50 / 74
第三章
44.ブランケットのレグルス
しおりを挟む
握られた手のことなど忘れて、タビトは駆け出した。
今度は行き先を遮られることはなかった。
広げられた腕の中へ躊躇なく飛び込む。勢いよく突っ込んだのに、よろけることもなく受け止めてくれた。
「あぁ、タビト、タビトだ……」
「レグルス……っ」
隙間があるのがもどかしいとばかりに互いにぎゅうぎゅう抱き締め合い、匂いをかぎ、髪を撫でて、再会を喜び合う。
すっかりフラれた後輩がそれをぽかんと見つめていた。
ひとしきりタビトの存在を確認したレグルスは、タビトを抱きかかえたまま立ち尽くす男をちらりと見遣る。
何気ない流し目だったが妙に迫力があって、後輩はびくりと肩を震わせた。
「『オレの』タビトに、まだなにか用?」
哀れなクマはその一声で、短いしっぽを巻いて逃げるしかなかった。
小柄なのに凛として、何にも寄りかかったりしそうになかった先輩が、他の男へ子ネコのようにすり寄って微笑む姿を見せつけられ、食い下がれるほど強くない。
邪魔者が消え、レグルスは再びタビトの存在を堪能した。
耳や尾にも触れ、前髪に頬を擦り付ける。
「ふは、くすぐったいよレグルス」
負けじとタビトも手を伸ばす。
丸い耳は記憶にあるより肉厚で大きくなっていた。
ふにふに揉んでもはたかれないのが、拒絶されていない証のようで嬉しくなる。
人型の髪は少し伸びていた。肩につかないくらいの長さで、額や頬に落ちかかる毛束が新鮮だ。つんと引っ張ると、黒と茶が複雑に入り混じった金毛がはらりとほどける。
レグルスだと確信できるのに、よく見ると記憶の中の彼とはずいぶん違っていた。
頬に丸みがない。精悍な顔立ち、獅子らしい太い鼻筋。口元をむにむにと指の腹で揉むと、鋭い牙が見え隠れする。金のまつ毛で縁取られたオレンジ色の虹彩、中心の丸い瞳孔が収縮するのが観察できるくらいの距離で見つめ合う。
レグルスもタビトをつぶさに観察していた。
亡くなったものの姿をもらった影響か、タビトの人型は驚くほど成長していなかった。
レグルスの身長は一般的なライオン獣人の平均通りにすくすく成長したせいで、余計にタビトが小さく見える。
髪の色と同じ真っ白の耳は成長しているようだったが、頬の丸みもぱっちりと大きな双眸も可愛らしさとあどけなさが先立って、幼い。
元となったものが女性だったせいで手足が細長く、騎士学校なんてものに通っているはずなのに薄っすらとしか筋肉がついていない。首も腰も、容易く折れそうなほど細い。
その上、訓練で邪魔にならないよう括れる長さまで髪を伸ばしたせいで余計に可憐な雰囲気が増していて、再会の喜びもそこそこにレグルスは心配になってしまった。
「タビト……こんなにかわいくて大丈夫だった? 襲われてない?」
「え、何に? ここには野生の肉食獣とか出ないよ」
「そうじゃなくて、獣人のオスとか……さっきも変なのに迫られてたよね? ああいうのよくあるの?」
男らしい眉を下げてオロオロするレグルスは、さっき後輩のクマ獣人を追い払ったときの精強な雰囲気とは真逆の情けない表情で、タビトは思わず笑ってしまった。
あまりの危機感のなさに「笑い事じゃない!」と頬をつねられても、笑みを引っ込められない。
「だってレグルス、アルシャウみたいなこと言うんだもん」
「げぇ、やめてよアイツみたいだなんて」
「ふふ。今までに何度かああして絡まれたこともあったけど」
「やっぱりあるんだ!」
「大丈夫だよ、僕強くなったから」
何を勘違いするのか、タビトに迫ってくるものは何人かいた。
実力を侮られたり、御しやすいように見られたり。惚れただの恋しただのと、よく知りもしない相手に不思議なことを言う手合いはいた。
しかしタビトはそれらすべてを退けてきた。
きちんと言葉でお断りして、暴力で言うことを聞かせようとするものには、それ以上の力を持ってねじ伏せる。
リゲルやプロキオンの助けを借りたこともあるが、しつこく近づいてくるものは次第に減っていって、最高学年になった今はゼロだった。
無謀な後輩くんは、久しぶりの挑戦者だった。
自分でどうにかできるとはいえ、しつこく絡まれなくて良かったとは思っている。
仲のいい友人のことを思い浮かべたからか、タイミングよくその二人が姿を現した。
訓練で流した汗を拭いながら二つ足で歩いてきたリゲルがぎょっとして立ち止まり、横のプロキオンも視線の先を追って固まる。
「た……タビト? もしかして拘束されてる? 助けが必要?」
見たことのないデカい獅子に抱き締められている友人に勘違いしたリゲルが、すぐさま臨戦態勢に入る。
今にも上着を脱ぎ捨てて獣化しそうな空気に、タビトはレグルスの腕を叩いてハグを解かせた。
「大丈夫、心配してくれてありがとうリゲル。紹介するよ、彼はレグルス。首都学園の学生だよ。レグルス、彼らは僕の友だちで、背の高いヒョウの方がリゲル、オオカミがプロキオン」
「レグルス? これが……?」
ざわざわと逆立ちかけていた毛がすとんと落ち着き、リゲルはぽかんとレグルスを見上げた。プロキオンも似たような顔をしている。
幻でも見たような表情をされる心当たりがなく、レグルスは戸惑う。
とりあえず礼儀として手を差し出した。
「草原の王の子、レグルスだ。きみたちの話はタビトから聞いてるよ、いつもタビトと仲良くしてくれてありがとう」
言ってから、自分でも「タビトの養父っぽいことを言ってしまった」と思ったレグルスだったが、挨拶した途端に思いがけず強い力で握手されてさらに困惑した。
「はじめましてっ、俺は雪山のリゲル! まさか『ブランケット・レグルス』の実物に会えるなんて!」
「雪原のプロキオンだ。まさか『ブランケット・レグルス』のモデルが実在していたとは……俺様も驚いている」
「ブランケット……?」
振り返ると、タビトが恥ずかしそうにもじもじとしていた。
タビトは入学当初から、とても大事な獣人がいると言って憚らなかった。
つまり離れた場所に恋人がいるのだろうと周囲は解釈して、どんな獣人なのか話を聞きたがった。
そこに出されたのが、やや使い古されたブランケット。
頬を染めて照れながら「これ、レグルス」と紹介された友人たちは、顔中に疑問符を浮かべながらもブランケットに挨拶をした。タビトがブランケットを大事にしていることは紛れもない事実だったからだ。
以降、そのブランケットは「ブランケット・レグルス」と呼ばれ、間違ってもタビト以外が触ることのないように配慮されているという。
「あ、あの頃はなんていうか、緊張してて言葉がおぼつかなくて」
タビトとしては、レグルスの代わりのように大切にしているものだと紹介したつもりだったのだが、慣れない環境のために言葉足らずになった出来事が独り歩きしている状態だった。今更ながら恥ずかしい。
レグルスの方も、タビトが学校へ旅立ったあの日、馬車に走って追い縋り渡したブランケットのことだと悟った。
己の分身のように思ってほしいと渡したものがまだ大切にされていると知り、嬉しいやら照れるやらで表情を取り繕えない。妙にそわそわしてしまう。
「ところで、首都学園の生徒がどうしてここに?」
プロキオンの訝しげな問いに、タビトはハッとした。
「そうだよレグルス、首都の学校に行ったら三年間は会うこともできないんじゃなかったの?」
「抜け出してきたわけじゃないよ。俺は兵学科の交換留学生だ」
「交換留学生……?」
レグルスの通う首都学園は騎士学校と提携している。
特定の学科の成績上位者は三年生の前半に、小規模ながら交換留学を行っているという。
レグルスたち首都学園側の交換留学生と入れ替わりに首都学園へ旅立った生徒たちの名前に、タビトたちは納得した。成績の良い同級生ばかりだ。
「首都学園の兵学科、しかも成績優秀となれば、将官候補か。今のうちに顔を売っておこう」
「プー、そんな露骨な」
やや浮かれた様子でなにくれと話しかけるリゲルとプロキオンに、タビトは並ぶ気になれなかった。
あと一年会えないはずだった恋しい相手が、今目の前にいる。
触れられたから幻ではない。
今更ながら、なんだか恥ずかしくなってきた。
訓練を終えたままの格好だから汗をかいているし、さっきは変な場面を見られてしまったし。身長はあまり伸びなかったけど、大きくなったのは事実だし、あの頃とずいぶん変わってしまっただろう。
変に思われていないだろうか。
隠せるはずもないのに前髪を引っ張って顔を隠す。
そんなタビトに助け舟を出したのは友人たちだった。
「タビト、久しぶりに会う友とつもる話もあるだろう。部屋に案内してやればどうだ?」
「そうそう、次の授業の先生には俺たちから上手く言っとくからさ」
「あっ……そうだ、授業!」
タビトは教室に向かうところだったのだ。それを後輩に引き止められ、さらには予想外のレグルスとの再会に浮かれきって、次の授業のことをすっかり忘れていた。
顔色を悪くするタビトに、友人たちが慌てて言い募る。
「新年度の初授業なんて大したことやらないから大丈夫だよ。俺たちが代わりにしっかり聴いとくから」
「授業の遅れはいつでも取り戻せるが、彼をお連れするのは知人であるタビトにしかできないことだろう。授業ノートは俺様に任せろ」
「……ごめん。ありがと、二人とも」
彼らの提案を突っぱねて授業に出ることは簡単だった。
でも絶対に、授業には集中できない。レグルスのことを気にかけたまま勉学に身が入るわけがない。
「レグルス、こっち」
結局タビトは授業を諦めた。
今度は行き先を遮られることはなかった。
広げられた腕の中へ躊躇なく飛び込む。勢いよく突っ込んだのに、よろけることもなく受け止めてくれた。
「あぁ、タビト、タビトだ……」
「レグルス……っ」
隙間があるのがもどかしいとばかりに互いにぎゅうぎゅう抱き締め合い、匂いをかぎ、髪を撫でて、再会を喜び合う。
すっかりフラれた後輩がそれをぽかんと見つめていた。
ひとしきりタビトの存在を確認したレグルスは、タビトを抱きかかえたまま立ち尽くす男をちらりと見遣る。
何気ない流し目だったが妙に迫力があって、後輩はびくりと肩を震わせた。
「『オレの』タビトに、まだなにか用?」
哀れなクマはその一声で、短いしっぽを巻いて逃げるしかなかった。
小柄なのに凛として、何にも寄りかかったりしそうになかった先輩が、他の男へ子ネコのようにすり寄って微笑む姿を見せつけられ、食い下がれるほど強くない。
邪魔者が消え、レグルスは再びタビトの存在を堪能した。
耳や尾にも触れ、前髪に頬を擦り付ける。
「ふは、くすぐったいよレグルス」
負けじとタビトも手を伸ばす。
丸い耳は記憶にあるより肉厚で大きくなっていた。
ふにふに揉んでもはたかれないのが、拒絶されていない証のようで嬉しくなる。
人型の髪は少し伸びていた。肩につかないくらいの長さで、額や頬に落ちかかる毛束が新鮮だ。つんと引っ張ると、黒と茶が複雑に入り混じった金毛がはらりとほどける。
レグルスだと確信できるのに、よく見ると記憶の中の彼とはずいぶん違っていた。
頬に丸みがない。精悍な顔立ち、獅子らしい太い鼻筋。口元をむにむにと指の腹で揉むと、鋭い牙が見え隠れする。金のまつ毛で縁取られたオレンジ色の虹彩、中心の丸い瞳孔が収縮するのが観察できるくらいの距離で見つめ合う。
レグルスもタビトをつぶさに観察していた。
