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第1章 語られし伝説
第2話 キツネ様口から語る
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気がつくと、俺は医務室のベッドの上に寝転がっていた。ふと横を見ると、保温蓋がセットされた今日の給食が並べられていた。
ただ、なぜか冷凍みかんが2つ並んでいる。
「……今日はきつねうどん、か。ニャハハ、シロギツネ野郎にお世話されてきつねうどんかよ」
『世話して悪かったな』
げっ、俺の隣のベッドにいたのかよ。カーテン閉まってて気付かなかったぜ……。
「てかセンコウが寝てて良いのかよ?」
「寝てない。お前が全科の授業が終わっても目を覚まさないから待っていたんだ」
え、今何時だ……って、もう時計の針6時回ってるじゃねぇか……。
「ふぅ。こういう日常的な場面だと気が抜けているのはあの人らしいか」
「……なぁ、センコウもあの人のこと知っているのか?」
おそらくライタが入っているのは、フラットさんのことだ。俺に似ていると言ったら、それしかないはずだ。
「フラット・クラリオ。今では伝説世代と呼ばれる、前デ・ロアー隊長だ」
「伝説世代……?」
たしかにあの人が凄いのは認める。だが、伝説って呼ぶにはいささか大袈裟な気がするんだが……。
「フラットさんがいなければ、この宇宙は滅んでいただろう。フォールもだが、ノールさんとスラリアさんは知っているだろう?」
「あぁ。死神と破壊神の」
スラリアはあまり知らんが、ノールとは付き合いが長いからよく分かる。
「他にもいるんだが……消息不明だ。スタントの父親で風神のクレアラント。子孫がいるかは分からないが、同じく風神のスターラント。そして、そんな彼らを束ねていたフラット。彼らは、この宇宙を保つ世界の根を守ってくれた」
「世界の根……」
その言葉で、ある光景が浮かんだ。
フォールが言っていた、あの人が世界の根の代わりを果たしていく光景。今でも分からない。そんなたいそうなものになったあの人が、俺の前に姿を見せた理由が。
にしても、スタントの父もデ・ロアーにいたなんて初耳だぜ。
「……ゴホン。すまない、話しすぎた」
「別に良いけどよ……食って良いか?」
「……フッ。フフフッ、どこまでマネするんだ、お前は」
「ん? 何の話だ?」
俺はただ、腹が減ったから飯を食って良いか聞いただけなんだが。別にあの人に似せようとしたわけじゃねぇし。
「ケッ、笑いたきゃ笑えよ。んじゃ、いただき」
「……おい」
食い始めた俺の手を止めて、ライタは箸を手にした。
「箸はこう持て。中指で挟む感じだ。薬指を挟んでよく食べれるな……。ま、手数料ってことできつね貰うな」
「あ゙っ!」
ライタはきつねうどんの醍醐味のおいなりを躊躇なくひと口で平らげた。
「おまっ、おま~っ!」
「ご馳走様。うん、いなりは美味しい」
おいおい、本当にいなりが好きなキツネっているんだな。おいなり様様、ってか?
「……別に食えりゃあ何でも良いだろ? 俺の好きに食わせろって」
俺は強引にでも箸を奪い返し、給食を口へ運んだ。
――一応、言われた通りに箸を持ち替えて。
「素直なほうが可愛がってやるぞ」
「へっ、可愛がってもらいたいと思われてたか。残念だぜ」
天邪鬼なのが俺の生き方だ。誰に何を言われようが、これは変える気なんてまんざらないぜ。
「……そういうことにしておくか。それじゃあ、俺はこれで。言っておくが、あの人に認められたからと言って容赦はしないからな。より厳しくさせてもらう」
「へーいへい。厳しくしようが別に良いぜ、俺の生き方変えれるもんなら変えてみやがれ」
俺に対してだけは偉そうな口聞きやがって。そっちがその気なら、俺も俺なりに挑戦状叩きつけてやんぜ。
それが、フェアなやり方ってもんだろ。
ただ、なぜか冷凍みかんが2つ並んでいる。
「……今日はきつねうどん、か。ニャハハ、シロギツネ野郎にお世話されてきつねうどんかよ」
『世話して悪かったな』
げっ、俺の隣のベッドにいたのかよ。カーテン閉まってて気付かなかったぜ……。
「てかセンコウが寝てて良いのかよ?」
「寝てない。お前が全科の授業が終わっても目を覚まさないから待っていたんだ」
え、今何時だ……って、もう時計の針6時回ってるじゃねぇか……。
「ふぅ。こういう日常的な場面だと気が抜けているのはあの人らしいか」
「……なぁ、センコウもあの人のこと知っているのか?」
おそらくライタが入っているのは、フラットさんのことだ。俺に似ていると言ったら、それしかないはずだ。
「フラット・クラリオ。今では伝説世代と呼ばれる、前デ・ロアー隊長だ」
「伝説世代……?」
たしかにあの人が凄いのは認める。だが、伝説って呼ぶにはいささか大袈裟な気がするんだが……。
「フラットさんがいなければ、この宇宙は滅んでいただろう。フォールもだが、ノールさんとスラリアさんは知っているだろう?」
「あぁ。死神と破壊神の」
スラリアはあまり知らんが、ノールとは付き合いが長いからよく分かる。
「他にもいるんだが……消息不明だ。スタントの父親で風神のクレアラント。子孫がいるかは分からないが、同じく風神のスターラント。そして、そんな彼らを束ねていたフラット。彼らは、この宇宙を保つ世界の根を守ってくれた」
「世界の根……」
その言葉で、ある光景が浮かんだ。
フォールが言っていた、あの人が世界の根の代わりを果たしていく光景。今でも分からない。そんなたいそうなものになったあの人が、俺の前に姿を見せた理由が。
にしても、スタントの父もデ・ロアーにいたなんて初耳だぜ。
「……ゴホン。すまない、話しすぎた」
「別に良いけどよ……食って良いか?」
「……フッ。フフフッ、どこまでマネするんだ、お前は」
「ん? 何の話だ?」
俺はただ、腹が減ったから飯を食って良いか聞いただけなんだが。別にあの人に似せようとしたわけじゃねぇし。
「ケッ、笑いたきゃ笑えよ。んじゃ、いただき」
「……おい」
食い始めた俺の手を止めて、ライタは箸を手にした。
「箸はこう持て。中指で挟む感じだ。薬指を挟んでよく食べれるな……。ま、手数料ってことできつね貰うな」
「あ゙っ!」
ライタはきつねうどんの醍醐味のおいなりを躊躇なくひと口で平らげた。
「おまっ、おま~っ!」
「ご馳走様。うん、いなりは美味しい」
おいおい、本当にいなりが好きなキツネっているんだな。おいなり様様、ってか?
「……別に食えりゃあ何でも良いだろ? 俺の好きに食わせろって」
俺は強引にでも箸を奪い返し、給食を口へ運んだ。
――一応、言われた通りに箸を持ち替えて。
「素直なほうが可愛がってやるぞ」
「へっ、可愛がってもらいたいと思われてたか。残念だぜ」
天邪鬼なのが俺の生き方だ。誰に何を言われようが、これは変える気なんてまんざらないぜ。
「……そういうことにしておくか。それじゃあ、俺はこれで。言っておくが、あの人に認められたからと言って容赦はしないからな。より厳しくさせてもらう」
「へーいへい。厳しくしようが別に良いぜ、俺の生き方変えれるもんなら変えてみやがれ」
俺に対してだけは偉そうな口聞きやがって。そっちがその気なら、俺も俺なりに挑戦状叩きつけてやんぜ。
それが、フェアなやり方ってもんだろ。
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