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第3章〜三大王〜
第156話「つまりアイツと同じ病気」
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シオンたちの奇行を目の当たりにして、マーシーが意外そうに口元を引きつらせた。今までそんな素振りは見せなかったからの。若干変人を見るような目では見られていたけど。
するとシオンたちと入れ替わるように玄関の扉が開き、そこから脱色した白色の髪をした人物が入ってきた。
「あ、おじいちゃん」
カスミが我を見てニッコリと微笑んだ。昨日の今日で見た目に変化はないが、片方の腕が無くなっているのが中々心臓に悪い。
切り取られた腕は包帯でぐるぐる巻きにされているが、痛覚がないからか顔に苦痛は見られない。
それどころか足取りが軽く、スキップするように近寄ってきた。
「おはよ!来てくれたんだ」
「まぁの。腕は大丈夫か?」
「うん。あのね、なんだか軽いの」
そりゃ物理的に肉体を欠損してるわけだし。
「聞いておじいちゃん!あたしの手ね、水の中でしゅぼぼぼーってなって、骨だけになっちゃったの!」
「は?」
「だからしゅぼぼぼーって」
そのしゅぼぼぼーってのがわからんのだが、たぶんマーシーが言ってた骨を芯にして義手を作る方法の過程なのだろう。
たぶん液体の中に腕をぶち込んだら骨以外が溶けてしまった、ということなのかな?
しゅぼぼぼーは溶ける時に発生した気泡のことか?予想はつくが確定ができん。
我がカスミの言動の端から場面を想像をし、苦々しい顔を浮かべているとマーシーが会話に入ってくる。
「この子ヤバイのよ。手が溶けるところが見たいとか言って見学して、すごいとか痛そうとか言ってんのよ」
「他人事じゃのぅ‥‥‥」
まぁこの子に感覚がないから、実際他人事の気分なのだろうが。
だが良いタイミングで会えた。カスミはシオンたちと年齢は近いはず。
脳が欠けたせいで精神年齢が若干幼くなってる気がしないでもないが、もしかしたらあの子らの年で微妙な変化が起こる時期があって、それを知ってる可能性もある。同じ女子だし。
「なぁカスミ。ちょっと聞きたいんじゃが」
「なになに?」
「16歳くらいで、急に変な行動を起こす時期ってあるのか?」
「えー?うーん」
唇に指を当て、上を見ながら唸る。しかし思い当たる節がないのか目を閉じて口にミミズ文字を浮かべた。
我の質問に答えようと一生懸命そうだが、答えを知らんのならしかたない。やっぱりあれはシオンが手引きした奇行で間違い無いだろう。
「すまん変なことを聞いた」
「待って待って!わかるの!わかるから待って!えとえーっと」
「無理に答えないでも‥‥‥」
「あ、メアリーちゃん!メアリーちゃんなら何か知ってるかも!」
「メアリーが?」
ガルムの仲間の魔女メアリー。なぜカスミが知ってるのか謎だが、そういえばメアリーはマーシーの家に住み込んで仕事の手伝いをしてるのだったな。昨日にでも会ったのかもしれん。
メアリーか。たしかに年齢は近いし、普段から本に出てくる登場人物みたいなセリフを常々吐いている。聞いてみるのも手かの。
「わかった、ありがとう。今メアリーはいるのか?」
「上にいるよー!マーシーさん案内してもいい?」
「良いけど、グロンが勉強中だから邪魔しないでね」
「はーい!」
言葉のやり取りだけ見てたら娘と母親みたいだな。という感想を思いつつ、口に出さんようにする。
カスミが我を頭の上に乗せ、早足で階段を駆け上がると一室の前で足を止めた。
おそらくここがメアリーの部屋なのだろう。カスミは我を頭の上に乗せたまま話を始める。
「ここ」
「なんで小声なのだ?」
「うんとね、見ればわかるよー」
カスミがそう言うと軽くドアを開け、小さな隙間を作ってくれた。女子の部屋を見るのはあまり気が進まぬが‥‥‥同じ女のカスミがやってるから別にいいか。
カスミの上からソッとメアリーの部屋を覗き見る。目的の少女は鏡の前に立ちながら、ワンピースというラフな格好でぶつぶつと呟いていた。
「鳳凰の翼よ、その身に宿す灼熱の‥‥‥なんか違うなぁ」
鳳凰か。たしか炎を纏う巨鳥で、獣王が従える四天王の一角である。
不死鳥とも呼ばれ、文字通り不死に近い再生能力を持つ。無論本物の不死ではなく、高い再生能力があるというだけだが。
あと火竜に喧嘩を売ったら返り討ちにされたという話もある‥‥‥竜種や王より一段下の、人間たちがよく知る伝説の生き物という立ち位置の魔物だろう。
「詠唱かの?」
言葉の隅々に魔力が宿っているのをかんがみると、おそらく魔法の発動言語を作ってるのだろうが、やはりいつも通り背伸びしがちな言動である。
「メアリーちゃんは中二病だから、きっとシオンちゃんたちも同じだよ」
「いやあれは中二びょ‥‥‥うーん中二病なのかのぅ」
なんかシオンたちのはメアリーのものとは違う気がする。違って欲しい。
「大いなる竜王よ、輪廻の狭間より‥‥‥やっぱりウーロの召喚魔法はまずいかな」
ていうかさりげなく我を召喚する魔法作ってるんですけど。やめてくれませんかね。助っ人に出されてもガルムたちが戦うような相手に勝てる気がしないのだが!
するとシオンたちと入れ替わるように玄関の扉が開き、そこから脱色した白色の髪をした人物が入ってきた。
「あ、おじいちゃん」
カスミが我を見てニッコリと微笑んだ。昨日の今日で見た目に変化はないが、片方の腕が無くなっているのが中々心臓に悪い。
切り取られた腕は包帯でぐるぐる巻きにされているが、痛覚がないからか顔に苦痛は見られない。
それどころか足取りが軽く、スキップするように近寄ってきた。
「おはよ!来てくれたんだ」
「まぁの。腕は大丈夫か?」
「うん。あのね、なんだか軽いの」
そりゃ物理的に肉体を欠損してるわけだし。
「聞いておじいちゃん!あたしの手ね、水の中でしゅぼぼぼーってなって、骨だけになっちゃったの!」
「は?」
「だからしゅぼぼぼーって」
そのしゅぼぼぼーってのがわからんのだが、たぶんマーシーが言ってた骨を芯にして義手を作る方法の過程なのだろう。
たぶん液体の中に腕をぶち込んだら骨以外が溶けてしまった、ということなのかな?
しゅぼぼぼーは溶ける時に発生した気泡のことか?予想はつくが確定ができん。
我がカスミの言動の端から場面を想像をし、苦々しい顔を浮かべているとマーシーが会話に入ってくる。
「この子ヤバイのよ。手が溶けるところが見たいとか言って見学して、すごいとか痛そうとか言ってんのよ」
「他人事じゃのぅ‥‥‥」
まぁこの子に感覚がないから、実際他人事の気分なのだろうが。
だが良いタイミングで会えた。カスミはシオンたちと年齢は近いはず。
脳が欠けたせいで精神年齢が若干幼くなってる気がしないでもないが、もしかしたらあの子らの年で微妙な変化が起こる時期があって、それを知ってる可能性もある。同じ女子だし。
「なぁカスミ。ちょっと聞きたいんじゃが」
「なになに?」
「16歳くらいで、急に変な行動を起こす時期ってあるのか?」
「えー?うーん」
唇に指を当て、上を見ながら唸る。しかし思い当たる節がないのか目を閉じて口にミミズ文字を浮かべた。
我の質問に答えようと一生懸命そうだが、答えを知らんのならしかたない。やっぱりあれはシオンが手引きした奇行で間違い無いだろう。
「すまん変なことを聞いた」
「待って待って!わかるの!わかるから待って!えとえーっと」
「無理に答えないでも‥‥‥」
「あ、メアリーちゃん!メアリーちゃんなら何か知ってるかも!」
「メアリーが?」
ガルムの仲間の魔女メアリー。なぜカスミが知ってるのか謎だが、そういえばメアリーはマーシーの家に住み込んで仕事の手伝いをしてるのだったな。昨日にでも会ったのかもしれん。
メアリーか。たしかに年齢は近いし、普段から本に出てくる登場人物みたいなセリフを常々吐いている。聞いてみるのも手かの。
「わかった、ありがとう。今メアリーはいるのか?」
「上にいるよー!マーシーさん案内してもいい?」
「良いけど、グロンが勉強中だから邪魔しないでね」
「はーい!」
言葉のやり取りだけ見てたら娘と母親みたいだな。という感想を思いつつ、口に出さんようにする。
カスミが我を頭の上に乗せ、早足で階段を駆け上がると一室の前で足を止めた。
おそらくここがメアリーの部屋なのだろう。カスミは我を頭の上に乗せたまま話を始める。
「ここ」
「なんで小声なのだ?」
「うんとね、見ればわかるよー」
カスミがそう言うと軽くドアを開け、小さな隙間を作ってくれた。女子の部屋を見るのはあまり気が進まぬが‥‥‥同じ女のカスミがやってるから別にいいか。
カスミの上からソッとメアリーの部屋を覗き見る。目的の少女は鏡の前に立ちながら、ワンピースというラフな格好でぶつぶつと呟いていた。
「鳳凰の翼よ、その身に宿す灼熱の‥‥‥なんか違うなぁ」
鳳凰か。たしか炎を纏う巨鳥で、獣王が従える四天王の一角である。
不死鳥とも呼ばれ、文字通り不死に近い再生能力を持つ。無論本物の不死ではなく、高い再生能力があるというだけだが。
あと火竜に喧嘩を売ったら返り討ちにされたという話もある‥‥‥竜種や王より一段下の、人間たちがよく知る伝説の生き物という立ち位置の魔物だろう。
「詠唱かの?」
言葉の隅々に魔力が宿っているのをかんがみると、おそらく魔法の発動言語を作ってるのだろうが、やはりいつも通り背伸びしがちな言動である。
「メアリーちゃんは中二病だから、きっとシオンちゃんたちも同じだよ」
「いやあれは中二びょ‥‥‥うーん中二病なのかのぅ」
なんかシオンたちのはメアリーのものとは違う気がする。違って欲しい。
「大いなる竜王よ、輪廻の狭間より‥‥‥やっぱりウーロの召喚魔法はまずいかな」
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