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〜第6章〜ラドン編
57話
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「「「ギュァァァァァァァ!!!」」」
荒れ狂う暴風に巻き込まれた数十匹のヤゴが、断末魔をあげながら高速回転して空中に打ち上げられていく。
空気抵抗に耐えきれず身体がバラバラになっていき、その破片はまだ無事だった同族に衝突して同じようにメチャクチャにしていく。
ミニチュアサイズの台風と言い表しても過言ではない。それが何個も現れてはヤゴの群れを吹き飛ばしていった。
巨大な昆虫であるメガニューラだが、それでも脳は存在している。
暴風の危険性を理解したヤゴたちは急いで風が吹き荒れる範囲から逃げ出した。
水生で育つヤゴだが、合計して六本ある前脚、中脚、後脚を器用に動かして人間並みの速度で移動している。
その場にとどまって暴れる竜巻から逃げるには充分な足の速さであった。
助かったと本能で感じ取るヤゴだが、それもつかの間。
次の瞬間には前方にいたヤゴたちが爆発するのを複眼で捉えた。爆発は、連鎖的に次々に近くにいたヤゴを巻き混んで爆発している。
「「ブラッドボム。」」
子供の重なった声と連動するように、爆発がさらに起こった。
爆発したヤゴの体液が渋滞状態の他のヤゴに当たり、それが火をつけた火薬のように爆発していく。
それだけでヤゴの大半が消し飛んでいった。残ったのは密集は危険と悟ったモノと、たまたま群れから外れていた個体くらいである。
「え、えげつないである・・・」
岩陰に隠れつつ、一連の流れを眺めていたウロボロスは口元を引きつらせながら乾いた声を出した。
圧倒的な高火力による殲滅戦は、作戦としては申し分ないかもしれないが、見ている側からしたら悲惨すぎると感じざるをえない。
なんだかヤゴが可哀想になってくる現場を見つつ、ウロボロスは口元を両手で隠し、はわわわと尻尾を丸めた。
すると今度は炎の柱が激しい爆発音と共に打ち上がった。洞窟の奥からだ。新しいヤゴの悲鳴が聞こえる。
「魔女め、容赦のかけらもしないのぅ」
ウロボロスが消し炭となっていくヤゴを確認し、はははと軽く笑った。
今の攻撃の正体はメアリーによる魔法攻撃だ。
ガルムが暴風を操り、逃げ出したヤゴをベタとガマがブラッドボムで殲滅する。
当然戦闘音は洞窟中に響き渡るので、音を聞きつけてヤゴの援軍が奥からやってくるだろうと予想を立てていた。
それに不意打ちで攻撃を喰らわせるのはメアリーの役目である。
魔法は『炎陣の印「火柱」』と呼ばれる呪術だ。ただ魔力の物質変換の過程で破壊エネルギーに変えるだけの魔法ではなく、その後に望んだ形になるよう変換後の魔力を操作するという高度な技術が必要とされる。
「ふむ、では我もやるとしよう」
ウロボロスは「よっこらせ」と隠れていた岩の上にまたがり、足音のする奥の方へと顔を向けた。
そこからは無数のかちゃかちゃと甲羅でできた足が地を蹴る音がする、
竜の視力で奥をより観察すると、戦闘の気配を嗅ぎつけたヤゴの群れが行軍してくるのが確認できた。
ウロボロスは息を吸い、体内に空気を溜め込む。口の中で魔力と混ぜ合わせ、竜にしか発音できない竜言語を紡ぐ。
そして大量のヤゴがやってくるであろう穴に向かって火炎放射を流し込んだ。
「オロロロロロロロ」
その姿はまるでゲロを吐く酔っ払いのようだ。吐いているのが岩も溶解させる火炎で無ければの話だが。
「「「ギュァァアァ!!」」」
案の定、ヤゴたちの悲鳴が聞こえてきた。ウロボロスは内心「すまぬ」と頭を下げつつも、火炎放射を吐くのをやめない。
さて、ヤゴの掃討戦でもSランカーたちが大暴れしているのだが、サエラもその勢いに遅れをとることはない。
一秒感覚で矢を放ち、個別となって逃げ延びたヤゴの脳天に撃ち込んでいく。
走って移動しつつ、敵に位置を悟られないように狙撃する。得意の影魔法を使い、影をひも代わりに洞窟の壁を駆ける。
ウロボロスやガルムのような広範囲を殲滅する攻撃魔法をサエラは持っていないが、彼らが倒ち漏らした個体を処理することで戦闘に貢献していた。
これにより少数のヤゴに背後から攻撃されるのを避けることができるので、ウロボロスたちは遠慮なく攻撃できると言うわけだ。サエラがいなければ、彼らはもっと慎重に作戦を決行していただろう。
数匹づつ倒していくという、暗殺に似た作戦。それではあまりに時間がかかる。
サエラの存在に一番感謝しているのは、ヤゴの駆除を一番めんどくさがっていたガルムかもしれない。