亡くなったものの姿をもらった影響か、タビトの人型は驚くほど成長していなかった。
レグルスの身長は一般的なライオン獣人の平均通りにすくすく成長したせいで、余計にタビトが小さく見える。
髪の色と同じ真っ白の耳は成長しているようだったが、頬の丸みもぱっちりと大きな双眸も可愛らしさとあどけなさが先立って、幼い。
元となったものが女性だったせいで手足が細長く、騎士学校なんてものに通っているはずなのに薄っすらとしか筋肉がついていない。首も腰も、容易く折れそうなほど細い。
その上、訓練で邪魔にならないよう括れる長さまで髪を伸ばしたせいで余計に可憐な雰囲気が増していて、再会の喜びもそこそこにレグルスは心配になってしまった。
「タビト……こんなにかわいくて大丈夫だった? 襲われてない?」
「え、何に? ここには野生の肉食獣とか出ないよ」
「そうじゃなくて、獣人のオスとか……さっきも変なのに迫られてたよね? ああいうのよくあるの?」
男らしい眉を下げてオロオロするレグルスは、さっき後輩のクマ獣人を追い払ったときの精強な雰囲気とは真逆の情けない表情で、タビトは思わず笑ってしまった。
あまりの危機感のなさに「笑い事じゃない!」と頬をつねられても、笑みを引っ込められない。
「だってレグルス、アルシャウみたいなこと言うんだもん」
「げぇ、やめてよアイツみたいだなんて」
「ふふ。今までに何度かああして絡まれたこともあったけど」
「やっぱりあるんだ!」
「大丈夫だよ、僕強くなったから」
何を勘違いするのか、タビトに迫ってくるものは何人かいた。
実力を侮られたり、御しやすいように見られたり。惚れただの恋しただのと、よく知りもしない相手に不思議なことを言う手合いはいた。
しかしタビトはそれらすべてを退けてきた。
きちんと言葉でお断りして、暴力で言うことを聞かせようとするものには、それ以上の力を持ってねじ伏せる。
リゲルやプロキオンの助けを借りたこともあるが、しつこく近づいてくるものは次第に減っていって、最高学年になった今はゼロだった。
無謀な後輩くんは、久しぶりの挑戦者だった。
自分でどうにかできるとはいえ、しつこく絡まれなくて良かったとは思っている。
仲のいい友人のことを思い浮かべたからか、タイミングよくその二人が姿を現した。
訓練で流した汗を拭いながら二つ足で歩いてきたリゲルがぎょっとして立ち止まり、横のプロキオンも視線の先を追って固まる。
「た……タビト? もしかして拘束されてる? 助けが必要?」
見たことのないデカい獅子に抱き締められている友人に勘違いしたリゲルが、すぐさま臨戦態勢に入る。
今にも上着を脱ぎ捨てて獣化しそうな空気に、タビトはレグルスの腕を叩いてハグを解かせた。
「大丈夫、心配してくれてありがとうリゲル。紹介するよ、彼はレグルス。首都学園の学生だよ。レグルス、彼らは僕の友だちで、背の高いヒョウの方がリゲル、オオカミがプロキオン」
「レグルス? これが……?」
ざわざわと逆立ちかけていた毛がすとんと落ち着き、リゲルはぽかんとレグルスを見上げた。プロキオンも似たような顔をしている。
幻でも見たような表情をされる心当たりがなく、レグルスは戸惑う。
とりあえず礼儀として手を差し出した。
「草原の王の子、レグルスだ。きみたちの話はタビトから聞いてるよ、いつもタビトと仲良くしてくれてありがとう」
言ってから、自分でも「タビトの養父っぽいことを言ってしまった」と思ったレグルスだったが、挨拶した途端に思いがけず強い力で握手されてさらに困惑した。
「はじめましてっ、俺は雪山のリゲル! まさか『ブランケット・レグルス』の実物に会えるなんて!」
「雪原のプロキオンだ。まさか『ブランケット・レグルス』のモデルが実在していたとは……俺様も驚いている」
