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4節 破壊の芽
第1話 忍び寄る影
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俺たちは脅威の口を覆い隠す塔のある街、つまりは俺たちが最初に訪れた街へと戻ることにした。
だが、エルゴの母親の霊魂が取り憑いているような洞窟をまた通ると、エルゴを盗んだように思われかねない。だから遠回りになるが、迂回して行くことになった。
その道中は、やっぱりサバンナだ。ほぼ陽に照らされる。そのせいで疲労と暑さにやられていた。しかも暑さときたら、ジリジリと肌を焼くように暑いし、汗がダラダラと溢れ出るほどだぜ。
「ちょ…日陰ないのか?」
「日傘ならあるけど…使う?」
「傘を持つだけでも疲れるだろ。この暑さだけでもどうにかなったら良いんだが」
暑さだけ、か。それなら、フラットさんの天空の力とやらを使えばなんとかなるんじゃねぇかな。
「こ、こうすればいいのか…ってうわ⁉︎」
「父ちゃん⁉︎ 何浮いてんだ⁈」
まだ俺は天空の力とやらを上手く扱えないらしい。どう使おうとも、天空を仰ごうとしてしまう。
雲を集めて大きな曇り空を作ろうとしただけなのに、上手くできない。
「ちょ、降ろしてくれ!」
「ぷっ…アハハ! 昔のフラットみたいだな。天空の力を上手く扱えないとか」
あの人も、俺と同じと聞いて、何故か俺は誇らしくなった。いや、嬉しかったのかもしれない。俺は今、フラットさんと同じ道を辿っている。そんな気がして。
「たしかに、そうっすね。フラットも天空の力は使いこなせなくて、空中をグルグル飛び回ってたっすもん」
「じゃあ、俺はフラットさんより早くこの力をマスターしてみせるぜ!」
「やる気が良いのは構わないが、暑苦しいから今はやめてくれ」
「うん、ちょっと今は控えてほしいかな」
ノリが悪いやつらばっかだな。こういうときこそ熱い精神を胸の中にたぎらせて、やる気を起こすんだ。そうしなきゃ倒れるだけだぜ。
「ドンボ、お前って案外ノウキンなんだな」
「いや、元からでしょ」
「それなら、俺様が街まで運ぶぜ?」
「は? でもその姿じゃ…」
「あっ、そうだっけな! ダッハッハ!」
そういう考え、嫌いじゃないが、単純思考回路はやめてほしいぜ。上げて落とされるほど、ムカつくことはねぇからな。
「それなら、肩にある魔法陣を触れれば良いんすよ。擬人化魔法は、今じゃエルゴの体内に宿ってるっす。それを解放するも使用するも、その陣を触ればお手のものっすよ」
「つまり…こうか?」
エルゴは肩にある魔法陣を触った。すると、前ほど強くはないが、光がその身体を包む。
その光の中に見える影は、段々とドラゴンの形を成していく。そして、その光が収まると、目の前にはドラゴンフォルムのエルゴがドシンと構えていた。
「ギャ!」
「え、誰から行くの?」
「まっ、親である俺からだろうな」
「ギャッギャ! ギャス! ブーっ!」
エルゴは俺だけを指さすと、他のやつらに向かっては腕をクロスさせてバツ印を見せつけた。
どうやら、俺だけにしか背中に乗せる気はないらしい。
「エルゴ、そんなのはダメだぜ。俺のダチにそういう差別をしろと、教えたつもりはないんだが?」
「ギャス…ウギャウ!」
「ちょ、そんなに怒んなくたって良いだろ!」
俺はエルゴに優しく言ったつもりなのだが、何かが気に入らなかったらしく、俺に向かって鋭い爪を差し出した。
そんな様子を、彼らの背後の岩陰から覗く2人組がいた。
「≪おい兄貴、あの黄緑色のウロコ、間違いねぇだろ≫」
「≪あぁ、間違いなく希少種だな。よし、捕獲して高く売り捌こうぜ!≫
彼らの知らぬ間に、エルゴはハンターの標的となっていた。ドンボは、エルゴを守り抜くことができるのか-
だが、エルゴの母親の霊魂が取り憑いているような洞窟をまた通ると、エルゴを盗んだように思われかねない。だから遠回りになるが、迂回して行くことになった。
その道中は、やっぱりサバンナだ。ほぼ陽に照らされる。そのせいで疲労と暑さにやられていた。しかも暑さときたら、ジリジリと肌を焼くように暑いし、汗がダラダラと溢れ出るほどだぜ。
「ちょ…日陰ないのか?」
「日傘ならあるけど…使う?」
「傘を持つだけでも疲れるだろ。この暑さだけでもどうにかなったら良いんだが」
暑さだけ、か。それなら、フラットさんの天空の力とやらを使えばなんとかなるんじゃねぇかな。
「こ、こうすればいいのか…ってうわ⁉︎」
「父ちゃん⁉︎ 何浮いてんだ⁈」
まだ俺は天空の力とやらを上手く扱えないらしい。どう使おうとも、天空を仰ごうとしてしまう。
雲を集めて大きな曇り空を作ろうとしただけなのに、上手くできない。
「ちょ、降ろしてくれ!」
「ぷっ…アハハ! 昔のフラットみたいだな。天空の力を上手く扱えないとか」
あの人も、俺と同じと聞いて、何故か俺は誇らしくなった。いや、嬉しかったのかもしれない。俺は今、フラットさんと同じ道を辿っている。そんな気がして。
「たしかに、そうっすね。フラットも天空の力は使いこなせなくて、空中をグルグル飛び回ってたっすもん」
「じゃあ、俺はフラットさんより早くこの力をマスターしてみせるぜ!」
「やる気が良いのは構わないが、暑苦しいから今はやめてくれ」
「うん、ちょっと今は控えてほしいかな」
ノリが悪いやつらばっかだな。こういうときこそ熱い精神を胸の中にたぎらせて、やる気を起こすんだ。そうしなきゃ倒れるだけだぜ。
「ドンボ、お前って案外ノウキンなんだな」
「いや、元からでしょ」
「それなら、俺様が街まで運ぶぜ?」
「は? でもその姿じゃ…」
「あっ、そうだっけな! ダッハッハ!」
そういう考え、嫌いじゃないが、単純思考回路はやめてほしいぜ。上げて落とされるほど、ムカつくことはねぇからな。
「それなら、肩にある魔法陣を触れれば良いんすよ。擬人化魔法は、今じゃエルゴの体内に宿ってるっす。それを解放するも使用するも、その陣を触ればお手のものっすよ」
「つまり…こうか?」
エルゴは肩にある魔法陣を触った。すると、前ほど強くはないが、光がその身体を包む。
その光の中に見える影は、段々とドラゴンの形を成していく。そして、その光が収まると、目の前にはドラゴンフォルムのエルゴがドシンと構えていた。
「ギャ!」
「え、誰から行くの?」
「まっ、親である俺からだろうな」
「ギャッギャ! ギャス! ブーっ!」
エルゴは俺だけを指さすと、他のやつらに向かっては腕をクロスさせてバツ印を見せつけた。
どうやら、俺だけにしか背中に乗せる気はないらしい。
「エルゴ、そんなのはダメだぜ。俺のダチにそういう差別をしろと、教えたつもりはないんだが?」
「ギャス…ウギャウ!」
「ちょ、そんなに怒んなくたって良いだろ!」
俺はエルゴに優しく言ったつもりなのだが、何かが気に入らなかったらしく、俺に向かって鋭い爪を差し出した。
そんな様子を、彼らの背後の岩陰から覗く2人組がいた。
「≪おい兄貴、あの黄緑色のウロコ、間違いねぇだろ≫」
「≪あぁ、間違いなく希少種だな。よし、捕獲して高く売り捌こうぜ!≫
彼らの知らぬ間に、エルゴはハンターの標的となっていた。ドンボは、エルゴを守り抜くことができるのか-
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