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第2章〜不死編〜
第133話「その竜はウーロであった」
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猪突猛進。そんな言葉を体現したかのような光景だ。ウーロの突進は膨大な質量と速度も相まって相当な破壊力を秘めている。
しかしサエラには狩猟によって鍛えられた洞察力があった。ウーロと激突する数秒の間、脳が次の行動を取るために判断を下す。
爬虫類の歩行は速度こそ他の生物に劣らないスピードを出すことを可能としている。しかしそれには大きな弱点があった。
それは、急な方向転換が利かないということだ。ウーロは頭から尻尾にかけての身体の体勢を巨大な矢のように真っ直ぐにさせている。
腹から横に出た手足も、前に向かって勢いよく突き出している。こうなると走りながら体を捻り、左右に向きを変えるのがとても困難なのだ。
「!!」
ウーロはすぐ側まで来ている。というか頭上にウーロの上顎が見下ろしていた。
身体の上半身がウーロの口の中に入った。生暖かい吐息が顔を包み込む。あと一瞬でノコギリのような断頭刃が振り下ろされるだろう。サエラは片足で地面を蹴った。
ウーロが噛みつこうと巨大なアギトを閉じる寸前で、横に向かって飛び出したのだ。
サエラの身軽さは野生生物にも匹敵する。ウーロの噛みつきは不発し、空気を口に入れただけに終わった。
「うぅっ」
サエラの真横を鱗の生えた身体が勢いよく通り過ぎる。少しでも触ったら大根おろしのように皮膚がすりおろされそうだ。
風圧が服をなびかせ、砂煙が覆ってきた。
「グガアッ!」
何も味がしなかったからか、ウーロは手足の動きを止めて爪を地面に突き刺さしてブレーキをかけた。
ズザザザと地面を砕きながら速度を落とし、本当に噛みつきが失敗に終わったのか確認するために何度か口の開閉を繰り返す。
今、ウーロはサエラの姿を見失っているハズだ。サエラはすぐさまシオンが隠れている瓦礫の元に向かう。
「ワン!ワンワン!」
「ショゥゥ‥‥‥」
タイミング良く、後方でフィンの鳴き声が聞こえた。挑発的に大きく高い声で鳴いているのは、ウーロの意識をサエラから引き剥がすためだろう。
サエラは心の中で礼を言い、シオンの元まで訪れた。
姉はどこからか見つけてきたのか巨大なハンマーを手にしていて、いざとなったら迎撃する満々の格好で隠れていた。
やはりパワー型だと思ったが、今はシオンをからかっている暇はない。サエラは端的にシオンに用件を伝える。
「姉さん、メアリーの薬ある?あの目がよくなるやつ」
「え、えぇとたしか‥‥‥」
サエラに聞かれたシオンは慌てて自分のバックの中を漁る。少しだけあれでもないこれでもないと変な雑誌を投げ捨てたあと、半透明の青色の小瓶を握って取り出して見せた。
中身は少量残っている程度だ。だが充分である。
「これ貰ってく」
「え!?どうする気ですか!」
半分無理やり魔法薬を奪い取り、シオンの問いかけに答えることなくサエラはウーロの元に走って行く。
ウーロとフィンは野生生物同時の荒い戦いをしていた。フィンは大きさの割りに羽毛のように軽い身体をしているのか、崩壊した建物や瓦礫の上を足場に立体的に動いている。
狼なのに猫のような身体能力だ。さらにフィンはなぜかその身に紫電を纏っており、それらが槍のように伸びてウーロに突き刺さる。
ディルス・ウルフ、別名ダイアウルフはどうやら雷を操る能力を有しているらしい。手加減はしてるだろうが、音を置いてって雷が様々な角度からウーロに向かって落雷させている。
「シャァァァ!!!」
だがウーロは雷の影響を一切受けていない様子だ。正確には直撃した箇所が黒く焦げたりしているのだが、そこが即座に治癒してしまうのだ。
感電した肉体は炭となってボロボロと溢れ、その内側から新たに肉が盛り上がり、皮膚が生えて鱗が伸びて再生する。
腐ってもドラゴンということだろう。まともな攻撃では肉体にダメージは与えられない。
「ウーロッ!!」
故にサエラはバカみたいな作戦を決行することにしたのだ。シオンからもぎ取った小瓶を叫びながら投擲する。
ウーロは即座に反応し、顔をこちらに向けると同時に目前に小瓶が飛んできた。
反射的にウーロは口を開け、それを飲み込んでしまった。動く物をとにかく口に入れたがるのだ。トカゲというものは。
するとペロペロと口周りを舐め始め、次第に鬱陶しそうに目の瞬きを始めたと思ったら、いきなり大きく吠えて体を仰け反らした。
「グキャァアッ!?」
ウーロは両手で目を押さえて蹲る。尻尾をブンブンと振り回し、苦痛に耐え始めた。
サエラの投擲した小瓶はメアリーが作った、いわゆる目がよくなる魔法薬で、飲めばたちまち光を集める能力が向上し、太陽を直視したような感覚に襲われてしまうのだ。
つまり、閃光を直撃したのと同じダメージを負ってしまう。小瓶に残っていたのはわずかな量だったが、効果はてきめんだったらしい。
だが効果があったのも束の間。すぐさま影響から回復したウーロは涙を流しながら目を見開く。
サエラもそれはわかっていた。おそらく今のウーロはまだ不完全体だが、ドラゴン特有の魔法耐性によってすぐに復帰してしまうだろうと。
故にすでに行動を起こしていた。欲しかったのは一瞬の隙。サエラは先ほどの小瓶のようにウーロの目の前までジャンプしていた。
そして‥‥‥。
パン!!両手で大きく叩いた。
「ピギャっ!?」
するとウーロは二足歩行で立ち上がり、あろうことかそのまま仰向けに倒れてしまったのだ。
サエラがやったのは猫騙し。目の前で手を叩いて大きな音を立てたのだ。つまりウーロは、ビックリして転倒した。
しかしサエラには狩猟によって鍛えられた洞察力があった。ウーロと激突する数秒の間、脳が次の行動を取るために判断を下す。
爬虫類の歩行は速度こそ他の生物に劣らないスピードを出すことを可能としている。しかしそれには大きな弱点があった。
それは、急な方向転換が利かないということだ。ウーロは頭から尻尾にかけての身体の体勢を巨大な矢のように真っ直ぐにさせている。
腹から横に出た手足も、前に向かって勢いよく突き出している。こうなると走りながら体を捻り、左右に向きを変えるのがとても困難なのだ。
「!!」
ウーロはすぐ側まで来ている。というか頭上にウーロの上顎が見下ろしていた。
身体の上半身がウーロの口の中に入った。生暖かい吐息が顔を包み込む。あと一瞬でノコギリのような断頭刃が振り下ろされるだろう。サエラは片足で地面を蹴った。
ウーロが噛みつこうと巨大なアギトを閉じる寸前で、横に向かって飛び出したのだ。
サエラの身軽さは野生生物にも匹敵する。ウーロの噛みつきは不発し、空気を口に入れただけに終わった。
「うぅっ」
サエラの真横を鱗の生えた身体が勢いよく通り過ぎる。少しでも触ったら大根おろしのように皮膚がすりおろされそうだ。
風圧が服をなびかせ、砂煙が覆ってきた。
「グガアッ!」
何も味がしなかったからか、ウーロは手足の動きを止めて爪を地面に突き刺さしてブレーキをかけた。
ズザザザと地面を砕きながら速度を落とし、本当に噛みつきが失敗に終わったのか確認するために何度か口の開閉を繰り返す。
今、ウーロはサエラの姿を見失っているハズだ。サエラはすぐさまシオンが隠れている瓦礫の元に向かう。
「ワン!ワンワン!」
「ショゥゥ‥‥‥」
タイミング良く、後方でフィンの鳴き声が聞こえた。挑発的に大きく高い声で鳴いているのは、ウーロの意識をサエラから引き剥がすためだろう。
サエラは心の中で礼を言い、シオンの元まで訪れた。
姉はどこからか見つけてきたのか巨大なハンマーを手にしていて、いざとなったら迎撃する満々の格好で隠れていた。
やはりパワー型だと思ったが、今はシオンをからかっている暇はない。サエラは端的にシオンに用件を伝える。
「姉さん、メアリーの薬ある?あの目がよくなるやつ」
「え、えぇとたしか‥‥‥」
サエラに聞かれたシオンは慌てて自分のバックの中を漁る。少しだけあれでもないこれでもないと変な雑誌を投げ捨てたあと、半透明の青色の小瓶を握って取り出して見せた。
中身は少量残っている程度だ。だが充分である。
「これ貰ってく」
「え!?どうする気ですか!」
半分無理やり魔法薬を奪い取り、シオンの問いかけに答えることなくサエラはウーロの元に走って行く。
ウーロとフィンは野生生物同時の荒い戦いをしていた。フィンは大きさの割りに羽毛のように軽い身体をしているのか、崩壊した建物や瓦礫の上を足場に立体的に動いている。
狼なのに猫のような身体能力だ。さらにフィンはなぜかその身に紫電を纏っており、それらが槍のように伸びてウーロに突き刺さる。
ディルス・ウルフ、別名ダイアウルフはどうやら雷を操る能力を有しているらしい。手加減はしてるだろうが、音を置いてって雷が様々な角度からウーロに向かって落雷させている。
「シャァァァ!!!」
だがウーロは雷の影響を一切受けていない様子だ。正確には直撃した箇所が黒く焦げたりしているのだが、そこが即座に治癒してしまうのだ。
感電した肉体は炭となってボロボロと溢れ、その内側から新たに肉が盛り上がり、皮膚が生えて鱗が伸びて再生する。
腐ってもドラゴンということだろう。まともな攻撃では肉体にダメージは与えられない。
「ウーロッ!!」
故にサエラはバカみたいな作戦を決行することにしたのだ。シオンからもぎ取った小瓶を叫びながら投擲する。
ウーロは即座に反応し、顔をこちらに向けると同時に目前に小瓶が飛んできた。
反射的にウーロは口を開け、それを飲み込んでしまった。動く物をとにかく口に入れたがるのだ。トカゲというものは。
するとペロペロと口周りを舐め始め、次第に鬱陶しそうに目の瞬きを始めたと思ったら、いきなり大きく吠えて体を仰け反らした。
「グキャァアッ!?」
ウーロは両手で目を押さえて蹲る。尻尾をブンブンと振り回し、苦痛に耐え始めた。
サエラの投擲した小瓶はメアリーが作った、いわゆる目がよくなる魔法薬で、飲めばたちまち光を集める能力が向上し、太陽を直視したような感覚に襲われてしまうのだ。
つまり、閃光を直撃したのと同じダメージを負ってしまう。小瓶に残っていたのはわずかな量だったが、効果はてきめんだったらしい。
だが効果があったのも束の間。すぐさま影響から回復したウーロは涙を流しながら目を見開く。
サエラもそれはわかっていた。おそらく今のウーロはまだ不完全体だが、ドラゴン特有の魔法耐性によってすぐに復帰してしまうだろうと。
故にすでに行動を起こしていた。欲しかったのは一瞬の隙。サエラは先ほどの小瓶のようにウーロの目の前までジャンプしていた。
そして‥‥‥。
パン!!両手で大きく叩いた。
「ピギャっ!?」
するとウーロは二足歩行で立ち上がり、あろうことかそのまま仰向けに倒れてしまったのだ。
サエラがやったのは猫騙し。目の前で手を叩いて大きな音を立てたのだ。つまりウーロは、ビックリして転倒した。
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