなく面倒事になると思うから手を引くべきだ、と思ってるだけだが。
だが二人がどう思ってるかによるけど。
「姉さんどうする?」
「どうって・・・ウーロちゃんどう思いますか?」
こっちに振るなこっちに。
とりあえず視線を外して無視すると、シオンの「は、反抗期・・・」という言葉が聞こえてきた。なんでやねん。
「ウーロちゃんはやりたくないみたいですね」
言ってねぇ、やりたくないのは事実であるが。ペットの仕草を判断材料にしないで欲しい。
「まぁ実際問題、調査なんてしてる時間も余裕もない。・・・というかお金がない」
サエラが自嘲気味に肩をすくめる。
ま、そういうことである。今の我らには一日分の生活費しかないのだからな。明日も明後日もダンジョンで稼がなければならない。
この流れでいくと依頼を断る方向に話が進むだろう。そう思っていたその時。
「生活費の2000Gは俺から出すぞ?情報も報告してくれれば、モノによるが追加で3000Gを追加で出してもいい」
・・・はい?
ガルドの申し出に、我らは固まった。
だが、強者とは常に見た目に似つかわない実力を有しているものだ。かつて戦った勇者たちも、何人かはそんなタイプがいた。彼もそれに該当するのだろう。
聞いた話に違いがなければ、この青年の名はガルム。猛獣使いという異名を持ち、Sランカーという人間の域から飛び出た者のみ与えられるランクを持つ。まさに冒険者の最高峰とも言える人物である。
そんな実力者が、昨日今日で始めた新米冒険者に何の用だというのだ?
「あの、わたし達に用事があったのでは・・・?」
シオンが思い切ったように、ガルムに尋ねた。しかしその目はテーブルに並ぶ大量の料理に釘付けだ。人に話しかける時くらい目を合わせんか、バカもの。我は軽くシオンを尻尾で叩いてやった。
幸い、ガルムはシオンの態度に激昂することなく、むしろ見せつけるかのように骨付き肉を口に押し込む。豪快に食を続ける口元はいやらしく、からかうようにニヤニヤとしていた。いい性格してるなコヤツ・・・。
「おう、そうだ。おまえら、俺からの依頼を受けてみねぇか?」
「依頼?」
ガルムの問いに、サエラが首をかしげる。そんな反応をするが我も内心、疑問で頭の中がクエスチョンマークである。
Sランカーほどの実力のある人物が、新米冒険者になんの仕事をさせるというのだ?
出来ることと言えば、二人がエルフだと考えれば嫌な方向に考えが偏るのは仕方のないことか?
「あー、言っとくがイヤラシイ仕事とかそうゆーんじゃない。ざっくり言うと、二人に頼み事がしたいのさ」
無言になる二人と我の考えを察したのか、ガルムが誤解を解くように言った。
まだ信用はできないが、とりあえずよかった。
「えっと、じゃぁなんです?知っての通りわたし達に出来ることってそんなないような・・・人手なら他にもいるでしょうし」
シオンが周りを見渡して他の冒険者達を見る。シオンが振り向くと、こちらの様子をチラッと盗み見してた冒険者達が素早く視線を外した。
ガルムが登場した時、冒険者ギルドの冒険者達は動きを止めたが、「いつも通りに過ごしてくれ」とガルムが言うと遠慮がちに活動を再開した。
Sランカー故に、その影響力も強いのだろう。強者の冒険者達が萎縮するほどの実力があるらしい。
だが逆に、その恩恵にあやかりたい人々も多いハズだ。シオンが言った通り、ガルムが一声かければ我らより優秀な人員などすぐに集まるだろうに・・・なぜ我らに声を掛けたのか。
「もちろん、お前らだけに頼んでるわけじゃない。こう見えてつてはあるんでな、信用できる連中に依頼を回してる」
こう見えても何も有名人だろうが。と、ツッコミたかったが我慢した。我は小竜我は小竜。
「では、なぜわたし達に?」
「・・・ここじゃあ話しづらいな。『ボイスカット』」
ガルムが小さく詠唱すると、我らの周りに薄い魔力の幕が張られた。ジャポン玉のように薄いが、どうやら振動を伝えない効果があるみたいだ。
防音の魔法と言ったところか?
「な、なんですかこれ?」
「・・・膜?」
シオンとサエラが自分達を突然覆った魔力に驚きの声を上げた。その様子を見て、ガルムは感心したようにヒューッと軽く口笛を鳴らす。
「ほほー、ボイスカットのバリアが見えてんのか。流石はエルフと言うべきか?」
「防音?」
「そーゆーことだ。この中でいくらデカい音を立てても周りににゃ何も聞こえねぇ。俺がよく取引とか尋問に使う魔法だな」
おい最後。
「さて、本題だ。お前たちに、コイツの捜索を依頼したい」
そう言って差し出された紙には、非常に精密に描かれた笛があった。手で持つ部分と口で吹くパーツは細長く、先にはラッパのような大きな広がりのある笛。
楽器は全くもって知らないのでこれがどういう笛なのかはサッパリである。
「笛・・・?」
奇妙な形をした笛の絵を、サエラが怪訝そうな目で見つめる。その呟きにガルムは頷いた。
「そうだ、笛だ。コイツの情報・・・具体的に言うと所有者、この笛に関しての噂話・・・なんでも良い。この笛に関する情報を調査、収集してもらいてぇんだ」
焼いたモモ肉を喰い千切りながら、ガルムが言う。要約すると、我らにこの笛の情報収集をしてほしいということか。
他にも受けている者がいるなら、人海戦術でもするつもりなのだろうか?Sランカーともなれば、それ専門の知り合いもいるだろうし。
しかし、ガルムはこの笛のネタを集めてどうするつもりなのだ?Sランカーが調査しているのだから、この笛が何かしらの魔道具である可能性は高い。
我と同じ考えに至ったのか、シオンがガルムに質問を投げる。
「何か、特別な笛なんですか?」
簡単な質問だ。それにもし協力するとして、ある程度の情報は欲しいところだし。だがそんな簡単な質問に、ガルムは首を左右に振った。
「んにゃ、さっぱりだ。というか今わかってる情報は、この笛の絵しかない」
は?どう言うことだ?探している側が笛の正体を把握できていないのに、我らでどうやって探せというのだ?ガルムもこのことについては申し訳ないようで、片手で頭をポリポリと掻いた。
「この笛の正体が全くわからねぇんだ。効果も、保有魔力数もわかってない。さらに言っちまうとこの笛の捜索はまだ始まったばかりで、まともな情報が集まってないのが現状だ」
とのことらしい。うーむ、不明な点だらけだし、依頼を受ける理由も全くない。それに探し物の依頼など、本当に見つかるかもわからない物を探し続けるほど余裕もないしな・・・。
こういう依頼はある程度生活基盤が整ってから受けるのがいいと思う。まだ我らには時期尚早だ。
まぁ本音は間違いなく面倒事になると思うから手を引くべきだ、と思ってるだけだが。
だが二人がどう思ってるかによるけど。
「姉さんどうする?」
「どうって・・・ウーロちゃんどう思いますか?」
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とりあえず視線を外して無視すると、シオンの「は、反抗期・・・」という言葉が聞こえてきた。なんでやねん。
「ウーロちゃんはやりたくないみたいですね」
言ってねぇ、やりたくないのは事実であるが。ペットの仕草を判断材料にしないで欲しい。
「まぁ実際問題、調査なんてしてる時間も余裕もない。・・・というかお金がない」
サエラが自嘲気味に肩をすくめる。
ま、そういうことである。今の我らには一日分の生活費しかないのだからな。明日も明後日もダンジョンで稼がなければならない。
この流れでいくと依頼を断る方向に話が進むだろう。そう思っていたその時。
「生活費の2000Gは俺から出すぞ?情報も報告してくれれば、モノによるが追加で3000Gを追加で出してもいい」
・・・はい?
ガルドの申し出に、我らは固まった。
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