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1章 昇竜

第15話 夢との再会

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 突然の出来事に最初こそ僕達は戸惑っていたが、なんとか状況を整理することができた。

「あの奈落とか名乗る女が、バケモノを飛び出していたのか……」
「いや、そうでもないかもしれないよ。アイツはかんざしを刺してすぐにバケモノを呼び出した。いわゆる、召喚しかしていない」
「モスイの発言の裏を返せば、バケモノを形成しているわけではないっていうわけだ」
「え、えっと……?」

 知らない情報が段々と流れてきて、僕は話に置いてかれていた。

「あぁ、悪い。さっきも話したが、バケモノは亡霊だ。だが、亡霊だけでバケモノにはならないんだ」
「そう。バケモノを作り上げるのは、憎しみや悪意、嫉妬心なんかの人間の持つ負の力だ」
「だが亡霊からバケモノになるには10年くらいの年月を必要とする。あんな一瞬でバケモノ、それどころか成体にまでなれるわけがない」

 要するに、あんなほんのわずかな一瞬でバケモノが現れて成体にまで成長するのがそもそもおかしいってわけか。
 てなると、あのバケモノはどこから、そしてどうやってそんなにも早く成長できたのか。この2つの謎が浮かび上がるってわけか。


「あの、推測なんですけど……バケモノって、地中にいるんですよね?」

 さっき奈落が口走っていたことが本当ならば、バケモノは地中にいるはずだ。

「あぁ。土の中に眠る動物や人間の亡霊だからな」
「てなると、奈落の本拠地も地中なんじゃ?」
「……そこまでは分かっているんだ。ただ、それしか分かっていないんだ」
「え、分かるじゃないですか?」

 僕はバケモノの出現源を表示する立体映像を指差しながらなぞっていく。そして今日起きたのは銀座。ちょうど矢印の先端部分になっている。
 たしかにその形は右斜め上を指し示すかのようなものだ。だからその矢印の示す場所、そこがきっと本拠地だと思えた。

「いやそこなわけないだろう。そんなの、誰でも予想がつく」
「ボクも同じ考えだよ。そんなに目立つような真似、政府転覆とか叫ぶようなやつがするわけない」
「いや、逆転の発想ってものもある。当たってみるのも悪くはないだろ?」
「まあ、何も情報がない今、それしかないか」
「じゃあ早速。レッドウルフくんとメイっ子くんで調査頼むよ」
「え、僕ですか⁈」

 ヒーローでもない僕が調査にあたるよう言われて、唖然としながら聞き返した。

「あぁ。異能力はあるわけだし」
「それにキミの能力はピカイチだからね。任せたよ」

 あぁ、そういうことかと納得できた。いざっていうときの仮ヒーローってわけか。でも、できれば戦いたくないな。



 そうは言っても仕事は仕事。行けるなら行くしかない。そうして辿り着いたのは結局は矢印が示している場所、すなわち日本橋だった。
 レッドウルフの背中から降りて、待っていたのは衝撃すぎて鼻がひきついて言葉を失うほどのものだった。

「え、え、え……」
「ん……お?」

 金髪で、ガタイの良くて、ドラゴン型のバケモノの革でできた肩当てをつけてる男の人。
 間違いない、ドラバースだ。

「ドラ先輩! 来てたのか」
「あぁ。怪しい場所を片っ端から片付けておこうとな。それで……新顔!」
「うわっ!」

 僕の頭をガシッと押さえつけて、ドラバースはグリグリとガサツな手で撫でてくる。


「おいドラ先輩、痛そうだ」
「え、まじか」
「……お久しぶりです、ドラゴンバース」

 僕がそう一言告げると、ドラバースは僕の目を見つめたそして思い出したのか、口角を段々とあげて笑顔になり、僕の頭をまたガシガシと撫でまわす。

「お前、あのときの坊主か! メイビスの!」
「はいっ! あの……」

 言いたいことだらけで何から話せば良いのか分からない。だけど、会えただけでも一歩前進できた気がする。

「それでヒーローなるのか⁉︎」
「え、あ……僕のスキルは、ランク解放できなくって……」
「……知ってるか? 親父さんもスキルアップ不可だったんだぞ?」
「え」
「それどころか、異能力不所持だったんだ」

 僕の知らない、お父さんの事実。それを知ったら、僕のほうが優れているのではないか。そう思えてきた。

「自力で得たんだ、光合成スキル」
「え、そんなことできるんですか⁉︎」
「できなくはない。ただ、まあ……」
「まあ?」

 その先を、2人は語ろうとしなかった。だから気になるのだけれど、触れてはいけない気がして僕も黙りこんでしまった。

「よしっ、それじゃあ調査しような!」
「ドラ先輩、大丈夫か?」
「何の心配も無用だ! って、そういや坊主。テイラはどうした。一緒じゃないのか?」
「今日は大学です」
「そうか。オッケーだ、そんじゃあどこから調査するよ?」

 そう言うドラバースのお腹から、「グゥ~」と音がした。

「腹減ってんならまずは飯だな」
「ちょうどお昼だし、良い時間ですね」
「この辺だと寿司か」

 調査前にお昼ごはんを食べるということになり、僕達はネットで評判の良い、高級寿司屋。いわゆる、回らない寿司屋に立ち寄ることにした。大学生のポケットマネーの心配もしてほしいものだが、先輩の意見に反対できるわけもなく、僕は流されるままについていくことにした。
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