「ブランケット……?」
振り返ると、タビトが恥ずかしそうにもじもじとしていた。
タビトは入学当初から、とても大事な獣人がいると言って憚らなかった。
つまり離れた場所に恋人がいるのだろうと周囲は解釈して、どんな獣人なのか話を聞きたがった。
そこに出されたのが、やや使い古されたブランケット。
頬を染めて照れながら「これ、レグルス」と紹介された友人たちは、顔中に疑問符を浮かべながらもブランケットに挨拶をした。タビトがブランケットを大事にしていることは紛れもない事実だったからだ。
以降、そのブランケットは「ブランケット・レグルス」と呼ばれ、間違ってもタビト以外が触ることのないように配慮されているという。
「あ、あの頃はなんていうか、緊張してて言葉がおぼつかなくて」
タビトとしては、レグルスの代わりのように大切にしているものだと紹介したつもりだったのだが、慣れない環境のために言葉足らずになった出来事が独り歩きしている状態だった。今更ながら恥ずかしい。
レグルスの方も、タビトが学校へ旅立ったあの日、馬車に走って追い縋り渡したブランケットのことだと悟った。
己の分身のように思ってほしいと渡したものがまだ大切にされていると知り、嬉しいやら照れるやらで表情を取り繕えない。妙にそわそわしてしまう。
「ところで、首都学園の生徒がどうしてここに?」
プロキオンの訝しげな問いに、タビトはハッとした。
「そうだよレグルス、首都の学校に行ったら三年間は会うこともできないんじゃなかったの?」
「抜け出してきたわけじゃないよ。俺は兵学科の交換留学生だ」
「交換留学生……?」
レグルスの通う首都学園は騎士学校と提携している。
特定の学科の成績上位者は三年生の前半に、小規模ながら交換留学を行っているという。
レグルスたち首都学園側の交換留学生と入れ替わりに首都学園へ旅立った生徒たちの名前に、タビトたちは納得した。成績の良い同級生ばかりだ。
「首都学園の兵学科、しかも成績優秀となれば、将官候補か。今のうちに顔を売っておこう」
「プー、そんな露骨な」
やや浮かれた様子でなにくれと話しかけるリゲルとプロキオンに、タビトは並ぶ気になれなかった。
あと一年会えないはずだった恋しい相手が、今目の前にいる。
触れられたから幻ではない。
今更ながら、なんだか恥ずかしくなってきた。
訓練を終えたままの格好だから汗をかいているし、さっきは変な場面を見られてしまったし。身長はあまり伸びなかったけど、大きくなったのは事実だし、あの頃とずいぶん変わってしまっただろう。
変に思われていないだろうか。
隠せるはずもないのに前髪を引っ張って顔を隠す。
そんなタビトに助け舟を出したのは友人たちだった。
「タビト、久しぶりに会う友とつもる話もあるだろう。部屋に案内してやればどうだ?」
「そうそう、次の授業の先生には俺たちから上手く言っとくからさ」
「あっ……そうだ、授業!」
タビトは教室に向かうところだったのだ。それを後輩に引き止められ、さらには予想外のレグルスとの再会に浮かれきって、次の授業のことをすっかり忘れていた。
顔色を悪くするタビトに、友人たちが慌てて言い募る。
「新年度の初授業なんて大したことやらないから大丈夫だよ。俺たちが代わりにしっかり聴いとくから」
「授業の遅れはいつでも取り戻せるが、彼をお連れするのは知人であるタビトにしかできないことだろう。授業ノートは俺様に任せろ」
「……ごめん。ありがと、二人とも」
彼らの提案を突っぱねて授業に出ることは簡単だった。
でも絶対に、授業には集中できない。レグルスのことを気にかけたまま勉学に身が入るわけがない。
「レグルス、こっち」
結局タビトは授業を諦めた。
2
[気持ちを送る]
感想メッセージもこちらから!
