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4節 破壊の芽
第6話 限界値
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進めば進むほど、幻の世界は段々と荒れ果てていく。火山の次は荒野、そして戦場跡、今は空が荒れて、大地が割れている。
まるで、崩落した世界を見ているかのようだ。
「…神力が薄れている。さっきまでの幻を形成していたくらいの神力は感じられない」
「あぁ…。キール、オメェはどう思う? これくらいまで雷やら雨やらが俺たちを襲う状況だ」
「別になんとも…?」
この空間において、俺たちにとって有害なものとなっているのは、脅威を表す偶像だ。
つまり、ここまで俺たちを害しているということは、この脅威は弱っていない証拠だ。ここから先、何が起きるか分からねぇ。
「エド、この先は危険かどうか分かるか?」
「分かんないっす。なにせ、神獣化したせいで神力が使えないっすもん…」
「だよな…。ドンボ、警戒しておけ。良いな?」
フォールも流石に分かっているか。この状況が何を意味しているのか。さて、そろそろこの空間もおさらばか。次は一体どんな空間に変わることやら…。
「ん? 今度は…砂場?」
「いや…。おい、走るぞ!」
「えっ?」
「良いから走れ! 分からんか、向こう!」
そう弾糾するスタントが指さしたのは、地平線。だが、そこから線状に何かが迫ってきていた。しかも、ものすごいスピードで。
俺はそれが何か、足場を見て気がついた。砂に紛れたカイガラに、砂でできた城。ここは、海岸だ。そして、波が大きくひいている。それが意味することは-
「津波か。おい、早くここ抜けねぇと飲み込まれるぜ!」
「それなら、俺様に任せとけ! ソゥレ!」
「ちょ、おい!」
エルゴは俺の腰から魔法道具を盗み取り、ひとつ薙ぎ払った。その際に、火を纏った一閃が波に向かって飛び出した。
そして波にぶつかると、大きな衝突音が響いた。すると偶像に包まれた空間が歪み始め、段々と塔の中そのものに戻りつつあった。その光景は、多数の脅威が俺たちを囲んでいるものだ。だがエルゴの一閃のおかげで全部息絶えていた。
その光景を目の当たりにして、俺はフラットさんが言っていた言葉を思い出した。
「僕が使ったのは神力。お前が使ったのは魔力。中和されるのは常識…」
「そういうことか! てことは、ここで魔法を使うのは危険じゃねぇか!」
ここで津波ってことは、これ以上進めば脅威は活発的に行動しているってことだ。
つまり、脅威の口も近えってことだな。こんな所で力を使うわけにもいかねぇ。てなると、ここは逃げるが勝ちだな。
「おい! 行くぞ!」
「いや…ダメだ。今の魔力と神力の衝突で偶像世界が消えた。それが意味することは分かるだろ」
「…悪い、今度は俺がハッキリ言うぜ。分からねぇ」
この今が何を意味しているのか、それを考える暇なんてねぇだろ。脅威に囲まれてるんだぜ⁉︎
「なら言おう。この塔の偶像全てが消えた。そうなると、危機的状況かどうかが分からなくなる」
「…てことは、下手すりゃ死ぬ可能性が出てきたわけか」
たしかに、今までは危険かどうかが判断しやすかった。それが分からなったということは、気付かぬうちに背中を取られている可能性もある。
へっ、そういうハードさ、俺は大好物だぜ。行くっきゃねぇな。
「エルゴ、サンキューな。おかげで楽しくなりそうだぜ」
「何言ってんすか! より危険になったんすよ⁉︎」
「起きたことにウダウダ言ってんじゃねぇよ! そういうのをダセェって言うんだよ」
後悔とか反省とか、俺はそういう考え大嫌いだ。後悔したって反省したって、もう時間は巻き戻せねぇ。
ならどうするかって、決まってんだろ。全部通過点にしちまえば良い。結果よければ全て良しだ、成功すりゃあ良いんだよ。
「…今回も、ドンボに賛成だ。いちいち迷っている暇はない。こうなった以上、ぼくたちもやるしかない」
「やったぜ、父ちゃんに褒められた! もっとやっちまうぜ!」
「あぁ、そうしてくれ。お前も戦力になれるということが分かった」
分かってるじゃねぇか、エルゴも大事な仲間になるんだ。良い修行になるだろ?
「それにしても、エルゴの失敗をお咎めなしっていうのもねぇ」
「それで良いんじゃないか? ドンボと同じで、言っても無駄だと思うぜ」
「俺様に指図したとこで聞く耳ねぇぜ」
「ほらな」
「自分で言うのもどうかと思うっすけどねぇ」
俺に似て良かったぜ。俺流の楽しいがより理解できそうだぜ。よし、それじゃあ覚悟を決めて進むとしようか。
俺に負けの2文字はないってこと、俺は最強だっていうこと、ノールとやらに教えてやるぜ。
まるで、崩落した世界を見ているかのようだ。
「…神力が薄れている。さっきまでの幻を形成していたくらいの神力は感じられない」
「あぁ…。キール、オメェはどう思う? これくらいまで雷やら雨やらが俺たちを襲う状況だ」
「別になんとも…?」
この空間において、俺たちにとって有害なものとなっているのは、脅威を表す偶像だ。
つまり、ここまで俺たちを害しているということは、この脅威は弱っていない証拠だ。ここから先、何が起きるか分からねぇ。
「エド、この先は危険かどうか分かるか?」
「分かんないっす。なにせ、神獣化したせいで神力が使えないっすもん…」
「だよな…。ドンボ、警戒しておけ。良いな?」
フォールも流石に分かっているか。この状況が何を意味しているのか。さて、そろそろこの空間もおさらばか。次は一体どんな空間に変わることやら…。
「ん? 今度は…砂場?」
「いや…。おい、走るぞ!」
「えっ?」
「良いから走れ! 分からんか、向こう!」
そう弾糾するスタントが指さしたのは、地平線。だが、そこから線状に何かが迫ってきていた。しかも、ものすごいスピードで。
俺はそれが何か、足場を見て気がついた。砂に紛れたカイガラに、砂でできた城。ここは、海岸だ。そして、波が大きくひいている。それが意味することは-
「津波か。おい、早くここ抜けねぇと飲み込まれるぜ!」
「それなら、俺様に任せとけ! ソゥレ!」
「ちょ、おい!」
エルゴは俺の腰から魔法道具を盗み取り、ひとつ薙ぎ払った。その際に、火を纏った一閃が波に向かって飛び出した。
そして波にぶつかると、大きな衝突音が響いた。すると偶像に包まれた空間が歪み始め、段々と塔の中そのものに戻りつつあった。その光景は、多数の脅威が俺たちを囲んでいるものだ。だがエルゴの一閃のおかげで全部息絶えていた。
その光景を目の当たりにして、俺はフラットさんが言っていた言葉を思い出した。
「僕が使ったのは神力。お前が使ったのは魔力。中和されるのは常識…」
「そういうことか! てことは、ここで魔法を使うのは危険じゃねぇか!」
ここで津波ってことは、これ以上進めば脅威は活発的に行動しているってことだ。
つまり、脅威の口も近えってことだな。こんな所で力を使うわけにもいかねぇ。てなると、ここは逃げるが勝ちだな。
「おい! 行くぞ!」
「いや…ダメだ。今の魔力と神力の衝突で偶像世界が消えた。それが意味することは分かるだろ」
「…悪い、今度は俺がハッキリ言うぜ。分からねぇ」
この今が何を意味しているのか、それを考える暇なんてねぇだろ。脅威に囲まれてるんだぜ⁉︎
「なら言おう。この塔の偶像全てが消えた。そうなると、危機的状況かどうかが分からなくなる」
「…てことは、下手すりゃ死ぬ可能性が出てきたわけか」
たしかに、今までは危険かどうかが判断しやすかった。それが分からなったということは、気付かぬうちに背中を取られている可能性もある。
へっ、そういうハードさ、俺は大好物だぜ。行くっきゃねぇな。
「エルゴ、サンキューな。おかげで楽しくなりそうだぜ」
「何言ってんすか! より危険になったんすよ⁉︎」
「起きたことにウダウダ言ってんじゃねぇよ! そういうのをダセェって言うんだよ」
後悔とか反省とか、俺はそういう考え大嫌いだ。後悔したって反省したって、もう時間は巻き戻せねぇ。
ならどうするかって、決まってんだろ。全部通過点にしちまえば良い。結果よければ全て良しだ、成功すりゃあ良いんだよ。
「…今回も、ドンボに賛成だ。いちいち迷っている暇はない。こうなった以上、ぼくたちもやるしかない」
「やったぜ、父ちゃんに褒められた! もっとやっちまうぜ!」
「あぁ、そうしてくれ。お前も戦力になれるということが分かった」
分かってるじゃねぇか、エルゴも大事な仲間になるんだ。良い修行になるだろ?
「それにしても、エルゴの失敗をお咎めなしっていうのもねぇ」
「それで良いんじゃないか? ドンボと同じで、言っても無駄だと思うぜ」
「俺様に指図したとこで聞く耳ねぇぜ」
「ほらな」
「自分で言うのもどうかと思うっすけどねぇ」
俺に似て良かったぜ。俺流の楽しいがより理解できそうだぜ。よし、それじゃあ覚悟を決めて進むとしようか。
俺に負けの2文字はないってこと、俺は最強だっていうこと、ノールとやらに教えてやるぜ。
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