21 / 176
第1章〜ウロボロス復活〜
第20話「魔法薬の実験」
しおりを挟む
冒険者との邂逅と、サエラの大暴走から次の日。武器の手入れをするサエラと我の鱗の数を数え始めたシオンの元に1人の客が現れた。
それはガルムの仲間の冒険者、魔法使いのメアリーであった。大きなカバンを持ち、家の扉を叩いている時の表情は昨日の不敵さなど微塵もない。
「えぇっと、メアリーさん?ですよね」
「う、うん」
とりあえずシオンの部屋に集合し、話を聞くことに。何か用事があってきたのはわかるが、どうにも昨日と雰囲気が違くてシオンは少し戸惑ったようだ。随分としおらしい。
「どうしたんですか?」
「実は、相談に乗ってほしいことが‥‥‥」
ほぉ?昨日会ったばかりで友人でもない我らに相談とな。
我とシオンは小声でささやき合いながら、会議するように話す。
「なんだか様子が昨日と違うのぅ」
「ですね。ウーロさんみたいな、えっらそぉーな喋り方でしたのに」
おい。
「この距離だと、小声でも聞こえるんだけど‥‥‥」
「ごめん。2人ともバカだから」
「「おい」」
サエラが軽く毒を吐いたところで、メアリーが本題とでも言うようにカバンからある物を取り出した。
それは透明なガラス製の瓶で、手のひらにギリギリ収まるサイズといったところだろうか。中は微妙にピンク色の液体に満ちていて、完全に密封されているのか揺れても泡立つことはなかった。
ただの色付きの水ではない。それに魔力も感じる。これは‥‥‥。
「これはやつかれの持ってる魔法薬だ」
(((一人称は変わらないんだ)))
この場にいるメアリー以外がそう思ったが、あえて口にすることはなかった。
それよりもシオンは気になった単語が耳に入ったらしく、頰に熱を込め、ワクワクした様子でガラス瓶を見つめる。
「魔法薬って、魔法が込められたっていうあの薬ですか?安いものでも一瓶労働者数ヶ月分のお給金に相当するというあの!」
魔法薬とは、薬と呼ばれているものの、それらは病気などを治すためのものではない。
一概に魔法薬といっても効果は様々で、飲めば超人的な身体能力をえたり、致命傷と言える傷を一瞬で直したりする。
さらには自身で飲むものですらなく、投げつけて瓶が割れた場所を炎上させたり放電したり、平和的なものなら植物を生み出し花畑を作るというものもあるらしい。
つまりは魔法が込められた薬品であり、用途は多岐にわたり、非常に高価だということだ。
たしか本好きのシオンは魔法の本なども所有していたので、この手のものに興味が惹かれるのかもしれないな。
「も、もしかしてこれって‥‥‥」
「ご名答。これはやつかれが作ったものだ」
シオンとサエラが「おぉー」と感嘆の声を上げる。我はやはりかという納得の表情で頷いた。
ドラゴンは‥‥‥否、魔物は魔力と密接な関係にある生物だ。故に魔力を見れば、それがどこからきたのか、誰から生み出されたのかがわかる。
指紋のように、魔力にも個人個人ちがった特徴があるのである。
この魔法薬からは、メアリーの魔力を感じた。
「やつかれは魔女の家系で、代々多くの魔法薬の生産、開発に携わってきた。だからやつかれも魔法薬が作れる」
「それで、なんだ?まさかとは思うが」
「この魔法薬を飲んでみてほしい。報酬は上級回復薬」
「やります」
即答したシオンの後頭部を我は思いっきりぶっ叩いた。
「ちょ、何するんですか!」
「アホか。お主はアホなのか?アホか。アホだな。おいアホ」
「めっちゃアホアホ言うじゃないですか!何ですかこのアホー!」
「なんだとこのアホ!」
我とシオンがギャーギャー言い争っていると、サエラの絶対零度のような冷たい視線が我らに降り注いできた。
「アホ2人うるさい」
「「はい」」
基本的にサエラには逆らわないほうが身のためである。
サエラは大人しくなった我らを見て満足げに頷くと、次はメアリーの方へ目を向けた。そして我も感じた疑問を問いかける。
「どうして?こういうのは効果を調べる専門の人がいるって聞いたけど」
魔法薬は強力な効果作用があるが、その分危険もある。上記に記した通り、もし火炎を生み出す魔法薬を回復薬と間違えて飲んでしまえば人体は当然大惨事となってしまう。
なので魔法薬の効果を調べる専用の技術やアイテムがあるのだ。メアリーの言う通りに本当に魔法薬に詳しいのなら、この程度知っているはずである。
その疑問は当然だとでも言うように、メアリーはコクリと頷く。
「効果はもうわかってる。ただ、実際飲んでみてどういう感じになるかはわからないんだ」
「ちなみにその薬の効果ってなんです?」
シオンが問いかけると、メアリーは恥ずかしそうに視線を床に向けた。
「あ、甘い匂いが‥‥‥する」
「香水みたいなもんですか?」
「う、うん」
2人の会話で我は察した。ははーん?ははははーん?なるほどそういうことか。ぐふふ。
「ウーロ。マジでその顔キモいからやめて」
サエラの当たりが強い。
「ウーロさん昨日もニヤニヤしてましたけど、どうしたんですか?気でも触れたんですか?」
「だーしゃい!お主ら鈍すぎだろ!メアリーはな!ガルムのことが好きなのだ!」
「っ!!!!?」
我が断言すると、メアリーは真っ赤なトマトのようにボンっと顔を変色させた。ほれみろ!
「だからこの魔法薬で女としての魅力を付けようとしているのだ!だが使ったこともない匂いが自分に合うかわからないから!こうして我らに依頼として持ち込んできたのだ!そんなのもわからんかお主らは!」
「まって、まって、待って!」
「この恥じらいの表情を見ろ!明らかにガルムを男として意識しているだろう!こちらにもビリビリと伝わってくるぞメアリーの気持ちが!お主らも女子ならそれくらい察s」
「やめろおおおおおおおおおおお!!!雷の炎!!」
メアリーの叫び声が聞こえた瞬間、突然我の視界を炎が覆い尽くし、数秒後には屋根を貫いて天を舞っていた。
魔法で吹っ飛ばされた我はそのままゴロゴロと地面を転がり、死体のように力尽きた。
それはガルムの仲間の冒険者、魔法使いのメアリーであった。大きなカバンを持ち、家の扉を叩いている時の表情は昨日の不敵さなど微塵もない。
「えぇっと、メアリーさん?ですよね」
「う、うん」
とりあえずシオンの部屋に集合し、話を聞くことに。何か用事があってきたのはわかるが、どうにも昨日と雰囲気が違くてシオンは少し戸惑ったようだ。随分としおらしい。
「どうしたんですか?」
「実は、相談に乗ってほしいことが‥‥‥」
ほぉ?昨日会ったばかりで友人でもない我らに相談とな。
我とシオンは小声でささやき合いながら、会議するように話す。
「なんだか様子が昨日と違うのぅ」
「ですね。ウーロさんみたいな、えっらそぉーな喋り方でしたのに」
おい。
「この距離だと、小声でも聞こえるんだけど‥‥‥」
「ごめん。2人ともバカだから」
「「おい」」
サエラが軽く毒を吐いたところで、メアリーが本題とでも言うようにカバンからある物を取り出した。
それは透明なガラス製の瓶で、手のひらにギリギリ収まるサイズといったところだろうか。中は微妙にピンク色の液体に満ちていて、完全に密封されているのか揺れても泡立つことはなかった。
ただの色付きの水ではない。それに魔力も感じる。これは‥‥‥。
「これはやつかれの持ってる魔法薬だ」
(((一人称は変わらないんだ)))
この場にいるメアリー以外がそう思ったが、あえて口にすることはなかった。
それよりもシオンは気になった単語が耳に入ったらしく、頰に熱を込め、ワクワクした様子でガラス瓶を見つめる。
「魔法薬って、魔法が込められたっていうあの薬ですか?安いものでも一瓶労働者数ヶ月分のお給金に相当するというあの!」
魔法薬とは、薬と呼ばれているものの、それらは病気などを治すためのものではない。
一概に魔法薬といっても効果は様々で、飲めば超人的な身体能力をえたり、致命傷と言える傷を一瞬で直したりする。
さらには自身で飲むものですらなく、投げつけて瓶が割れた場所を炎上させたり放電したり、平和的なものなら植物を生み出し花畑を作るというものもあるらしい。
つまりは魔法が込められた薬品であり、用途は多岐にわたり、非常に高価だということだ。
たしか本好きのシオンは魔法の本なども所有していたので、この手のものに興味が惹かれるのかもしれないな。
「も、もしかしてこれって‥‥‥」
「ご名答。これはやつかれが作ったものだ」
シオンとサエラが「おぉー」と感嘆の声を上げる。我はやはりかという納得の表情で頷いた。
ドラゴンは‥‥‥否、魔物は魔力と密接な関係にある生物だ。故に魔力を見れば、それがどこからきたのか、誰から生み出されたのかがわかる。
指紋のように、魔力にも個人個人ちがった特徴があるのである。
この魔法薬からは、メアリーの魔力を感じた。
「やつかれは魔女の家系で、代々多くの魔法薬の生産、開発に携わってきた。だからやつかれも魔法薬が作れる」
「それで、なんだ?まさかとは思うが」
「この魔法薬を飲んでみてほしい。報酬は上級回復薬」
「やります」
即答したシオンの後頭部を我は思いっきりぶっ叩いた。
