ウロボロス「竜王やめます」

ケモトカゲ

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第1章〜ウロボロス復活〜

第20話「魔法薬の実験」

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冒険者との邂逅かいこうと、サエラの大暴走から次の日。武器の手入れをするサエラと我の鱗の数を数え始めたシオンの元に1人の客が現れた。
 それはガルムの仲間の冒険者、魔法使いのメアリーであった。大きなカバンを持ち、家の扉を叩いている時の表情は昨日の不敵さなど微塵もない。

「えぇっと、メアリーさん?ですよね」

「う、うん」

 とりあえずシオンの部屋に集合し、話を聞くことに。何か用事があってきたのはわかるが、どうにも昨日と雰囲気が違くてシオンは少し戸惑ったようだ。随分としおらしい。

「どうしたんですか?」

「実は、相談に乗ってほしいことが‥‥‥」

 ほぉ?昨日会ったばかりで友人でもない我らに相談とな。
 我とシオンは小声でささやき合いながら、会議するように話す。

「なんだか様子が昨日と違うのぅ」

「ですね。ウーロさんみたいな、えっらそぉーな喋り方でしたのに」

 おい。

「この距離だと、小声でも聞こえるんだけど‥‥‥」

「ごめん。2人ともバカだから」

「「おい」」

 サエラが軽く毒を吐いたところで、メアリーが本題とでも言うようにカバンからある物を取り出した。
 それは透明なガラス製の瓶で、手のひらにギリギリ収まるサイズといったところだろうか。中は微妙にピンク色の液体に満ちていて、完全に密封されているのか揺れても泡立つことはなかった。
 ただの色付きの水ではない。それに魔力も感じる。これは‥‥‥。

「これはやつかれの持ってる魔法薬マジックポーションだ」

(((一人称は変わらないんだ)))

 この場にいるメアリー以外がそう思ったが、あえて口にすることはなかった。
 それよりもシオンは気になった単語が耳に入ったらしく、頰に熱を込め、ワクワクした様子でガラス瓶を見つめる。

「魔法薬って、魔法が込められたっていうあの薬ですか?安いものでも一瓶労働者数ヶ月分のお給金に相当するというあの!」

 魔法薬とは、薬と呼ばれているものの、それらは病気などを治すためのものではない。
 一概に魔法薬といっても効果は様々で、飲めば超人的な身体能力をえたり、致命傷と言える傷を一瞬で直したりする。
 さらには自身で飲むものですらなく、投げつけて瓶が割れた場所を炎上させたり放電したり、平和的なものなら植物を生み出し花畑を作るというものもあるらしい。

 つまりは魔法が込められた薬品であり、用途は多岐にわたり、非常に高価だということだ。
 たしか本好きのシオンは魔法の本なども所有していたので、この手のものに興味が惹かれるのかもしれないな。

「も、もしかしてこれって‥‥‥」

「ご名答。これはやつかれが作ったものだ」

 シオンとサエラが「おぉー」と感嘆の声を上げる。我はやはりかという納得の表情で頷いた。
 ドラゴンは‥‥‥否、魔物は魔力と密接な関係にある生物だ。故に魔力を見れば、それがどこからきたのか、誰から生み出されたのかがわかる。
 指紋のように、魔力にも個人個人ちがった特徴があるのである。
 この魔法薬からは、メアリーの魔力を感じた。

「やつかれは魔女の家系で、代々多くの魔法薬の生産、開発に携わってきた。だからやつかれも魔法薬が作れる」

「それで、なんだ?まさかとは思うが」

「この魔法薬を飲んでみてほしい。報酬は上級回復薬ヒールポーション

「やります」

 即答したシオンの後頭部を我は思いっきりぶっ叩いた。

「ちょ、何するんですか!」

「アホか。お主はアホなのか?アホか。アホだな。おいアホ」

「めっちゃアホアホ言うじゃないですか!何ですかこのアホー!」

「なんだとこのアホ!」

 我とシオンがギャーギャー言い争っていると、サエラの絶対零度のような冷たい視線が我らに降り注いできた。

「アホ2人うるさい」

「「はい」」

 基本的にサエラには逆らわないほうが身のためである。
 サエラは大人しくなった我らを見て満足げに頷くと、次はメアリーの方へ目を向けた。そして我も感じた疑問を問いかける。

「どうして?こういうのは効果を調べる専門の人がいるって聞いたけど」

 魔法薬は強力な効果作用があるが、その分危険もある。上記に記した通り、もし火炎を生み出す魔法薬を回復薬と間違えて飲んでしまえば人体は当然大惨事となってしまう。

 なので魔法薬の効果を調べる専用の技術やアイテムがあるのだ。メアリーの言う通りに本当に魔法薬に詳しいのなら、この程度知っているはずである。
 その疑問は当然だとでも言うように、メアリーはコクリと頷く。

「効果はもうわかってる。ただ、実際飲んでみてどういう感じになるかはわからないんだ」

「ちなみにその薬の効果ってなんです?」

 シオンが問いかけると、メアリーは恥ずかしそうに視線を床に向けた。

「あ、甘い匂いが‥‥‥する」

「香水みたいなもんですか?」

「う、うん」

 2人の会話で我は察した。ははーん?ははははーん?なるほどそういうことか。ぐふふ。

「ウーロ。マジでその顔キモいからやめて」

 サエラの当たりが強い。

「ウーロさん昨日もニヤニヤしてましたけど、どうしたんですか?気でも触れたんですか?」

「だーしゃい!お主ら鈍すぎだろ!メアリーはな!ガルムのことが好きなのだ!」

「っ!!!!?」

 我が断言すると、メアリーは真っ赤なトマトのようにボンっと顔を変色させた。ほれみろ!

「だからこの魔法薬で女としての魅力を付けようとしているのだ!だが使ったこともない匂いが自分に合うかわからないから!こうして我らに依頼として持ち込んできたのだ!そんなのもわからんかお主らは!」

「まって、まって、待って!」

「この恥じらいの表情を見ろ!明らかにガルムを男として意識しているだろう!こちらにもビリビリと伝わってくるぞメアリーの気持ちが!お主らも女子ならそれくらい察s」

「やめろおおおおおおおおおおお!!!雷の炎ファイアボルト!!」

 メアリーの叫び声が聞こえた瞬間、突然我の視界を炎が覆い尽くし、数秒後には屋根を貫いて天を舞っていた。
 魔法で吹っ飛ばされた我はそのままゴロゴロと地面を転がり、死体のように力尽きた。

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