1 / 68
第1編 夢と幸福の追求路 序章 ここから歩き出そう
第0話 脱獄計画実行
しおりを挟む
ようやくこの日が来た。慣れ親しんでしまったこの牢獄生活とも、これでおしまいだ。
今までこの牢獄から出れば、薬品の被検体やら解剖学の研究やらで体中傷だらけになることもなくなる。
俺の人生を、俺だけのものにできる。
「今思えば、物心つく頃からこの中だったよな……」
幼い頃から、ずっと俺はここにいる。だから、外に脱出することを少し躊躇っていた。
だが、俺より後に入ったゴルンっていうキツネ野郎が外の魅力を教えてくれた。そのおかげで、外の知識を少し得られた。
その礼に、俺が外に出たら助けてやるとも約束してやった。男と男の約束だ、守り抜くつもりだ。
「そんじゃあ……派手にやっちゃいますか!」
俺は牢獄から出た際に警備の野郎が持っていたナイフと拳銃を盗んでいた。これさえあれば、無理矢理でも脱獄できる。
俺は自分を信じて見回る警備の野郎に弾丸を打ち込んだ。
「グワっ!」
「へっ、まだ生きてやがる。ゴキブリみてぇにのたうちまわるか?」
鉄格子を蹴破って、俺は楽々牢獄の外に出た。その瞬間、赤色の緊急ランプが回り始め、耳を塞ぎたくなるほどのアラームが鳴り出した。
「おい、こっちだ!」
「っ、実験番号666! お前か!」
「へっ、俺にはちゃんとした名前があるんだよ。ドンボ・バグーラ……数字の名前なんて、まっぴらごめんだぜ!」
出口は塞がれちまったが、そんなことくれぇで怯む俺じゃねぇ。痛みなんて慣れっこだ、上半身さえ守れれば、他はどうなっても構わねえ。
その覚悟で、俺は隠れることもせずに正面から撃ちまくった。だが、やつらの弾丸が全然俺に当たらない。逆に俺の弾が全部やつらの胸に当たる。拳銃なんて、今日初めて握った。もしかして、俺って才能アリなんじゃね?
「っと。また来ちまうかもしれねぇし、今のうちに!」
俺はこの施設の出口までは知らないが、とにかくあちこちに駆け巡った。
そうしているうちに、試験管だらけのある部屋にたどり着いた。
「な、なんだここ?」
色とりどりの液体が入っている試験管。何かの薬にも思えるが、中には真緑の毒薬のようなものもあった。
「ここの薬、実験に使われたやつか……?」
『おいいたぞっ! こっちだ!』
「ヤッベ、袋のネズミじゃねぇか⁉︎」
薬品室に逃げ込んでいたことがバレて、あっという間に10人以上はいるであろうマシンガン持ちに追い込まれてしまった。
さっきまでの拳銃とは違い、この状態で一斉射撃されればいっかんの終わりだ。俺の心臓が冷たく脈を打つ。体中に冷たい汗が走る。
そんな俺の視界が、なぜかある水色の薬が入った試験管を凝視していた。まるで何かに呼ばれている、そんな気がした。
「……賭けてみるか」
俺はその試験管へと飛び込む。その動きに合わせて、マシンガンから一斉に弾丸が発射される。俺の体にたくさんの痛みが走る。だが、ここで死ぬわけにはいかない。約束を、果たす。そのために、俺は俺を信じて薬を飲んだ。
ドクンっ--
心臓から背中にかけて、何かが這い出てくる。何かはわからない。でもたしかに今、背中に何かがある。
そしてなによりも、体内にめり込んだはずの弾丸が床へと散らばっていく。痛みも一瞬で消え失せた。
「ひ、ヒィ!」
「怯むな! 666を逃すな!」
「……ニャハハハハ!」
何が何だか分からねぇ。でもこれだけは言える。神様は、俺の味方だってこと。
そして、もうひとつ--
「死ぬ前に教えてやんぜ? 俺はな……ドンボ・バグーラ。最強になる最凶の男だぜっ!」
溢れんばかりに煮えたぎる熱が、大爆発を起こした。その後どうなったかは俺にも分からねぇ。ただ、生きてるってことだけはたしかだ。
目覚めたのは、どこかの路地裏。少し汚れちまってはいるものの、これくらいなんとでもなる。俺はズボンと服をパンパンと払い、路地裏を抜けた。
さて。俺の大冒険、始まりといこうじゃねぇか!
今までこの牢獄から出れば、薬品の被検体やら解剖学の研究やらで体中傷だらけになることもなくなる。
俺の人生を、俺だけのものにできる。
「今思えば、物心つく頃からこの中だったよな……」
幼い頃から、ずっと俺はここにいる。だから、外に脱出することを少し躊躇っていた。
だが、俺より後に入ったゴルンっていうキツネ野郎が外の魅力を教えてくれた。そのおかげで、外の知識を少し得られた。
その礼に、俺が外に出たら助けてやるとも約束してやった。男と男の約束だ、守り抜くつもりだ。
「そんじゃあ……派手にやっちゃいますか!」
俺は牢獄から出た際に警備の野郎が持っていたナイフと拳銃を盗んでいた。これさえあれば、無理矢理でも脱獄できる。
俺は自分を信じて見回る警備の野郎に弾丸を打ち込んだ。
「グワっ!」
「へっ、まだ生きてやがる。ゴキブリみてぇにのたうちまわるか?」
鉄格子を蹴破って、俺は楽々牢獄の外に出た。その瞬間、赤色の緊急ランプが回り始め、耳を塞ぎたくなるほどのアラームが鳴り出した。
「おい、こっちだ!」
「っ、実験番号666! お前か!」
「へっ、俺にはちゃんとした名前があるんだよ。ドンボ・バグーラ……数字の名前なんて、まっぴらごめんだぜ!」
出口は塞がれちまったが、そんなことくれぇで怯む俺じゃねぇ。痛みなんて慣れっこだ、上半身さえ守れれば、他はどうなっても構わねえ。
その覚悟で、俺は隠れることもせずに正面から撃ちまくった。だが、やつらの弾丸が全然俺に当たらない。逆に俺の弾が全部やつらの胸に当たる。拳銃なんて、今日初めて握った。もしかして、俺って才能アリなんじゃね?
「っと。また来ちまうかもしれねぇし、今のうちに!」
俺はこの施設の出口までは知らないが、とにかくあちこちに駆け巡った。
そうしているうちに、試験管だらけのある部屋にたどり着いた。
「な、なんだここ?」
色とりどりの液体が入っている試験管。何かの薬にも思えるが、中には真緑の毒薬のようなものもあった。
「ここの薬、実験に使われたやつか……?」
『おいいたぞっ! こっちだ!』
「ヤッベ、袋のネズミじゃねぇか⁉︎」
薬品室に逃げ込んでいたことがバレて、あっという間に10人以上はいるであろうマシンガン持ちに追い込まれてしまった。
さっきまでの拳銃とは違い、この状態で一斉射撃されればいっかんの終わりだ。俺の心臓が冷たく脈を打つ。体中に冷たい汗が走る。
そんな俺の視界が、なぜかある水色の薬が入った試験管を凝視していた。まるで何かに呼ばれている、そんな気がした。
「……賭けてみるか」
俺はその試験管へと飛び込む。その動きに合わせて、マシンガンから一斉に弾丸が発射される。俺の体にたくさんの痛みが走る。だが、ここで死ぬわけにはいかない。約束を、果たす。そのために、俺は俺を信じて薬を飲んだ。
ドクンっ--
心臓から背中にかけて、何かが這い出てくる。何かはわからない。でもたしかに今、背中に何かがある。
そしてなによりも、体内にめり込んだはずの弾丸が床へと散らばっていく。痛みも一瞬で消え失せた。
「ひ、ヒィ!」
「怯むな! 666を逃すな!」
「……ニャハハハハ!」
何が何だか分からねぇ。でもこれだけは言える。神様は、俺の味方だってこと。
そして、もうひとつ--
「死ぬ前に教えてやんぜ? 俺はな……ドンボ・バグーラ。最強になる最凶の男だぜっ!」
溢れんばかりに煮えたぎる熱が、大爆発を起こした。その後どうなったかは俺にも分からねぇ。ただ、生きてるってことだけはたしかだ。
目覚めたのは、どこかの路地裏。少し汚れちまってはいるものの、これくらいなんとでもなる。俺はズボンと服をパンパンと払い、路地裏を抜けた。
さて。俺の大冒険、始まりといこうじゃねぇか!
0
https://accaii.com/asahisakuragi18/code.html
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
鋼なるドラーガ・ノート ~S級パーティーから超絶無能の烙印を押されて追放される賢者、今更やめてくれと言われてももう遅い~
月江堂
ファンタジー
― 後から俺の実力に気付いたところでもう遅い。絶対に辞めないからな ―
“賢者”ドラーガ・ノート。鋼の二つ名で知られる彼がSランク冒険者パーティー、メッツァトルに加入した時、誰もが彼の活躍を期待していた。
だが蓋を開けてみれば彼は無能の極致。強い魔法は使えず、運動神経は鈍くて小動物にすら勝てない。無能なだけならばまだしも味方の足を引っ張って仲間を危機に陥れる始末。
当然パーティーのリーダー“勇者”アルグスは彼に「無能」の烙印を押し、パーティーから追放する非情な決断をするのだが、しかしそこには彼を追い出すことのできない如何ともしがたい事情が存在するのだった。
ドラーガを追放できない理由とは一体何なのか!?
そしてこの賢者はなぜこんなにも無能なのに常に偉そうなのか!?
彼の秘められた実力とは一体何なのか? そもそもそんなもの実在するのか!?
力こそが全てであり、鋼の教えと闇を司る魔が支配する世界。ムカフ島と呼ばれる火山のダンジョンの攻略を通して彼らはやがて大きな陰謀に巻き込まれてゆく。


おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした
高鉢 健太
ファンタジー
ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。
ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。
もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。
とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。


異世界無宿
ゆきねる
ファンタジー
運転席から見た景色は、異世界だった。
アクション映画への憧れを捨て切れない男、和泉 俊介。
映画の影響で筋トレしてみたり、休日にエアガンを弄りつつ映画を観るのが楽しみな男。
訳あって車を購入する事になった時、偶然通りかかったお店にて運命の出会いをする。
一目惚れで購入した車の納車日。
エンジンをかけて前方に目をやった時、そこは知らない景色(異世界)が広がっていた…
神様の道楽で異世界転移をさせられた男は、愛車の持つ特別な能力を頼りに異世界を駆け抜ける。
アクション有り!
ロマンス控えめ!
ご都合主義展開あり!
ノリと勢いで物語を書いてますので、B級映画を観るような感覚で楽しんでいただければ幸いです。
不定期投稿になります。
投稿する際の時間は11:30(24h表記)となります。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
勇者じゃないと追放された最強職【なんでも屋】は、スキル【DIY】で異世界を無双します
華音 楓
ファンタジー
旧題:re:birth 〜勇者じゃないと追放された最強職【何でも屋】は、異世界でチートスキル【DIY】で無双します~
「役立たずの貴様は、この城から出ていけ!」
国王から殺気を含んだ声で告げられた海人は頷く他なかった。
ある日、異世界に魔王討伐の為に主人公「石立海人」(いしだてかいと)は、勇者として召喚された。
その際に、判明したスキルは、誰にも理解されない【DIY】と【なんでも屋】という隠れ最強職であった。
だが、勇者職を有していなかった主人公は、誰にも理解されることなく勇者ではないという理由で王族を含む全ての城関係者から露骨な侮蔑を受ける事になる。
城に滞在したままでは、命の危険性があった海人は、城から半ば追放される形で王城から追放されることになる。 僅かな金銭で追放された海人は、生活費用を稼ぐ為に冒険者として登録し、生きていくことを余儀なくされた。
この物語は、多くの仲間と出会い、ダンジョンを攻略し、成りあがっていくストーリーである。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる