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〜第6章〜ラドン編
68話
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石板の文字を読もうと眺めるが、どうにも字が汚くて解読しづらい。そもそも人間の文字すら満足に読み取れないのにこんな汚い字が読めるはずもなかった。
しばらく石とにらめっこしていたが、最終的に折れるのは我である。
「むぅむむむ」
「どうだ?読めそうか?」
「ちょっと待つである。今わかりそう・・・」
本当は全く読める気配がしないが、少しも解読できないというのは言葉を操る竜言語魔法使いのドラゴンにとって名折れである。尋ねてきたガルムに向かって見栄をはり、なんとか読み取ろうとする。
ぐぬぬ、わからん。
しかし、ただ待つというのはガルムにとって相当につまらないらしい。待てと言ったのに石板を除き見、なんだこれと顔を歪めた。
あぁん待てって言ったのに。
「なんだよこの文字。医者の文字か?」
だからその具体的な例えはなんなのだ。
「すまないが、私にも解読は不可能だった。難解すぎる」
「いやこれは俺らでも読めねぇよ」
しょぼんとしたトールマンにガルムが苦笑いを浮かべる。石板の題名と思わしき「輪廻の竜」としっかり書かれた部分以外はどれもこれもゴミのような字ばかりなのだ。
我以外に輪廻の竜と評されるドラゴンはいないはずなので、おそらく我のことなのだろうが。うむー。
「行ってみるか?」
頭上から悩んでいる我の頭にぴしゃりと水をかけるようにガルムの声が聞こえてきた。
「行くって、どこにだ?」
「石像があった場所。本人が見たら何かわかるかもしんねーだろ?」
ガルムの言うことも一理はあるが・・・。
「石像のある場所はわかっておるのか?」
「わかんね。でも地上までのルートを見つけねぇといけねーしそのついでで探してもいいだろ。それに・・・」
チラッとガルムは前方を眺める。相変わらず女性陣がわいわいと賑わっていた。
人見知りの魔女も自身の魔術を褒められて随分と可愛がられている。火を起こして料理の手伝いをしているようだ。フィンも同様である。
「あの中には・・・入れねぇし」
「・・・そうだな」
ベタとガマもラスと楽しく遊んでおるし、シオンとサエラも色々教わってるようだし、ティは・・・あ、餌付けされておる。
誰にも構ってもらえそうにないし、我も暇であるな。
「夕飯までまだ時間はあるし、探検だけでもしてみるか?」
「だな。ヤローはヤローで楽しみますか」
我とガルムは互いの顔を見合ってコクリと頷き、ぴょんっとジャンプしてその肩まで登る。
おぉ、男の肩幅なら肩乗りは随分と楽だ。中々心地が良い。
「うげ、結構あるな。自分で歩けよ」
「Sランカーであろう?我慢せぇ。それに年寄りには優しくしてくれ」
「身体は若いくせに何言ってんだよ。しゃーねぇな、せっかくのドラゴンの質感でも堪能しますか」
グチグチ言いつつガルムは我を乗せたままよっこらせと立ち上がる。
そういえばコイツ、ドラゴンに触りたいとかそういう理由で我らと接触してきたのだったな。良かったな叶って。
「・・・」
するとジーっと無言で我らを見る視線を背後に感じ取った。我とガルムが振り返ると、トールマンが無表情顔を向けてきていた。釘でも刺したように、ジッと。
「・・・夕飯までには帰るである」
「あぁ」
「別に怪しいことはしないぜ?」
「あぁ」
無機物にでも睨まれたかのような感覚を感じ、冷や汗が出る。ガルムも同じであるようだ。
別に悪意がある視線ではない・・・が、何かを伝えたそうにも見える。だが口と喉が動かないと言った感じか。
我の身内には元祖無表情サエラがいるのだ。今までの経験を糧に、彼が何を思っているのか推測してみせよう。
「ふむ」
確か彼はドラゴン好きであったな。そして知識も豊富。人間という種は知識欲の塊のような種族である。何かに対して好みがある場合、それをとことん追求しようと貪欲に動く。
トールマンもドラゴンの新たな知識を欲しがっていると思われる。
多分彼は我らの探索についていきたいのだと思う。だが彼は長として容易にこの場を離れるわけにはいかない。
事実、ここで何かが起きた場合、まずその情報はトールマンに届けられ彼の判断によって処理される。
何もない地底の集落であるが、やることは沢山あるのだ。
「・・・何か見つけたら、土産でも取ってこようか?」
「それはありがたい」
我が提案すると、トールマンの表情が僅かに緩んだ。それはどこか我がサエラの考えを読み取れた時のあの子の反応に似ている。どうやら希望していた心情を正しく読めたらしい。
「親と子は、やはり似るものだな」
「?」
トールマンとラスはやはり親子なのだ。二人とも、単に人見知りなのである。
しばらく石とにらめっこしていたが、最終的に折れるのは我である。
「むぅむむむ」
「どうだ?読めそうか?」
「ちょっと待つである。今わかりそう・・・」
本当は全く読める気配がしないが、少しも解読できないというのは言葉を操る竜言語魔法使いのドラゴンにとって名折れである。尋ねてきたガルムに向かって見栄をはり、なんとか読み取ろうとする。
ぐぬぬ、わからん。
しかし、ただ待つというのはガルムにとって相当につまらないらしい。待てと言ったのに石板を除き見、なんだこれと顔を歪めた。
あぁん待てって言ったのに。
「なんだよこの文字。医者の文字か?」
だからその具体的な例えはなんなのだ。
「すまないが、私にも解読は不可能だった。難解すぎる」
「いやこれは俺らでも読めねぇよ」
しょぼんとしたトールマンにガルムが苦笑いを浮かべる。石板の題名と思わしき「輪廻の竜」としっかり書かれた部分以外はどれもこれもゴミのような字ばかりなのだ。
我以外に輪廻の竜と評されるドラゴンはいないはずなので、おそらく我のことなのだろうが。うむー。
「行ってみるか?」
頭上から悩んでいる我の頭にぴしゃりと水をかけるようにガルムの声が聞こえてきた。
「行くって、どこにだ?」
「石像があった場所。本人が見たら何かわかるかもしんねーだろ?」
ガルムの言うことも一理はあるが・・・。
「石像のある場所はわかっておるのか?」
「わかんね。でも地上までのルートを見つけねぇといけねーしそのついでで探してもいいだろ。それに・・・」
チラッとガルムは前方を眺める。相変わらず女性陣がわいわいと賑わっていた。
人見知りの魔女も自身の魔術を褒められて随分と可愛がられている。火を起こして料理の手伝いをしているようだ。フィンも同様である。
「あの中には・・・入れねぇし」
「・・・そうだな」
ベタとガマもラスと楽しく遊んでおるし、シオンとサエラも色々教わってるようだし、ティは・・・あ、餌付けされておる。
誰にも構ってもらえそうにないし、我も暇であるな。
「夕飯までまだ時間はあるし、探検だけでもしてみるか?」
「だな。ヤローはヤローで楽しみますか」
我とガルムは互いの顔を見合ってコクリと頷き、ぴょんっとジャンプしてその肩まで登る。
おぉ、男の肩幅なら肩乗りは随分と楽だ。中々心地が良い。
「うげ、結構あるな。自分で歩けよ」
「Sランカーであろう?我慢せぇ。それに年寄りには優しくしてくれ」
「身体は若いくせに何言ってんだよ。しゃーねぇな、せっかくのドラゴンの質感でも堪能しますか」
グチグチ言いつつガルムは我を乗せたままよっこらせと立ち上がる。
そういえばコイツ、ドラゴンに触りたいとかそういう理由で我らと接触してきたのだったな。良かったな叶って。
「・・・」
するとジーっと無言で我らを見る視線を背後に感じ取った。我とガルムが振り返ると、トールマンが無表情顔を向けてきていた。釘でも刺したように、ジッと。
「・・・夕飯までには帰るである」
「あぁ」
「別に怪しいことはしないぜ?」
「あぁ」
無機物にでも睨まれたかのような感覚を感じ、冷や汗が出る。ガルムも同じであるようだ。
別に悪意がある視線ではない・・・が、何かを伝えたそうにも見える。だが口と喉が動かないと言った感じか。
我の身内には元祖無表情サエラがいるのだ。今までの経験を糧に、彼が何を思っているのか推測してみせよう。
「ふむ」
確か彼はドラゴン好きであったな。そして知識も豊富。人間という種は知識欲の塊のような種族である。何かに対して好みがある場合、それをとことん追求しようと貪欲に動く。
トールマンもドラゴンの新たな知識を欲しがっていると思われる。
多分彼は我らの探索についていきたいのだと思う。だが彼は長として容易にこの場を離れるわけにはいかない。
事実、ここで何かが起きた場合、まずその情報はトールマンに届けられ彼の判断によって処理される。
何もない地底の集落であるが、やることは沢山あるのだ。
「・・・何か見つけたら、土産でも取ってこようか?」
「それはありがたい」
我が提案すると、トールマンの表情が僅かに緩んだ。それはどこか我がサエラの考えを読み取れた時のあの子の反応に似ている。どうやら希望していた心情を正しく読めたらしい。
「親と子は、やはり似るものだな」
「?」
トールマンとラスはやはり親子なのだ。二人とも、単に人見知りなのである。
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