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第3章〜三大王〜
第166話「オカマバー2」
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「なぁんで我がこのような無様な姿を‥‥‥」
我は身につけた衣服のスカートの裾についたフリル?とやらを摘み上げながら呟いた。
黒と白をベースに、動きにくそうなスカートと明らかにデザイン重視と思われる前掛け。いわゆる機能性皆無なメイド服である。
そして鏡に写った我の軟弱さも酷いものだ。相変わらずのか細い体に男らしくない細い青髪。目も鋭さはなく、無邪気な子供と変わらない。
やっぱ嫌いだこの姿。
「やぁぁぁぁぁあん!かわいいわよウーロちゃあん!」
我の真横で叫んだのはゴードンの部下であるスザンヌというオカマである。
うるせぇ。しかしこれから一時的にとはいえ仕事を教わるのだ。邪険にするわけにもいかない。せっかくゴードンがわざわざメアリーから人化の魔法薬をもらってきたのだ。やるからにはしっかりやらなければ。
「で、我はどうすればいいのだ?」
「簡単に言えば接客よぅ。まずはこのお店がどういうサービスをしているのか、説明するわね」
スザンヌによれば、この店はゴードンが若い頃に支援していた宿屋だったようだが、経営難で潰れてしまったのだそうだ。
当時から凄腕の傭兵として名を馳せていたゴードンはかなりの貯蓄があり、冒険仲間(おそらくガルムたち?)と住む活動拠点として買い取ったらしい。
それからガルムたちも住む場所が変わっていき、ゴードンも冒険者活動から徐々に身を引いていった。
今では同士を集めてこうして店を開き、交流の場を作った‥‥‥というわけだ。
「そして今日は、あたしたち仲間が出会った素敵な記念日。なんとしても成功させたかったのよ。ありがとウーロちゃん」
「あ、そう」
礼を言われて悪い気はしない。が、やっぱり女装なるものはやってると違和感を感じる。
しかも足元がすげースースーするんだけど。シオン結構スカート履いてるが、いつもこんな感じなのか?強い。
「ウーロちゃんのお仕事はお給仕よ。お客さんから受けた注文を厨房に知らせたり、できた料理を席に運ぶの」
なるほど。それなら大変そうだが、我にでもできそうだ。
「そして、運び終えたら投げキッスするの」
最悪だ。
「ふざけるな!!」
「ふざけてなんかないわよぉ。良い?お客様がここに来る理由は一つ。飢えた愛を求めてくるの」
「んなわけあるかぁ!」
「アタシたちは夜の蝶」
蛾の間違いだろ。
「仕事は手伝ってやるが、そんなバカみたいなことできるか」
我はふんっと顔を横にそらしてスザンヌから目を離した。女子の格好をするまではなんとか許容してやったが、わざわざ投げキッスなど恥をかいてやるほど我はお人好しではない。
というか万が一、億が一、身内に見られたらどうするのだ。シオンなんかに一生ネタにされかねん。
「残念ねぇ‥‥‥ウーロちゃんにやってもらえれば、お客さんも喜ぶと思うのに」
「下等種族にそこまでやってやる義理はないわぁ!」
「あら!その高飛車な感じ、良いわね!」
なにが?こいつら本当に意味がわからん。
「さ、次はメイクの時間よ」
「はぁ!?まだ手を加えるのか?」
服装を女物に変え、さらに胸元にパットとやらの詰め物をしたのに、これでと足りないというのか。
我の信じられんという顔にスザンヌは当たり前でしょうと腰に手を当ててムッとした顔をした。
「たしかにウーロちゃんはかわいいけど、それだけじゃ足りないわ。アタシたちは夜の蝶、お店にいる間は常に美しくなければならないの」
美しいとかどの口が‥‥‥もういいや疲れた。
拒否しても無駄だと思い、無抵抗となった我の顔をスザンヌはちょうどいいと言わんばかりに弄り始める。
透明だがただの水ではない変なのを塗られたり、先を切った筆のようなもので粉のようなものを塗され、変な横長のタイヤを顔に走らされる。
なんなのこれ。女子はみんなこんなのやってんの?いや、シオンとサエラがやってるのは見たことない。
そんなことを現実逃避のために考えていると、いつの間にかスザンヌからできたわよと終了の声が聞こえた。
ようやくこの窮屈な時間が終わるとホッとしつつ、我は出来上がった顔を鏡で見てみた。
「‥‥‥っ!?」
え、何これ。なんだかキラキラしてる。通常の人間形態の我と形状はさほど変わっていないが、ほんのりある口紅だったりうっすら見えるピンク色の頬など、細かな色気のある特徴が追加されていた。
これが‥‥‥我?うっそじゃろ。
「我ながら可愛くできたわぁ。身惚れちゃうでしょ?」
「ふ、ふむ。あ、そ、そうだ、な?」
一瞬こんなものと言おうとしたが、そもそも自分の顔なので貶しようがない。
ぬ、ぬう。化粧とやらでここまで変化が起きるのか。知らなんだ。
「これでお客さんはみんなウーロちゃんにメロメロよ?」
「め、めろめろ?」
「そう!魅力たっぷりのウーロちゃんの虜になるに違いないわ!」
虜‥‥‥か。まぁ、人間どもが我の言いなりになるのは気分がいいかもしれんが‥‥‥でもこの姿は。
まぁ、今日一日だけだし。これが終わったら全部忘れよう。うん、忘れよう。
「やっだ!本当にウーロちゃんなの!?」
死んだ魚の目で自分の顔を見ていると、ドアを開けたゴードンが大声で叫んできたのが聞こえた。
我を見る目は驚きに満ちており、同時に満面の笑みをも浮かべている。
「やっぱりアタシの目に狂いは無かったわ‥‥‥ウーロちゃんはまるでダイヤの原石よ」
嬉しくねぇ。
我は身につけた衣服のスカートの裾についたフリル?とやらを摘み上げながら呟いた。
黒と白をベースに、動きにくそうなスカートと明らかにデザイン重視と思われる前掛け。いわゆる機能性皆無なメイド服である。
そして鏡に写った我の軟弱さも酷いものだ。相変わらずのか細い体に男らしくない細い青髪。目も鋭さはなく、無邪気な子供と変わらない。
やっぱ嫌いだこの姿。
「やぁぁぁぁぁあん!かわいいわよウーロちゃあん!」
我の真横で叫んだのはゴードンの部下であるスザンヌというオカマである。
うるせぇ。しかしこれから一時的にとはいえ仕事を教わるのだ。邪険にするわけにもいかない。せっかくゴードンがわざわざメアリーから人化の魔法薬をもらってきたのだ。やるからにはしっかりやらなければ。
「で、我はどうすればいいのだ?」
「簡単に言えば接客よぅ。まずはこのお店がどういうサービスをしているのか、説明するわね」
スザンヌによれば、この店はゴードンが若い頃に支援していた宿屋だったようだが、経営難で潰れてしまったのだそうだ。
当時から凄腕の傭兵として名を馳せていたゴードンはかなりの貯蓄があり、冒険仲間(おそらくガルムたち?)と住む活動拠点として買い取ったらしい。
それからガルムたちも住む場所が変わっていき、ゴードンも冒険者活動から徐々に身を引いていった。
今では同士を集めてこうして店を開き、交流の場を作った‥‥‥というわけだ。
「そして今日は、あたしたち仲間が出会った素敵な記念日。なんとしても成功させたかったのよ。ありがとウーロちゃん」
「あ、そう」
礼を言われて悪い気はしない。が、やっぱり女装なるものはやってると違和感を感じる。
しかも足元がすげースースーするんだけど。シオン結構スカート履いてるが、いつもこんな感じなのか?強い。
「ウーロちゃんのお仕事はお給仕よ。お客さんから受けた注文を厨房に知らせたり、できた料理を席に運ぶの」
なるほど。それなら大変そうだが、我にでもできそうだ。
「そして、運び終えたら投げキッスするの」
最悪だ。
「ふざけるな!!」
「ふざけてなんかないわよぉ。良い?お客様がここに来る理由は一つ。飢えた愛を求めてくるの」
「んなわけあるかぁ!」
「アタシたちは夜の蝶」
蛾の間違いだろ。
「仕事は手伝ってやるが、そんなバカみたいなことできるか」
我はふんっと顔を横にそらしてスザンヌから目を離した。女子の格好をするまではなんとか許容してやったが、わざわざ投げキッスなど恥をかいてやるほど我はお人好しではない。
というか万が一、億が一、身内に見られたらどうするのだ。シオンなんかに一生ネタにされかねん。
「残念ねぇ‥‥‥ウーロちゃんにやってもらえれば、お客さんも喜ぶと思うのに」
「下等種族にそこまでやってやる義理はないわぁ!」
「あら!その高飛車な感じ、良いわね!」
なにが?こいつら本当に意味がわからん。
「さ、次はメイクの時間よ」
「はぁ!?まだ手を加えるのか?」
服装を女物に変え、さらに胸元にパットとやらの詰め物をしたのに、これでと足りないというのか。
我の信じられんという顔にスザンヌは当たり前でしょうと腰に手を当ててムッとした顔をした。
「たしかにウーロちゃんはかわいいけど、それだけじゃ足りないわ。アタシたちは夜の蝶、お店にいる間は常に美しくなければならないの」
美しいとかどの口が‥‥‥もういいや疲れた。
拒否しても無駄だと思い、無抵抗となった我の顔をスザンヌはちょうどいいと言わんばかりに弄り始める。
透明だがただの水ではない変なのを塗られたり、先を切った筆のようなもので粉のようなものを塗され、変な横長のタイヤを顔に走らされる。
なんなのこれ。女子はみんなこんなのやってんの?いや、シオンとサエラがやってるのは見たことない。
そんなことを現実逃避のために考えていると、いつの間にかスザンヌからできたわよと終了の声が聞こえた。
ようやくこの窮屈な時間が終わるとホッとしつつ、我は出来上がった顔を鏡で見てみた。
「‥‥‥っ!?」
え、何これ。なんだかキラキラしてる。通常の人間形態の我と形状はさほど変わっていないが、ほんのりある口紅だったりうっすら見えるピンク色の頬など、細かな色気のある特徴が追加されていた。
これが‥‥‥我?うっそじゃろ。
「我ながら可愛くできたわぁ。身惚れちゃうでしょ?」
「ふ、ふむ。あ、そ、そうだ、な?」
一瞬こんなものと言おうとしたが、そもそも自分の顔なので貶しようがない。
ぬ、ぬう。化粧とやらでここまで変化が起きるのか。知らなんだ。
「これでお客さんはみんなウーロちゃんにメロメロよ?」
「め、めろめろ?」
「そう!魅力たっぷりのウーロちゃんの虜になるに違いないわ!」
虜‥‥‥か。まぁ、人間どもが我の言いなりになるのは気分がいいかもしれんが‥‥‥でもこの姿は。
まぁ、今日一日だけだし。これが終わったら全部忘れよう。うん、忘れよう。
「やっだ!本当にウーロちゃんなの!?」
死んだ魚の目で自分の顔を見ていると、ドアを開けたゴードンが大声で叫んできたのが聞こえた。
我を見る目は驚きに満ちており、同時に満面の笑みをも浮かべている。
「やっぱりアタシの目に狂いは無かったわ‥‥‥ウーロちゃんはまるでダイヤの原石よ」
嬉しくねぇ。
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