上 下
33 / 68
2節 迷宮へ

第1話 ダンジョン攻略!

しおりを挟む
 情報を共有し合い、全員は目標地点を定めた。それは、この国を抜けた先にある、とある王国。そこに、斬首刑をされた、石化術の使い手がいたらしい。
 何かしらの情報があると睨んで、そこが目的地になったのは良いものの、問題があった。

「地図貰えたんすけど……ここからだと、洞窟を通る必要があるっすね」
「洞窟…? 別に良いんじゃないの?」
「何言ってるんすか! この世界の洞窟は、モンスターで一杯なんすよ⁉︎   しかも、魔法道具がないのに、どう対抗するんすか!」

 ま、魔法道具? そんなファンタジーチックなもの、あるのかよ?

「とりあえず、まずは武器調達っす。でも、この世界の金がないんすよね…」
「それならお任せあれ。こんなこともあろうかと…持ってきました、換金機! これがあれば、なんと異世界の通貨をその世界の通貨に交換できる!」
「「おぉ~っ!」」

 スッゲェ準備良いじゃねぇか、フォールのくせに! たまには有能じゃんか!

「その前に、この世界の通貨価値を知りたいな……。よし、あの店主でちょっと試そう」

 へ、試すって何をだ? てか、どうやって換金するんだ? 俺たちの世界の通貨オズと、こっちの世界の価値が通じるわけがねぇってのに。

「≪すみません。少しよろしいでしょうか?≫」
「≪はい、いらっしゃいませ。どうされました?≫
「≪少しだけお手伝いをお願いしてもよろしいでしょうか? チップを払いますので≫
「≪はい、かしこまりました。しかしながら、チップを受け取るわけにはいきません。困りごとを共に解決するのが、我々にとっての掟ですから≫」

 順調そうに会話が弾んではいるが、あの会話で一体何をする気だ? あれじゃ、オズの価値が分かりそうにないが。

「≪それでは、失礼≫
「≪え、なんですか、これ⁉︎≫


 突然フォールは、換金機からヘルメット式の装置を取り出して、店主に被せた。

「≪安心してください。少し見ていただきたい物があるだけでして。これを見るだけで良いんです≫」


 そしてフォールが店主に見せたのは、1オズ硬貨。そして、換金機が

「0.7ガルド、デス!」


 と、言い上げた。

「≪助かりました。では、少々お待ちください≫」


 フォールは店主からヘルメット式の装置を取り外し、換金機の口へ、オズを次から次へと入れた。それと同時に、たくさんの紙幣も出てきた。

「えっ、これ…ガルドっすか⁉︎」
「ガルドってなんだ?」
「この国の通貨っす! すごいっすね…本当に換金できてるっす…」
「≪じゃあ親父。ここにある果物、半分ずつくれ。これお代、釣りは要らん≫
「≪え、えぇ⁉︎   いいんですか⁉︎≫」
「≪あぁ、お礼だ。これなら、チップじゃないだろ?≫」


 店主は悩んだ顔をしていたが、フォールのウィンクを見て、果物を紙袋の中にスポスポと入れまとめた。

「≪お待たせしました。ですが、お釣りは…≫
「≪いい、いい。気にすんな。あと、売上悪そうだから、言っておくぞ。並びが悪い、ちゃんと綺麗に並べれば売れるぞ≫」
「≪え…≫」
「≪試すだけ試してみろ。じゃ、ありがとな。≫おーい、お待たせ!」


 たくさんの紙袋を抱えたフォールが、少し嬉しそうな顔をして戻ってきた。

「いやぁ! 俺たちのオズと価値がそう変わらんで良かったな。あまりに安かったり高かったりすると、帰ったときの金遣いが荒くなるからな」


 価値が低くなりすぎると、その世界でいたような散財癖が、逆に価値が高くなりすぎると、帰ったときに何でもかんでも安く思えて買ってしまう。
 そんな状況がよくあったのだろう、そのせいか余計にフォールの顔が嬉しそうに見える。

「それじゃあ、魔法道具を買うっすよ! え~っと…あそこっすね! って、定休日っすか⁉︎」
「あーあ。でも、結局はもう夕方か~」
「そうっすね。じゃあ、宿でもさが…⁉︎」


 何気なく空を見上げたエドは、急に立ち止まった。その目は、まるで恐怖心で固まる猫のように、丸くなっていた。

「どうかしたか?」
「…紅の満月っす…」
「月…あぁ、たしかに、真っ赤だが」

 別に、月が赤く光ることなんて、たまにあるじゃないか。いや、まあ、俺たちの世界の月は、こんな血みたいに真っ赤じゃないけどさ。

「紅の満月が昇る夜はは…モンスターが凶暴化する夜になるんすよ。大昔に封印された魔の魂が徘徊し、モンスターの中に入って本能を掻き立てるんすよ」
「じゃあ、今夜は寝れない…ってことか?」
「そうでもないっすよ。門番と守護兵がいれば、問題なしっす!」
「なんだ、それくらいのことで驚かないでよ」


 そんなに驚く事実でないと知り、全員は休める場所を探して歩き出した。
 すると、街のど真ん中に、レンガで作られたような、一つ目の、人型のオブジェクトのようなものが、ドデンと置かれていた。だがそれは、ところどころが欠けていた。

「ねぇ、この一つ目のオブジェクトみたいなの、何?」
「それは、さっきも話した大昔の、“龍車りゅうしゃ”っていう、魔を封じるために作られた、古代魔法道具っすよ。まあ、魔っていうのは“麒麟キリンで、ソイツに全部乗っ取られたって語り継がれてるっす」
「へぇ~…今にも動き出しそう」


 欠けているとはいえども、その見た目はまるで最近作られたように綺麗だった。
 そして、その壊れているからこその迫力は、大昔の人たちが血を流し、命をかけて戦った様子を、想起させた。

「…いわゆる、歴史的なシンボルっすね。さっ、宿探しに戻るっすよ」
「だな。さて、どんな宿なんだか」


 4人は宿探しを再開した。紅い月がうっすらと浮かぶ不吉な予感を一切気にせずに。
しおりを挟む
https://accaii.com/asahisakuragi18/code.html
感想 0

あなたにおすすめの小説

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

鑑定能力で恩を返す

KBT
ファンタジー
 どこにでもいる普通のサラリーマンの蔵田悟。 彼ははある日、上司の悪態を吐きながら深酒をし、目が覚めると見知らぬ世界にいた。 そこは剣と魔法、人間、獣人、亜人、魔物が跋扈する異世界フォートルードだった。  この世界には稀に異世界から《迷い人》が転移しており、悟もその1人だった。  帰る方法もなく、途方に暮れていた悟だったが、通りすがりの商人ロンメルに命を救われる。  そして稀少な能力である鑑定能力が自身にある事がわかり、ブロディア王国の公都ハメルンの裏通りにあるロンメルの店で働かせてもらう事になった。  そして、ロンメルから店の番頭を任された悟は《サト》と名前を変え、命の恩人であるロンメルへの恩返しのため、商店を大きくしようと鑑定能力を駆使して、海千山千の商人達や荒くれ者の冒険者達を相手に日夜奮闘するのだった。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

処理中です...