そうしてヤゴの掃討戦は、数時間足らずで完了していくのだった。
荒れ狂う暴風に巻き込まれた数十匹のヤゴが、断末魔をあげながら高速回転して空中に打ち上げられていく。
空気抵抗に耐えきれず身体がバラバラになっていき、その破片はまだ無事だった同族に衝突して同じようにメチャクチャにしていく。
ミニチュアサイズの台風と言い表しても過言ではない。それが何個も現れてはヤゴの群れを吹き飛ばしていった。
巨大な昆虫であるメガニューラだが、それでも脳は存在している。
暴風の危険性を理解したヤゴたちは急いで風が吹き荒れる範囲から逃げ出した。
水生で育つヤゴだが、合計して六本ある前脚、中脚、後脚を器用に動かして人間並みの速度で移動している。
その場にとどまって暴れる竜巻から逃げるには充分な足の速さであった。
助かったと本能で感じ取るヤゴだが、それもつかの間。
次の瞬間には前方にいたヤゴたちが爆発するのを複眼で捉えた。爆発は、連鎖的に次々に近くにいたヤゴを巻き混んで爆発している。
「「ブラッドボム。」」
子供の重なった声と連動するように、爆発がさらに起こった。
爆発したヤゴの体液が渋滞状態の他のヤゴに当たり、それが火をつけた火薬のように爆発していく。
それだけでヤゴの大半が消し飛んでいった。残ったのは密集は危険と悟ったモノと、たまたま群れから外れていた個体くらいである。
「え、えげつないである・・・」
岩陰に隠れつつ、一連の流れを眺めていたウロボロスは口元を引きつらせながら乾いた声を出した。
圧倒的な高火力による殲滅戦は、作戦としては申し分ないかもしれないが、見ている側からしたら悲惨すぎると感じざるをえない。
なんだかヤゴが可哀想になってくる現場を見つつ、ウロボロスは口元を両手で隠し、はわわわと尻尾を丸めた。
すると今度は炎の柱が激しい爆発音と共に打ち上がった。洞窟の奥からだ。新しいヤゴの悲鳴が聞こえる。
「魔女め、容赦のかけらもしないのぅ」
ウロボロスが消し炭となっていくヤゴを確認し、はははと軽く笑った。
今の攻撃の正体はメアリーによる魔法攻撃だ。
ガルムが暴風を操り、逃げ出したヤゴをベタとガマがブラッドボムで殲滅する。
当然戦闘音は洞窟中に響き渡るので、音を聞きつけてヤゴの援軍が奥からやってくるだろうと予想を立てていた。
それに不意打ちで攻撃を喰らわせるのはメアリーの役目である。
魔法は『炎陣の印「火柱」』と呼ばれる呪術だ。ただ魔力の物質変換の過程で破壊エネルギーに変えるだけの魔法ではなく、その後に望んだ形になるよう変換後の魔力を操作するという高度な技術が必要とされる。
「ふむ、では我もやるとしよう」
ウロボロスは「よっこらせ」と隠れていた岩の上にまたがり、足音のする奥の方へと顔を向けた。
そこからは無数のかちゃかちゃと甲羅でできた足が地を蹴る音がする、
竜の視力で奥をより観察すると、戦闘の気配を嗅ぎつけたヤゴの群れが行軍してくるのが確認できた。
ウロボロスは息を吸い、体内に空気を溜め込む。口の中で魔力と混ぜ合わせ、竜にしか発音できない竜言語を紡ぐ。
そして大量のヤゴがやってくるであろう穴に向かって火炎放射を流し込んだ。
「オロロロロロロロ」
その姿はまるでゲロを吐く酔っ払いのようだ。吐いているのが岩も溶解させる火炎で無ければの話だが。
「「「ギュァァアァ!!」」」
案の定、ヤゴたちの悲鳴が聞こえてきた。ウロボロスは内心「すまぬ」と頭を下げつつも、火炎放射を吐くのをやめない。
さて、ヤゴの掃討戦でもSランカーたちが大暴れしているのだが、サエラもその勢いに遅れをとることはない。
一秒感覚で矢を放ち、個別となって逃げ延びたヤゴの脳天に撃ち込んでいく。
走って移動しつつ、敵に位置を悟られないように狙撃する。得意の影魔法を使い、影をひも代わりに洞窟の壁を駆ける。
ウロボロスやガルムのような広範囲を殲滅する攻撃魔法をサエラは持っていないが、彼らが倒ち漏らした個体を処理することで戦闘に貢献していた。
これにより少数のヤゴに背後から攻撃されるのを避けることができるので、ウロボロスたちは遠慮なく攻撃できると言うわけだ。サエラがいなければ、彼らはもっと慎重に作戦を決行していただろう。
数匹づつ倒していくという、暗殺に似た作戦。それではあまりに時間がかかる。
サエラの存在に一番感謝しているのは、ヤゴの駆除を一番めんどくさがっていたガルムかもしれない。
そうしてヤゴの掃討戦は、数時間足らずで完了していくのだった。
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