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第2章〜不死編〜
第79話「魔鉱石2」
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魔鉱石の採掘や、ゴーレムを行き来で計15体相手にして、初日のグローリーホールもとい、ダンジョンでのアイテム入手を終了させた。
あまり長い間、ダンジョンに留まるのは危険であるし、精神的には余裕はあれど慣れない足場での戦闘は確実に我らの体力を消耗させた。
目的は達成したので、我らは調子に乗ることなく安全を優先して帰還することにしたのだ。
最初に降り立ったエリアに戻ると、他の冒険者たちも帰還のために、荷物をゴンドラに詰め込んでいるのが見えた。
我らも当然空いてるゴンドラに乗り込むのだが、そこで様々な冒険者たちの視線を受けた。
荷物の少ない我らを見て色々な感想を思い浮かべたのだろう。初日なんてそんなもんだという気を使う目。所詮そんなものかという馬鹿にしたような嘲笑する目。エルフや竜を物珍しげに見る目。あるいは我らの目的を探るような観察する目。
たぶん、我らをギルドに紹介したのがSランカー冒険者のガルムであったからであろう。みんな、遠目から我らを見定めているのだ。
「ちょー見られてますよ」
シオンが落ち着かない様子で呟いた。仕方ない。我が心を軽くしてやろう。
「ふむ。我が可愛いからかもな」
「準備できたから二人とも早く乗って」
「はーい」
だから我のギャグを無視しないで。
そんなこんなで何事もなく我らは地上へ帰還した。下手な冒険者に絡まれるかと思ったが、ガルムという後ろ盾を皆が知っているのかやはり遠巻きに観察するぐらいである。色々助かるなあやつの威光は。
ダンジョンで手に入れた物資の売却は冒険者ギルドの受付で行われる。そこでは受付嬢が専門の係員を呼んでくれるので、そこから素材の値段、買取が取引されるのだ。
昨日とは違う受付嬢に頼み。鑑定員にゴーレムの核を手渡した。
計6個。多少傷が付いていたりと、その他の理由もあって安く買われた。おおよそ50シルバーである。
安く買われたと言っても、やはり素材自体の値段は高い。そりゃあの動く岩人形を破壊するのに核を破壊する必要があるのだからな。サエラの《影操作》で手足を砕き、無抵抗状態にしてから剥ぎ取るのはなかなか有効なのかもしれない。
ともあれ本命は魔鉱石だ。我らは係員にお礼を言ってから、冒険者ギルドを後にした。お礼を言われてすこし鑑定員戸惑っていたが、なぜかの?とりあえず我らは先日案内されたマーシーの魔道具屋まで足を運んだ。
「また爆発してる」
「怖いんですけど」
「アフロの気配を感じるである」
到着すると、見計らったかのようなタイミングで魔道具屋の窓が吹き飛んで、煙が噴き出していた。一体中で何が起こってるのか。少々不安に思いながらも、我らは恐る恐る扉をノックした。
扉を叩くと、案外早く反応が返ってきた。ドドドを忙しく廊下を走る足音が聞こえる。
「だぁぁあかぁぁあら!新聞いら‥‥‥って、みんなじゃないどうしたの?」
相変わらずその新聞とやらをしつこく買わされそうになっているのか、イラついた顔のマーシーが扉から出てきた。
来たのが我らだとわかると彼女はすぐに表情を軟化させ、首を横にコテンと傾げた。
シオンがマーシーの耳元まで寄り、コソコソと要件を小声で伝える。
「魔鉱石、とってきました」
「え、マジ!?ホント!?入って入って!」
せっかくシオンが周りに聞こえんように言ったのに、マーシーは大興奮な様子でシオンの手を引っ張り家の中へ引きずり込んだ。まぁ、ここら近所はまったく人気がないから平気だろうが。
我とサエラも引っ張られるシオンに続いて店の中へ入った。
「で、ででで、どれくらい取れたの?手のひらくらいでもあれば嬉しいんだけど‥‥‥」
マーシーが実に謙虚な欲望を打ち明けるが、フフフ、喜ぶがいいぞマーシーよ。我らはお宝を手に入れたのだ。それもたくさんな。
我がニヤついてる間に、サエラが我のほっぺを引っ張り、シオンがマーシーに魔道具袋を手渡した。
サエラ、なんで我のほっぺ引っ張ったん?見上げても知らんぷりされた。我のニヤリ顔そんな嫌か。
「はい、どうぞ」
「ありがと。さーて中身はぁぁぁああああ!?」
マーシーが軽く袋を裏返すと、そこから無数の魔鉱石が滝のように出て落ちた。
ドサドサと大量に積み上がっていく魔鉱石にマーシーは目を見開いたまま表情を固め、ぺたりと腰が抜けたようにへたり込む。
「ふははは!見よマーシー!これが我らの成果である!どうだ?嬉しいか?嬉しいであろう?なぁに当然のことである。我は偉大なドラゴンなのだからな!これくらい見つけてくるのは造作もないのだ。さぁ、我らを褒めても良いのだぞマーシーよ!‥‥‥マーシー?」
座り込んだままのマーシーはいまだに石像のように固まっている。サエラが近くに寄って手を彼女の頰に当てると、頷いてから我らの方を見た。
「死んでる」
嘘つけバカ。
しかし、どうやら驚きすぎて頭がオーバーヒートしたらしい。なんてこった。
あまり長い間、ダンジョンに留まるのは危険であるし、精神的には余裕はあれど慣れない足場での戦闘は確実に我らの体力を消耗させた。
目的は達成したので、我らは調子に乗ることなく安全を優先して帰還することにしたのだ。
最初に降り立ったエリアに戻ると、他の冒険者たちも帰還のために、荷物をゴンドラに詰め込んでいるのが見えた。
我らも当然空いてるゴンドラに乗り込むのだが、そこで様々な冒険者たちの視線を受けた。
荷物の少ない我らを見て色々な感想を思い浮かべたのだろう。初日なんてそんなもんだという気を使う目。所詮そんなものかという馬鹿にしたような嘲笑する目。エルフや竜を物珍しげに見る目。あるいは我らの目的を探るような観察する目。
たぶん、我らをギルドに紹介したのがSランカー冒険者のガルムであったからであろう。みんな、遠目から我らを見定めているのだ。
「ちょー見られてますよ」
シオンが落ち着かない様子で呟いた。仕方ない。我が心を軽くしてやろう。
「ふむ。我が可愛いからかもな」
「準備できたから二人とも早く乗って」
「はーい」
だから我のギャグを無視しないで。
そんなこんなで何事もなく我らは地上へ帰還した。下手な冒険者に絡まれるかと思ったが、ガルムという後ろ盾を皆が知っているのかやはり遠巻きに観察するぐらいである。色々助かるなあやつの威光は。
ダンジョンで手に入れた物資の売却は冒険者ギルドの受付で行われる。そこでは受付嬢が専門の係員を呼んでくれるので、そこから素材の値段、買取が取引されるのだ。
昨日とは違う受付嬢に頼み。鑑定員にゴーレムの核を手渡した。
計6個。多少傷が付いていたりと、その他の理由もあって安く買われた。おおよそ50シルバーである。
安く買われたと言っても、やはり素材自体の値段は高い。そりゃあの動く岩人形を破壊するのに核を破壊する必要があるのだからな。サエラの《影操作》で手足を砕き、無抵抗状態にしてから剥ぎ取るのはなかなか有効なのかもしれない。
ともあれ本命は魔鉱石だ。我らは係員にお礼を言ってから、冒険者ギルドを後にした。お礼を言われてすこし鑑定員戸惑っていたが、なぜかの?とりあえず我らは先日案内されたマーシーの魔道具屋まで足を運んだ。
「また爆発してる」
「怖いんですけど」
「アフロの気配を感じるである」
到着すると、見計らったかのようなタイミングで魔道具屋の窓が吹き飛んで、煙が噴き出していた。一体中で何が起こってるのか。少々不安に思いながらも、我らは恐る恐る扉をノックした。
扉を叩くと、案外早く反応が返ってきた。ドドドを忙しく廊下を走る足音が聞こえる。
「だぁぁあかぁぁあら!新聞いら‥‥‥って、みんなじゃないどうしたの?」
相変わらずその新聞とやらをしつこく買わされそうになっているのか、イラついた顔のマーシーが扉から出てきた。
来たのが我らだとわかると彼女はすぐに表情を軟化させ、首を横にコテンと傾げた。
シオンがマーシーの耳元まで寄り、コソコソと要件を小声で伝える。
「魔鉱石、とってきました」
「え、マジ!?ホント!?入って入って!」
せっかくシオンが周りに聞こえんように言ったのに、マーシーは大興奮な様子でシオンの手を引っ張り家の中へ引きずり込んだ。まぁ、ここら近所はまったく人気がないから平気だろうが。
我とサエラも引っ張られるシオンに続いて店の中へ入った。
「で、ででで、どれくらい取れたの?手のひらくらいでもあれば嬉しいんだけど‥‥‥」
マーシーが実に謙虚な欲望を打ち明けるが、フフフ、喜ぶがいいぞマーシーよ。我らはお宝を手に入れたのだ。それもたくさんな。
我がニヤついてる間に、サエラが我のほっぺを引っ張り、シオンがマーシーに魔道具袋を手渡した。
サエラ、なんで我のほっぺ引っ張ったん?見上げても知らんぷりされた。我のニヤリ顔そんな嫌か。
「はい、どうぞ」
「ありがと。さーて中身はぁぁぁああああ!?」
マーシーが軽く袋を裏返すと、そこから無数の魔鉱石が滝のように出て落ちた。
ドサドサと大量に積み上がっていく魔鉱石にマーシーは目を見開いたまま表情を固め、ぺたりと腰が抜けたようにへたり込む。
「ふははは!見よマーシー!これが我らの成果である!どうだ?嬉しいか?嬉しいであろう?なぁに当然のことである。我は偉大なドラゴンなのだからな!これくらい見つけてくるのは造作もないのだ。さぁ、我らを褒めても良いのだぞマーシーよ!‥‥‥マーシー?」
座り込んだままのマーシーはいまだに石像のように固まっている。サエラが近くに寄って手を彼女の頰に当てると、頷いてから我らの方を見た。
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