実験施設から抜け出した俺が伝説を超えるまでの革命記! 〜Light Fallen Angels〜

朝日 翔龍

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第1編 夢と幸福の追求路 序章 ここから歩き出そう

第0話 脱獄計画実行

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 ようやくこの日が来た。慣れ親しんでしまったこの牢獄生活とも、これでおしまいだ。
 今までこの牢獄から出れば、薬品の被検体やら解剖学の研究やらで体中傷だらけになることもなくなる。
 俺の人生を、俺だけのものにできる。

「今思えば、物心つく頃からこの中だったよな……」

 幼い頃から、ずっと俺はここにいる。だから、外に脱出することを少し躊躇っていた。
 だが、俺より後に入ったゴルンっていうキツネ野郎が外の魅力を教えてくれた。そのおかげで、外の知識を少し得られた。
 その礼に、俺が外に出たら助けてやるとも約束してやった。男と男の約束だ、守り抜くつもりだ。

「そんじゃあ……派手にやっちゃいますか!」

 俺は牢獄から出た際に警備の野郎が持っていたナイフと拳銃を盗んでいた。これさえあれば、無理矢理でも脱獄できる。
 俺は自分を信じて見回る警備の野郎に弾丸を打ち込んだ。

「グワっ!」
「へっ、まだ生きてやがる。ゴキブリみてぇにのたうちまわるか?」

 鉄格子を蹴破って、俺は楽々牢獄の外に出た。その瞬間、赤色の緊急ランプが回り始め、耳を塞ぎたくなるほどのアラームが鳴り出した。

「おい、こっちだ!」
「っ、実験番号666! お前か!」
「へっ、俺にはちゃんとした名前があるんだよ。ドンボ・バグーラ……数字の名前なんて、まっぴらごめんだぜ!」

 出口は塞がれちまったが、そんなことくれぇで怯む俺じゃねぇ。痛みなんて慣れっこだ、上半身さえ守れれば、他はどうなっても構わねえ。
 その覚悟で、俺は隠れることもせずに正面から撃ちまくった。だが、やつらの弾丸が全然俺に当たらない。逆に俺の弾が全部やつらの胸に当たる。拳銃なんて、今日初めて握った。もしかして、俺って才能アリなんじゃね?

「っと。また来ちまうかもしれねぇし、今のうちに!」

 俺はこの施設の出口までは知らないが、とにかくあちこちに駆け巡った。
 そうしているうちに、試験管だらけのある部屋にたどり着いた。

「な、なんだここ?」

 色とりどりの液体が入っている試験管。何かの薬にも思えるが、中には真緑の毒薬のようなものもあった。

「ここの薬、実験に使われたやつか……?」
『おいいたぞっ! こっちだ!』
「ヤッベ、袋のネズミじゃねぇか⁉︎」

 薬品室に逃げ込んでいたことがバレて、あっという間に10人以上はいるであろうマシンガン持ちに追い込まれてしまった。
 さっきまでの拳銃とは違い、この状態で一斉射撃されればいっかんの終わりだ。俺の心臓が冷たく脈を打つ。体中に冷たい汗が走る。
 そんな俺の視界が、なぜかある水色の薬が入った試験管を凝視していた。まるで何かに呼ばれている、そんな気がした。

「……賭けてみるか」

 俺はその試験管へと飛び込む。その動きに合わせて、マシンガンから一斉に弾丸が発射される。俺の体にたくさんの痛みが走る。だが、ここで死ぬわけにはいかない。約束を、果たす。そのために、俺は俺を信じて薬を飲んだ。

 ドクンっ--

 心臓から背中にかけて、何かが這い出てくる。何かはわからない。でもたしかに今、背中に何かがある。
 そしてなによりも、体内にめり込んだはずの弾丸が床へと散らばっていく。痛みも一瞬で消え失せた。

「ひ、ヒィ!」
「怯むな! 666を逃すな!」
「……ニャハハハハ!」

 何が何だか分からねぇ。でもこれだけは言える。神様は、俺の味方だってこと。
 そして、もうひとつ--

「死ぬ前に教えてやんぜ? 俺はな……ドンボ・バグーラ。最強になる最凶の男だぜっ!」

 溢れんばかりに煮えたぎる熱が、大爆発を起こした。その後どうなったかは俺にも分からねぇ。ただ、生きてるってことだけはたしかだ。
 目覚めたのは、どこかの路地裏。少し汚れちまってはいるものの、これくらいなんとでもなる。俺はズボンと服をパンパンと払い、路地裏を抜けた。
 さて。俺の大冒険、始まりといこうじゃねぇか!
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