お気に入りに追加
477
あなたにおすすめの小説
虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する
あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。
領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。
***
王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。
・ハピエン
・CP左右固定(リバありません)
・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません)
です。
べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。
***
2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。
【完結】転生して妖狐の『嫁』になった話
那菜カナナ
BL
【お茶目な挫折過去持ち系妖狐×努力家やり直し系モフリストDK】
トラック事故により、日本の戦国時代のような世界に転生した仲里 優太(なかざと ゆうた)は、特典により『妖力供給』の力を得る。しかしながら、その妖力は胸からしか出ないのだという。
「そう難しく考えることはない。ようは長いものに巻かれれば良いのじゃ。さすれば安泰間違いなしじゃ」
「……それじゃ前世(まえ)と変わらないじゃないですか」
他人の顔色ばかり伺って生きる。そんな自分を変えたいと意気込んでいただけに落胆する優太。
そうこうしている内に異世界へ。早々に侍に遭遇するも妖力持ちであることを理由に命を狙われてしまう。死を覚悟したその時――銀髪の妖狐に救われる。
彼の名は六花(りっか)。事情を把握した彼は奇天烈な優太を肯定するばかりか、里の維持のために協力をしてほしいと願い出てくる。
里に住むのは、人に思い入れがありながらも心に傷を負わされてしまった妖達。六花に協力することで或いは自分も変われるかもしれない。そんな予感に胸を躍らせた優太は妖狐・六花の手を取る。
★表紙イラストについて★
いちのかわ様に描いていただきました!
恐れ入りますが無断転載はご遠慮くださいm(__)m
いちのかわ様へのイラスト発注のご相談は、
下記サイトより行えます(=゚ω゚)ノ
https://coconala.com/services/248096
異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。

小学生のゲーム攻略相談にのっていたつもりだったのに、小学生じゃなく異世界の王子さま(イケメン)でした(涙)
九重
BL
大学院修了の年になったが就職できない今どきの学生 坂上 由(ゆう) 男 24歳。
半引きこもり状態となりネットに逃げた彼が見つけたのは【よろず相談サイト】という相談サイトだった。
そこで出会ったアディという小学生? の相談に乗っている間に、由はとんでもない状態に引きずり込まれていく。
これは、知らない間に異世界の国家育成にかかわり、あげく異世界に召喚され、そこで様々な国家の問題に突っ込みたくない足を突っ込み、思いもよらぬ『好意』を得てしまった男の奮闘記である。
注:主人公は女の子が大好きです。それが苦手な方はバックしてください。
*ずいぶん前に、他サイトで公開していた作品の再掲載です。(当時のタイトル「よろず相談サイト」)
誓いを君に
たがわリウ
BL
平凡なサラリーマンとして過ごしていた主人公は、ある日の帰り途中、異世界に転移する。
森で目覚めた自分を運んでくれたのは、美しい王子だった。そして衝撃的なことを告げられる。
この国では、王位継承を放棄した王子のもとに結ばれるべき相手が現れる。その相手が自分であると。
突然のことに戸惑いながらも不器用な王子の優しさに触れ、少しずつお互いのことを知り、婚約するハッピーエンド。
恋人になってからは王子に溺愛され、幸せな日々を送ります。
大人向けシーンは18話からです。
中国ドラマの最終回で殺されないために必要な15のこと
神雛ジュン@元かびなん
BL
どこにでもいる平凡な大学生・黒川葵衣(くろかわあおい)は重度の中国ドラマオファン。そんな葵衣が、三度も飯より愛するファンタジードラマ「金龍聖君(こんりゅうせいくん)」の世界に転生してしまった! しかも転生したのは、ドラマの最終回に主人公に殺される予定の極悪非道皇子。
いやいやいや、俺、殺されたくないし。痛いのイヤだし。
葵衣はどうにか死亡フラグを回避しようと、ことなかれの人生を歩もうとする。
とりあえず主人公に会わなきゃよくない?
が、現実は厳しく、転生したのは子供時代の主人公を誘拐した直後。
どうするの、俺! 絶望まっしぐらじゃん!
悩んだ葵衣は、とにかく最終回で殺されないようにするため、訳アリの主人公を育てることを決める。
目標は自分に殺意が湧かないよう育てて、無事親元に帰すこと!
そんなヒヤヒヤドキドキの溺愛子育てB L。
====================
*以下は簡単な設定説明ですが、本文にも書いてあります。
★金龍聖君(こんりゅうせいくん):中国ファンタジー時代劇で、超絶人気のWEBドラマ。日本でも放送し、人気を博している。
<世界>
聖界(せいかい):白龍族が治める国。誠実な者が多い。
邪界(じゃかい):黒龍族が治める国。卑劣な者が多い。
<主要キャラ>
黒川葵衣:平凡な大学生。中国ドラマオタク。
蒼翠(そうすい):邪界の第八皇子。葵衣の転生先。ドラマでは泣く子も黙る悪辣非道キャラ。
無風(むふう):聖界の第二皇子。訳があって平民として暮らしている。
仙人(せんにん):各地を放浪する老人。
炎禍(えんか):邪界皇太子。性格悪い。蒼翠をバカにしている。
闘乱世界ユルヴィクス -最弱と最強神のまったり世直し旅!?-
mao
BL
力と才能が絶対的な存在である世界ユルヴィクスに生まれながら、何の力も持たずに生まれた無能者リーヴェ。
無能であるが故に散々な人生を送ってきたリーヴェだったが、ある日、将来を誓い合った婚約者ティラに事故を装い殺されかけてしまう。崖下に落ちたところを不思議な男に拾われたが、その男は「神」を名乗るちょっとヤバそうな男で……?
天才、秀才、凡人、そして無能。
強者が弱者を力でねじ伏せ支配するユルヴィクス。周りをチート化させつつ、世界の在り方を変えるための世直し旅が、今始まる……!?
※一応はバディモノですがBL寄りなので苦手な方はご注意ください。果たして愛は芽生えるのか。
のんびりまったり更新です。カクヨム、なろうでも連載してます。

神は眷属からの溺愛に気付かない
グランラババー
BL
【ラントの眷属たち×神となる主人公ラント】
「聖女様が降臨されたぞ!!」
から始まる異世界生活。
夢にまでみたファンタジー生活を送れると思いきや、一緒に召喚された母であり聖女である母から不要な存在として捨てられる。
ラントは、せめて聖女の思い通りになることを妨ぐため、必死に生きることに。
彼はもう人と交流するのはこりごりだと思い、聖女に捨てられた山の中で生き残ることにする。
そして、必死に生き残って3年。
人に合わないと生活を送れているものの、流石に度が過ぎる生活は寂しい。
今更ながら、人肌が恋しくなってきた。
よし!眷属を作ろう!!
この物語は、のちに神になるラントが偶然森で出会った青年やラントが助けた子たちも共に世界を巻き込んで、なんやかんやあってラントが愛される物語である。
神になったラントがラントの仲間たちに愛され生活を送ります。ラントの立ち位置は、作者がこの小説を書いている時にハマっている漫画や小説に左右されます。
ファンタジー要素にBLを織り込んでいきます。
のんびりとした物語です。
現在二章更新中。
現在三章作成中。(登場人物も増えて、やっとファンタジー小説感がでてきます。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる