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〜第6章〜ラドン編
70話「襲撃」
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「・・・さて、我らも行動するとしよう」
「思いっきしガルムさんの一撃見なかったことにしましたね」
皆の方へ振り返った我にシオンがそう言うが、だってアレ制御できないし。良くて半殺し、いいや9割殺しで済めばいいなぁと考え方を変えた方が楽じゃないかと思い始めてのぅ。
それにクルーウはベタとガマにだいぶセクハラしていたらしいし、情報うんぬんという理性よりも「いいぞもっとやれ」という気持ちの方が正直強い。
あぁ残念だなぁ、敵を無事に捕虜にすることができなくて残念だなぁ。
「それよりシオン。我らはどうするべきだと思う?」
誤魔化し混じりに我が問うと、シオンは手を口元に当てて唸った。たぶんシオンもツッコミつつも何言っても無駄だと感じているのだろう。
「防衛側に回りましょう。トールマンさん、集会所ってところは頑丈なんですよね?」
「あぁ、少なくとも民家よりはマシだ」
「それじゃぁウーロさんはサエラと一緒に屋根の上で敵を撃退してください」
ふむ、遠距離攻撃といえば我とサエラであるからな。さらにサエラの検知系のスキルを使えば効率よく襲いかかってくる敵も撃滅できよう。
「やつかれはどうする?」
「ウーロさんと一緒に遠距離攻撃をお願いします」
「うむ」
魔女の魔法による範囲攻撃は対軍に対して効果的に発揮することだろう。そもそも大規模な攻撃魔法自体、本来は単体で使用するより対多数に使用することを目的として創られたのだからな。
もっとも、さらに言うならそれらの魔法は一つの魔法を複数で構築するのが普通なのだが。
「ティちゃんは・・・ウーロさんの護衛で」
「キィ!」
ティが元気よく返事をする。彼女は遠距離攻撃手段を持っていないからな。必然的に我ら遠距離組の護衛である。
逆に接近戦なら巨大化の魔法を使った超重量でヤゴどもを粉砕してくれるだろう。安心して火炎放射が使える。
「それと、ベタさんとガマさんは・・・あー」
「シオン。遠慮無しに言え。」
「然り。」
言い淀むシオンに二人は見上げながら言う。仲間とはいえ格上のSランカーに指示を出すなど良いのかというシオンなりの葛藤があったらしいが、二人は既にシオンを信頼していた。
本人には言ってないようだが、ルーデスに対し思い出の花を使って時間稼ぎした作戦はベタとガマにとってそれなりに高評価であったようだ。そのおかげで隙ができ、サエラを救出できたのだからな。
シオンはベタとガマの言葉に戸惑い、我の方へ視線を向けてきた。我だってお主の手腕は信頼している。コクンと頷く。
「じゃ、お二人には民家の屋根を使って遊撃をお願いします。たぶん防衛よりそっちの方が得意でしょうし」
確かにベタとガマは動き回りながら爆破して、敵を撹乱させる事に秀でている。
実際、リメットで大量のゾンビが現れた際は、津波のごとく押し寄せた大軍相手と渡り合っていた。
さらにここはリメットほどではないものの、背の高い建物が乱立している。ベタとガマが飛び回りながらヤゴの群れを掃除するには打って付けの立地である。
「了解。」
「心得た。」
「だだっ、だめだよ、あ、あぶないよ!?」
自信満々に頷いたベタとガマに、ラスが慌てて引き止めるよう説得しだした。ラスにとっては初対面の威圧(本人は理解していないが)以外でベタとガマの強者らしいところを見ていない。
彼女にとって二人は普通の友人だ。心配になるのも仕方ない。
「心配いらない。その二人、さっきの狼乗った人くらい強いから」
「でも・・・」
サエラに言われても心配する気持ちは止まらないようだ。良い子だ。よくベタとガマの友人となってくれたな。うぅ、なんか涙出てきた。
「ラス。心配。不要。」
「然り。然り。」
ベタとガマがサムズアップする。次の瞬間、ラスの制止する声より早く地を蹴ると、建物の壁を蹴り飛ばしながら白ヤゴの大軍へと突っ込んでいき、そして・・・。
大爆発だ。およそ50匹ほどのヤゴが爆発四散しながら吹き上がり、元々の体の軽さに爆破の威力が加わって、くるくる回転しながら壁に叩きつけられた。
遠いのでサエラくらいにしか奥の状況は見えぬだろうが、気味の悪い紫色の体液がシミのように飛び散り、または仲間にぶつかって被害を増やしていくというグロい虫の死体が見えた。
その爆破は一度きりに留まらず、2度、3度と連続して起きた。
「・・・」
人を丸呑みできそうなほどの虫が紙切れのように吹き飛ぶ様子を見て、ラス・・・いや、トールマンすらも信じられないといった表情で固まる。
あぁ、我もグロブスターを消しとばしたのを見た時同じ顔をしておったわ。気持ちはわかるぞ。
「なんという・・・あれが外の世界の人々の強さか・・・」
「すっごい・・・っ」
いや、アレはホント例外クラスの実力であるからね?あんなことできる人類はそういないからな?もしアレが人類の平均だったら魔族と人の戦争など1年も掛からず終わってるわ。
「トールマン殿、早速集会所へ案内を頼むである」
「あ、あぁ。こっちだ」
ガルムとレッド・キャップの強さに呆然としていたトールマンであったが、それでも一族を束ねる長である。声をかけただけで正気を取り戻し、我らを集会所へと案内してくれる。
我はまだベタとガマの方を見るラスを無理やり引っ張った。ここに留まるのは危険である。
「行くぞ!」
「う、うん!」
「思いっきしガルムさんの一撃見なかったことにしましたね」
皆の方へ振り返った我にシオンがそう言うが、だってアレ制御できないし。良くて半殺し、いいや9割殺しで済めばいいなぁと考え方を変えた方が楽じゃないかと思い始めてのぅ。
それにクルーウはベタとガマにだいぶセクハラしていたらしいし、情報うんぬんという理性よりも「いいぞもっとやれ」という気持ちの方が正直強い。
あぁ残念だなぁ、敵を無事に捕虜にすることができなくて残念だなぁ。
「それよりシオン。我らはどうするべきだと思う?」
誤魔化し混じりに我が問うと、シオンは手を口元に当てて唸った。たぶんシオンもツッコミつつも何言っても無駄だと感じているのだろう。
「防衛側に回りましょう。トールマンさん、集会所ってところは頑丈なんですよね?」
「あぁ、少なくとも民家よりはマシだ」
「それじゃぁウーロさんはサエラと一緒に屋根の上で敵を撃退してください」
ふむ、遠距離攻撃といえば我とサエラであるからな。さらにサエラの検知系のスキルを使えば効率よく襲いかかってくる敵も撃滅できよう。
「やつかれはどうする?」
「ウーロさんと一緒に遠距離攻撃をお願いします」
「うむ」
魔女の魔法による範囲攻撃は対軍に対して効果的に発揮することだろう。そもそも大規模な攻撃魔法自体、本来は単体で使用するより対多数に使用することを目的として創られたのだからな。
もっとも、さらに言うならそれらの魔法は一つの魔法を複数で構築するのが普通なのだが。
「ティちゃんは・・・ウーロさんの護衛で」
「キィ!」
ティが元気よく返事をする。彼女は遠距離攻撃手段を持っていないからな。必然的に我ら遠距離組の護衛である。
逆に接近戦なら巨大化の魔法を使った超重量でヤゴどもを粉砕してくれるだろう。安心して火炎放射が使える。
「それと、ベタさんとガマさんは・・・あー」
「シオン。遠慮無しに言え。」
「然り。」
言い淀むシオンに二人は見上げながら言う。仲間とはいえ格上のSランカーに指示を出すなど良いのかというシオンなりの葛藤があったらしいが、二人は既にシオンを信頼していた。
本人には言ってないようだが、ルーデスに対し思い出の花を使って時間稼ぎした作戦はベタとガマにとってそれなりに高評価であったようだ。そのおかげで隙ができ、サエラを救出できたのだからな。
シオンはベタとガマの言葉に戸惑い、我の方へ視線を向けてきた。我だってお主の手腕は信頼している。コクンと頷く。
「じゃ、お二人には民家の屋根を使って遊撃をお願いします。たぶん防衛よりそっちの方が得意でしょうし」
確かにベタとガマは動き回りながら爆破して、敵を撹乱させる事に秀でている。
実際、リメットで大量のゾンビが現れた際は、津波のごとく押し寄せた大軍相手と渡り合っていた。
さらにここはリメットほどではないものの、背の高い建物が乱立している。ベタとガマが飛び回りながらヤゴの群れを掃除するには打って付けの立地である。
「了解。」
「心得た。」
「だだっ、だめだよ、あ、あぶないよ!?」
自信満々に頷いたベタとガマに、ラスが慌てて引き止めるよう説得しだした。ラスにとっては初対面の威圧(本人は理解していないが)以外でベタとガマの強者らしいところを見ていない。
彼女にとって二人は普通の友人だ。心配になるのも仕方ない。
「心配いらない。その二人、さっきの狼乗った人くらい強いから」
「でも・・・」
サエラに言われても心配する気持ちは止まらないようだ。良い子だ。よくベタとガマの友人となってくれたな。うぅ、なんか涙出てきた。
「ラス。心配。不要。」
「然り。然り。」
ベタとガマがサムズアップする。次の瞬間、ラスの制止する声より早く地を蹴ると、建物の壁を蹴り飛ばしながら白ヤゴの大軍へと突っ込んでいき、そして・・・。
大爆発だ。およそ50匹ほどのヤゴが爆発四散しながら吹き上がり、元々の体の軽さに爆破の威力が加わって、くるくる回転しながら壁に叩きつけられた。
遠いのでサエラくらいにしか奥の状況は見えぬだろうが、気味の悪い紫色の体液がシミのように飛び散り、または仲間にぶつかって被害を増やしていくというグロい虫の死体が見えた。
その爆破は一度きりに留まらず、2度、3度と連続して起きた。
「・・・」
人を丸呑みできそうなほどの虫が紙切れのように吹き飛ぶ様子を見て、ラス・・・いや、トールマンすらも信じられないといった表情で固まる。
あぁ、我もグロブスターを消しとばしたのを見た時同じ顔をしておったわ。気持ちはわかるぞ。
「なんという・・・あれが外の世界の人々の強さか・・・」
「すっごい・・・っ」
いや、アレはホント例外クラスの実力であるからね?あんなことできる人類はそういないからな?もしアレが人類の平均だったら魔族と人の戦争など1年も掛からず終わってるわ。
「トールマン殿、早速集会所へ案内を頼むである」
「あ、あぁ。こっちだ」
ガルムとレッド・キャップの強さに呆然としていたトールマンであったが、それでも一族を束ねる長である。声をかけただけで正気を取り戻し、我らを集会所へと案内してくれる。
我はまだベタとガマの方を見るラスを無理やり引っ張った。ここに留まるのは危険である。
「行くぞ!」
「う、うん!」
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