18 / 42
本編
18.死別
しおりを挟む
それからユウは時折神殿へ赴いた。
英雄王の仕事は民衆の支持を集めること。平民の陳情を聞き、町へ降りて愛想を振りまき、民の生活を見てより良くしようと努力する。
ただそれだけ。
政治や国の歴史は学び始めているものの、元々平民生まれのユウが政にくちばしを突っ込むのは筋違いだった。政策は元老院が決めていてユウの出る幕はない。そもそも前王が存命なので、退位したとはいえ政治の中心はそっちだ。
ただ、民衆のユウへの支持は圧倒的だった。
ユウは人気のある我が身を存分に利用して、少しでも民が不利益を被ることがないよう平民の代表として意見をねじ込みまくった。
結果、民衆からの支持は留まることを知らず上がり続け、反対に貴族や元老院からは目に見えて嫌われた。
そんな居心地の悪い王城にいたくなくて、ユウは半ば逃げるように神殿へ顔を出した。
その行動すらも、民へ優しく信心も深いと人気の後押しになってしまうのだが。
「王様がこんなところでサボってていいのですか」
「お飾りの王だからな。俺がいてもいなくても変わらない」
「奥様のところくらいは顔出したほうがいいのでは? まだお子様も小さいのでしょう」
「……」
いつのまにか魔王はユウが王位についたこと、子がいることを知っていた。
どうやら神殿にも俗世にまみれたものがいるらしい。
ユウが初耳の噂話などを披露されることもあり、必死に否定しては「必死過ぎて怪しい」などとからかわれることも増えた。
大方、王妃が生まれたばかりのわが子たちに夢中で、夫はかまってもらえていないことも噂で知っているのだろう。それなのにこの態度である。
「冗談はさておき。人族の王よ、なぜあなたは私などのところに来るのです」
「俺がどこに行こうと勝手だ。囚われの身で王の訪いを鬱陶しがる権利はないぞ」
「そういうことではなく。倒したはずの魔王が生きているのが嫌なら、神殿に圧力をかけて処分するか、そもそも顔など見に来なければいいでしょう。心配しなくても逃げたりしません。なのにあなたは何をするでもなく、おしゃべりしたりおやつを食べたりして帰るだけ。本当に、何をしに来ているのですか?」
ユウはそっと目をそらした。
神殿で神官たちに供されるハーブ入りのクッキーが故郷の味でおいしいから……などと自分に言い訳をして来ているのである。
耳ざとい神官たちも、ユウが死にかけの魔王の次代をつくるよう言われているとはさすがに知らないのだろう。
黙り込んでクッキーをかじっているユウを、魔王はじっと見つめてきた。
真っ黒な双眸を見開いて瞬きもせず見つめられると、暗がりから襲ってくるゴースト系魔族を思わせてかなり怖い。
「どっちですか?」
あまりに唐突な問いに、ユウは自然と魔王のほうを向いていた。
「私の魔力核、私の子。どっちを奪えと言われたんですか?」
あまりに的確に核心を突かれ、ユウはクッキーのかけらを吹きこぼした。
「ぐ、げほげほ……な、なん……」
「あたりですか。神殿、いや大神官が企みそうなことだ。あの狸爺は殺しておくべきでした」
「な、なぜ」
「なぜわかったか、ですか? あなた、秘するべきものを問いかけられて答えを思い浮かべるのやめたほうがいいですよ。精神感応系の魔術が使えれば、おおよそのところは読めてしまいますから」
つまり心を読まれたということなのだろう。
これ以上隠し立てしても無意味だ。ユウは仕方なく大神官から命じられたことを話した。
「なるほど、私の子を生きた魔力タンクにしようという目論見ですね。下衆が過ぎて反吐がでそうです」
「……」
「それには同意、と。あなたは本当に読みやすい」
今のが心を読まれたのか、ユウの渋面から読み取ったのかわからないが、ユウにはもはや魔王をどうこうするという気持ちは失せていた。
魔王が言った通りだ。
仮に彼の次代が生まれたとしても、その子に権利は一切認められないだろう。
ただ敵対種族に搾取されるために生まれ、無理やり生かされ、おそらく勝手な都合で殺される。
そんな不幸な存在を生み出す気はない。
いくら殺し合いをした相手でも、ユウ自身魔王や魔族にそれほどの非道を行うほどの恨みは抱いていなかった。
「心配するな。無理にアンタをどうこうするつもりはない」
「無理にどうこうって……私の種族がどのように繁殖するか知っているのですか?」
「いや……種族……?」
「そこからですか」
魔族は種類によって千差万別の繁殖方法を持つのだという。
異種同士で交わることも多い。生来繁殖力の低い魔族が絶滅せずに生き残ってこられたのは、柔軟な繁殖方法によるところが大きい。
「異種二体でつがいになったら、それぞれの種族の繁殖を試すのです。そしてどちらか成功したほうで子を作る。性別どころか種別も不問。合理的でしょう」
「確かにな。それほど自由なものだとは知らなかった」
「ただこの方法は産み落とした方の種族の子が生まれるので、種の保存という観点では難しいのですがね。私たちの例で言えば、あなたは私を孕ませるしかない」
どうすればいいか、知りたいですか?
魔王の言葉は、視線は、とてつもない引力をもってユウを絡め取った。
黒曜の瞳から目を離せない。
そんなつもりはないのに体が、手が引き寄せられる。
気がつくとユウは魔王の体を抱き、その肌に手を這わせていた。
ふやけてしわになっている表皮を撫でてやると、だんだんとなめらかな肌に戻ってくる。泉に浸かっているというだけではない冷たさに、興奮は冷めるどころかいや増していく。
「んっ……そこは、何もないですよ」
身をくねらせる魔王を無視して下肢に手を差し込む。
引きちぎられたような下半身は確かに何もなかった。引き抜いた木の根のような無惨な半身が残っているのみだ。
腹の中程から下が欠損したこの姿で、どうやって命を保っているのだろう。
目当てのものがなく、結局魔王を孕ませる方法はわからなかったが、まさぐったそこは感覚があるらしい。
「触覚は生きているのか、ここも」
「あ……なんだか、変なかんじがします」
「気持ちいいのか」
「聞かないで……あ、あぁっ」
触れた肌がだんだんと熱を持ってくる。産毛を逆立てるように撫でると、魔王はびくびくと震えながらあえかな声を漏らした。
はっとして身を起こす。いつの間にか魔王を組み敷いていた。
「意外と、情熱的なのですね、勇者さま」
「……ユークリッドと」
「ユークリッド……ユー。ねぇ、手を握ってくれませんか」
魔王の方から何かを求めてきたのはこれが初めてだった。
やや性急に手を握ってやると、魔王は控えめな笑みを浮かべ、指を絡めてくる。それがなんとも健気な仕草で、ユウは体の芯に熱が籠るのを感じた。
彼を自分のものにしたい。
それはユウの今までの人生に一度も沸き起こらなかった、強烈な衝動だった。
衝動のまま唇を寄せたユウを、魔王の細いながらも男らしい節のある長い指がそっと押し留めた。
「だめですよ」
その代わりのように、握った手の甲に口づけられて目眩がした。
「ユー……」
薄い唇で自分の名を呼ばれることがこれほど嬉しいなんて。
ユウは魔王としっかりと手を繋ぎ、腕の中に収まってしまうほど細い体を抱きしめられる幸運に身を打ち震わせた。
夢見心地のまま神殿を出ると、時間経過とともに意識が戻ってきたように感じていた。
そのまま頭を抱える。
「な、な、なんてことを……俺は……!」
浮気だ。あれは完全に浮気だった。なんということだ。
王妃にも子どもたちにも合わせる顔がない。
実直に生きてきた人生の中で初めてと言える不義理だった。
罪悪感に呼吸が苦しくなる。逃げ出したい。だが逃げ場などない。魔王相手にやらかしてしまった以上、しばらくは神殿に顔を出すのも気まずい。
頭が割れそうなほど思い悩んだ結果、ユウが選んだ道は、妻に土下座することだった。
王妃にしてみれば、死んだはずの魔王と夫が浮気するという摩訶不思議な状況からして謎だったが、ちょっと撫でただけだというし、一時の気の迷いならと許した。
ユウは離縁を覚悟し、俗世を捨て神官になるとまで思い詰めたが、それは王妃が止めた。
元々恋愛感情で結婚したわけではない夫婦だ。国の運営に支障がなければ、妾を召し抱えることは王の甲斐性とも言われる。
とはいえ魔王を側室にすることはできないし、さてどうしたものかと悩み始めた頃、神殿から知らせが届いた。
「魔王が死んだ……!?」
思わず立ち上がったユウは、そのままの勢いで神殿へ駆けつけた。
しかし魔王に会うことはできなかった。
「今朝方、魔力核の停止を確認しました。肉体はすでに無く、神殿全体の浄化をしている最中です。申し訳ありませんが、お引き取りを」
「本当か? 最後に会ったときは……本当に魔王は死んだのか」
「えぇ。我々も心底残念です、王よ」
大神官の眼差しには、目的を達せられなかったユウへの批難が明確に込められていた。
これ以上押し問答してもどうにもなりそうにない。
神官総出で神殿を浄化しているのは事実のようだし、本当に魔王は死んだのかもしれない。
最後に見た魔王は、微笑んでユウを受け入れてくれた。
あの瞬間は確かに心が通じ合ったと思えたのに、もう二度と会えないなんて、そんなことがあるのだろうか。
「あぁそうか、俺は、魔王を────」
いつのまにか愛してしまっていた。
気づくのが遅すぎた。
たとえもっと早く気づいていても、報われることはなかっただろうけれど。
英雄王ユークリッドは平民出身の偉大な王として、また愛妻家の賢王として歴史に名を刻んだ。
生涯側室を持たず、一男一女を育て上げ、ただ国のために尽くした。
他種族との共存に理解を求め、精力的に活動したが、他種族との融和を良しとしない人族の暴漢に襲われ死んだ、悲劇の王でもあった。
英雄王の仕事は民衆の支持を集めること。平民の陳情を聞き、町へ降りて愛想を振りまき、民の生活を見てより良くしようと努力する。
ただそれだけ。
政治や国の歴史は学び始めているものの、元々平民生まれのユウが政にくちばしを突っ込むのは筋違いだった。政策は元老院が決めていてユウの出る幕はない。そもそも前王が存命なので、退位したとはいえ政治の中心はそっちだ。
ただ、民衆のユウへの支持は圧倒的だった。
ユウは人気のある我が身を存分に利用して、少しでも民が不利益を被ることがないよう平民の代表として意見をねじ込みまくった。
結果、民衆からの支持は留まることを知らず上がり続け、反対に貴族や元老院からは目に見えて嫌われた。
そんな居心地の悪い王城にいたくなくて、ユウは半ば逃げるように神殿へ顔を出した。
その行動すらも、民へ優しく信心も深いと人気の後押しになってしまうのだが。
「王様がこんなところでサボってていいのですか」
「お飾りの王だからな。俺がいてもいなくても変わらない」
「奥様のところくらいは顔出したほうがいいのでは? まだお子様も小さいのでしょう」
「……」
いつのまにか魔王はユウが王位についたこと、子がいることを知っていた。
どうやら神殿にも俗世にまみれたものがいるらしい。
ユウが初耳の噂話などを披露されることもあり、必死に否定しては「必死過ぎて怪しい」などとからかわれることも増えた。
大方、王妃が生まれたばかりのわが子たちに夢中で、夫はかまってもらえていないことも噂で知っているのだろう。それなのにこの態度である。
「冗談はさておき。人族の王よ、なぜあなたは私などのところに来るのです」
「俺がどこに行こうと勝手だ。囚われの身で王の訪いを鬱陶しがる権利はないぞ」
「そういうことではなく。倒したはずの魔王が生きているのが嫌なら、神殿に圧力をかけて処分するか、そもそも顔など見に来なければいいでしょう。心配しなくても逃げたりしません。なのにあなたは何をするでもなく、おしゃべりしたりおやつを食べたりして帰るだけ。本当に、何をしに来ているのですか?」
ユウはそっと目をそらした。
神殿で神官たちに供されるハーブ入りのクッキーが故郷の味でおいしいから……などと自分に言い訳をして来ているのである。
耳ざとい神官たちも、ユウが死にかけの魔王の次代をつくるよう言われているとはさすがに知らないのだろう。
黙り込んでクッキーをかじっているユウを、魔王はじっと見つめてきた。
真っ黒な双眸を見開いて瞬きもせず見つめられると、暗がりから襲ってくるゴースト系魔族を思わせてかなり怖い。
「どっちですか?」
あまりに唐突な問いに、ユウは自然と魔王のほうを向いていた。
「私の魔力核、私の子。どっちを奪えと言われたんですか?」
あまりに的確に核心を突かれ、ユウはクッキーのかけらを吹きこぼした。
「ぐ、げほげほ……な、なん……」
「あたりですか。神殿、いや大神官が企みそうなことだ。あの狸爺は殺しておくべきでした」
「な、なぜ」
「なぜわかったか、ですか? あなた、秘するべきものを問いかけられて答えを思い浮かべるのやめたほうがいいですよ。精神感応系の魔術が使えれば、おおよそのところは読めてしまいますから」
つまり心を読まれたということなのだろう。
これ以上隠し立てしても無意味だ。ユウは仕方なく大神官から命じられたことを話した。
「なるほど、私の子を生きた魔力タンクにしようという目論見ですね。下衆が過ぎて反吐がでそうです」
「……」
「それには同意、と。あなたは本当に読みやすい」
今のが心を読まれたのか、ユウの渋面から読み取ったのかわからないが、ユウにはもはや魔王をどうこうするという気持ちは失せていた。
魔王が言った通りだ。
仮に彼の次代が生まれたとしても、その子に権利は一切認められないだろう。
ただ敵対種族に搾取されるために生まれ、無理やり生かされ、おそらく勝手な都合で殺される。
そんな不幸な存在を生み出す気はない。
いくら殺し合いをした相手でも、ユウ自身魔王や魔族にそれほどの非道を行うほどの恨みは抱いていなかった。
「心配するな。無理にアンタをどうこうするつもりはない」
「無理にどうこうって……私の種族がどのように繁殖するか知っているのですか?」
「いや……種族……?」
「そこからですか」
魔族は種類によって千差万別の繁殖方法を持つのだという。
異種同士で交わることも多い。生来繁殖力の低い魔族が絶滅せずに生き残ってこられたのは、柔軟な繁殖方法によるところが大きい。
「異種二体でつがいになったら、それぞれの種族の繁殖を試すのです。そしてどちらか成功したほうで子を作る。性別どころか種別も不問。合理的でしょう」
「確かにな。それほど自由なものだとは知らなかった」
「ただこの方法は産み落とした方の種族の子が生まれるので、種の保存という観点では難しいのですがね。私たちの例で言えば、あなたは私を孕ませるしかない」
どうすればいいか、知りたいですか?
魔王の言葉は、視線は、とてつもない引力をもってユウを絡め取った。
黒曜の瞳から目を離せない。
そんなつもりはないのに体が、手が引き寄せられる。
気がつくとユウは魔王の体を抱き、その肌に手を這わせていた。
ふやけてしわになっている表皮を撫でてやると、だんだんとなめらかな肌に戻ってくる。泉に浸かっているというだけではない冷たさに、興奮は冷めるどころかいや増していく。
「んっ……そこは、何もないですよ」
身をくねらせる魔王を無視して下肢に手を差し込む。
引きちぎられたような下半身は確かに何もなかった。引き抜いた木の根のような無惨な半身が残っているのみだ。
腹の中程から下が欠損したこの姿で、どうやって命を保っているのだろう。
目当てのものがなく、結局魔王を孕ませる方法はわからなかったが、まさぐったそこは感覚があるらしい。
「触覚は生きているのか、ここも」
「あ……なんだか、変なかんじがします」
「気持ちいいのか」
「聞かないで……あ、あぁっ」
触れた肌がだんだんと熱を持ってくる。産毛を逆立てるように撫でると、魔王はびくびくと震えながらあえかな声を漏らした。
はっとして身を起こす。いつの間にか魔王を組み敷いていた。
「意外と、情熱的なのですね、勇者さま」
「……ユークリッドと」
「ユークリッド……ユー。ねぇ、手を握ってくれませんか」
魔王の方から何かを求めてきたのはこれが初めてだった。
やや性急に手を握ってやると、魔王は控えめな笑みを浮かべ、指を絡めてくる。それがなんとも健気な仕草で、ユウは体の芯に熱が籠るのを感じた。
彼を自分のものにしたい。
それはユウの今までの人生に一度も沸き起こらなかった、強烈な衝動だった。
衝動のまま唇を寄せたユウを、魔王の細いながらも男らしい節のある長い指がそっと押し留めた。
「だめですよ」
その代わりのように、握った手の甲に口づけられて目眩がした。
「ユー……」
薄い唇で自分の名を呼ばれることがこれほど嬉しいなんて。
ユウは魔王としっかりと手を繋ぎ、腕の中に収まってしまうほど細い体を抱きしめられる幸運に身を打ち震わせた。
夢見心地のまま神殿を出ると、時間経過とともに意識が戻ってきたように感じていた。
そのまま頭を抱える。
「な、な、なんてことを……俺は……!」
浮気だ。あれは完全に浮気だった。なんということだ。
王妃にも子どもたちにも合わせる顔がない。
実直に生きてきた人生の中で初めてと言える不義理だった。
罪悪感に呼吸が苦しくなる。逃げ出したい。だが逃げ場などない。魔王相手にやらかしてしまった以上、しばらくは神殿に顔を出すのも気まずい。
頭が割れそうなほど思い悩んだ結果、ユウが選んだ道は、妻に土下座することだった。
王妃にしてみれば、死んだはずの魔王と夫が浮気するという摩訶不思議な状況からして謎だったが、ちょっと撫でただけだというし、一時の気の迷いならと許した。
ユウは離縁を覚悟し、俗世を捨て神官になるとまで思い詰めたが、それは王妃が止めた。
元々恋愛感情で結婚したわけではない夫婦だ。国の運営に支障がなければ、妾を召し抱えることは王の甲斐性とも言われる。
とはいえ魔王を側室にすることはできないし、さてどうしたものかと悩み始めた頃、神殿から知らせが届いた。
「魔王が死んだ……!?」
思わず立ち上がったユウは、そのままの勢いで神殿へ駆けつけた。
しかし魔王に会うことはできなかった。
「今朝方、魔力核の停止を確認しました。肉体はすでに無く、神殿全体の浄化をしている最中です。申し訳ありませんが、お引き取りを」
「本当か? 最後に会ったときは……本当に魔王は死んだのか」
「えぇ。我々も心底残念です、王よ」
大神官の眼差しには、目的を達せられなかったユウへの批難が明確に込められていた。
これ以上押し問答してもどうにもなりそうにない。
神官総出で神殿を浄化しているのは事実のようだし、本当に魔王は死んだのかもしれない。
最後に見た魔王は、微笑んでユウを受け入れてくれた。
あの瞬間は確かに心が通じ合ったと思えたのに、もう二度と会えないなんて、そんなことがあるのだろうか。
「あぁそうか、俺は、魔王を────」
いつのまにか愛してしまっていた。
気づくのが遅すぎた。
たとえもっと早く気づいていても、報われることはなかっただろうけれど。
英雄王ユークリッドは平民出身の偉大な王として、また愛妻家の賢王として歴史に名を刻んだ。
生涯側室を持たず、一男一女を育て上げ、ただ国のために尽くした。
他種族との共存に理解を求め、精力的に活動したが、他種族との融和を良しとしない人族の暴漢に襲われ死んだ、悲劇の王でもあった。
55
お気に入りに追加
109
あなたにおすすめの小説
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。
白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。
最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。
(同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!)
(勘違いだよな? そうに決まってる!)
気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!
棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる