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第2章〜不死編〜
第140話「爆弾松明」
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戦いを始めてから数十分が経った。我とベタとガマは互いに笑みを浮かべながら、己の中からたぎる喜びに身を任せていた。
歓天喜地と呼べばいいのか。思うように暴れ、力を使うのか楽しい。
それだけじゃない。まるで、昔の稽古をしてやっているかのようだ。まだ力の使い方がわからなかったあの子に、魔法の使い方、剣の振るい方、体の動かし方。いろんなことを教えていたあの時。
きっとベタとガマも同じように思っているだろう。攻撃がますます苛烈さを帯びていく。
ルファは並列思考という、一度に二つのことを考える能力を持っていた。戦いに利用すればこの上なく厄介さを発揮する能力だが‥‥‥今は使っている様子はない。
もしや、片方の思考を具現化させたのがベタか、あるいはガマなのか?ならこの連携の良さも納得できる。
「「ガァァァッ!!」」
するとガマが我を鎖で巻き付け、動きを封じてきた。二人はニヤリと嗤う。
戦いの最中に余計な考えごとをするからだな。いや、己の癖にもまいる。ベタとガマはケラケラ嗤って武器を振るう。ベタは鎌を、ガマはメイスを。
喰らってしまえば我の頭が粉々に吹っ飛ぶだろう。拘束された我では反撃も回避もできない。が、こやつらは我がドラゴンだということを忘れているようだ。
「ゴア、ガアア!」
口の中から膨大な魔力をブレスに変えて発射する。球体の炎の塊を吐き出す。それは真正面から向かってくるベタとガマに当たり、二人を連れて墜落した。
いわゆる火球というものだ。単発式ながらも一撃の威力は高い。ベタとガマは火球と一緒に地面にぶつかると、巻き込まれて爆発した。
普通ならこれで終わりだが、ベタとガマがそう簡単に負けるとは思えん。実際まだ気配を感じる。
カカカ、本当に腕を上げたのぅ。二人がいるであろう場所に向かって手を向け、そこに《業火》の炎を集中させる。
砂煙で見えないだの、周囲を巻き込むなど、そんなことはどうでもいい。暴れたい。まだ暴れ足りん。
本来身を焼いて対象ごと消失させる《業火》の炎を自身の肉体から切り離し、一時的に手のひらに出現させた。
ふふふ、人間の要塞くらいなら軽く吹き飛ばせる火球の出来上がりだ。これならどうだ?
流石の奴らも耐えられんだろう。そうなれば‥‥‥そうなれば。
「‥‥‥」
我、我は何をしているのだ?こんなものをベタとガマに投げたら、下手したら死んでしまう。
そう思った瞬間、我の中から憑き物が消えるかのようにスッと何かが出ていった感覚がした。同時に交戦に興奮していた昂った愉悦感も消え失せる。
氷に頭を入れたように、熱していた頭が冷やされた。
『感情に流されるな』
パディングが言っていた意味はこれだったのか?記憶を取り戻した瞬間に、技も力の使い方も何もかもを思い出した。かつて自分が努力して手に入れた技術。
思えば今世の我より、思い出した過去の自分の方が長く生きている。その時代に体験した経験などが記憶として蘇ったのなら、過去に形成された性格が今の我に影響を及ぼすこともある‥‥‥ということなのだろうか?
これは‥‥‥危険だ。もし人間を最も憎んでいた時代の記憶を思い出したら、大変なことが起きるんじゃ‥‥‥。
「ん?」
冷静になってパディングの忠告の意味を噛みしめていると、なんか顔の前がどんどん熱くなっている感じがした。
ちょっと見てみると、我が作った《業火》の炎が我の体の倍くらいの大きさまで成長していた。やば。
「あわわわ、き、消えろ!きえるのだぁー!」
慌てて消そうと試みるものの、勢いは止まらない。しかも我から戦意が消えたせいで身体にまとってた《業火》も消えてしまった。
やばいやばいやばい!あばばは、はっ!そうだ。ガルムならなんとかできるかも。
翼を羽ばたかせ、ガルムの元まで飛んでいく。シオンたちと合流したようで集合していた。
「みんなー!たすけてくれぃ!」
「あ、戻ってきました!」
「どうしたの?なんかいつものウーロじゃなかった」
「今はいつも通りだけどな」
「わうん」
サエラが我の顔を見て不安そうにしている。やはり客観的に見ても我らしくない様子だったらしい。我の拘束魔法から脱出したのか、ガルムは青筋を浮かべながら口を引きつらせて「へへへ」と笑ってる。
ごめん。だから怒んないで。
「てか、どうしたんですか、その‥‥‥ウーロさんの必殺技みたいな火の玉」
「消し方がわからんのだ。助けてくれ」
我がそう尋ねると、みんな真顔で後ろに後退って行く。ま、待って!見捨てないで!!
「ちょーー!!お願い、我を置いて行かないでくれ!」
「さようなら。ウーロさんとの日々は楽しかったですよ」
「シオン!貴様!いつも我を可愛がってるクセに見捨てるのか!サエラ!サエラは違うだろう!?」
「グッドラック」
Oh、no。
「そもそも一人で突っ込んだと思ったら、急に爆弾抱えて帰って来たウーロさんの対処に一番困ってるのわたしたちなんですけど。
シオンの指摘にぐうの音も出ない。
「つか、自分で出した魔法なんだから消せるだろ」
ガルムがもっともなことを言ってくる。そうなんだけど、違うのだ!なんと説明したら良いかわからず我はうんうんと唸る。
「これ、我が出したんだけど我じゃなくて!我じゃない我が出したから我には消し方がわかんないのだ!」
「てめー何言ってんだ?」
やばい。パニックになって何を言ってるのか分からなくなってしまった。ゲシュタルト崩壊しそう。
サエラに至っては頭から湯気が出始めた。ごめん我の言語力不足で。
しかし、頭が混乱したサエラの脳味噌は、何かを閃いて見せたらしい。目を開けて我にこんな提案を持ちかけてくる。
「そうだ。前頭に火を乗せてたし、また同じことすれば良いんじゃない?」
それだ!たしかに頭にアフロを生やし、それを可燃剤として頭を燃やして松明代わりをしてたことはある!
結局我の鱗は熱を耐えるし、とりあえずこの火の玉を置いておくことはできるかもしれない。
早速、試してみ‥‥‥あぁあちゃ、あちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!
歓天喜地と呼べばいいのか。思うように暴れ、力を使うのか楽しい。
それだけじゃない。まるで、昔の稽古をしてやっているかのようだ。まだ力の使い方がわからなかったあの子に、魔法の使い方、剣の振るい方、体の動かし方。いろんなことを教えていたあの時。
きっとベタとガマも同じように思っているだろう。攻撃がますます苛烈さを帯びていく。
ルファは並列思考という、一度に二つのことを考える能力を持っていた。戦いに利用すればこの上なく厄介さを発揮する能力だが‥‥‥今は使っている様子はない。
もしや、片方の思考を具現化させたのがベタか、あるいはガマなのか?ならこの連携の良さも納得できる。
「「ガァァァッ!!」」
するとガマが我を鎖で巻き付け、動きを封じてきた。二人はニヤリと嗤う。
戦いの最中に余計な考えごとをするからだな。いや、己の癖にもまいる。ベタとガマはケラケラ嗤って武器を振るう。ベタは鎌を、ガマはメイスを。
喰らってしまえば我の頭が粉々に吹っ飛ぶだろう。拘束された我では反撃も回避もできない。が、こやつらは我がドラゴンだということを忘れているようだ。
「ゴア、ガアア!」
口の中から膨大な魔力をブレスに変えて発射する。球体の炎の塊を吐き出す。それは真正面から向かってくるベタとガマに当たり、二人を連れて墜落した。
いわゆる火球というものだ。単発式ながらも一撃の威力は高い。ベタとガマは火球と一緒に地面にぶつかると、巻き込まれて爆発した。
普通ならこれで終わりだが、ベタとガマがそう簡単に負けるとは思えん。実際まだ気配を感じる。
カカカ、本当に腕を上げたのぅ。二人がいるであろう場所に向かって手を向け、そこに《業火》の炎を集中させる。
砂煙で見えないだの、周囲を巻き込むなど、そんなことはどうでもいい。暴れたい。まだ暴れ足りん。
本来身を焼いて対象ごと消失させる《業火》の炎を自身の肉体から切り離し、一時的に手のひらに出現させた。
ふふふ、人間の要塞くらいなら軽く吹き飛ばせる火球の出来上がりだ。これならどうだ?
流石の奴らも耐えられんだろう。そうなれば‥‥‥そうなれば。
「‥‥‥」
我、我は何をしているのだ?こんなものをベタとガマに投げたら、下手したら死んでしまう。
そう思った瞬間、我の中から憑き物が消えるかのようにスッと何かが出ていった感覚がした。同時に交戦に興奮していた昂った愉悦感も消え失せる。
氷に頭を入れたように、熱していた頭が冷やされた。
『感情に流されるな』
パディングが言っていた意味はこれだったのか?記憶を取り戻した瞬間に、技も力の使い方も何もかもを思い出した。かつて自分が努力して手に入れた技術。
思えば今世の我より、思い出した過去の自分の方が長く生きている。その時代に体験した経験などが記憶として蘇ったのなら、過去に形成された性格が今の我に影響を及ぼすこともある‥‥‥ということなのだろうか?
これは‥‥‥危険だ。もし人間を最も憎んでいた時代の記憶を思い出したら、大変なことが起きるんじゃ‥‥‥。
「ん?」
冷静になってパディングの忠告の意味を噛みしめていると、なんか顔の前がどんどん熱くなっている感じがした。
ちょっと見てみると、我が作った《業火》の炎が我の体の倍くらいの大きさまで成長していた。やば。
「あわわわ、き、消えろ!きえるのだぁー!」
慌てて消そうと試みるものの、勢いは止まらない。しかも我から戦意が消えたせいで身体にまとってた《業火》も消えてしまった。
やばいやばいやばい!あばばは、はっ!そうだ。ガルムならなんとかできるかも。
翼を羽ばたかせ、ガルムの元まで飛んでいく。シオンたちと合流したようで集合していた。
「みんなー!たすけてくれぃ!」
「あ、戻ってきました!」
「どうしたの?なんかいつものウーロじゃなかった」
「今はいつも通りだけどな」
「わうん」
サエラが我の顔を見て不安そうにしている。やはり客観的に見ても我らしくない様子だったらしい。我の拘束魔法から脱出したのか、ガルムは青筋を浮かべながら口を引きつらせて「へへへ」と笑ってる。
ごめん。だから怒んないで。
「てか、どうしたんですか、その‥‥‥ウーロさんの必殺技みたいな火の玉」
「消し方がわからんのだ。助けてくれ」
我がそう尋ねると、みんな真顔で後ろに後退って行く。ま、待って!見捨てないで!!
「ちょーー!!お願い、我を置いて行かないでくれ!」
「さようなら。ウーロさんとの日々は楽しかったですよ」
「シオン!貴様!いつも我を可愛がってるクセに見捨てるのか!サエラ!サエラは違うだろう!?」
「グッドラック」
Oh、no。
「そもそも一人で突っ込んだと思ったら、急に爆弾抱えて帰って来たウーロさんの対処に一番困ってるのわたしたちなんですけど。
シオンの指摘にぐうの音も出ない。
「つか、自分で出した魔法なんだから消せるだろ」
ガルムがもっともなことを言ってくる。そうなんだけど、違うのだ!なんと説明したら良いかわからず我はうんうんと唸る。
「これ、我が出したんだけど我じゃなくて!我じゃない我が出したから我には消し方がわかんないのだ!」
「てめー何言ってんだ?」
やばい。パニックになって何を言ってるのか分からなくなってしまった。ゲシュタルト崩壊しそう。
サエラに至っては頭から湯気が出始めた。ごめん我の言語力不足で。
しかし、頭が混乱したサエラの脳味噌は、何かを閃いて見せたらしい。目を開けて我にこんな提案を持ちかけてくる。
「そうだ。前頭に火を乗せてたし、また同じことすれば良いんじゃない?」
それだ!たしかに頭にアフロを生やし、それを可燃剤として頭を燃やして松明代わりをしてたことはある!
結局我の鱗は熱を耐えるし、とりあえずこの火の玉を置いておくことはできるかもしれない。
早速、試してみ‥‥‥あぁあちゃ、あちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!
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