「ちょ、何するんですか!」
「アホか。お主はアホなのか?アホか。アホだな。おいアホ」
「めっちゃアホアホ言うじゃないですか!何ですかこのアホー!」
「なんだとこのアホ!」
我とシオンがギャーギャー言い争っていると、サエラの絶対零度のような冷たい視線が我らに降り注いできた。
「アホ2人うるさい」
「「はい」」
基本的にサエラには逆らわないほうが身のためである。
サエラは大人しくなった我らを見て満足げに頷くと、次はメアリーの方へ目を向けた。そして我も感じた疑問を問いかける。
「どうして?こういうのは効果を調べる専門の人がいるって聞いたけど」
魔法薬は強力な効果作用があるが、その分危険もある。上記に記した通り、もし火炎を生み出す魔法薬を回復薬と間違えて飲んでしまえば人体は当然大惨事となってしまう。
なので魔法薬の効果を調べる専用の技術やアイテムがあるのだ。メアリーの言う通りに本当に魔法薬に詳しいのなら、この程度知っているはずである。
その疑問は当然だとでも言うように、メアリーはコクリと頷く。
「効果はもうわかってる。ただ、実際飲んでみてどういう感じになるかはわからないんだ」
「ちなみにその薬の効果ってなんです?」
シオンが問いかけると、メアリーは恥ずかしそうに視線を床に向けた。
「あ、甘い匂いが‥‥‥する」
「香水みたいなもんですか?」
「う、うん」
2人の会話で我は察した。ははーん?ははははーん?なるほどそういうことか。ぐふふ。
「ウーロ。マジでその顔キモいからやめて」
サエラの当たりが強い。
「ウーロさん昨日もニヤニヤしてましたけど、どうしたんですか?気でも触れたんですか?」
「だーしゃい!お主ら鈍すぎだろ!メアリーはな!ガルムのことが好きなのだ!」
「っ!!!!?」
我が断言すると、メアリーは真っ赤なトマトのようにボンっと顔を変色させた。ほれみろ!
「だからこの魔法薬で女としての魅力を付けようとしているのだ!だが使ったこともない匂いが自分に合うかわからないから!こうして我らに依頼として持ち込んできたのだ!そんなのもわからんかお主らは!」
「まって、まって、待って!」
「この恥じらいの表情を見ろ!明らかにガルムを男として意識しているだろう!こちらにもビリビリと伝わってくるぞメアリーの気持ちが!お主らも女子ならそれくらい察s」
「やめろおおおおおおおおおおお!!!雷の炎!!」
メアリーの叫び声が聞こえた瞬間、突然我の視界を炎が覆い尽くし、数秒後には屋根を貫いて天を舞っていた。
魔法で吹っ飛ばされた我はそのままゴロゴロと地面を転がり、死体のように力尽きた。
0
お気に入りに追加
84
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり

たとえ番でないとしても
豆狸
恋愛
「ディアナ王女、私が君を愛することはない。私の番は彼女、サギニなのだから」
「違います!」
私は叫ばずにはいられませんでした。
「その方ではありません! 竜王ニコラオス陛下の番は私です!」
──番だと叫ぶ言葉を聞いてもらえなかった花嫁の話です。
※1/4、短編→長編に変更しました。

失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた
しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。
すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。
早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。
この案に王太子の返事は?
王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる