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第2章〜不死編〜

第117話「自宅調査2」

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 家に入り、とりあえず例の地下室まで来てもらおうと案内を始める。
 中に入るとベタとガマは子供らしくキョロキョロと辺りを見回す。実は昨日あんなことがあったばかりで、まだ掃除も全て終わってないからあまり見ないでほしいのだが。
 そんな我の思惑は伝わらず、ガマが我に向かってこんな質問を飛ばしてきた。

「幽霊。本当にいるのか?」

 まぁ、その疑問は当然だと思う。我自身、幽霊なんて信じてなかったし。
 どうしてこうなった。そういう意味でため息を吐くと、ベタがガマの背中をぽんと叩いた。

「おい。ウーロ殿を疑うのか」

「そんなんじゃない。でもりゅ‥‥‥父上は幽霊は存在しないと言っていた」

「それはそうだが」

 姉妹の言い争いが始まったので、喧嘩に発展しないうちに止めに入ろうか。意外と違いが反発的な性格をしてるのかもしれぬ。顔が同じで分かりにくいが、言葉の特徴や小さな仕草で区別ができそうだ。

「我も信じてなかったが、実際に見てしまってはな」

「そんなもの。竜の力で消しされば良い」

 ガマが結構な無茶を言ってくる。

「無理である。我はその、まだ子供で力を発揮できないのだ」

「むぅ」

 そう答えると、つまらなそうな返しがくる。なぜだか知らんが失望されたようで不安になる。とは言ったものの、実際どうにかできるものではないし、そんな乱暴な真似をしてシオンたちに嫌われたらヤダし。

 とまぁそのような会話をしている内に、問題の地下室へとたどり着く。
 そこにはすでにシオンとメアリーがおり、プーレも相変わらず半透明でふわふわと宙に浮いていた。
 三人とも手にカードを持っていて中央には山積みになった同じデザインのカードが捨てられている。

「さぁメアリーさん。どれを引きますか?わたしの手札にはジョーカーがいるのですよ」

「ぐ、ぬぬ」

『表情ですー表情を読み取ってくださいー!』

 どうして幽霊とババ抜きしてるのかのぅ。我もうわかんない。

「戻ったぞ」

「あ、おかえりなさーい。どうでした?」

「ベタとガマは話に乗ってくれた。サエラの後に下に降りてくる。で、お主は何をしてるのだ」

「ババ抜きですよババ抜き‥‥‥って、あーーー!?いつの間に!?」

「はははは!やつかれには神の加護があるのだー!!」

 楽しそうですねぇ。
 いや、そうじゃなくて。お主らの役割はどうしたのだ。サボってた訳じゃあるまいな?

「こっちはダメでしたね。ガルムさん忙しそうでした」

 シオンに倣うようにメアリーが隣でうんうんと頷いた。うーむ、まぁSランカーだし忙しいのは当たり前か。我らじゃ大した報酬も出せぬし。

「ゴードンでも呼ぼうとしたが、奴はこういうの苦手そうだ」

 メアリーが更に追加で付け足した。ゴードンはダメじゃろ。物理極振りな感じあるし。
 しかしまぁ、レッド・キャップが協力してくれるだけ状況は良いと見ていいだろう。
 サエラもハシゴで降りてきて、ベタとガマは使わずそのまま降りてきた。そして顔を上げると目の前に浮かぶ半透明の存在に表情を動かした。

「なんだこれは。なんだこれは」

「幽霊か」

『はわわっ』

 プーレの周りを二人で囲い、グルグルと回って観察をしだす。突然やられたプーレは困惑しつつ、忙しそうにベタとガマに交互に顔を向ける。
 それは我も最初にやられた。対応に困るのだよな。

「プーレよ。それはベタとガマだ。小さいがかなり強いらしいぞ」

 二人の紹介を済ますとベタとガマがくっ付き、プーレに近寄って彼女を見上げた。

「「貴様が幽霊か」」

「我がガマだ」

「我がベタ」

「「レッド・キャップと呼ぶがいい」」

『は、はいぃ』

 見事に気圧されておる。ともあれ、とりあえず人員は揃った。早速調査を開始し、とっととプーレの心残りを解決してやろうではないか。
 未だにババ抜きを続けるシオンとメアリーの手札をぶん取り、捨てた山積みのカードと混ぜて強引にゲームを終わらせる。

「ほれ、カードは片付けるからな」

「あぁん!今いいところなのにっ」

「やつかれの勝利が目前なのだぞ!」

「やめないと燃やすぞ」

「「ひーん」」

 泣くな!






「飼育していたのは」

「アゴヒゲトカゲか」

 プーレからペットのトカゲの種類を聞いたベタとガマは、ふぅむと頭の記憶を探るように唸って足元に視線を落とした。
 その奇妙な名前を聞いたサエラは小首を傾げて突拍子もない、けれども名前だけを聞いたらそう想像するだろうという、ある意味普通な疑問を口にする。

「顎に髭が生えてるトカゲ?オッサンみたい」

 顔がゴードンのトカゲを想像したろうが。なんてことしやがる。

「違いますよ。顎に棘が生えたトカゲです」

 ここで博識なシオンがサエラにわかりやすく説明した。アゴヒゲトカゲは顎に無数の棘を生やした大型の爬虫類型モンスターである。
 比較的おとなしい性格で、昔は貴族とかが飼っていたらしい。が、あまりにもおとなしすぎるため、力の誇示をよく好む貴族には合わず、今ではほとんど飼育されてないモンスターなのだという。
 餌も虫と野菜が主食なため、そういうのもあって嫌われたのかもしれんな。

「爬虫類型の魔物は発情期に凶暴化する」

『その時期はいつも隔離してましたー』

「では違うな」

「日光には当ててたか?」

『放し飼いだったので充分日光浴はできたかと』

「他の爬虫類の魔物と干渉したか?鏡とか置いてなかったか」

『トカゲを飼ってたのは私くらいでー、鏡とか姿が映るようなものも置いてませんでしたー』

「「うむむ」」

 ベタとガマは次々にプーレに質問を飛ばす。中にはシオンも知らなかったことまで口にしているようだが、そのほとんどがプーレの回答を受けても悩むような唸り声しか出さない。
 プーレのペットが凶暴化した理由にはならんということか。

 そのまま10分ほど問答を繰り返したが、有力な情報を得れなかったのかベタとガマが若干シュンとしたような雰囲気をまとってこちらに振り返った。

「「わからん」」

 う、ぐぬぬぬ。

「飼育方法は問題ない」

「ならば外部的な要因があるに違いない」

「「この家を調査する」」

 えいえいおー!と二人がそれぞれ左右の腕を持ち上げ、拳を天に向かって突き出した。実際には天井なのだが。
 たしかに外部的な要因‥‥‥例えばこの家のどこかに、トカゲが興奮する成分が含まれる建材があったりする可能性もある。
 ベタとガマに任せ、見て回ってもらうのが良いのかもしれん。コウロに伝えようかと迷ったが、幽霊なんて言っても信じてもらえるか怪しいし。
 ‥‥‥とゆうかベタとガマはよく信じてくれたな。ガマは疑ってたが。

「ふむ、ではやつかれはこの家に魔術的な痕跡がないか調べて‥‥‥わわわぁ!?」

 メアリーも仕事をしようとしたのか、カッコつけて壁に寄りかかると、まるでそこだけがクッションでできてるかのように壁の中に沈んだ。
 バランスを崩して小さな悲鳴を上げ、体を左右に揺らして立ち直ろうと奮闘している。
 シオンはそんなメアリーを支えようと近寄った。

「大丈夫ですか?」

「あ、あぁ。どうやらこの壁だけ脆かったようだ」

「‥‥‥む?」

 一見、壁の一部が壊れたと思うだろう。しかしよく見てみれば、崩れた部分は壊れたというより、ズレた・・・ようにも見える。
 なぜなら崩れた部分はまるでドアを取り外したかのような、綺麗な四角形の穴になったのだ。

「これ、土で埋め立ててるのではないか?」

「あら、ホントですね。‥‥‥暗くてわかりませんでした」

 なんだろう。慌てて塞いだような感じだ。

「‥‥‥掘り起こしてみようか」

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