実験施設から抜け出した俺が伝説を超えるまでの革命記! 〜Light Fallen Angels〜

朝日 翔龍

文字の大きさ
上 下
38 / 68
2節 迷宮へ

第6話 道のり

しおりを挟む
 洞窟を進み始めてから1時間が過ぎた。だが、一向に出られる気配はない。地下へと進んでいくにつれて、空気が魔力で濁んでいく。まあ、この程度の魔力で堪えるような俺たちじゃないがな。

「あともう少しだとは思うんすけど…」
「も、もう無理! 休ませて!」
「? どうした、キール?」
「ずっと炎を灯してたけど…疲れちゃって」

 流石に、長時間力を使っていたんだ。キールが疲れるのは無理もないんだが。なぜか、フォールのやつまで息を荒くしているのが気になる。

「アンタもどうしたんだ? 歩き疲れたなら言えって」
「そういうのじゃない、気にするな」
「じゃあ、まさかムラムラしてるとかか? おっさんのくせに元気なこって」
「んなわけ…っ!」

 俺に反論しようとしたフォールが、苦しそうに胸を押さえてうずくまった。
 演技なんかじゃない、事実だと悟り、俺はすぐにフォールに寄り添った。

「おい、大丈夫か⁉︎」
「魔力に蝕まれてるな。神力がほとんどない課長の身体じゃ、これ以上は危険だ」
「でも、こんな状態で戻れるわけないよ…」
「残すわけにもいかないっすし…」
「仕方ねぇな。よいしょ…と」

 動けないっていうなら、動かすしかねぇ。おっさんを背負うっていうのは、ハッキリ言って嬉しくないが…。緊急事態だ、ノーカンにしておこう。

「それじゃ、行くぜ。あと、しばらくの間寝させたいんだが…できるか?」
「意識を壊すなら」
「絶対ダメっすよ」
「ぼくが眠らせておくよ。それで良いだろ?」

 意識を壊すっていうのも気にはなるが、死人を背負うのは勘弁だ。ここはスタントに任せるか。

「じゃあスタント、頼む」
「ん。神業・睡風スリープウィンド

 力も抜けたな。これで、とりあえずは大丈夫だろ。だが、この魔力にも耐えられないほどに弱ってたんだな。いつもはあんなに酒飲んだりと元気そうなのに、無茶しやがって。長生きできねぇぜ?



 そしてさらに進んで、少しだが風の流れが感じられた。どうやら、出口が近いらしい。
 だが、依頼のドラゴンはどこにいるんだ? 細道だらけで、そういうデケェやつがいそうな場所なんて…。まさか!

「おい待て。ここ…まさかとは思うが、ドラゴンの体内じゃねぇか⁉︎」
「えぇ⁉︎   で、でも…」
「いや…あのジグザグしたマップ、そしてこの魔力。その可能性は充分にある」
「だ、だとしたらどうやって出るんすか⁉︎」

 出る方法は、いくつかある。道を引き戻すか、壁を壊すか。だが、壁を壊すのはリスキーだな。下手したら血液で溺死しかねない。

「道を引き戻すぞ。迷う暇はな-」

 ザァァ-

「おい…まさか!」
「なんだ、水か⁉︎」
「消化液だ! 触れたら溶けるぜ!」
「こうなったら…神業・向風!」

 スタントが力を使って強い向風を起こしたおかげで、消化液の流れが抑えられた。
 それでも、この風の勢いを保てるのも時間の問題だ。だったら、俺もやるか。

「スタント、気を抜くなよ! 神業・原子分解!」

 スタントが抑えている間に、俺が消化液の中から酸の成分を分解する。
 そうすれば、これはただの水だ。危険じゃねぇ。やっぱり、俺って天才か?

「閃きに至っては、天才だな」
「うん、今のは隊長らしかったよ!」
「俺も今のは凄いと思ったっすよ!」
「ニャハハハハハ! だが、こう考えると進んだほうが早いかもな。ここは胃に当たる場所だ、進めば出られるだろ」
「で、出るって…どこから?」

 そんなこと気にしてる場合かよ。戻ったほうが危険だろ、この場合。
 また消化液が流れてくるだけだぞ。それに、小腸と大腸も通るんだ。そっちのほうが楽しいだろ?

「その探究心はどこから湧くんだか。仕方ない、乗った」
「えぇっ⁉︎   排泄物と一緒に出るんだよ⁉︎」
「いや……そうするしかないだろ。これだけデケェドラゴンの口から出るんだぜ? 牙で圧死するだろ」
「ていうか…どうやって食べられたんだろ…」
「予想だが、洞窟自体がドラゴン…とか?」
「違うな。洞窟の中で成長し続けたドラゴンが、洞窟の入り口を口と同化させた、じゃないか?」

 こうやって話し合うのも楽しいな。って、それどころじゃないんだった。今は危険と隣り合わせ、すぐにでも逃げねぇと。

「とりあえず進むぞ。歩きながらでも話せるだろ?」
「それもそうっすね、進まないとまた危なくなるっす」
「あぁ、そうだな。キール、覚悟を決めておけ」
「うぅ~。分かった」

 なんとか意思が固まり、俺たちは先を目指した。どこから出るのか、ハッキリ言って分からないのが1番の恐怖だ。だが、それで止まる俺じゃない。
 怖いものは乗り越えていく。そのスリルが、俺の生き方だぜ。怯えてるやつは、首根っこ引っ張ってでも連れて行ってやる。死なば諸共、ってな!
しおりを挟む
https://accaii.com/asahisakuragi18/code.html
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

旅人アルマは動かない

洞貝 渉
ファンタジー
引きこもりのアルマは保護者ルドベキアと共にヤドカリに乗って旅をする。

アーティファクトコレクター -異世界と転生とお宝と-

一星
ファンタジー
至って普通のサラリーマン、松平善は車に跳ねられ死んでしまう。気が付くとそこはダンジョンの中。しかも体は子供になっている!? スキル? ステータス? なんだそれ。ゲームの様な仕組みがある異世界で生き返ったは良いが、こんな状況むごいよ神様。 ダンジョン攻略をしたり、ゴブリンたちを支配したり、戦争に参加したり、鳩を愛でたりする物語です。 基本ゆったり進行で話が進みます。 四章後半ごろから主人公無双が多くなり、その後は人間では最強になります。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

勇者じゃないと追放された最強職【なんでも屋】は、スキル【DIY】で異世界を無双します

華音 楓
ファンタジー
旧題:re:birth 〜勇者じゃないと追放された最強職【何でも屋】は、異世界でチートスキル【DIY】で無双します~ 「役立たずの貴様は、この城から出ていけ!」  国王から殺気を含んだ声で告げられた海人は頷く他なかった。  ある日、異世界に魔王討伐の為に主人公「石立海人」(いしだてかいと)は、勇者として召喚された。  その際に、判明したスキルは、誰にも理解されない【DIY】と【なんでも屋】という隠れ最強職であった。  だが、勇者職を有していなかった主人公は、誰にも理解されることなく勇者ではないという理由で王族を含む全ての城関係者から露骨な侮蔑を受ける事になる。  城に滞在したままでは、命の危険性があった海人は、城から半ば追放される形で王城から追放されることになる。 僅かな金銭で追放された海人は、生活費用を稼ぐ為に冒険者として登録し、生きていくことを余儀なくされた。  この物語は、多くの仲間と出会い、ダンジョンを攻略し、成りあがっていくストーリーである。

【完結】過保護な竜王による未来の魔王の育て方

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
魔族の幼子ルンは、突然両親と引き離されてしまった。掴まった先で暴行され、殺されかけたところを救われる。圧倒的な強さを持つが、見た目の恐ろしい竜王は保護した子の両親を探す。その先にある不幸な現実を受け入れ、幼子は竜王の養子となった。が、子育て経験のない竜王は混乱しまくり。日常が騒動続きで、配下を含めて大騒ぎが始まる。幼子は魔族としか分からなかったが、実は将来の魔王で?! 異種族同士の親子が紡ぐ絆の物語――ハッピーエンド確定。 #日常系、ほのぼの、ハッピーエンド 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/08/13……完結 2024/07/02……エブリスタ、ファンタジー1位 2024/07/02……アルファポリス、女性向けHOT 63位 2024/07/01……連載開始

処理中です...