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4節 破壊の芽
第4話 神聖なる都
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ポツポツと、水たまりに落ちる雫の音。どうやら、雨はあがったらしい。快晴とまでは言えないが、白い雲の隙間に青空が見えるくらいには晴れていた。
日光が見え隠れする中、俺たちは塔のある街に戻ってきた。以前に俺たちを案内してくれた軍兵が俺たちを見つけてこちらに駆けてきた。
「≪お帰りなさいませ。何か手がかりはありましたか?≫」
「≪手がかりどころか、全ての犯人が分かったぜ≫」
「≪それで、急いで塔の中に入りたいんすよ! 魔の復活が起こるっすよ!≫」
「魔の復活…? そんな大袈裟な話じゃないだろ」
ただ単に、あの麒麟ってやつを退治するだけなのに、何が魔の復活だよ。大袈裟な表現な世界なのか、ここは。
「≪大袈裟なんかではありません! 現麒麟様の中に眠る初代麒麟の魔力は絶大。もし蘇れば、まずこの国は滅ぶ運命になることは確実です。そんな場所に行かせることなど、到底…≫」
「≪おいおい。俺たちをバカにするのか? それによ、そんな楽しそうなこと聞いて、黙ってられるかよ。どうしても行かせたくないなら、俺たちの自己責任で行かせてもらうぜ。それで良いだろ?≫」
俺が思う俺らしさ。それは、楽しそうなことには何がなんでも喰らいつくことだ。たとえ、どんな犠牲を払ってでもだ。
「≪…警告はしました。それでも行くと言うのならば、私から止めることはできません。では…≫」
「≪待て。お前が開ける必要はない。全責任を、ぼくたちが背負う。あなたは、何もしなくて良い≫」
スタントが鍵を開けようとした軍兵の手を掴み、その手を止めさせた。
「≪父ちゃん、任せろ。ドウリャアァァ!≫」
「≪なっ、扉が…!≫」
どんなに頑丈な扉とはいえども、エルゴの脚力にかかれば開いちまうぜ。言うことなし、だろ。これでな。
そうして俺たちは、塔の中へ入った。だが、入ってすぐに驚きの景色を目の当たりにした。
なんと、一瞬の瞬きをしただけで、目の前が草原だった。目を擦っても何度瞬きしても、間違いなく草原。しかも、空も見えている。だが、空には脅威の口が見える。
どうやら、塔の中は幻想世界らしい。しかも、この偶像を作り上げているのは、他でもない神力だ。となると、この空間はただの幻想じゃねぇな。
「おい、進むぞ。向こうに何か見えるしよ」
「うん。でも…不思議。草原の中に繋がってるなんて」
「いや、幻…でもないな。おそらく、そういう風に見えてるだけだ。偽りであり、本物の空間、と言うべきだな」
「つまり…どういうことだよ⁉︎」
まだ子供のエルゴには理解不能だよな。つまりは、きっとこういうことだよな。
理解できた俺は、一気に駆け出してみた。するとどうだ、目の前の景色がガラリと変わった。さっきまで草原だったはずの足元に、カーペットが敷かれ、左右を見渡すと石垣でできた壁に、かがり火。そう、中世の古城のような場所に変わっていた。
そして案の定、後ろを振り返れば誰もいねぇ。つまりは、一定の距離を進むと世界が変わる。それが意味するのは、階層を上がっているということだ。この調子で行けば、いつかは頂上へ辿り着けるはずだぜ。
それが分かっただけで充分だ、戻るとするか。
「ちょ、ドンボ⁉︎ 今、急に消えたよね⁉︎」
「あぁ。まあ一緒に行こうぜ。面白ぇからよ」
俺の面白いは絶対だ。驚きと謎だらけで楽しいこと間違いねぇんだからよ。
さぁて、ここからは本気でいくぜ。こんな何が起こるか分からない状況ほど、脳汁が溢れることはねぇしな!
日光が見え隠れする中、俺たちは塔のある街に戻ってきた。以前に俺たちを案内してくれた軍兵が俺たちを見つけてこちらに駆けてきた。
「≪お帰りなさいませ。何か手がかりはありましたか?≫」
「≪手がかりどころか、全ての犯人が分かったぜ≫」
「≪それで、急いで塔の中に入りたいんすよ! 魔の復活が起こるっすよ!≫」
「魔の復活…? そんな大袈裟な話じゃないだろ」
ただ単に、あの麒麟ってやつを退治するだけなのに、何が魔の復活だよ。大袈裟な表現な世界なのか、ここは。
「≪大袈裟なんかではありません! 現麒麟様の中に眠る初代麒麟の魔力は絶大。もし蘇れば、まずこの国は滅ぶ運命になることは確実です。そんな場所に行かせることなど、到底…≫」
「≪おいおい。俺たちをバカにするのか? それによ、そんな楽しそうなこと聞いて、黙ってられるかよ。どうしても行かせたくないなら、俺たちの自己責任で行かせてもらうぜ。それで良いだろ?≫」
俺が思う俺らしさ。それは、楽しそうなことには何がなんでも喰らいつくことだ。たとえ、どんな犠牲を払ってでもだ。
「≪…警告はしました。それでも行くと言うのならば、私から止めることはできません。では…≫」
「≪待て。お前が開ける必要はない。全責任を、ぼくたちが背負う。あなたは、何もしなくて良い≫」
スタントが鍵を開けようとした軍兵の手を掴み、その手を止めさせた。
「≪父ちゃん、任せろ。ドウリャアァァ!≫」
「≪なっ、扉が…!≫」
どんなに頑丈な扉とはいえども、エルゴの脚力にかかれば開いちまうぜ。言うことなし、だろ。これでな。
そうして俺たちは、塔の中へ入った。だが、入ってすぐに驚きの景色を目の当たりにした。
なんと、一瞬の瞬きをしただけで、目の前が草原だった。目を擦っても何度瞬きしても、間違いなく草原。しかも、空も見えている。だが、空には脅威の口が見える。
どうやら、塔の中は幻想世界らしい。しかも、この偶像を作り上げているのは、他でもない神力だ。となると、この空間はただの幻想じゃねぇな。
「おい、進むぞ。向こうに何か見えるしよ」
「うん。でも…不思議。草原の中に繋がってるなんて」
「いや、幻…でもないな。おそらく、そういう風に見えてるだけだ。偽りであり、本物の空間、と言うべきだな」
「つまり…どういうことだよ⁉︎」
まだ子供のエルゴには理解不能だよな。つまりは、きっとこういうことだよな。
理解できた俺は、一気に駆け出してみた。するとどうだ、目の前の景色がガラリと変わった。さっきまで草原だったはずの足元に、カーペットが敷かれ、左右を見渡すと石垣でできた壁に、かがり火。そう、中世の古城のような場所に変わっていた。
そして案の定、後ろを振り返れば誰もいねぇ。つまりは、一定の距離を進むと世界が変わる。それが意味するのは、階層を上がっているということだ。この調子で行けば、いつかは頂上へ辿り着けるはずだぜ。
それが分かっただけで充分だ、戻るとするか。
「ちょ、ドンボ⁉︎ 今、急に消えたよね⁉︎」
「あぁ。まあ一緒に行こうぜ。面白ぇからよ」
俺の面白いは絶対だ。驚きと謎だらけで楽しいこと間違いねぇんだからよ。
さぁて、ここからは本気でいくぜ。こんな何が起こるか分からない状況ほど、脳汁が溢れることはねぇしな!
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